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28話 体液交換、断固拒否
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「体液交換したらエフィもすぐ治るし、いいかなって」
「駄目だ」
「エフィ、私、」
「絶対駄目だ!」
息も絶え絶えだったはずのエフィから驚くぐらいの大きな声。
びくっと肩が鳴った。
「……なんでよ」
「駄目だ! そういうことは……そういうことは、好き合ってる者同士がすることで、こんな、こんな形で……」
なんでエフィが泣きそうになって言うことなの。
あ、そういえば、アステリがエフィには本命がいるって話してた。
「あー、そういうこと」
その本命ちゃんの為にも、ここで私と体液交換なんてしてたまるかと、そういうことね。
「私、責任とれとか言わないから」
「……は?」
「私、聖女の力返したら東の国で隠居したいと思ってて。結婚する気もないし、別にここでエフィとどうなろうと、エフィのこと責めないし見返り求めないから、そう気負わなくていいよ」
「え、ちょ、」
「それよりも、今はエフィが助かることの方が大事でしょ?」
エフィに好きな女性がいるなら尚のことだ。
別に婚前交渉が罪になって裁かれる世界でもないし。
テンプレ通りの流れになるのは思うところがあるけど、アステリ以外で多少なりとも仲良くなった人を放っておくのもできない。
なのに、エフィは頭を振った。
「……駄目だ」
「エフィ」
「駄目だ、帰ってくれ。頼むから」
なに、これ。さっきから全否定じゃん。
「……もおおおおお」
「イリニ?」
私、かなり勇気を出して来て話したのに駄目なの?
助けたいって私の気持ちは有難迷惑とかそういうやつ?
「なんで?! 最初は結婚しようとしてたくせに!」
「そ、それは!」
「分かってる、命令でしょ! 今ここでその命令通りにしたっていいじゃん!」
それともなに? 本命を迎え入れたら離婚?
もしくは書面だけ婚姻して、あとはぽいっとする系?
だから今も私を拒否するってこと?
そういうテンプレももちろんあるけどね!
「もおおおおおお」
「っ」
エフィの胸倉を掴んで引き寄せようとしたけど、思いの外動かなくて仕方ないからこっちから迫った。
驚いてエフィが怯んだ隙に彼の唇を奪う。
エフィの体がびくりと震えた。けどすぐにエフィの手が私の頭の後ろと腰に回され、乱暴にキスを返される。
よし、エフィがその気になった。
これで年齢指定ものテンプレをこなしてエフィが助かるルートになる。
「?」
脳内ガッツポーズ、勝利宣言と思ったら、肩に両手を添えて引き剝がされた。
俯いているからエフィの表情が見えず、きれいな旋毛しか見えない。
息の荒いエフィの肩が何度か上下して、苦しそうに返事が捻りだされた。
「……駄目だ」
ここにきての否定の言葉に私の頭はガンと何かに叩かれたような衝撃を受けた。
そう何度も否定されれば、悲しくもなってくる。私にとって今のエフィは助けたいと思える程には親しみがあるのに、エフィにとってはそうじゃない。
あくまで最初会った時と同じ、ただの保護対象。
「駄目だ。こういうことには、順番があって」
「なに、それ」
ただでさえテンプレ通り理性がガッタガタのゆっるゆるのはずなのに、こんな頑なに拒まれるのってなんなの。
私、そんなに女性としての魅力ないの。
もはや女性じゃないの?
あ、魔王だった。
そっか、魔王は女性じゃないのか、そうか。
「そんなに、嫌なの」
「そうじゃなくて、今は駄目で」
「もうやめてよ」
肩を掴むエフィの手に触れると尋常じゃない熱さだった。
全身高熱で苦しいのに、それでも好きな子の為に私との関係を拒み続けるなんて、どこの純愛もののテンプレキャラなのよ。
「イリニ」
エフィの顔が上がって、近い距離で目が合った。
その困った顔。私が悪いことしてるみたいじゃん。
いや、もうここまできたら私のしてること犯罪かな?
「エフィ」
「イリニ」
「触って、って言っても、だめ?」
これが最後だった。
これ以上はどうしたらエフィがその気になるか分からない。私の精一杯がここまでだ。
真っ直ぐエフィを見つめて、記憶にある限りの年齢指定ものの展開も思い直したけど、私の言葉で言えるのはここまで。
「う、っ」
肩にある指先に力が入るのが分かった。
すると肩を押され、さらに距離が開く。
熱い程の手が離れた。
「駄目だ!」
やっぱり。
私じゃエフィの力になれないし助けられない。
割と頑固というか、理性めちゃくちゃ強いというか。ここまで保ってられるのってすごいことだと思う。
まあエフィの理性が強ければ強だけ、私が女性として否定されるので悲しみ割り増しになってくんだけどね。
「ああもう、これ以上、は、これ以上は、どう、す、」
「エフィ?」
ぐらりとエフィの体が傾いた。
そのままぐるんと目が回って、ベッドへ倒れこむ。
「え、エフィ、え?」
「……」
糸の切れた人形のように崩れ落ちた。
息はあるけど、え、どういうこと、これちょっと危ない?
魔力枯渇は当然命の危険もあるとはいうけど。
「え、うそ、でしょ」
聖女の治癒魔法をかけても当然のことながら意味をなさない。
さっと血の気が引いていくのが分かった。
急いでベッドから降りて部屋を飛び出し走る。
アステリを呼ばないと。
「アステリ!」
血相を変えて走りこんできた私に、アステリとカロが驚くと同時に瞳を鋭くして私の横を走り去っていった。
「駄目だ」
「エフィ、私、」
「絶対駄目だ!」
息も絶え絶えだったはずのエフィから驚くぐらいの大きな声。
びくっと肩が鳴った。
「……なんでよ」
「駄目だ! そういうことは……そういうことは、好き合ってる者同士がすることで、こんな、こんな形で……」
なんでエフィが泣きそうになって言うことなの。
あ、そういえば、アステリがエフィには本命がいるって話してた。
「あー、そういうこと」
その本命ちゃんの為にも、ここで私と体液交換なんてしてたまるかと、そういうことね。
「私、責任とれとか言わないから」
「……は?」
「私、聖女の力返したら東の国で隠居したいと思ってて。結婚する気もないし、別にここでエフィとどうなろうと、エフィのこと責めないし見返り求めないから、そう気負わなくていいよ」
「え、ちょ、」
「それよりも、今はエフィが助かることの方が大事でしょ?」
エフィに好きな女性がいるなら尚のことだ。
別に婚前交渉が罪になって裁かれる世界でもないし。
テンプレ通りの流れになるのは思うところがあるけど、アステリ以外で多少なりとも仲良くなった人を放っておくのもできない。
なのに、エフィは頭を振った。
「……駄目だ」
「エフィ」
「駄目だ、帰ってくれ。頼むから」
なに、これ。さっきから全否定じゃん。
「……もおおおおお」
「イリニ?」
私、かなり勇気を出して来て話したのに駄目なの?
助けたいって私の気持ちは有難迷惑とかそういうやつ?
「なんで?! 最初は結婚しようとしてたくせに!」
「そ、それは!」
「分かってる、命令でしょ! 今ここでその命令通りにしたっていいじゃん!」
それともなに? 本命を迎え入れたら離婚?
もしくは書面だけ婚姻して、あとはぽいっとする系?
だから今も私を拒否するってこと?
そういうテンプレももちろんあるけどね!
「もおおおおおお」
「っ」
エフィの胸倉を掴んで引き寄せようとしたけど、思いの外動かなくて仕方ないからこっちから迫った。
驚いてエフィが怯んだ隙に彼の唇を奪う。
エフィの体がびくりと震えた。けどすぐにエフィの手が私の頭の後ろと腰に回され、乱暴にキスを返される。
よし、エフィがその気になった。
これで年齢指定ものテンプレをこなしてエフィが助かるルートになる。
「?」
脳内ガッツポーズ、勝利宣言と思ったら、肩に両手を添えて引き剝がされた。
俯いているからエフィの表情が見えず、きれいな旋毛しか見えない。
息の荒いエフィの肩が何度か上下して、苦しそうに返事が捻りだされた。
「……駄目だ」
ここにきての否定の言葉に私の頭はガンと何かに叩かれたような衝撃を受けた。
そう何度も否定されれば、悲しくもなってくる。私にとって今のエフィは助けたいと思える程には親しみがあるのに、エフィにとってはそうじゃない。
あくまで最初会った時と同じ、ただの保護対象。
「駄目だ。こういうことには、順番があって」
「なに、それ」
ただでさえテンプレ通り理性がガッタガタのゆっるゆるのはずなのに、こんな頑なに拒まれるのってなんなの。
私、そんなに女性としての魅力ないの。
もはや女性じゃないの?
あ、魔王だった。
そっか、魔王は女性じゃないのか、そうか。
「そんなに、嫌なの」
「そうじゃなくて、今は駄目で」
「もうやめてよ」
肩を掴むエフィの手に触れると尋常じゃない熱さだった。
全身高熱で苦しいのに、それでも好きな子の為に私との関係を拒み続けるなんて、どこの純愛もののテンプレキャラなのよ。
「イリニ」
エフィの顔が上がって、近い距離で目が合った。
その困った顔。私が悪いことしてるみたいじゃん。
いや、もうここまできたら私のしてること犯罪かな?
「エフィ」
「イリニ」
「触って、って言っても、だめ?」
これが最後だった。
これ以上はどうしたらエフィがその気になるか分からない。私の精一杯がここまでだ。
真っ直ぐエフィを見つめて、記憶にある限りの年齢指定ものの展開も思い直したけど、私の言葉で言えるのはここまで。
「う、っ」
肩にある指先に力が入るのが分かった。
すると肩を押され、さらに距離が開く。
熱い程の手が離れた。
「駄目だ!」
やっぱり。
私じゃエフィの力になれないし助けられない。
割と頑固というか、理性めちゃくちゃ強いというか。ここまで保ってられるのってすごいことだと思う。
まあエフィの理性が強ければ強だけ、私が女性として否定されるので悲しみ割り増しになってくんだけどね。
「ああもう、これ以上、は、これ以上は、どう、す、」
「エフィ?」
ぐらりとエフィの体が傾いた。
そのままぐるんと目が回って、ベッドへ倒れこむ。
「え、エフィ、え?」
「……」
糸の切れた人形のように崩れ落ちた。
息はあるけど、え、どういうこと、これちょっと危ない?
魔力枯渇は当然命の危険もあるとはいうけど。
「え、うそ、でしょ」
聖女の治癒魔法をかけても当然のことながら意味をなさない。
さっと血の気が引いていくのが分かった。
急いでベッドから降りて部屋を飛び出し走る。
アステリを呼ばないと。
「アステリ!」
血相を変えて走りこんできた私に、アステリとカロが驚くと同時に瞳を鋭くして私の横を走り去っていった。
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