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58話 ラッキースケベ(全部乗せ広範囲無差別テロ)
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「え、カーリー?」
弟が来ていた。
「うそ、どうして」
「第三王太子殿下からお誘い頂きました」
本来は父と母も同席をとのことだったけど、家族を代表して弟だけ来たらしい。身の安全は守り、きちんと島に送り返すを条件に護衛を人よりも多くつけて参加したと。
「第三王太子殿下、此度はお誘い頂き有難う存じます」
「ああ畏まらなくていい。イリニ」
「うん」
「少し二人で話しているといい」
「いいの?」
「父上が来てから挨拶回りをすればいい。いや、君が嫌ならそれもなしに帰るでも構わないから」
挨拶回りはしてもいいと思うけどな?
もっとも、今の私に話しかけられる人間がいればだけど。なんていっても魔王なので。
「では」
エフィはカーリーに一言添えて離れていった。カロがすぐに近づいて、進む先を見やれば庭先に彼の指揮下にある騎士団の面々が控えているのが見えた。
「こんな日ですらお仕事かあ」
「騎士団の面々も第三王太子殿下に久しぶりに会えて嬉しいのでは?」
「それもそうだね」
弟と二人になり、壁際で話をする。
周囲は最初ちらちら視線を寄越していたけど、すぐにこちらの様子を窺うことはしなくなった。
エフィが仕事したっぽいなと思いつつ、カーリーに今までの家族について詳しくきくことができた。
「お父様もお母様も元気でよかった」
「むしろ生き生きしてる」
島へのアプローチは何回かあったらしいけど、いずれも撃退していたら噂を聞きつけてかこなくなったとか。今では静かに過ごせているらしい。
使用人たちの安全も確保して、今では独自に貿易始めているとか聞いた日には私の両親タフねと思わざるを得なかった。
「今回は姉様が正式なシコフォーナクセー国民になったって聞いて、さすがに外せないかと思って僕が」
「それねー」
「後、婚約の話は本当?」
「あははは」
「?」
噂の婚約については両親はよかったねぐらいにしか思ってないらしい。侯爵家にありながら、家同士のつながりとか政略結婚とか興味まるでない人たちだからなあ。にしても元婚約者とピラズモス男爵令嬢に言った発言がどうしてそこまで広まっているのか疑問。
結婚の話でエフィを思い出して探してみると、中庭から戻って来ていて、ほぼ対面の壁際にいるのを見つける。
その周りには複数の御令嬢。
あー、よりにもよってそんな状況のエフィを見る羽目になるの。
「姉様、なに見て……ああ第三王太子殿下」
「違、そんなんじゃなくて」
「相変わらずモテるんだ」
「相変わらず?」
カーリーってば知った風な感じで言うけど、なんで?
「シコフォーナクセーの第三王太子殿下といえば、アプローチすれば即オッケーもらえるって貴族院で有名で」
「おっふ」
「けど、いつだったか……在学中にぴたっとそういうの止めたとか聞いたかな」
「やめたの?」
「ええ、そこからは誰の誘いも受けなくなって、何があったのかと随分話題になったから」
エフィの女性遊びが有名だった件。
確かにエフィも言ってた。付き合うならどうこうって。で、その為にもう遊んでないって。
「今殿下を囲んでいる女性達は確かお付き合いしたことある方々かな?」
「カーリー情報通すぎ」
「はは、王太子殿下となればそういう話はすぐ広まるし」
「そっかあ」
「姉様は聖女としての勤めで忙しかったでしょうし、こういう恋の話は疎遠だったから」
確かにエンタメ系は疎かった。政治経済福祉教育の方が力入れてやってたかも。
恋バナだってしたことなかったし。
「私、エフィのこと全然知らないなあ」
「エフィ……第三王太子殿下のこと?」
「あ」
いっけない、公共の場だから愛称で呼ばないようにしなきゃだったのに。
周囲を見回すけど、私とカーリーの会話が聞かれてないようだった。よかった。
「姉様が彼を城にいれてるのは知ってけど……」
そうか姉様もとなにやら一人でブツブツ言い始めた。たまに独り言付きで考え込むことあるよね、我が弟よ。
そんなカーリーを横目にしつつエフィを見やる。
にこやかな笑顔で対応してるエフィ。女性陣はそれぞれエフィ目当てっていうのが分かりやすいくらい伝わってくる。いずれも良い家柄の女性陣。王妃教育だって受けているだろう、妃候補の令嬢たちだ。
「エフィ……」
距離は保っているようだけど、対応が笑顔だからか、久しぶりの社交だからか、女性陣にひく気はなさそう。
あー、ピラズモス男爵令嬢の時もだけど、見ていて良い気持ちはしないかな。
というか、エスコートしてくれるって言ったのに。違う女性たちと立ってるってなんなの。
「な、なんだ?」
「え?」
女性の短い悲鳴に顔を向けると、大変なことが起きようとしていた。
誰かが手にしたお酒をこぼしたのが始まりなんだろう、奥の方から服を濡らす人、濡れた床で転んで服が乱れた人、服が破けた人もいる。ご夫婦によっては転んだ拍子に押し倒してるのも。
「ん? 何が?」
「うわあ」
これはかなりやばいラッキースケベだ。
弟が来ていた。
「うそ、どうして」
「第三王太子殿下からお誘い頂きました」
本来は父と母も同席をとのことだったけど、家族を代表して弟だけ来たらしい。身の安全は守り、きちんと島に送り返すを条件に護衛を人よりも多くつけて参加したと。
「第三王太子殿下、此度はお誘い頂き有難う存じます」
「ああ畏まらなくていい。イリニ」
「うん」
「少し二人で話しているといい」
「いいの?」
「父上が来てから挨拶回りをすればいい。いや、君が嫌ならそれもなしに帰るでも構わないから」
挨拶回りはしてもいいと思うけどな?
もっとも、今の私に話しかけられる人間がいればだけど。なんていっても魔王なので。
「では」
エフィはカーリーに一言添えて離れていった。カロがすぐに近づいて、進む先を見やれば庭先に彼の指揮下にある騎士団の面々が控えているのが見えた。
「こんな日ですらお仕事かあ」
「騎士団の面々も第三王太子殿下に久しぶりに会えて嬉しいのでは?」
「それもそうだね」
弟と二人になり、壁際で話をする。
周囲は最初ちらちら視線を寄越していたけど、すぐにこちらの様子を窺うことはしなくなった。
エフィが仕事したっぽいなと思いつつ、カーリーに今までの家族について詳しくきくことができた。
「お父様もお母様も元気でよかった」
「むしろ生き生きしてる」
島へのアプローチは何回かあったらしいけど、いずれも撃退していたら噂を聞きつけてかこなくなったとか。今では静かに過ごせているらしい。
使用人たちの安全も確保して、今では独自に貿易始めているとか聞いた日には私の両親タフねと思わざるを得なかった。
「今回は姉様が正式なシコフォーナクセー国民になったって聞いて、さすがに外せないかと思って僕が」
「それねー」
「後、婚約の話は本当?」
「あははは」
「?」
噂の婚約については両親はよかったねぐらいにしか思ってないらしい。侯爵家にありながら、家同士のつながりとか政略結婚とか興味まるでない人たちだからなあ。にしても元婚約者とピラズモス男爵令嬢に言った発言がどうしてそこまで広まっているのか疑問。
結婚の話でエフィを思い出して探してみると、中庭から戻って来ていて、ほぼ対面の壁際にいるのを見つける。
その周りには複数の御令嬢。
あー、よりにもよってそんな状況のエフィを見る羽目になるの。
「姉様、なに見て……ああ第三王太子殿下」
「違、そんなんじゃなくて」
「相変わらずモテるんだ」
「相変わらず?」
カーリーってば知った風な感じで言うけど、なんで?
「シコフォーナクセーの第三王太子殿下といえば、アプローチすれば即オッケーもらえるって貴族院で有名で」
「おっふ」
「けど、いつだったか……在学中にぴたっとそういうの止めたとか聞いたかな」
「やめたの?」
「ええ、そこからは誰の誘いも受けなくなって、何があったのかと随分話題になったから」
エフィの女性遊びが有名だった件。
確かにエフィも言ってた。付き合うならどうこうって。で、その為にもう遊んでないって。
「今殿下を囲んでいる女性達は確かお付き合いしたことある方々かな?」
「カーリー情報通すぎ」
「はは、王太子殿下となればそういう話はすぐ広まるし」
「そっかあ」
「姉様は聖女としての勤めで忙しかったでしょうし、こういう恋の話は疎遠だったから」
確かにエンタメ系は疎かった。政治経済福祉教育の方が力入れてやってたかも。
恋バナだってしたことなかったし。
「私、エフィのこと全然知らないなあ」
「エフィ……第三王太子殿下のこと?」
「あ」
いっけない、公共の場だから愛称で呼ばないようにしなきゃだったのに。
周囲を見回すけど、私とカーリーの会話が聞かれてないようだった。よかった。
「姉様が彼を城にいれてるのは知ってけど……」
そうか姉様もとなにやら一人でブツブツ言い始めた。たまに独り言付きで考え込むことあるよね、我が弟よ。
そんなカーリーを横目にしつつエフィを見やる。
にこやかな笑顔で対応してるエフィ。女性陣はそれぞれエフィ目当てっていうのが分かりやすいくらい伝わってくる。いずれも良い家柄の女性陣。王妃教育だって受けているだろう、妃候補の令嬢たちだ。
「エフィ……」
距離は保っているようだけど、対応が笑顔だからか、久しぶりの社交だからか、女性陣にひく気はなさそう。
あー、ピラズモス男爵令嬢の時もだけど、見ていて良い気持ちはしないかな。
というか、エスコートしてくれるって言ったのに。違う女性たちと立ってるってなんなの。
「な、なんだ?」
「え?」
女性の短い悲鳴に顔を向けると、大変なことが起きようとしていた。
誰かが手にしたお酒をこぼしたのが始まりなんだろう、奥の方から服を濡らす人、濡れた床で転んで服が乱れた人、服が破けた人もいる。ご夫婦によっては転んだ拍子に押し倒してるのも。
「ん? 何が?」
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これはかなりやばいラッキースケベだ。
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