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42話 デート中のラッキースケベ
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「いっちゃん、久しぶりだな!」
「こんにちは、急にすみません」
技術屋さんの工房に着いた。
いっちゃん呼びにエフィが「またいっちゃん」と小さく反復していた。
いっちゃん呼びになにか思うところがあるのだろうか。言い訳しとこ。
「最初に来たとき、素性ばれたくなくて」
結局ばれてるけど。
「最初はなんだとは思ったけどなあ」
どうやら早い段階で気づいていたけど、配慮してくださりなかったことにしていたらしい。
本当ありがたい話。そして私の誤魔化し下手よ。
「いっちゃん」
「あ、こんにちは」
技術屋さんが次から次へと集まって来る。
「そいや、キャンプギアと釣り道具、量産することになった」
「あと、なんだ? ばーべきゅーこんろつーの作ることになったな」
「焚火台もだっけか?」
パリピが乗り気になったから、許可が出たよう。
湖の村とコラボして庶民の娯楽としてキャンプを流行らせるつもりらしい。
「いっちゃんの発案だそうだな」
「え?」
「王様に提案したって。新聞にも載ったぞ」
昨日の今日だよ? さすが王陛下と言うべき? 私の印象をよくしようとしてくれたとか、自身の転移経験を知られない為とか理由はいくらか推定できるし、国内経済の発展に乗り出したのかなとも捉えられるけど、真実どこかな? にしても、なんて出来る人。パリピ的に言うなら、しごできがすぎる。
「いっちゃんはこれからどうなるんだ?」
「それなんですけど」
皆さんのおかげで山の城にいられること、シコフォーナクセー国民になれたことを伝えた。
「ありがとうございます」
「まーおれたち嘆願書書いただけだからな?」
「王陛下が納得するようなものを書いてくれたのは皆さんですし」
「王様守銭奴だから儲かる話もってけば大概オッケーだぜ?」
「まじか」
パリピちょろいな。
「てかデートなのにこっち寄ってくれたんだよな?」
すまんなと言われる。
デート、なのかな?
エフィは他の技術屋さんと話してて聞こえてなさそう。
「デート?」
「一緒にあの城に住んでるんだろ?」
「ええ、まあ」
「こっちではいっちゃんと第三王太子殿下が結婚するってのが通説だぜ?」
「そこは王陛下が望まれてましたからねえ」
山の城に帰れるとなったらどうなるんだろ。あれ、エフィ帰れるんだっけ? 聞いたっけ? パリピのノリが濃すぎて思い出せない。
「そっちよりも魔王になってる方がおれは気になる」
「まあ魔王してますね」
「最近も雷すごかったし、二個師団倒したとか聞いたぜ? いっちゃん強えな」
「ははは」
王太子同士のやりあいはさすがに揉み消されたのかな? 継承問題にも絡むからそういうとこは慎重に扱われるのはどの国も同じね。ちょうどよく身代わりに聖女な魔王がいるわけだし。私としては、そういうとこでエフィの役に立てれば嬉しいし。
「第三王太子殿下はよく王都をまわってくれてるな」
「エフィが?」
「王都の人間とはほぼ全員と顔合わせてるんじゃねえかな?」
「エフィすごいんだ」
「まめだな」
聖女の利用を天秤にかけて悩む程だ。
エフィにとってこの国と民はとても大事ということ。
「エフィ、この国が好きなのね」
王太子としては花丸もの。
「でもよかったなあ」
「なにがです?」
「いっちゃんが第三王太子殿下と一緒になれば安心だろ?」
「え?」
「だな。本命らしい本命ずっといなかったし」
「え?」
「浮いた話もこれっぽちもなかったしな」
「え?」
うーん、なんだか否定できない雰囲気。技術屋さんたちがエフィのことを好きなのが伝わってきて、純粋によかったよかったみたいに言われると結婚の話なんてないんですよとは言えなかった。
あと、エフィ昔遊んでたんですよとも言えない。そういう情報ももみ消されてるのかな。
「今日一緒に来た時は驚いたけどな?」
「殿下肩の力抜けてていい具合だよな~。顔つきも良くなった」
「へえ?」
王太子殿下として成長しているのか。その内この国を担うなら当然のことなのだろうけど、エフィは立派ね。
なんだか少し距離を感じる。私はそういった堅苦しいことを捨ててきたから。
「いっちゃん?」
「あ、えと、なんです?」
「いや、んー、そうだなあヤブヘビか?」
「?」
私が聖女を辞めて隠居生活をすることになったら、エフィには簡単には会えなくなる。王にならなくても、そこに近い立場になるだろうから、シコフォーナクセーに訪問しても気軽に会えない。
いつかくる別れの日を想像したら、胸の内側が痛くなった。心の準備だけはしておかないとな。
「イリニ」
エフィが呼ぶ。
一瞬瞳の色が蕩けたものだから、また胸が無駄に締め付けられる。
気を取り直してエフィに駆け寄った。
「エ、ふぉっ」
「イリニ?!」
滑ってバランスを崩した。
それをエフィが助けようと進んで、なぜかエフィの足も滑る。
私をなんとか抱き止めたけど、後ろに重心が傾いてしまった。
「くっ」
すごいエフィ踏ん張った。
感心しそうになったとこで残念なことにエフィの足に猫が突撃してきた。
なんでここで猫?
倒れろって? 一緒に倒れるのが運命みたいな?
「いっちゃん?!」
「殿下、御無事で?!」
私はエフィのおかげで痛くはなかったけど、エフィはお尻から転んだから痛そう。
「っう」
「エフィ、大丈、っ!」
「!」
抱き止められた形なら、私の手がエフィの胸に触れてるのは仕方ない。揉んでないからセーフ。
まあしいていうなら、私の太ももががっつりエフィの足の間に入って、あろうことか件の場所をぐりぐりしちゃったことだ。
服越しでも触れるものじゃない。
「こんにちは、急にすみません」
技術屋さんの工房に着いた。
いっちゃん呼びにエフィが「またいっちゃん」と小さく反復していた。
いっちゃん呼びになにか思うところがあるのだろうか。言い訳しとこ。
「最初に来たとき、素性ばれたくなくて」
結局ばれてるけど。
「最初はなんだとは思ったけどなあ」
どうやら早い段階で気づいていたけど、配慮してくださりなかったことにしていたらしい。
本当ありがたい話。そして私の誤魔化し下手よ。
「いっちゃん」
「あ、こんにちは」
技術屋さんが次から次へと集まって来る。
「そいや、キャンプギアと釣り道具、量産することになった」
「あと、なんだ? ばーべきゅーこんろつーの作ることになったな」
「焚火台もだっけか?」
パリピが乗り気になったから、許可が出たよう。
湖の村とコラボして庶民の娯楽としてキャンプを流行らせるつもりらしい。
「いっちゃんの発案だそうだな」
「え?」
「王様に提案したって。新聞にも載ったぞ」
昨日の今日だよ? さすが王陛下と言うべき? 私の印象をよくしようとしてくれたとか、自身の転移経験を知られない為とか理由はいくらか推定できるし、国内経済の発展に乗り出したのかなとも捉えられるけど、真実どこかな? にしても、なんて出来る人。パリピ的に言うなら、しごできがすぎる。
「いっちゃんはこれからどうなるんだ?」
「それなんですけど」
皆さんのおかげで山の城にいられること、シコフォーナクセー国民になれたことを伝えた。
「ありがとうございます」
「まーおれたち嘆願書書いただけだからな?」
「王陛下が納得するようなものを書いてくれたのは皆さんですし」
「王様守銭奴だから儲かる話もってけば大概オッケーだぜ?」
「まじか」
パリピちょろいな。
「てかデートなのにこっち寄ってくれたんだよな?」
すまんなと言われる。
デート、なのかな?
エフィは他の技術屋さんと話してて聞こえてなさそう。
「デート?」
「一緒にあの城に住んでるんだろ?」
「ええ、まあ」
「こっちではいっちゃんと第三王太子殿下が結婚するってのが通説だぜ?」
「そこは王陛下が望まれてましたからねえ」
山の城に帰れるとなったらどうなるんだろ。あれ、エフィ帰れるんだっけ? 聞いたっけ? パリピのノリが濃すぎて思い出せない。
「そっちよりも魔王になってる方がおれは気になる」
「まあ魔王してますね」
「最近も雷すごかったし、二個師団倒したとか聞いたぜ? いっちゃん強えな」
「ははは」
王太子同士のやりあいはさすがに揉み消されたのかな? 継承問題にも絡むからそういうとこは慎重に扱われるのはどの国も同じね。ちょうどよく身代わりに聖女な魔王がいるわけだし。私としては、そういうとこでエフィの役に立てれば嬉しいし。
「第三王太子殿下はよく王都をまわってくれてるな」
「エフィが?」
「王都の人間とはほぼ全員と顔合わせてるんじゃねえかな?」
「エフィすごいんだ」
「まめだな」
聖女の利用を天秤にかけて悩む程だ。
エフィにとってこの国と民はとても大事ということ。
「エフィ、この国が好きなのね」
王太子としては花丸もの。
「でもよかったなあ」
「なにがです?」
「いっちゃんが第三王太子殿下と一緒になれば安心だろ?」
「え?」
「だな。本命らしい本命ずっといなかったし」
「え?」
「浮いた話もこれっぽちもなかったしな」
「え?」
うーん、なんだか否定できない雰囲気。技術屋さんたちがエフィのことを好きなのが伝わってきて、純粋によかったよかったみたいに言われると結婚の話なんてないんですよとは言えなかった。
あと、エフィ昔遊んでたんですよとも言えない。そういう情報ももみ消されてるのかな。
「今日一緒に来た時は驚いたけどな?」
「殿下肩の力抜けてていい具合だよな~。顔つきも良くなった」
「へえ?」
王太子殿下として成長しているのか。その内この国を担うなら当然のことなのだろうけど、エフィは立派ね。
なんだか少し距離を感じる。私はそういった堅苦しいことを捨ててきたから。
「いっちゃん?」
「あ、えと、なんです?」
「いや、んー、そうだなあヤブヘビか?」
「?」
私が聖女を辞めて隠居生活をすることになったら、エフィには簡単には会えなくなる。王にならなくても、そこに近い立場になるだろうから、シコフォーナクセーに訪問しても気軽に会えない。
いつかくる別れの日を想像したら、胸の内側が痛くなった。心の準備だけはしておかないとな。
「イリニ」
エフィが呼ぶ。
一瞬瞳の色が蕩けたものだから、また胸が無駄に締め付けられる。
気を取り直してエフィに駆け寄った。
「エ、ふぉっ」
「イリニ?!」
滑ってバランスを崩した。
それをエフィが助けようと進んで、なぜかエフィの足も滑る。
私をなんとか抱き止めたけど、後ろに重心が傾いてしまった。
「くっ」
すごいエフィ踏ん張った。
感心しそうになったとこで残念なことにエフィの足に猫が突撃してきた。
なんでここで猫?
倒れろって? 一緒に倒れるのが運命みたいな?
「いっちゃん?!」
「殿下、御無事で?!」
私はエフィのおかげで痛くはなかったけど、エフィはお尻から転んだから痛そう。
「っう」
「エフィ、大丈、っ!」
「!」
抱き止められた形なら、私の手がエフィの胸に触れてるのは仕方ない。揉んでないからセーフ。
まあしいていうなら、私の太ももががっつりエフィの足の間に入って、あろうことか件の場所をぐりぐりしちゃったことだ。
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