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24話 ボートの上のラッキースケベ
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「エフィ、すぐ取る」
「え?!」
パンツとシャツの間から手を突っ込んで魚を取ろうと手を伸ばした。
思っていた以上に元気な魚は中々捕まってくれない。
「ま、い、っ!」
「頑張って、エフィ。すぐだから」
背中に回った魚を追いかけて、そのまま腕を回すとエフィから言葉にならない悲鳴が聞こえた。
あんまり動き回るから、エフィの身体が濡れてくし。早くとらないと。
「~~っ! 駄目だ!」
「え?」
突っ込んでいた手を取られ引き抜かれる。
エフィの息が荒い。
「もしや……」
私ってば、やらかした?
ラッキースケベ? しかもだいぶ加速してた?
いつの間にかエフィがえろいことになってるんだけど?
「……んっ、だ、大丈夫だ、から」
「うわあ……」
ボートの上だけど土下座すべき案件なのは分かる。
こんな狭くて不安定な場所で、よりにもよって。
「やっ、ぱり、か」
「え? やっぱり?」
猥談してる男子会が羨ましかった?
猥談はともかく、気兼ねなく話せる関係は羨ましい。
けどそれは、もう少し私への態度どうにかしてって、エフィに要望をだしたから大丈夫のはずなんじゃないの?
「エフィ、その」
「動くな!」
エフィの手は私の手を掴んだままだった。
私からのやらかしはなくなったけど、まだ中に魚がいるわけで。
くすぐったさと魚の独特の肌触りからくる不快感でエフィが悶えている。
「っ、この、まま、ラッキースケベで、落ち、る、わけには、いかな、いだろ!」
確かにこのままラッキースケベがこじれて続けば、湖に落ちて濡れ透けが再びやってくる可能性が高い。
というかエフィ、ラッキースケベに詳しくなってきてない? この世界にない概念だからね?
「くっ、出したら、抱く」
「結構です」
言葉選んでる余裕ないんだろうな。
悶えながら言う台詞じゃない。
もしかしてラッキースケベって受ける対象者にも影響及ぼす系?
そんなこと考える私の脳内がセクハラなだけ?
「手は離すな」
「ええ?」
ラッキースケベって分かったから、もう手突っ込まないんだけど、そんな心配なの?
でもラッキースケベで苦しんでいるのはエフィなので彼の要望を優先した。
手を繋いだまま、エフィが器用に服の中から魚を出すまで。
なんでイケメンの悶える姿を目の前にしながら待機しなきゃいけないのかな。
「ていうかエフィ、イケメンだったの」
「は?」
「こっちの話」
今までちゃんと顔見てなかったのかな? だいぶ失礼だった。心の中で謝っておこ。ごめんね。
「……くそ」
なんとか出てきた魚は、いまだ元気よく跳ねて湖の中へ自力で戻っていった。
魚には確実にラッキースケベ効果出てたな。
「ごめんね」
「……いや、あー、そうか……」
「エフィ?」
あいた片手で顔を覆って俯いた。
繋いだ手を引けば、あっさり離してくれる。
「分かった」
「なにを?」
「……改める」
「だからなにを?」
俯いていた顔をあげたエフィからは緊張が少し抜けていた。
顔つきも違う。けど、変わらず目元が赤かった。
「イリニへの態度を改める」
「無理しなくていいよ?」
なにに緊張しているかはさておき、私に対して苦手意識があるなら、そう簡単に直るものでもないし、無理はよくない。
「ラッキースケベが起きるぐらい嫌なんだろ?」
「そういうわけじゃ……」
んー否定できない。
ラッキースケベ起きちゃってるし。
「あー……別に、その、特別なわけじゃないし、イリニが淋しいなら、俺は、別に」
「ん?」
「アステリやカロと同じだし、イリニがそんなに言うなら」
「んん?」
「そんなに言うなら、素の俺でいっても、いいかなって」
妙にもじもじしてる。
挙げ句この言動。
「エフィ、ツンデレなの?」
「は?」
しょうがないわねと言いながら、やぶさかではないやつ。私はどちらかというと貧乳ツインテール派。
「あ、うん。こっちの話」
「……後できく」
戻ろうとエフィがボートをこいだ。
魚は逃げたの抜いても二人分あるし、またラッキースケベ起きても困るから、快くエフィに同意だ。
「……」
魚を針から外しながら、エフィの様子を見れば肩の力が抜けていた。顔つきも少しすっきりしている。
なにがどういうきっかけなのか、私にとっては嬉しいけど、いまいち理解できない。
「ほら」
「うん」
岸について、当たり前のように手が差し出された。
エフィったら慣れてるな。特段必要としない程度の場所だったけど、せっかくなので手を取った。
そのまま手を引かれる。離す気はなさそう。
「こうして触れていれば、ラッキースケベは起きない?」
そっちか。
まあ人肌に触れるというのは確かに効果的だよね。
「そうだね、たぶん」
「なら沢山手を繋いでればいいな?」
「いや、そこはいいよ」
「他の男ならいいって?」
「そうじゃない」
エフィが笑う。
なんだろ、急に吹っ切れてきたな。
「今度はデレなの?」
「なんだ?」
「なんでもない。火つけよ」
テントに戻る。
なんだか不思議な心地のまま、アウトドア飯の準備に入った。
「イリニ、それ」
「あ、ファイヤースターター?」
「それもうちの?」
「うん、シコフォーナクセーの技術屋さんにお願いしたよ。こうすると焚火できる」
「……」
自国が異世界の代物を作ってる事実に驚きつつも、思うところがあったらしく技術屋さんの名前を片っ端からきかれた。
そうして二人、焚火を見つめ続けて癒され、アウトドア飯で最高のおいしさを堪能して、星空片手に時間を贅沢に過ごす。
この世界での未婚の男女の過ごし方としてはアウトだけど、釣り以降ラッキースケベは起きなくて平和だった。
「え?!」
パンツとシャツの間から手を突っ込んで魚を取ろうと手を伸ばした。
思っていた以上に元気な魚は中々捕まってくれない。
「ま、い、っ!」
「頑張って、エフィ。すぐだから」
背中に回った魚を追いかけて、そのまま腕を回すとエフィから言葉にならない悲鳴が聞こえた。
あんまり動き回るから、エフィの身体が濡れてくし。早くとらないと。
「~~っ! 駄目だ!」
「え?」
突っ込んでいた手を取られ引き抜かれる。
エフィの息が荒い。
「もしや……」
私ってば、やらかした?
ラッキースケベ? しかもだいぶ加速してた?
いつの間にかエフィがえろいことになってるんだけど?
「……んっ、だ、大丈夫だ、から」
「うわあ……」
ボートの上だけど土下座すべき案件なのは分かる。
こんな狭くて不安定な場所で、よりにもよって。
「やっ、ぱり、か」
「え? やっぱり?」
猥談してる男子会が羨ましかった?
猥談はともかく、気兼ねなく話せる関係は羨ましい。
けどそれは、もう少し私への態度どうにかしてって、エフィに要望をだしたから大丈夫のはずなんじゃないの?
「エフィ、その」
「動くな!」
エフィの手は私の手を掴んだままだった。
私からのやらかしはなくなったけど、まだ中に魚がいるわけで。
くすぐったさと魚の独特の肌触りからくる不快感でエフィが悶えている。
「っ、この、まま、ラッキースケベで、落ち、る、わけには、いかな、いだろ!」
確かにこのままラッキースケベがこじれて続けば、湖に落ちて濡れ透けが再びやってくる可能性が高い。
というかエフィ、ラッキースケベに詳しくなってきてない? この世界にない概念だからね?
「くっ、出したら、抱く」
「結構です」
言葉選んでる余裕ないんだろうな。
悶えながら言う台詞じゃない。
もしかしてラッキースケベって受ける対象者にも影響及ぼす系?
そんなこと考える私の脳内がセクハラなだけ?
「手は離すな」
「ええ?」
ラッキースケベって分かったから、もう手突っ込まないんだけど、そんな心配なの?
でもラッキースケベで苦しんでいるのはエフィなので彼の要望を優先した。
手を繋いだまま、エフィが器用に服の中から魚を出すまで。
なんでイケメンの悶える姿を目の前にしながら待機しなきゃいけないのかな。
「ていうかエフィ、イケメンだったの」
「は?」
「こっちの話」
今までちゃんと顔見てなかったのかな? だいぶ失礼だった。心の中で謝っておこ。ごめんね。
「……くそ」
なんとか出てきた魚は、いまだ元気よく跳ねて湖の中へ自力で戻っていった。
魚には確実にラッキースケベ効果出てたな。
「ごめんね」
「……いや、あー、そうか……」
「エフィ?」
あいた片手で顔を覆って俯いた。
繋いだ手を引けば、あっさり離してくれる。
「分かった」
「なにを?」
「……改める」
「だからなにを?」
俯いていた顔をあげたエフィからは緊張が少し抜けていた。
顔つきも違う。けど、変わらず目元が赤かった。
「イリニへの態度を改める」
「無理しなくていいよ?」
なにに緊張しているかはさておき、私に対して苦手意識があるなら、そう簡単に直るものでもないし、無理はよくない。
「ラッキースケベが起きるぐらい嫌なんだろ?」
「そういうわけじゃ……」
んー否定できない。
ラッキースケベ起きちゃってるし。
「あー……別に、その、特別なわけじゃないし、イリニが淋しいなら、俺は、別に」
「ん?」
「アステリやカロと同じだし、イリニがそんなに言うなら」
「んん?」
「そんなに言うなら、素の俺でいっても、いいかなって」
妙にもじもじしてる。
挙げ句この言動。
「エフィ、ツンデレなの?」
「は?」
しょうがないわねと言いながら、やぶさかではないやつ。私はどちらかというと貧乳ツインテール派。
「あ、うん。こっちの話」
「……後できく」
戻ろうとエフィがボートをこいだ。
魚は逃げたの抜いても二人分あるし、またラッキースケベ起きても困るから、快くエフィに同意だ。
「……」
魚を針から外しながら、エフィの様子を見れば肩の力が抜けていた。顔つきも少しすっきりしている。
なにがどういうきっかけなのか、私にとっては嬉しいけど、いまいち理解できない。
「ほら」
「うん」
岸について、当たり前のように手が差し出された。
エフィったら慣れてるな。特段必要としない程度の場所だったけど、せっかくなので手を取った。
そのまま手を引かれる。離す気はなさそう。
「こうして触れていれば、ラッキースケベは起きない?」
そっちか。
まあ人肌に触れるというのは確かに効果的だよね。
「そうだね、たぶん」
「なら沢山手を繋いでればいいな?」
「いや、そこはいいよ」
「他の男ならいいって?」
「そうじゃない」
エフィが笑う。
なんだろ、急に吹っ切れてきたな。
「今度はデレなの?」
「なんだ?」
「なんでもない。火つけよ」
テントに戻る。
なんだか不思議な心地のまま、アウトドア飯の準備に入った。
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「あ、ファイヤースターター?」
「それもうちの?」
「うん、シコフォーナクセーの技術屋さんにお願いしたよ。こうすると焚火できる」
「……」
自国が異世界の代物を作ってる事実に驚きつつも、思うところがあったらしく技術屋さんの名前を片っ端からきかれた。
そうして二人、焚火を見つめ続けて癒され、アウトドア飯で最高のおいしさを堪能して、星空片手に時間を贅沢に過ごす。
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