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1章 推しがデレを見せるまで。もしくは、推しが生きようと思えるまで。
48話 2度目の社交界、許すか否かはオリアーナが決める
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「大丈夫ですよ、一時だけ魔法を使えなくしただけですから」
そして次に叔父が物言う前に魔法を放つ。
私と叔父の範囲内、風が起こる魔法。
叔父が疾風に目を閉じた一瞬、彼の身体が浮く。
「あら危ない、叔父様」
「っ!」
柵の上に立って宙に浮いた叔父を掴んだ。
叔父の首を。
おお、このバルコニーなかなか眺めがいい。
「私とした事が先程突き落とされた恐怖を思い出して魔法が暴走してしまいましたわ」
「ぐっ…」
私に首を掴まれバルコニーの柵を越えたところで宙づりになる。
首がしまらないよう掴むのは難しいが、片手から感じる呼吸は問題ない。
そこはファンタジー、そして重力差があってこそ可能…私は幸運だなとしみじみ思う。
まあそれはさておき。
「先程私を階段から落とそうとした者を手引したのが叔父様だとわかりました」
「わ、私ではない!」
「その前には馬車を暴走させ父に突っ込んで行くよう指示しましたね」
「ち、ちが」
「同日、私を連れ去るよう仕向けたのも」
「証拠がない!」
「それがあるんですよねえ」
さっと顔色が変わる。
「貴方、わざわざ人のいる酒飲み処で交渉してましたね」
しかも人気の飲み屋さんだ。
木を隠すなら森の中的な発想なんだろうけど、場所を誤ったとしか言えない。
「間に何人挟もうと、元を辿れば貴方が話の出所だとわかってしまうんですよ」
「……」
「複数の人間がその時の会話を聞いていますし、これは凄い偶然なんですが」
にっこり笑うと叔父は当然ながらすこしたじろいだ。
「王室の警備隊記録係が定期潜入調査でその酒飲み処にいたんですよ。なので貴方の会話は公式の記録として残ってしまっています」
王室なめんな。
元々犯罪交渉の温床となっていた場所だったし、海賊の自白から叔父が動くことは分かっていた。
だから今日のことも先日の事も予想通りとはいえる。
あとは間に入った人間を捕らえることが最重要だったけど、これもここにきて目処がついた。
もう叔父しかいないわけだ。
「さてどうしますか?」
「…く、そ」
「そこで何をしている?」
苦々しげな顔をした叔父に最後通告というところで珍客が現れた。
私が柵の上に立ち、叔父を片手で持ち上げてるのを見て目を見開く。
「ああ、ディエゴ」
「な、あ、」
「そっか、バルコニー族だったね」
「い、意味の分からない事を言ってないで手を離せ!」
「離していいの?」
「あ、いやだめだ」
焦ってて可愛いですねー。
と、叔父が助けてくれと叫ぶ。
まったくここまできてまだ白を切る気か。
手を引き戻し叔父に顔を近づける。
「貴方がガラッシア家にした事、お認めになります?」
「だから、それは」
「往生際が悪い」
こちらに引き寄せかけた腕をぐぐいと伸ばす。
さらにバルコニーから離れる、ほんの少しだけど。
「おい、やめろ!」
「ちょっと黙ってて、ディエゴ」
「黙ってられるか!このまま落ちたら無傷ではすまないだろう!」
「優しいんだね」
「感心してる場合か!」
まったく…ディエゴがいたのは想定外だけど仕方ない。
叔父は唸りながら私を恐怖の形相で凝視している。
「私の命を二度も貶めようとしたのですから、一度ぐらい体験してみればよいのでは?」
「ま、まってくれ」
「待つ?私さっき階段から落ちた時、待ってもらえませんでしたね」
「…うぐ」
片手だけで首を掴むという状況、すぐ落ちてしまうのではという恐怖が今の叔父にはあるだろう。
私の腕を両手で掴んで離すまいとしていて、そこにディエゴの手が伸びて来たのを、行儀が悪いけど足で軽く蹴った。
「!」
「はい、待った」
「いい加減にしないか!」
「いい加減?」
いい顔をしてたらしい。
ディエゴが驚いて引いた。
イケメンは驚いても格好いいものだ。
「こっちの台詞だよ。この人にオリアーナの命が二度も狙われたんだけど」
「それは」
「事実のじの字もないこと吹聴されてお友達との仲も裂いてきたし」
「…それ、は」
「社交界で事業でも孤立した。特段オリアーナがこの人に何かしたわけじゃないのに」
ただの嫉妬とか個人的な感情によって。
そんなもので命狙われて、はいそうですかと受け入れられるものか。
そしてここにきてやっと叔父が叫ぶ。
「み、みとめる!今オリアーナが言っていたことが真実だ!私が虚偽の話を流した!ガラッシア家が没落するように!」
「なるほど、今の録音しました」
「ろ、ろくお?」
魔法を使い音声を別媒体へ記録。
紙には叔父の台詞が綺麗に書き込まれた。
これに魔法をかけ直すと自動的に再生される。
これ、トットに習っておいて本当によかったわ。
録音という概念がなくても、それに付随した機能はあるんだから便利な世界だ。
「あ、謝る…!この通りだ、許してくれ!」
「それを決めるのはオリアーナですねえ」
「え?」
「私が言えるのはただ一つ」
「?」
恐怖の形相のまま冷や汗流す叔父へ笑顔を向ける。
「手前の感情は手前でどうにかしなよ」
手を離し、叔父は2階のバルコニーから落ちた。
まあ死にはしない。
怪我はあるかもだけど。
「アッタッカメント辺境伯!」
ディエゴが下を見下ろす。
叔父の様子を見て、一瞬はっとし、そのあと肩を撫で下ろした。
私もつられて見下ろす。
「許してあげたの?」
「彼を裁くのは然るべき所に」
わんこなオリアーナが魔法を使って叔父の落下を防いでいた。
そして次に叔父が物言う前に魔法を放つ。
私と叔父の範囲内、風が起こる魔法。
叔父が疾風に目を閉じた一瞬、彼の身体が浮く。
「あら危ない、叔父様」
「っ!」
柵の上に立って宙に浮いた叔父を掴んだ。
叔父の首を。
おお、このバルコニーなかなか眺めがいい。
「私とした事が先程突き落とされた恐怖を思い出して魔法が暴走してしまいましたわ」
「ぐっ…」
私に首を掴まれバルコニーの柵を越えたところで宙づりになる。
首がしまらないよう掴むのは難しいが、片手から感じる呼吸は問題ない。
そこはファンタジー、そして重力差があってこそ可能…私は幸運だなとしみじみ思う。
まあそれはさておき。
「先程私を階段から落とそうとした者を手引したのが叔父様だとわかりました」
「わ、私ではない!」
「その前には馬車を暴走させ父に突っ込んで行くよう指示しましたね」
「ち、ちが」
「同日、私を連れ去るよう仕向けたのも」
「証拠がない!」
「それがあるんですよねえ」
さっと顔色が変わる。
「貴方、わざわざ人のいる酒飲み処で交渉してましたね」
しかも人気の飲み屋さんだ。
木を隠すなら森の中的な発想なんだろうけど、場所を誤ったとしか言えない。
「間に何人挟もうと、元を辿れば貴方が話の出所だとわかってしまうんですよ」
「……」
「複数の人間がその時の会話を聞いていますし、これは凄い偶然なんですが」
にっこり笑うと叔父は当然ながらすこしたじろいだ。
「王室の警備隊記録係が定期潜入調査でその酒飲み処にいたんですよ。なので貴方の会話は公式の記録として残ってしまっています」
王室なめんな。
元々犯罪交渉の温床となっていた場所だったし、海賊の自白から叔父が動くことは分かっていた。
だから今日のことも先日の事も予想通りとはいえる。
あとは間に入った人間を捕らえることが最重要だったけど、これもここにきて目処がついた。
もう叔父しかいないわけだ。
「さてどうしますか?」
「…く、そ」
「そこで何をしている?」
苦々しげな顔をした叔父に最後通告というところで珍客が現れた。
私が柵の上に立ち、叔父を片手で持ち上げてるのを見て目を見開く。
「ああ、ディエゴ」
「な、あ、」
「そっか、バルコニー族だったね」
「い、意味の分からない事を言ってないで手を離せ!」
「離していいの?」
「あ、いやだめだ」
焦ってて可愛いですねー。
と、叔父が助けてくれと叫ぶ。
まったくここまできてまだ白を切る気か。
手を引き戻し叔父に顔を近づける。
「貴方がガラッシア家にした事、お認めになります?」
「だから、それは」
「往生際が悪い」
こちらに引き寄せかけた腕をぐぐいと伸ばす。
さらにバルコニーから離れる、ほんの少しだけど。
「おい、やめろ!」
「ちょっと黙ってて、ディエゴ」
「黙ってられるか!このまま落ちたら無傷ではすまないだろう!」
「優しいんだね」
「感心してる場合か!」
まったく…ディエゴがいたのは想定外だけど仕方ない。
叔父は唸りながら私を恐怖の形相で凝視している。
「私の命を二度も貶めようとしたのですから、一度ぐらい体験してみればよいのでは?」
「ま、まってくれ」
「待つ?私さっき階段から落ちた時、待ってもらえませんでしたね」
「…うぐ」
片手だけで首を掴むという状況、すぐ落ちてしまうのではという恐怖が今の叔父にはあるだろう。
私の腕を両手で掴んで離すまいとしていて、そこにディエゴの手が伸びて来たのを、行儀が悪いけど足で軽く蹴った。
「!」
「はい、待った」
「いい加減にしないか!」
「いい加減?」
いい顔をしてたらしい。
ディエゴが驚いて引いた。
イケメンは驚いても格好いいものだ。
「こっちの台詞だよ。この人にオリアーナの命が二度も狙われたんだけど」
「それは」
「事実のじの字もないこと吹聴されてお友達との仲も裂いてきたし」
「…それ、は」
「社交界で事業でも孤立した。特段オリアーナがこの人に何かしたわけじゃないのに」
ただの嫉妬とか個人的な感情によって。
そんなもので命狙われて、はいそうですかと受け入れられるものか。
そしてここにきてやっと叔父が叫ぶ。
「み、みとめる!今オリアーナが言っていたことが真実だ!私が虚偽の話を流した!ガラッシア家が没落するように!」
「なるほど、今の録音しました」
「ろ、ろくお?」
魔法を使い音声を別媒体へ記録。
紙には叔父の台詞が綺麗に書き込まれた。
これに魔法をかけ直すと自動的に再生される。
これ、トットに習っておいて本当によかったわ。
録音という概念がなくても、それに付随した機能はあるんだから便利な世界だ。
「あ、謝る…!この通りだ、許してくれ!」
「それを決めるのはオリアーナですねえ」
「え?」
「私が言えるのはただ一つ」
「?」
恐怖の形相のまま冷や汗流す叔父へ笑顔を向ける。
「手前の感情は手前でどうにかしなよ」
手を離し、叔父は2階のバルコニーから落ちた。
まあ死にはしない。
怪我はあるかもだけど。
「アッタッカメント辺境伯!」
ディエゴが下を見下ろす。
叔父の様子を見て、一瞬はっとし、そのあと肩を撫で下ろした。
私もつられて見下ろす。
「許してあげたの?」
「彼を裁くのは然るべき所に」
わんこなオリアーナが魔法を使って叔父の落下を防いでいた。
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