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1章 推しがデレを見せるまで。もしくは、推しが生きようと思えるまで。
33話 クールキャラを演じられるようになるまで、まだ先は長い
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「ガラッシア公爵令嬢」
「ああ、教授」
以前絡んできた嫌み教授に声をかけられる。
相変わらず私に絡むのが好きらしい。
次はなんですか…あれか、もしかしてこの人、クールツンなの?
オリアーナのこと好きなの?好きな人にはついツンしちゃう的な?
「貴方が図々しくも社交の場に顔を出した挙げ句、またしても品位に欠ける行為をしたと学園で話が広まっていますが」
「確かに社交の場には行きました」
「何故」
「社交の場には誰でも出られるのでは?」
招待制の限定的なものではなく、広く誰でも来られるものだったから、そこに顔を出したのだが、それすらもこの教授からしたら快いものではないらしい。
品位にはかけていたとしても、参加の有無を制限される覚えはない。
「貴方は自身にその資格があるとお思いで?」
「はい」
「最近の貴方は本当に立場をわきまえていないようですね」
なんだろう、この人もエスタジ嬢共々絡んでくるな…しかもこちらの場合、明らかにオリアーナを下に見ている。
教授と生徒という立場であっても、そこは人としてどうかと思う。
「貴方はオリアーナは社交の場に出るべきでもなく、大人しく黙っていろと仰ってるわけで?」
「以前のようにきちんと自らを振り返り、自身を戒めるべきではあるでしょう」
オリアーナ何をしたのと思った時もあったけど今は違う。
私の知る限り彼女は何もしていないし、何かをするような人物ではない。
「何故でしょう?オリアーナは何か罪を?」
「自身の母と姉の事を鑑みれば当然ではありませんか」
「オリアーナは母を殺したわけでもないし、故意に姉を眠らせ続けてるわけでもないのですが」
「似たようなものです」
何故あの事故をオリアーナのせいにするのか。
この世界の人々はあの事故をオリアーナのせいにしようとしている。
周りから言われ続ければ真面目なオリアーナのこと、自分のせいだと思い込むだろう。
事実彼女は自分を責めているところが見受けられる。
それに論点の根本を追求するなら、他人にそこまで責められるいわれはない。
「教授。お言葉ですが、オリアーナ嬢のご家族の件は不幸な事故であったはずでは」
トットが加勢してくれた。
イケメン格好いい…こんなタイミングで助けられたらそのへんの女性陣は沈むよ、君というときめきの沼に。
彼に続いてエステルも言葉を続けてくれた。
「その通りです、教授。何故オリアーナに罪が?」
「……どうしたのです。貴方方は今までガラッシア公爵令嬢と縁がなかったはずでは」
話を逸らしたということは事実は事故であるということか。
何をもってオリアーナのせいにしたいのか。
「今までオリアーナ嬢とは関わる機会がありませんでしたが、ここ最近きっかけがありまして」
「しかし、貴方方の身分でこのような者と関わるなど、貴方方の立場にも影響します。若いからという理由でおさまることではありません」
「教授、それは」
「二人とも大丈夫」
二人を制す。
そして教授を見上げた。
端々に見える気まずい様子は嘘がばれるかと怯えているからか。
オリアーナのせいにして、オリアーナが一人抱え込めば安全地帯にいられる何かが、あの事故にあるのだろう。
「教授、貴方にとってオリアーナはただの生徒でどうなろうとかまわない存在ですか」
「何を急に」
「オリアーナにとって貴方は教授の内の一人ではないんですよ。少なくとも影響を受ける程度の存在ではあるんです」
「え?」
「学生にとって学園は生活のほとんどを占める重要な場所、そこにいる教授の影響力を考えたことがありますか?」
「……それは」
「簡単に言いましょう。オリアーナは使い捨ての生徒じゃない。見下すのも押し付けるのも大概にしなさい」
「……」
顔色を変えたということは分かってて今までやっていたか。
まったく、ちょっとした反論で顔色を変えるなんて、叔父といい小物が多いな。
まあ人目もあるし、今日はこのぐらいにしておこう。
今後の出方次第だ。
行こうと二人を連れ添いその場を去る。
と、そこには顔色を悪くしたエドアルドがいた。
おっふ、まずいところを見られた。
「お、オリアーナ…?」
「エドアルド…」
小さな囁きでオリアーナじゃないと聞こえたけど、そこはもう無視するしかない。
話題を変えるか、言い訳をするか。
そう、ハニーフェイスは顔色変えても可愛いなとか思ってる場合じゃないんだ。
エドアルドは一際、オリアーナと私の違いに敏感なようだから殊更気を付けなきゃいけない相手なのに、どうにもこうにも彼の新しい表情に対する新鮮さの方が勝ってしまう…可愛いはどこまでも可愛い。
気合を見せるところだ。
煩悩を制御する術は淑女教育で多少なりとも身に付いて来ているはず、頑張れ私。
「エドアルド、その」
「事故の事を話していたの?」
「え、ええ」
彼が次に口を開く前に私は大丈夫ですよと早口に伝え、さっさと去ることにした。
最初の言葉が事故の事についての振りでよかった…オリアーナじゃないという手の話はオリアーナのためにも広がらない方がいい。
「あ、危なかった…」
「いえ、手遅れに近いのでは?」
「言わないでエステル」
「言葉遣いはまだまともだったが」
「フォローありがとう、トット…」
クールキャラを演じられるようになるまで、まだ先は長い。
「ああ、教授」
以前絡んできた嫌み教授に声をかけられる。
相変わらず私に絡むのが好きらしい。
次はなんですか…あれか、もしかしてこの人、クールツンなの?
オリアーナのこと好きなの?好きな人にはついツンしちゃう的な?
「貴方が図々しくも社交の場に顔を出した挙げ句、またしても品位に欠ける行為をしたと学園で話が広まっていますが」
「確かに社交の場には行きました」
「何故」
「社交の場には誰でも出られるのでは?」
招待制の限定的なものではなく、広く誰でも来られるものだったから、そこに顔を出したのだが、それすらもこの教授からしたら快いものではないらしい。
品位にはかけていたとしても、参加の有無を制限される覚えはない。
「貴方は自身にその資格があるとお思いで?」
「はい」
「最近の貴方は本当に立場をわきまえていないようですね」
なんだろう、この人もエスタジ嬢共々絡んでくるな…しかもこちらの場合、明らかにオリアーナを下に見ている。
教授と生徒という立場であっても、そこは人としてどうかと思う。
「貴方はオリアーナは社交の場に出るべきでもなく、大人しく黙っていろと仰ってるわけで?」
「以前のようにきちんと自らを振り返り、自身を戒めるべきではあるでしょう」
オリアーナ何をしたのと思った時もあったけど今は違う。
私の知る限り彼女は何もしていないし、何かをするような人物ではない。
「何故でしょう?オリアーナは何か罪を?」
「自身の母と姉の事を鑑みれば当然ではありませんか」
「オリアーナは母を殺したわけでもないし、故意に姉を眠らせ続けてるわけでもないのですが」
「似たようなものです」
何故あの事故をオリアーナのせいにするのか。
この世界の人々はあの事故をオリアーナのせいにしようとしている。
周りから言われ続ければ真面目なオリアーナのこと、自分のせいだと思い込むだろう。
事実彼女は自分を責めているところが見受けられる。
それに論点の根本を追求するなら、他人にそこまで責められるいわれはない。
「教授。お言葉ですが、オリアーナ嬢のご家族の件は不幸な事故であったはずでは」
トットが加勢してくれた。
イケメン格好いい…こんなタイミングで助けられたらそのへんの女性陣は沈むよ、君というときめきの沼に。
彼に続いてエステルも言葉を続けてくれた。
「その通りです、教授。何故オリアーナに罪が?」
「……どうしたのです。貴方方は今までガラッシア公爵令嬢と縁がなかったはずでは」
話を逸らしたということは事実は事故であるということか。
何をもってオリアーナのせいにしたいのか。
「今までオリアーナ嬢とは関わる機会がありませんでしたが、ここ最近きっかけがありまして」
「しかし、貴方方の身分でこのような者と関わるなど、貴方方の立場にも影響します。若いからという理由でおさまることではありません」
「教授、それは」
「二人とも大丈夫」
二人を制す。
そして教授を見上げた。
端々に見える気まずい様子は嘘がばれるかと怯えているからか。
オリアーナのせいにして、オリアーナが一人抱え込めば安全地帯にいられる何かが、あの事故にあるのだろう。
「教授、貴方にとってオリアーナはただの生徒でどうなろうとかまわない存在ですか」
「何を急に」
「オリアーナにとって貴方は教授の内の一人ではないんですよ。少なくとも影響を受ける程度の存在ではあるんです」
「え?」
「学生にとって学園は生活のほとんどを占める重要な場所、そこにいる教授の影響力を考えたことがありますか?」
「……それは」
「簡単に言いましょう。オリアーナは使い捨ての生徒じゃない。見下すのも押し付けるのも大概にしなさい」
「……」
顔色を変えたということは分かってて今までやっていたか。
まったく、ちょっとした反論で顔色を変えるなんて、叔父といい小物が多いな。
まあ人目もあるし、今日はこのぐらいにしておこう。
今後の出方次第だ。
行こうと二人を連れ添いその場を去る。
と、そこには顔色を悪くしたエドアルドがいた。
おっふ、まずいところを見られた。
「お、オリアーナ…?」
「エドアルド…」
小さな囁きでオリアーナじゃないと聞こえたけど、そこはもう無視するしかない。
話題を変えるか、言い訳をするか。
そう、ハニーフェイスは顔色変えても可愛いなとか思ってる場合じゃないんだ。
エドアルドは一際、オリアーナと私の違いに敏感なようだから殊更気を付けなきゃいけない相手なのに、どうにもこうにも彼の新しい表情に対する新鮮さの方が勝ってしまう…可愛いはどこまでも可愛い。
気合を見せるところだ。
煩悩を制御する術は淑女教育で多少なりとも身に付いて来ているはず、頑張れ私。
「エドアルド、その」
「事故の事を話していたの?」
「え、ええ」
彼が次に口を開く前に私は大丈夫ですよと早口に伝え、さっさと去ることにした。
最初の言葉が事故の事についての振りでよかった…オリアーナじゃないという手の話はオリアーナのためにも広がらない方がいい。
「あ、危なかった…」
「いえ、手遅れに近いのでは?」
「言わないでエステル」
「言葉遣いはまだまともだったが」
「フォローありがとう、トット…」
クールキャラを演じられるようになるまで、まだ先は長い。
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