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1章 推しがデレを見せるまで。もしくは、推しが生きようと思えるまで。
29話 ツンデレの告白イベント(練習) 2
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「………い、」
「?」
「…おい!どうした!?」
「……わあイケメェン」
至近距離にすっごいイケメンの顔が広がっている。
いつのイベントだ?保管ボタンを押さねば。
「おい?!聞こえてるのか!?」
「……あれ?」
イケメンはディエゴだ。
至近距離なのもおいしいけど、なんでそんなに焦っているのか。
よくよく自分の状況を見れば、彼に抱えられ床から半分起こされている。
「あれ、私倒れた?」
「……その様子なら大丈夫そうだな」
どれぐらい意識を飛ばした?
それ以前に前触れもなく倒れるなんておかしい。
このオリアーナの身体は日々の食事と運動でとても健全なものにしているもの。
静かに驚いていると、ディエゴ同様私の近くに来ていたオリアーナが、少し焦った様子で教えてくれた。
「チアキが姉に手を伸ばした時、勢いよくベッドに倒れ、そのまま床に」
「そう…」
この部屋に初めて入った時も急な眩暈に襲われたな。
ここ何かあるんじゃないだろうな…罠的な魔法とか…いやそれなら私もディエゴも倒れるか。
私だけに作用する魔法…それなら何度かこちらに来てた時何もなかった理由にもならない。
誰かがこっそりそんな罠のような魔法をタイミングよく仕掛けられるのか疑問もある。
「どうした?まだ調子が戻らないか?」
「あ、いえ、大丈夫、です」
「そうか…起こすぞ」
ディエゴが本当に心配してくれている。
こんなに紳士に優しく起こしてくれるなんて…これが黄金比最高峰のデレなの?
今までツンだった分、本当効果割増しで癒しの作用が起きている。
さっきまで考えてた疑心とか不安とかどっかいってしまうな、これは。
「侍女を呼ぼう」
「え、いや、それはダメ、です!」
「…何故だ」
「いえ、大したものじゃありませんので…」
事を大きくするものでもない。
何度も大丈夫であることを伝え、渋々といった具合でディエゴはこの事を内密なものとしてくれた。
余程勢いよく倒れたんだろうな…。
「本当に仕様がなかった時は申し出ます」
「…そうか」
嫌味もなくツンもないあたり、本当に驚いたんだろう。
私もあんな急なブラックアウトは初めての経験だし、オリアーナにそういった持病はないと本人からも聴いている。
もう少し睡眠の質を考えていくことにしようか。
「そういえば、オルネッラとディエゴは仲が良かったの、ですか?」
「……なんだ突然」
「気になって」
「……」
「………」
「……親交は深くない、が、彼女は小さい頃から俺にとっての憧れだ」
「へえ」
「………なんだその顔は」
また緩んでた。
でもディエゴは私のその顔をからかうためにわざとやっていると思ったようだった…危ない。
「事故があってから会う1歩が踏み出せなかったが…不思議なものだな」
「うん?」
こんなにも簡単に来れるなんて、とディエゴ。
事故後、何度かここに見舞いに来ようと思ってはいたようだ。
けど結局出来なかった。
「何故今日?」
「…昨日のお前を見て彼女を思い出した」
あの暴走ぶりをですか…オルネッラってどういう女性だったの。
社交界でわざと暴走魔法を繰り出すような女性だとは思えないのだけど。
「……嫌がらせを受けても強く立つ姿がな…その」
そっちか。
あれ、それってオルネッラが嫌がらせにあっていたということ?
そんな話は1度もオリアーナから聴いてないし、落ち込んだ様子も見たとか言ってなかったはずだ。
私がそんな顔をしていたのだろう、ディエゴが言葉を足してくる。
「嫌がらせは俺の知る範囲ではなかったさ……その、いつも堂々として明るくて、華があって美しい女性が彼女だ」
「好きなんだね」
「ああ………っ!」
私の言葉に素直に頷いたと思ったら、自分の応えに時間差で気づいた。
今日はデレが多いことで。
やっぱり目当てのオルネッラに会えてるから割増しのデレタイムだ。
照れて赤くなるなんて素直過ぎて可愛い事この上ない。
ありがとう、オルネッラ。
いつか是非お礼を言わせてほしい、グッジョブと。
「あ、告白は?しないの?」
「ああ、そうだな………」
「………」
「……」
「……」
「……なんでお前がいる」
「え、いちゃだめですか」
「………」
「……出ます」
鋭く睨まれたので渋々部屋を後にした。
練習とはいえ告白の現場を隣で見てる人物がいたら気まずいか…ディエゴ照れ屋ぽいから尚更かな。
出来れば間近で見ていたかったけど仕方ない。
するりと部屋を出て、音を立てずゆっくり開けて中の様子を見た。
ディエゴがオルネッラを見下ろしている。
ええい、そのままキスの1つぐらいしてしまえ。
「チアキ…他人の告白する様子を見るのはどうかと」
「だって空前のデレタイムだよ!?そんなおいしいとこ見逃せない!」
ディエゴに聞こえないようオリアーナに囁くとオリアーナが溜息を吐いた。
あ、そもそも付き合っていない男女を2人きりにするのはこの世界的にいいのか?
オリアーナがこんなだから今きくとこではない感じだし、止めもしないから大丈夫だろうか。
そんなことを考えていたら、オリアーナが呆れたような視線をこちらに向けてくる。
そして一言。
「覗いて見る行為は罪では?」
「うぐうっ…」
痛いよ、オリアーナ。
言葉がいつになく強いよオリアーナ。
見れば、呆れと軽蔑が混ざっている…これは本格的に怒らせたな。
「姉が覗かれているのは、妹としても気分の良いものではありません」
「大変申し訳ございません」
その場で土下座した。
にしても結構気持ちを言葉にするのが上手になってきた。
可愛いなあ、でも今それ言ったら顰蹙だから飲み込んでおこう。
「お、お嬢様?!」
おっと犬に土下座してるの見られた。
適当にはぐらかしつつ、アンナさんに向き合う。
「どうしました?」
「…お客様が」
今日そんなに人と約束してた記憶がありませんよ。
「?」
「…おい!どうした!?」
「……わあイケメェン」
至近距離にすっごいイケメンの顔が広がっている。
いつのイベントだ?保管ボタンを押さねば。
「おい?!聞こえてるのか!?」
「……あれ?」
イケメンはディエゴだ。
至近距離なのもおいしいけど、なんでそんなに焦っているのか。
よくよく自分の状況を見れば、彼に抱えられ床から半分起こされている。
「あれ、私倒れた?」
「……その様子なら大丈夫そうだな」
どれぐらい意識を飛ばした?
それ以前に前触れもなく倒れるなんておかしい。
このオリアーナの身体は日々の食事と運動でとても健全なものにしているもの。
静かに驚いていると、ディエゴ同様私の近くに来ていたオリアーナが、少し焦った様子で教えてくれた。
「チアキが姉に手を伸ばした時、勢いよくベッドに倒れ、そのまま床に」
「そう…」
この部屋に初めて入った時も急な眩暈に襲われたな。
ここ何かあるんじゃないだろうな…罠的な魔法とか…いやそれなら私もディエゴも倒れるか。
私だけに作用する魔法…それなら何度かこちらに来てた時何もなかった理由にもならない。
誰かがこっそりそんな罠のような魔法をタイミングよく仕掛けられるのか疑問もある。
「どうした?まだ調子が戻らないか?」
「あ、いえ、大丈夫、です」
「そうか…起こすぞ」
ディエゴが本当に心配してくれている。
こんなに紳士に優しく起こしてくれるなんて…これが黄金比最高峰のデレなの?
今までツンだった分、本当効果割増しで癒しの作用が起きている。
さっきまで考えてた疑心とか不安とかどっかいってしまうな、これは。
「侍女を呼ぼう」
「え、いや、それはダメ、です!」
「…何故だ」
「いえ、大したものじゃありませんので…」
事を大きくするものでもない。
何度も大丈夫であることを伝え、渋々といった具合でディエゴはこの事を内密なものとしてくれた。
余程勢いよく倒れたんだろうな…。
「本当に仕様がなかった時は申し出ます」
「…そうか」
嫌味もなくツンもないあたり、本当に驚いたんだろう。
私もあんな急なブラックアウトは初めての経験だし、オリアーナにそういった持病はないと本人からも聴いている。
もう少し睡眠の質を考えていくことにしようか。
「そういえば、オルネッラとディエゴは仲が良かったの、ですか?」
「……なんだ突然」
「気になって」
「……」
「………」
「……親交は深くない、が、彼女は小さい頃から俺にとっての憧れだ」
「へえ」
「………なんだその顔は」
また緩んでた。
でもディエゴは私のその顔をからかうためにわざとやっていると思ったようだった…危ない。
「事故があってから会う1歩が踏み出せなかったが…不思議なものだな」
「うん?」
こんなにも簡単に来れるなんて、とディエゴ。
事故後、何度かここに見舞いに来ようと思ってはいたようだ。
けど結局出来なかった。
「何故今日?」
「…昨日のお前を見て彼女を思い出した」
あの暴走ぶりをですか…オルネッラってどういう女性だったの。
社交界でわざと暴走魔法を繰り出すような女性だとは思えないのだけど。
「……嫌がらせを受けても強く立つ姿がな…その」
そっちか。
あれ、それってオルネッラが嫌がらせにあっていたということ?
そんな話は1度もオリアーナから聴いてないし、落ち込んだ様子も見たとか言ってなかったはずだ。
私がそんな顔をしていたのだろう、ディエゴが言葉を足してくる。
「嫌がらせは俺の知る範囲ではなかったさ……その、いつも堂々として明るくて、華があって美しい女性が彼女だ」
「好きなんだね」
「ああ………っ!」
私の言葉に素直に頷いたと思ったら、自分の応えに時間差で気づいた。
今日はデレが多いことで。
やっぱり目当てのオルネッラに会えてるから割増しのデレタイムだ。
照れて赤くなるなんて素直過ぎて可愛い事この上ない。
ありがとう、オルネッラ。
いつか是非お礼を言わせてほしい、グッジョブと。
「あ、告白は?しないの?」
「ああ、そうだな………」
「………」
「……」
「……」
「……なんでお前がいる」
「え、いちゃだめですか」
「………」
「……出ます」
鋭く睨まれたので渋々部屋を後にした。
練習とはいえ告白の現場を隣で見てる人物がいたら気まずいか…ディエゴ照れ屋ぽいから尚更かな。
出来れば間近で見ていたかったけど仕方ない。
するりと部屋を出て、音を立てずゆっくり開けて中の様子を見た。
ディエゴがオルネッラを見下ろしている。
ええい、そのままキスの1つぐらいしてしまえ。
「チアキ…他人の告白する様子を見るのはどうかと」
「だって空前のデレタイムだよ!?そんなおいしいとこ見逃せない!」
ディエゴに聞こえないようオリアーナに囁くとオリアーナが溜息を吐いた。
あ、そもそも付き合っていない男女を2人きりにするのはこの世界的にいいのか?
オリアーナがこんなだから今きくとこではない感じだし、止めもしないから大丈夫だろうか。
そんなことを考えていたら、オリアーナが呆れたような視線をこちらに向けてくる。
そして一言。
「覗いて見る行為は罪では?」
「うぐうっ…」
痛いよ、オリアーナ。
言葉がいつになく強いよオリアーナ。
見れば、呆れと軽蔑が混ざっている…これは本格的に怒らせたな。
「姉が覗かれているのは、妹としても気分の良いものではありません」
「大変申し訳ございません」
その場で土下座した。
にしても結構気持ちを言葉にするのが上手になってきた。
可愛いなあ、でも今それ言ったら顰蹙だから飲み込んでおこう。
「お、お嬢様?!」
おっと犬に土下座してるの見られた。
適当にはぐらかしつつ、アンナさんに向き合う。
「どうしました?」
「…お客様が」
今日そんなに人と約束してた記憶がありませんよ。
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