魔王と呼ばれる元聖女の祝福はラッキースケベ(旧題:婚約破棄と処刑コンボを越えた先は魔王でした)

文字の大きさ
上 下
17 / 82

17話 テンプレ過去回想、聖女は魔王になる

しおりを挟む
 祝福のパワーアップ効果に思わず息を飲んだ。
 やばすぎでしょ。湖割ったよ? どこぞの神々も真っ青だよ?
 そして、ひじりの命名通り。
 軽く下ろしただけでこの強さ。チートなんじゃないの。いや俺つえええモードって、そこからきてるんだろうけど。

「ひ、怯むな!」

 騎士の中の誰かが叫び、我に返る騎士。
 ええ、これで帰ってくれないの?
 ならもっとこうボス感出せば帰ってくれるかな。

「まだモードぽいし続きやる?」
「おい、イリニ」

 軽く止めようとするアステリを視線だけで抑えて、私は騎士団に向き合った。
 風の属性なら、直撃しないようにしてれば吹っ飛ぶだけで死人は出ない。
 私の命中率次第って感じ。それならばっちりやれる自信がある。

「どうぞ俺つえええモードをお楽しみ下さい」

 騎士団の一部から悲鳴が上がる中、もう一度剣を振りかぶった。
 結果、私の圧勝で終了。
 もちろん怪我はさせない。動けなくしてそのまま。
 騎士団長が退避と叫んで動ける騎士が動けない騎士を庇いながら去っていく。
 よし、想像通り退いてくれたわ。

「俺つえええモード気持ちいいな~」
「ば、化け物……」
「失礼ね、私人間だし」
「魔王だ……聖女なんかじゃない……」

 動けない騎士が譫言うわごとのように言っている。
 まあなんと言おうと知ったことじゃない。
 今、私はとても気持ちがいい。爽やかだ。
 大振りの攻撃にすっきりというところ。
 あれか、鬱々とした気持ちの解消、イライラからすっきりできるモード。これこそ俺つえええの神髄ってやつね。

「……おい、イリニ」
「どうしたの、アステリ」

 振り向くとこめかみをピクピクさせながら、怒り心頭の世界最強の魔法使いが立っていた。
 あれ、私アステリになにかした記憶ないけどな?

「お前、少しは自重しろ!」
「え?」
「こっちはこの有様だぞ?!」

 手を挙げたアステリの先にある私たちの拠点。
 城が八割ほど壊れていた。

「あらら」
「無差別に振り回しすぎだ! この馬鹿!」
「ええと……初めてだったもので」

 うまく扱えなかったね。
 正面の騎士たちに配慮はしていたけど、振りかぶり直した時の背後とかなにも考えてなかったわ。

「俺の結界易々と突破しやがって!」
「パワーアップしたからねえ」

 アステリってば気を使って城に結界張ってくれてたらしい。
 それも全部私の俺つえええモードで突破されたと。
 見守っていたドラゴンもフェンリルも呆れた様子で見ていた。

「いいじゃん、あの子たち守れたんだから」
「あんなやり方しなくてもいいだろが」

 自分から悪役になる必要ないだろ? とアステリが言う。
 確かにそう。
 騎士たちの私に対する視線が元婚約者と被ってしまい無性に腹が立った。その前から魔物をだしにして傷つけてきた騎士が許せなかったのもある。
 魔物たちは、この子たちは私がここに城を構えてやってきた。僅かな時間でも私の淋しさは紛れたし、大事にしたいと思えた。
 だから、この城とこの子たちを守れるなら悪役もいいかなと思った。
 勝手に思い込んだのは騎士たちで、私自ら自己紹介したわけじゃない。

「構わないよ、どう思われても。私は思った通りに生きると決めた」
「にしたってよ」
「魔王でもかまわない。聖女やめたかったし」
「屁理屈だぞ」
「私は聖女の力さよならして、長生きする。その為の障害は全排除に決まってるでしょ」

 そんな感じで、私の魔王デビューは果たされた。
 翌日以降の各国の新聞記事に取り上げられ、私は聖女から魔王になったという内容が出回った。
 噂を聞き付け取り寄せた新聞の内容に笑いしかでない。シコフォーナクセーとエクセロスレヴォはまだしも、パノキカトの記事は魔物を従えた悪の象徴みたく謡われていた。

「ますます神殿にいけないじゃん」
「自業自得だ、阿保」

 それが私が魔王と呼ばれるに至った話。
 まさにテンプレ。
 自己犠牲の末に罪を被る的な。

「……成程」
「ちょっと、今ボケたからつっこんでよ」

 自己犠牲ちゃうやろぐらい言ってほしかった。
 だめだ、エフィはただエピソードの深堀というか考察してる感。
 全然私のコメント入ってない。

「俺がラッキースケベのハグ係をするのは間違いじゃなかったな」
「え、そこ? 全然関係なくない?」
「関係あるさ」
「ええ?」

 テンプレ通りの過去話。エフィは納得したからいいけど、出た答えはよく分からない。
 できれば専属解除したかったのに。
 いたく満足そうなのは構わないけど、このテンプレ話なら新聞読めば事足りた気もする。
 今更だけど、数話跨って語る必要あった?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

【完結】婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ

曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。 婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。 美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。 そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……? ――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

踏み台令嬢はへこたれない

IchikoMiyagi
恋愛
「婚約破棄してくれ!」  公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。  春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。  そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?  これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。 「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」  ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。  なろうでも投稿しています。

処理中です...