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2章 神よ、感謝します。けど、ちょっと違う叶ったけどちょっと違うんです。
76話 君はオルネッラではないのか?
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エステルはエステルで別方向から調べていたらしい。
「ネウトラーレ候爵夫人がガラッシア公爵夫人の故郷をご存知のようなの」
「オリアーナのお母さんか、王様共々幼馴染三角関係の」
「三角関係?」
「あ、こっちの話」
いけない、私個人が妄想で保管してる話だったわ。王陛下と父親と母親の幼馴染三角関係…今も妄想してもいけるいける。
エステルはなんとなく察しているようだったけど、敢えて何もつっこまずに話を続けた。
「そう……その話によるとガラッシア公爵夫人の故郷は国境付近の山間部の小さな集落らしいのよ」
「あれ、でも確か爵位持ちだよね」
祖母の代、オリアーナの母親の母親が婚姻の際、お相手男性が爵位持ちでそのまま爵位を持つことになったとか。まあよくある話か。
「その一族が、魔法使いの祖と言われているの」
「何その二つ名滾る」
「落ち着いてね、チアキ」
「申し訳ございません」
おっと本音すぎた。真面目な話だ、引き締めるか。
エステル曰く、今私達が普段使っている魔法の大元はオリアーナの母親の祖先が始まりで、建国史を読み解けば、今の教科書から持ち出し禁止の魔法書籍まで全てその一族が作ったと言っていいものだと分かるとか。
「自分の起源とか祖先とか調べる為に、複製したってこと?」
「もしかしたら」
ただそうだとしても、たかだか1冊だけ複製というのも理にかなわない。
やっぱり推測だけになってしまうな。
「ありがと、エステル。とどめておくよ」
エステルが何か違和感を抱いたのなら、そこは当たりだ。なんていったって、それがヒロインスキル。
情報も多い方がいいし助かる所だ。
今日2人はオリアーナ(見た目オルネッラ)が起きたばかりというのもあるし、王城に御呼ばれもしてるらしく、放課後ジョギングはお休みだ。
エドアルドは今日トレーナートレーニングの日だしな。
オリアーナが走りたがってたから、二人で一緒に走ってみるか。
「あ」
「オリアーナか」
ディエゴ忘れてた。ごめんね、と内心謝っておく。
前は無理に誘って一緒に走らせていたぐらいだったのに、オリアーナの事で頭一杯だった。
いつの間にか一緒に走るようになったから、当たり前すぎて忘れていたというポジティブな方向に変換しておこう。
「お二人は」
「王城の呼び出しで帰ったよ」
「そうか」
今日走る?と誘ってみたがあっさりお断りされた。
曰く、用事があると。きちんとした用事があるなら仕方ない。
今日はオリアーナと仲良く走る日なんだ、そういうことなんだろう。
「だいぶ落ち着いたようだな」
「そう?」
「ああ、つい最近まで随分多忙だったろう。やつれていたぞ」
「それはよくない」
オリアーナの身体だ、大事にしないと。
それこそオリアーナが言っていたけど、私はこの身体から出る気でいる。
出て往生して、オリアーナはオリアーナの身体に、オルネッラはオルネッラの身体に戻ることを叶えようとしている。そのためのオルネッラ探しだ。
いくら新規事業で社畜精神旺盛に働いても、オリアーナの身体は第一優先、大事にしよう。
そしてその間にディエゴが告白練習に来てなかったことに思い至る。
大事な練習イベント一体いつからしてなかった?
「そういえば、最近ガラッシア家に来てなかった?」
「ああ、そうだな」
忙しさにたまに皆で走って終了だった。
私は走り終わっても事業関係で違う場所にすぐに行かないといけなかったりだったし…なんてことだ、日々の積み重ねと、少しでも覗ける希望を見出すために数をこなしてもらいたかったというのに。
あれか、これはディエゴ、空気を読んだというやつなの?
「気遣ってくれたの?」
「え?」
「私忙しくて皆で走って終わりとか、走る事すらない時もあったし。遠慮して帰ってくれてたんじゃ?」
訪問しづらかったのではないかと、今気づいた。
なんてことだ、社畜精神旺盛に仕事まっしぐらになってる場合じゃなかった。
私は癒しを得る為に生きているというのに。
「い、いや、そういうわけじゃ」
「お…お?」
「別に気を遣ったわけではないし、その、必要がないかなと……兎も角、君が気にする事じゃなくて、」
「結果オーライ!」
「は?」
ツンデレが照れたので今までの不手際は帳消しだ。
別に気を遣ったんじゃないんだからねっ!
無事頂きました、おめでとうございます。
「相変わらずだな……」
「そう引かないでよ。出来ればもう1度言って下さいお願いします」
「断る」
「……ふふ」
「何故笑う」
ツンデレらしいテンプレート、嬉しい。
顔が緩んでしまう。オリアーナやエステルが今いないから、誰もチアキ顔がとつっこまないけど、この際もういいよね。
そろそろご褒美タイムが来てもいいよね!
ディエゴはそんなウハウハの私を呆れたように見て1つ浅く溜息を吐いた。
品性がどうとか言われるやつかな、それで絶賛修行中の身ですと応えるパターンとみた。
「ずっと気になっていた事があったんだが」
「何?」
「応えてくれるか?」
「出来る限り」
なんだどうした、告白練習なら今ようやっと落ち着いたから、いくらでも門戸を……おおっと、いけないオリアーナが中に入って起きてしまっている。
あれ、でもそれはそれでいいのか?
生で動く告白が見られる?
いや、でも中身がオルネッラじゃないのに、告白するのもどうかという話だし、オリアーナはエドアルドの告白に対して何らかの返事をするはずだから、ええとどうしたらいい。何が一番いい解決法なのだろう。
「……わかった、きこう」
「え? あ、はい」
静かに瞳を閉じて、次に見えた彼の瞳はしっかりとした意志を感じられた。
「君はオルネッラではないのか?」
「ごぶふ」
ちょっと待って、そっちなの。
「ネウトラーレ候爵夫人がガラッシア公爵夫人の故郷をご存知のようなの」
「オリアーナのお母さんか、王様共々幼馴染三角関係の」
「三角関係?」
「あ、こっちの話」
いけない、私個人が妄想で保管してる話だったわ。王陛下と父親と母親の幼馴染三角関係…今も妄想してもいけるいける。
エステルはなんとなく察しているようだったけど、敢えて何もつっこまずに話を続けた。
「そう……その話によるとガラッシア公爵夫人の故郷は国境付近の山間部の小さな集落らしいのよ」
「あれ、でも確か爵位持ちだよね」
祖母の代、オリアーナの母親の母親が婚姻の際、お相手男性が爵位持ちでそのまま爵位を持つことになったとか。まあよくある話か。
「その一族が、魔法使いの祖と言われているの」
「何その二つ名滾る」
「落ち着いてね、チアキ」
「申し訳ございません」
おっと本音すぎた。真面目な話だ、引き締めるか。
エステル曰く、今私達が普段使っている魔法の大元はオリアーナの母親の祖先が始まりで、建国史を読み解けば、今の教科書から持ち出し禁止の魔法書籍まで全てその一族が作ったと言っていいものだと分かるとか。
「自分の起源とか祖先とか調べる為に、複製したってこと?」
「もしかしたら」
ただそうだとしても、たかだか1冊だけ複製というのも理にかなわない。
やっぱり推測だけになってしまうな。
「ありがと、エステル。とどめておくよ」
エステルが何か違和感を抱いたのなら、そこは当たりだ。なんていったって、それがヒロインスキル。
情報も多い方がいいし助かる所だ。
今日2人はオリアーナ(見た目オルネッラ)が起きたばかりというのもあるし、王城に御呼ばれもしてるらしく、放課後ジョギングはお休みだ。
エドアルドは今日トレーナートレーニングの日だしな。
オリアーナが走りたがってたから、二人で一緒に走ってみるか。
「あ」
「オリアーナか」
ディエゴ忘れてた。ごめんね、と内心謝っておく。
前は無理に誘って一緒に走らせていたぐらいだったのに、オリアーナの事で頭一杯だった。
いつの間にか一緒に走るようになったから、当たり前すぎて忘れていたというポジティブな方向に変換しておこう。
「お二人は」
「王城の呼び出しで帰ったよ」
「そうか」
今日走る?と誘ってみたがあっさりお断りされた。
曰く、用事があると。きちんとした用事があるなら仕方ない。
今日はオリアーナと仲良く走る日なんだ、そういうことなんだろう。
「だいぶ落ち着いたようだな」
「そう?」
「ああ、つい最近まで随分多忙だったろう。やつれていたぞ」
「それはよくない」
オリアーナの身体だ、大事にしないと。
それこそオリアーナが言っていたけど、私はこの身体から出る気でいる。
出て往生して、オリアーナはオリアーナの身体に、オルネッラはオルネッラの身体に戻ることを叶えようとしている。そのためのオルネッラ探しだ。
いくら新規事業で社畜精神旺盛に働いても、オリアーナの身体は第一優先、大事にしよう。
そしてその間にディエゴが告白練習に来てなかったことに思い至る。
大事な練習イベント一体いつからしてなかった?
「そういえば、最近ガラッシア家に来てなかった?」
「ああ、そうだな」
忙しさにたまに皆で走って終了だった。
私は走り終わっても事業関係で違う場所にすぐに行かないといけなかったりだったし…なんてことだ、日々の積み重ねと、少しでも覗ける希望を見出すために数をこなしてもらいたかったというのに。
あれか、これはディエゴ、空気を読んだというやつなの?
「気遣ってくれたの?」
「え?」
「私忙しくて皆で走って終わりとか、走る事すらない時もあったし。遠慮して帰ってくれてたんじゃ?」
訪問しづらかったのではないかと、今気づいた。
なんてことだ、社畜精神旺盛に仕事まっしぐらになってる場合じゃなかった。
私は癒しを得る為に生きているというのに。
「い、いや、そういうわけじゃ」
「お…お?」
「別に気を遣ったわけではないし、その、必要がないかなと……兎も角、君が気にする事じゃなくて、」
「結果オーライ!」
「は?」
ツンデレが照れたので今までの不手際は帳消しだ。
別に気を遣ったんじゃないんだからねっ!
無事頂きました、おめでとうございます。
「相変わらずだな……」
「そう引かないでよ。出来ればもう1度言って下さいお願いします」
「断る」
「……ふふ」
「何故笑う」
ツンデレらしいテンプレート、嬉しい。
顔が緩んでしまう。オリアーナやエステルが今いないから、誰もチアキ顔がとつっこまないけど、この際もういいよね。
そろそろご褒美タイムが来てもいいよね!
ディエゴはそんなウハウハの私を呆れたように見て1つ浅く溜息を吐いた。
品性がどうとか言われるやつかな、それで絶賛修行中の身ですと応えるパターンとみた。
「ずっと気になっていた事があったんだが」
「何?」
「応えてくれるか?」
「出来る限り」
なんだどうした、告白練習なら今ようやっと落ち着いたから、いくらでも門戸を……おおっと、いけないオリアーナが中に入って起きてしまっている。
あれ、でもそれはそれでいいのか?
生で動く告白が見られる?
いや、でも中身がオルネッラじゃないのに、告白するのもどうかという話だし、オリアーナはエドアルドの告白に対して何らかの返事をするはずだから、ええとどうしたらいい。何が一番いい解決法なのだろう。
「……わかった、きこう」
「え? あ、はい」
静かに瞳を閉じて、次に見えた彼の瞳はしっかりとした意志を感じられた。
「君はオルネッラではないのか?」
「ごぶふ」
ちょっと待って、そっちなの。
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