44 / 82
44話 山の城に戻ってもラッキースケベ
しおりを挟む
「お風呂いこ~」
朝風呂もいいよねと思いつつ足を進める。
無事イディッソスコ山の城に戻れた。
シコフォーナクセー王城をなんなく出て。
まあ別れ際に両陛下がパリピ状態でオールしたいパーティーしたいって泣いて喚いていたのは困ったけど。
次またパーティーしようねって言えば招待状出すって張り切ってたな。
「……」
もう一つ驚いたのはエフィの所在。
お別れかなと思ったらあっさりエフィがついてきた。
別れの挨拶の時に両陛下にもきいたけど、別にいいよな軽いノリだし、エフィは当たり前だろな感じで肩透かしだ。
なんだか行きはとても深刻だった気がしたんだけど、終わるとえらい軽くない?
まあこれでシコフォーナクセー側から二個師団とかで攻めてくることもなさそうだからいいんだけど。元々はエフィが二度と魔力枯渇状態にならないでほしいと思ってたからやったことだし。
「それに、いつかはお別れだしね」
先延ばしになっただけだ。むしろ今もこうして一緒に居続けると、その時に耐えられなくなりそう。想像しただけで苦しいんだから現実起きたら耐えられない。
最初はエフィのいない城なんて考えられなかったのに、苦しくなるから一緒は嫌とかおかしい話だなあ。
「はあ……」
「ん?」
がらっとお風呂場のドアをあける。ちなみにお風呂は引き戸だったり。
いやまって、そんなことより、あっれ、うそ。
「え?」
「ごめ」
ピシャッとしめる。
やばいやばい。男子湯開けちゃったじゃん。なんで仲良く男三人でお風呂入ってるの。
あがってきたばかりでなにも着てなかった。タオルとかで隠してくれてありがとう。本当危なかったわ。
「逃げよ」
ダッシュを決め込むと扉越しにエフィ服着ろと叫ぶアステリの声が聞こえた。
真っ裸で出てくるとか恐怖。やめて。
「イリニ」
「うそ」
目の前に現れた。
避けきれず私からエフィに抱きつくみたいになっちゃって辛い。こんなはずでは。
エフィったらわざわざハグするだけのために転移使ったの? そこまでする?
「よし」
「っ」
王都デートから手玉にとられてる感がする。
あの後のデートだって勝手知ったる王都の街の人気スポットから穴場までスマートにエスコートしてくれた。案内されたご飯もおいしかったしなあ。渋谷交差点候補まで見せてくれたし、私が行きたい場所を言えば喜んでって感じで、終始エフィは笑顔だった気がする。ラッキースケベを理由に手は離してくれなかったけど、余裕をもって楽しそうにしてるエフィを見てて無性にどきどきする時があった。
あの日からエフィは随分余裕の体でいる気がする。
「つめた」
「ああ乾かさないとな」
乾かしてない髪から雫が落ちて私の旋毛に当たった。
見上げたら、さらにもう一滴頬にかかる。
「うわあ」
「?」
かろうじて服着てくれたのはありがたいけど、急いでいたのかややはだけ気味に着ている。
濡れた髪はもちろん頬も少し濡れてて、ああもうお風呂上がりの上気して赤みを帯びた顔は反則でしょ。
見るんじゃなかった。
「エフィえろいひどい」
「はあ?」
さっき一瞬見た姿思い出しちゃう。
意外と身体鍛えててすごかったなあ、いやちがう。やめよう恥ずかしい。
片手で私を抱き込んで、あいた片手を口元に持ってきて、ふむと考えるエフィ。
「イリニ」
「なに」
「髪を乾かしてくれ」
「なんでそうなるの」
魔法使えばいいじゃんって言っても聞いてくれなかった。
そのままエフィの部屋に連れていかれる。扉は開けっ放しにしてるけど、未婚の男女が二人しかも片方湯上りなんて状況あんまりよろしくないと思う。
そして妙にいそいそしながらバスタオル持ってくるエフィ。いいよって返事してないのに、なんでそんなに期待に満ちた顔をするの。やるの決定項なわけ?
「私、エフィの侍女じゃないんだけど」
「こうしてれば淋しくないだろ」
「ぐぐ」
理由をきかれなかったからよかったけど、淋しいのを逆手にとられてるみたいで癪。
溜め息一つ、エフィの座るソファを回り込んで後ろからバスタオルを頭にかけた。
「淋しいのを紛らわせるのはもっと違う方法がいい」
「それを言い出したらハグだって駄目だろ」
専属じゃなきゃいいんだけど、と思って言わなかった。またエフィが駄々こねかねない。
「エフィって甘えたさんだよねー」
おや、エフィてば頭の形きれい。バスタオル越しでもよく分かる。
「そんなことはない」
「ええ?」
「これはイリニのためにやってるだけで」
「ふうん?」
さっきいそいそしながら髪の毛拭かれにきたくせに。
「ほら、もういいから座って」
「まだ終わってないよ?」
「茶はあたたかい内がいいだろう」
エフィは自分でお茶をいれる。
曰く、毒を盛られたりすることが多かったから、食器から茶葉まで自分で用意するようになったらしい。
王族って大変だねと思いつつ、私はエフィのお茶を楽しみにしていたりする。
とても美味しくいれてくれるから。
「ほら」
「ん」
当たり前のように出される。
さっきは私が侍女みたいなことしてたけど、今度はエフィが侍従みたいなことしてるな。
基本自分のことは自分でやるのがこの城のルールだから、エフィが生活面で一人でできてよかった。王太子レベルって侍女侍従数人侍らして着替えするとかそういうイメージだったけど、シコフォーナクセーでは存外自立してもらう方針らしい。パリピ、グッジョブ。
「ん、おいし」
「そうか」
本当においしいからなあ、癖になりそう。そしてエフィは私の言葉にとても満足そうに笑うようになった。以前は以前でそわそわしてたけど。
エフィはこう見えて、結構お茶を飲むのが好きなんだろうな。
結構な頻度で誘われる。最近はシコフォーナクセーの新しい茶葉が出ればすぐに取り寄せるし。
でもだからってハグ係専属の件を許したわけじゃないんだから。
朝風呂もいいよねと思いつつ足を進める。
無事イディッソスコ山の城に戻れた。
シコフォーナクセー王城をなんなく出て。
まあ別れ際に両陛下がパリピ状態でオールしたいパーティーしたいって泣いて喚いていたのは困ったけど。
次またパーティーしようねって言えば招待状出すって張り切ってたな。
「……」
もう一つ驚いたのはエフィの所在。
お別れかなと思ったらあっさりエフィがついてきた。
別れの挨拶の時に両陛下にもきいたけど、別にいいよな軽いノリだし、エフィは当たり前だろな感じで肩透かしだ。
なんだか行きはとても深刻だった気がしたんだけど、終わるとえらい軽くない?
まあこれでシコフォーナクセー側から二個師団とかで攻めてくることもなさそうだからいいんだけど。元々はエフィが二度と魔力枯渇状態にならないでほしいと思ってたからやったことだし。
「それに、いつかはお別れだしね」
先延ばしになっただけだ。むしろ今もこうして一緒に居続けると、その時に耐えられなくなりそう。想像しただけで苦しいんだから現実起きたら耐えられない。
最初はエフィのいない城なんて考えられなかったのに、苦しくなるから一緒は嫌とかおかしい話だなあ。
「はあ……」
「ん?」
がらっとお風呂場のドアをあける。ちなみにお風呂は引き戸だったり。
いやまって、そんなことより、あっれ、うそ。
「え?」
「ごめ」
ピシャッとしめる。
やばいやばい。男子湯開けちゃったじゃん。なんで仲良く男三人でお風呂入ってるの。
あがってきたばかりでなにも着てなかった。タオルとかで隠してくれてありがとう。本当危なかったわ。
「逃げよ」
ダッシュを決め込むと扉越しにエフィ服着ろと叫ぶアステリの声が聞こえた。
真っ裸で出てくるとか恐怖。やめて。
「イリニ」
「うそ」
目の前に現れた。
避けきれず私からエフィに抱きつくみたいになっちゃって辛い。こんなはずでは。
エフィったらわざわざハグするだけのために転移使ったの? そこまでする?
「よし」
「っ」
王都デートから手玉にとられてる感がする。
あの後のデートだって勝手知ったる王都の街の人気スポットから穴場までスマートにエスコートしてくれた。案内されたご飯もおいしかったしなあ。渋谷交差点候補まで見せてくれたし、私が行きたい場所を言えば喜んでって感じで、終始エフィは笑顔だった気がする。ラッキースケベを理由に手は離してくれなかったけど、余裕をもって楽しそうにしてるエフィを見てて無性にどきどきする時があった。
あの日からエフィは随分余裕の体でいる気がする。
「つめた」
「ああ乾かさないとな」
乾かしてない髪から雫が落ちて私の旋毛に当たった。
見上げたら、さらにもう一滴頬にかかる。
「うわあ」
「?」
かろうじて服着てくれたのはありがたいけど、急いでいたのかややはだけ気味に着ている。
濡れた髪はもちろん頬も少し濡れてて、ああもうお風呂上がりの上気して赤みを帯びた顔は反則でしょ。
見るんじゃなかった。
「エフィえろいひどい」
「はあ?」
さっき一瞬見た姿思い出しちゃう。
意外と身体鍛えててすごかったなあ、いやちがう。やめよう恥ずかしい。
片手で私を抱き込んで、あいた片手を口元に持ってきて、ふむと考えるエフィ。
「イリニ」
「なに」
「髪を乾かしてくれ」
「なんでそうなるの」
魔法使えばいいじゃんって言っても聞いてくれなかった。
そのままエフィの部屋に連れていかれる。扉は開けっ放しにしてるけど、未婚の男女が二人しかも片方湯上りなんて状況あんまりよろしくないと思う。
そして妙にいそいそしながらバスタオル持ってくるエフィ。いいよって返事してないのに、なんでそんなに期待に満ちた顔をするの。やるの決定項なわけ?
「私、エフィの侍女じゃないんだけど」
「こうしてれば淋しくないだろ」
「ぐぐ」
理由をきかれなかったからよかったけど、淋しいのを逆手にとられてるみたいで癪。
溜め息一つ、エフィの座るソファを回り込んで後ろからバスタオルを頭にかけた。
「淋しいのを紛らわせるのはもっと違う方法がいい」
「それを言い出したらハグだって駄目だろ」
専属じゃなきゃいいんだけど、と思って言わなかった。またエフィが駄々こねかねない。
「エフィって甘えたさんだよねー」
おや、エフィてば頭の形きれい。バスタオル越しでもよく分かる。
「そんなことはない」
「ええ?」
「これはイリニのためにやってるだけで」
「ふうん?」
さっきいそいそしながら髪の毛拭かれにきたくせに。
「ほら、もういいから座って」
「まだ終わってないよ?」
「茶はあたたかい内がいいだろう」
エフィは自分でお茶をいれる。
曰く、毒を盛られたりすることが多かったから、食器から茶葉まで自分で用意するようになったらしい。
王族って大変だねと思いつつ、私はエフィのお茶を楽しみにしていたりする。
とても美味しくいれてくれるから。
「ほら」
「ん」
当たり前のように出される。
さっきは私が侍女みたいなことしてたけど、今度はエフィが侍従みたいなことしてるな。
基本自分のことは自分でやるのがこの城のルールだから、エフィが生活面で一人でできてよかった。王太子レベルって侍女侍従数人侍らして着替えするとかそういうイメージだったけど、シコフォーナクセーでは存外自立してもらう方針らしい。パリピ、グッジョブ。
「ん、おいし」
「そうか」
本当においしいからなあ、癖になりそう。そしてエフィは私の言葉にとても満足そうに笑うようになった。以前は以前でそわそわしてたけど。
エフィはこう見えて、結構お茶を飲むのが好きなんだろうな。
結構な頻度で誘われる。最近はシコフォーナクセーの新しい茶葉が出ればすぐに取り寄せるし。
でもだからってハグ係専属の件を許したわけじゃないんだから。
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる