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19話 魔王モード、雷落ちる
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「以前セーゴリアー騎士団長が来た時、魔物が襲ってきたではないか」
「はあ?」
「魔物はそもそも人にとって害獣でしいない。奴らが人に手を貸すなどありえない。つまり、アギオス侯爵令嬢が悪用した力で魔物を操り従えている」
あ、ちょっとだめね、これ。
「なにそれ。笑えない」
「おい、イリニ」
モードが入った私にアステリが制止をいれる。遅いよ。
「え?」
室内に風が舞う。どこからともなく雷鳴が轟いた。
「魔法?」
「室内で魔王モードはやめとけって」
私の感情が魔法となって現れている。
俺つえええが私個人の内容に反応するのに対して、この魔王モードは私の周囲、主に魔物たちに関することでスイッチが入るって感じかな。
振り幅は魔法に偏るみたい。
「きちんと理解してもらいたいんだけど」
「アギオス侯爵令嬢」
「魔物は害獣ではない」
「なにを」
雷が宰相補佐の足元に落ちる。
宰相補佐は魔王だと囁いてへたり込んだ。
根性ないな、エウプロ見習えばいいのに。顔を強張らせながらもきちんと立ってる。
「従える従えないはこの際どうでもいいわ。今日一つだけきちんと覚えて帰って」
「え?」
「魔物は悪ではないのよ。人を攻撃するのは、なにかしら人が魔物に刺激を与えたとき」
「アギオス侯爵令嬢」
「というわけ。帰ってくれる?」
雷鳴轟き、暴風が吹き荒れる。
腹が立つことへの言及はしない、ただ今は帰ってくれればいいのに。
宰相補佐が腰を抜かしたまま、苦し紛れに抵抗する。
「恩赦を捨てるのか?! たかだか祈りを捧げ、今までと同じように公務をこなすだけなのに!」
あ、これは俺つえええに移行かな。
この人私を煽るの上手。
すると室内の雷が私に呼応するように轟いて落ち、宰相補佐に直撃した。
「あ、やば」
「……生きてます」
「ほんと?」
エウプロが気まずそうにしながらも、宰相補佐の無事を報告する。
文官といえど結構頑丈なのね。
にしても。
「口から煙吐くとか、いつの時代のギャグ漫画」
笑いをこらえていると、アステリに「お前緊張感ねえのかよ」と窘められた。
雷まともにくらって、黒い煙口から吐いて意識飛んでるとか、古い少年ギャグ漫画であるやつじゃん。
笑わずにはいられない。
「ん、じゃエウプロ、宰相補佐起こして?」
エウプロが戸惑いながらも、宰相補佐を呼び身体を何度かゆすれば、ばふんと黒い煙をもう一度吐いて意識を取り戻した。
やっば、存在がギャグ漫画ね。雷の影響か、ただ単にびびってるのか分からないけど、腰を抜かしてその場に座り込んでいる。
宰相補佐の方がよっぽど失礼な態度だよねえ。
「……魔王だ」
自分の状況を把握した宰相補佐が震えながら私を見上げた。
また煽ってくるのかな?
「恐ろしい……そんなに力を誇示したいのか」
「どうしてそうなるの」
「恩赦が与えられるとなれば、自国に戻り尽くすのが国民だろう。それをここまで王太子殿下の、国の名誉を汚す等考えられない」
やっぱこの人と馬が合わないなあ、剣だそうかなあと思った時だった。
「僭越ながら、イペリファーニア宰相補佐、セーゴリアー騎士団長殿」
エフィが私の隣まで足を進めた。
見上げれば、目線だけこちらに下ろしているので、軽く頷いて続きを促した。
「シコフォーナクセー第三王太子殿下」
エウプロが改めて正しく挨拶しようとするのをエフィは制した。
「アギオス侯爵令嬢は現在シコフォーナクセー国内にいらっしゃる賓客である」
「え?」
私の反応を無視してエフィは続ける。
いつお客様になったの?
「パノキカト国王太子殿下との婚約も正式に破棄されている以上、そちらに強い拘束力はない」
「それは、」
「現在シコフォーナクセー国の正式な賓客であるアギオス侯爵令嬢を、パノキカト国への帰国を求める場合、シコフォーナクセー国の法律に乗っ取って手続きを願いたい」
驚いた。
エフィが私を庇ってくれている。
「し、しかし、彼女はパノキカト国の民であって」
「シコフォーナクセー国王太子である私の賓客であれば、この国への滞在継続は何も問題なく、また他国の干渉を受け付けない。王族の意志は国の意志。パノキカトが国として彼女を求めるのであれば、王陛下もしくは王太子殿下が直接我が国に申し出をすべきだ」
それは三国間で決めた外交措置だ。簡単にいえば横取り禁止ってやつ。
その措置を掲げて使われることはなかった。こんな時に使うなんてね。
にしても、この状況。
「テンプレだなあ」
「呑気なこと言ってんなよ」
アステリに窘められた。
隣国が拒否して、ひどい目に遭わずに済むなんてテンプレでしょ。
そう思っていたら、あちらから返事があった。
「委細承知致しました」
エウプロが頭を下げた。
「シコフォーナクセー王太子殿下に大変無礼を」
「気にしなくていい。ただ今日のところは」
「はい。失礼致します」
「ま、まてセーゴリアー騎士団長! これは王太子殿下の命だ! 反逆者になりたいのか!」
腰を抜かした宰相補佐を抱え、再度こちらに礼をした騎士団長が去っていく。
いつの間にか魔法の嵐はおさまっていた。
魔王モード解除されてるや。
「はあ?」
「魔物はそもそも人にとって害獣でしいない。奴らが人に手を貸すなどありえない。つまり、アギオス侯爵令嬢が悪用した力で魔物を操り従えている」
あ、ちょっとだめね、これ。
「なにそれ。笑えない」
「おい、イリニ」
モードが入った私にアステリが制止をいれる。遅いよ。
「え?」
室内に風が舞う。どこからともなく雷鳴が轟いた。
「魔法?」
「室内で魔王モードはやめとけって」
私の感情が魔法となって現れている。
俺つえええが私個人の内容に反応するのに対して、この魔王モードは私の周囲、主に魔物たちに関することでスイッチが入るって感じかな。
振り幅は魔法に偏るみたい。
「きちんと理解してもらいたいんだけど」
「アギオス侯爵令嬢」
「魔物は害獣ではない」
「なにを」
雷が宰相補佐の足元に落ちる。
宰相補佐は魔王だと囁いてへたり込んだ。
根性ないな、エウプロ見習えばいいのに。顔を強張らせながらもきちんと立ってる。
「従える従えないはこの際どうでもいいわ。今日一つだけきちんと覚えて帰って」
「え?」
「魔物は悪ではないのよ。人を攻撃するのは、なにかしら人が魔物に刺激を与えたとき」
「アギオス侯爵令嬢」
「というわけ。帰ってくれる?」
雷鳴轟き、暴風が吹き荒れる。
腹が立つことへの言及はしない、ただ今は帰ってくれればいいのに。
宰相補佐が腰を抜かしたまま、苦し紛れに抵抗する。
「恩赦を捨てるのか?! たかだか祈りを捧げ、今までと同じように公務をこなすだけなのに!」
あ、これは俺つえええに移行かな。
この人私を煽るの上手。
すると室内の雷が私に呼応するように轟いて落ち、宰相補佐に直撃した。
「あ、やば」
「……生きてます」
「ほんと?」
エウプロが気まずそうにしながらも、宰相補佐の無事を報告する。
文官といえど結構頑丈なのね。
にしても。
「口から煙吐くとか、いつの時代のギャグ漫画」
笑いをこらえていると、アステリに「お前緊張感ねえのかよ」と窘められた。
雷まともにくらって、黒い煙口から吐いて意識飛んでるとか、古い少年ギャグ漫画であるやつじゃん。
笑わずにはいられない。
「ん、じゃエウプロ、宰相補佐起こして?」
エウプロが戸惑いながらも、宰相補佐を呼び身体を何度かゆすれば、ばふんと黒い煙をもう一度吐いて意識を取り戻した。
やっば、存在がギャグ漫画ね。雷の影響か、ただ単にびびってるのか分からないけど、腰を抜かしてその場に座り込んでいる。
宰相補佐の方がよっぽど失礼な態度だよねえ。
「……魔王だ」
自分の状況を把握した宰相補佐が震えながら私を見上げた。
また煽ってくるのかな?
「恐ろしい……そんなに力を誇示したいのか」
「どうしてそうなるの」
「恩赦が与えられるとなれば、自国に戻り尽くすのが国民だろう。それをここまで王太子殿下の、国の名誉を汚す等考えられない」
やっぱこの人と馬が合わないなあ、剣だそうかなあと思った時だった。
「僭越ながら、イペリファーニア宰相補佐、セーゴリアー騎士団長殿」
エフィが私の隣まで足を進めた。
見上げれば、目線だけこちらに下ろしているので、軽く頷いて続きを促した。
「シコフォーナクセー第三王太子殿下」
エウプロが改めて正しく挨拶しようとするのをエフィは制した。
「アギオス侯爵令嬢は現在シコフォーナクセー国内にいらっしゃる賓客である」
「え?」
私の反応を無視してエフィは続ける。
いつお客様になったの?
「パノキカト国王太子殿下との婚約も正式に破棄されている以上、そちらに強い拘束力はない」
「それは、」
「現在シコフォーナクセー国の正式な賓客であるアギオス侯爵令嬢を、パノキカト国への帰国を求める場合、シコフォーナクセー国の法律に乗っ取って手続きを願いたい」
驚いた。
エフィが私を庇ってくれている。
「し、しかし、彼女はパノキカト国の民であって」
「シコフォーナクセー国王太子である私の賓客であれば、この国への滞在継続は何も問題なく、また他国の干渉を受け付けない。王族の意志は国の意志。パノキカトが国として彼女を求めるのであれば、王陛下もしくは王太子殿下が直接我が国に申し出をすべきだ」
それは三国間で決めた外交措置だ。簡単にいえば横取り禁止ってやつ。
その措置を掲げて使われることはなかった。こんな時に使うなんてね。
にしても、この状況。
「テンプレだなあ」
「呑気なこと言ってんなよ」
アステリに窘められた。
隣国が拒否して、ひどい目に遭わずに済むなんてテンプレでしょ。
そう思っていたら、あちらから返事があった。
「委細承知致しました」
エウプロが頭を下げた。
「シコフォーナクセー王太子殿下に大変無礼を」
「気にしなくていい。ただ今日のところは」
「はい。失礼致します」
「ま、まてセーゴリアー騎士団長! これは王太子殿下の命だ! 反逆者になりたいのか!」
腰を抜かした宰相補佐を抱え、再度こちらに礼をした騎士団長が去っていく。
いつの間にか魔法の嵐はおさまっていた。
魔王モード解除されてるや。
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