21 / 82
21話 朝ちゅん(未遂)
しおりを挟む
「イリニ」
「ん? どうしたの三人揃って」
夜、そろそろお風呂にでも入ろうと城の中を進んでいたら、エフィたちに遭遇した。
「酒でも飲もうと思ってな」
「三人で?」
「ま、男子会ってやつだな」
お前も来るかとアステリに言われたけど、男子会なんだからそもそも女性の私論外じゃん。男性同士だからこそ話したいこともあるんだろうし。
「いいよ、皆で楽しんできて」
「おー」
心なしかエフィがほっとしてるように見えたけど、何も言わずに無視してお風呂場に向かった。
近くでわいてる温泉を引いて、城の中に大浴場を用意している。
毎日温泉の癒しがあるのは最高。
露天つきで毎晩星空も眺められるんだから。
「男子会ね」
静かで広いお風呂場で、たまに水が滴る音がする。
皆で囲んでお酒飲むだけ。女子会できるような同性の友達がいないからな。
今度皆で宴会でもしようかな。
「寝よ」
ざばっとお風呂から勢いよく出て、さっさと自室に戻った。
寝てしまえば、一瞬よぎったものは誤魔化せる。
そう思いつつも、二度あることは三度あるを繰り返したのは言うまでもない。
もう寝て誤魔化すことなんてできないって学ぶべきよ。
* * *
「……二、…………だ、目…………れ………………い……………」
「ん……?」
朝の半分寝ているこの時間が至福。
まどろみ中、ただあったかいお布団から出ないでぬくぬくしてられるとか幸せすぎ。
にしても今日一際あったかくていいな。
「……頼む、起きて、くれ」
「んん?」
なんだろ、いつもとなんか違う。
もう少し寝たいんだけどな。ベッドの上掛けを引き寄せて丸くなる。
ん、ちょっとかたいな。なんでよ。
睡眠環境大事って上等なベッド用意してたはずなのに。
「~~っ! こ、れ以上は駄目だ! 起きてくれ!」
「ん?」
今度はしっかり聞こえた。ゆるゆる瞼をあけると、視界はシーツの白色じゃない。
「んん?!」
「お、起きたか?」
戸惑い焦る声が耳元で聞こえた。
嘘でしょ。
「……エフィ?」
「イリニ?」
上掛けを求めて引き寄せた手はエフィの身体をまさぐっていた。
がっつり密着している。
そりゃかたいわけね。私朝から筋肉にダイブしてたわけだもの。
「う、そ」
ゆるゆるエフィに絡める腕を離してベッドの上を這って人一人分の距離をとった。
エフィが大きく息をついた。
「エフィ、その」
ラッキースケベだ。
昨日男子会するっていうのが羨ましかったっていう。
すぐに打ち消したっていうのに、一瞬の思いを拾わないでよ。
「あ、いや、違う。自分の部屋に戻ったつもりだったんだ。イリニには一切触れていない。あ、さっきまでのは不可抗力で、ただ抱きしめてただけで」
「エフィ」
ベッドの中でエフィを見上げた。
いつになく、エフィは表情を崩していて、顔は真っ赤だった。相当焦ってるな。
目があった途端、身体を跳ねさせて距離をとろうとしたのか身体をずらす。
あ、と思った途端、エフィはベッドから転がり落ちて、ドンと床に落ちた音がした。
「え、エフィ、大丈夫?」
「あ、ああ」
「ラッキースケベだった。ごめんね」
「え、いや、え?」
寝ぼけてるのか、相当焦りすぎてたのか、床から起き上がり座り込んで私を見上げて瞳をパチパチしている。
新鮮だな。いつも無表情に近い仏頂面なのに。
「その……私が寝てる間にエフィに何かした?」
「それ、は……」
してたよねえ、確実に。
悲鳴を上げながら私に起きてって言ってた時点で、起きた瞬間抱き着いてる時点で、そういうことだよね。
ラッキースケベどころかセクハラじゃんか。
「大変申し訳ございません」
とりあえず、ベッドの上で土下座した。
エフィはぽかんとしている。
「いや、違う。元々俺が勝手にイリニのベッドに入って、ラッキースケベとはいえ、酔っ払って自分の部屋に戻れなかった俺が悪くて」
「落ち着いてよ」
エフィの中では余程よろしくない行為らしい。
焦りすぎてて、少し笑ってしまう。エフィってば、なんでこの城にい続けるのかな。
というか、ハグ係はオッケーだけど、朝ちゅん(未遂)は駄目らしい。なぞ。
「イリニ…………っ!」
「ん?」
座り込んでたエフィががばっと勢いよく立ち上がった。
ベッドに座る私が首を傾げていると、エフィはいつもの仏頂面に戻って坦々と応える。
「部屋に戻る」
「うん、気にしないでね」
「……」
真っ直ぐ部屋の扉に足早に向かい、私を見ることなくでていった。扉は優しく閉じられるあたり、エフィの育ちのよさが伺える。
「……着替えよ」
モードの中でも、俺つえええとか魔王モードは比較的私の中で制御しやすい。怒りや悲しみの感情は扱い慣れているからか、精霊王の祝福加減なのか分からないけど、モード状態でも手加減ができる。
なのにラッキースケベだけは例外だ。
なぜか制御できない。
おさめることができないし、一時の淋しさを解消してもモードは必ずオンになる。
俺つえええとか魔王モードみたく、制御できればいいのに。
「ん? どうしたの三人揃って」
夜、そろそろお風呂にでも入ろうと城の中を進んでいたら、エフィたちに遭遇した。
「酒でも飲もうと思ってな」
「三人で?」
「ま、男子会ってやつだな」
お前も来るかとアステリに言われたけど、男子会なんだからそもそも女性の私論外じゃん。男性同士だからこそ話したいこともあるんだろうし。
「いいよ、皆で楽しんできて」
「おー」
心なしかエフィがほっとしてるように見えたけど、何も言わずに無視してお風呂場に向かった。
近くでわいてる温泉を引いて、城の中に大浴場を用意している。
毎日温泉の癒しがあるのは最高。
露天つきで毎晩星空も眺められるんだから。
「男子会ね」
静かで広いお風呂場で、たまに水が滴る音がする。
皆で囲んでお酒飲むだけ。女子会できるような同性の友達がいないからな。
今度皆で宴会でもしようかな。
「寝よ」
ざばっとお風呂から勢いよく出て、さっさと自室に戻った。
寝てしまえば、一瞬よぎったものは誤魔化せる。
そう思いつつも、二度あることは三度あるを繰り返したのは言うまでもない。
もう寝て誤魔化すことなんてできないって学ぶべきよ。
* * *
「……二、…………だ、目…………れ………………い……………」
「ん……?」
朝の半分寝ているこの時間が至福。
まどろみ中、ただあったかいお布団から出ないでぬくぬくしてられるとか幸せすぎ。
にしても今日一際あったかくていいな。
「……頼む、起きて、くれ」
「んん?」
なんだろ、いつもとなんか違う。
もう少し寝たいんだけどな。ベッドの上掛けを引き寄せて丸くなる。
ん、ちょっとかたいな。なんでよ。
睡眠環境大事って上等なベッド用意してたはずなのに。
「~~っ! こ、れ以上は駄目だ! 起きてくれ!」
「ん?」
今度はしっかり聞こえた。ゆるゆる瞼をあけると、視界はシーツの白色じゃない。
「んん?!」
「お、起きたか?」
戸惑い焦る声が耳元で聞こえた。
嘘でしょ。
「……エフィ?」
「イリニ?」
上掛けを求めて引き寄せた手はエフィの身体をまさぐっていた。
がっつり密着している。
そりゃかたいわけね。私朝から筋肉にダイブしてたわけだもの。
「う、そ」
ゆるゆるエフィに絡める腕を離してベッドの上を這って人一人分の距離をとった。
エフィが大きく息をついた。
「エフィ、その」
ラッキースケベだ。
昨日男子会するっていうのが羨ましかったっていう。
すぐに打ち消したっていうのに、一瞬の思いを拾わないでよ。
「あ、いや、違う。自分の部屋に戻ったつもりだったんだ。イリニには一切触れていない。あ、さっきまでのは不可抗力で、ただ抱きしめてただけで」
「エフィ」
ベッドの中でエフィを見上げた。
いつになく、エフィは表情を崩していて、顔は真っ赤だった。相当焦ってるな。
目があった途端、身体を跳ねさせて距離をとろうとしたのか身体をずらす。
あ、と思った途端、エフィはベッドから転がり落ちて、ドンと床に落ちた音がした。
「え、エフィ、大丈夫?」
「あ、ああ」
「ラッキースケベだった。ごめんね」
「え、いや、え?」
寝ぼけてるのか、相当焦りすぎてたのか、床から起き上がり座り込んで私を見上げて瞳をパチパチしている。
新鮮だな。いつも無表情に近い仏頂面なのに。
「その……私が寝てる間にエフィに何かした?」
「それ、は……」
してたよねえ、確実に。
悲鳴を上げながら私に起きてって言ってた時点で、起きた瞬間抱き着いてる時点で、そういうことだよね。
ラッキースケベどころかセクハラじゃんか。
「大変申し訳ございません」
とりあえず、ベッドの上で土下座した。
エフィはぽかんとしている。
「いや、違う。元々俺が勝手にイリニのベッドに入って、ラッキースケベとはいえ、酔っ払って自分の部屋に戻れなかった俺が悪くて」
「落ち着いてよ」
エフィの中では余程よろしくない行為らしい。
焦りすぎてて、少し笑ってしまう。エフィってば、なんでこの城にい続けるのかな。
というか、ハグ係はオッケーだけど、朝ちゅん(未遂)は駄目らしい。なぞ。
「イリニ…………っ!」
「ん?」
座り込んでたエフィががばっと勢いよく立ち上がった。
ベッドに座る私が首を傾げていると、エフィはいつもの仏頂面に戻って坦々と応える。
「部屋に戻る」
「うん、気にしないでね」
「……」
真っ直ぐ部屋の扉に足早に向かい、私を見ることなくでていった。扉は優しく閉じられるあたり、エフィの育ちのよさが伺える。
「……着替えよ」
モードの中でも、俺つえええとか魔王モードは比較的私の中で制御しやすい。怒りや悲しみの感情は扱い慣れているからか、精霊王の祝福加減なのか分からないけど、モード状態でも手加減ができる。
なのにラッキースケベだけは例外だ。
なぜか制御できない。
おさめることができないし、一時の淋しさを解消してもモードは必ずオンになる。
俺つえええとか魔王モードみたく、制御できればいいのに。
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる