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14話 テンプレ過去回想、今世の目標は穏やかな老後に決定
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聖の世界で私は一作目ゲームのヒロインに立場を奪われるライバル令嬢。ヒロインはパンセリノス・ピラズモス男爵令嬢。彼女が新聖女として認められ真の聖女として成り上がり、作中男性キャラと恋愛するのがゲーム内容だ。
私はあくまで前任聖女という立場でしか出てこない。
あれ、これどこのテンプレ?
「てかイリニさんもリーサさんも私の記憶見たなら分かるでしょ? ファンディスクの保管を」
「まあ」
「そうなんだけど」
前任聖女についても深堀りされたファンディスクは婚約破棄された私が生前いかに努力をしていたかが描かれていた。
それは、私が歩んだものと変わりがない。
ピラズモス男爵令嬢に夢中になり、公務を疎かにする王太子殿下のかわりに職務をこなし、一方で王太子妃としての勉強を進め、聖女として慰問や神殿からの祈りなど、多伎に渡る活動をこなしていた。
ピラズモス男爵令嬢へのいじめと呼ばれるものも、自分が退いた時の教育や淑女としての苦言だった。
激務をこなし、ろくでもない男(=王太子殿下)のために尽くしたにも関わらず、勘違いした男爵令嬢の訴えを鵜呑みにした精霊王の怒りに触れ死んだ私は、ゲームをプレイしていたファンから一定の評価を得たようだった。私を蔑み罵っていたのもあり、かわりに王太子殿下の評価は下がったが予定調和ですよと聖は笑う。
「というか、イリニさんやばくないですか? 見たついでに分かっちゃいましたけど、あのイケメンとんでもない祝福かましていきましたよ」
「そうね」
さんづけいらないわと聖に伝える。聖がうほっと奇天烈な声を上げていたけど無視した。
ちなみに聖の言うイケメンとは精霊王のこと。
「リーサはどう思う? 精霊王とは面識あるみたいだったけど」
「ああ、あいつが王になったばかりの頃に出会っているからな。あいつが精霊側の統制をとる為に私が色々協力したんだよ」
見えただろ、とリーサ。
リーサが勇者として世界中を飛び回っていた時に出会ったのが精霊王。まだ王になったばかりで精霊たちも好き勝手して人間にも攻撃するようなものもいた。それをリーサと一緒に鎮めて、共存するというラインまでもっていったのが二人のストーリーだ。
「それにしたって、今のイリニは歴代聖女の中でも最強だな。少し思うだけで世界が傾く」
「それかなりきついのにね」
聖女は祈りや願いが具現化する力を持つ。だから、私がこの国を守りたいという祈りが国を覆う結界として現れていた。
けど今はどうか。
以前とは比にならない力を持っていることが分かってしまった。
「各能力の名前は私が決めますっ」
「どうぞ……」
「ヒジリ、そこなのか?」
「大事なとこです!」
鼻息が荒くなる聖。
彼女のよくわからない言葉が今は全部分かるのだから不思議なものだ。
「むしろ、因果のすごさを実感しているところです。エモすぎでしょ!」
「二度も死んだ因果と、前世二人分の因果も束ねればね……」
ただでさえ聖女として力が強いのに、さらに強くなってどうするの。
もう迂闊に落ち込めない。落ち込んだ時に願う内容が実現したら大変だもの。
「精霊王も反応しないしな」
「そこね。こんな強い力必要ないのに……というか、もう聖女卒業したいんですけど」
力を弱めてほしい。いっそなくしてほしいと精霊王にお願いしたのに無視されて逃げられたしね。今だって、この空間で聞こえないわけないんだから、わざと無視してる。
ゲームのテンプレの如く、聖女の力を剥奪してくれてよかったのに。
「まあイリニの命を脅かす敵はいなくなるな」
「むしろ私が世界を脅かす存在になるわよ……望むところだけどさー」
「イリニ?」
二人が私を見て不思議そうに小首を傾げる。御先祖様は凛々しいクール系男前女子だからギャップがいい感じ。聖はすらっと背が高くてモデル体型の割に、見た目童顔で所作が小振りだからまたまたギャップで可愛い。まあそこはさておき。
「耐久戦でいく感じかな。精霊王が出てくるまで留まり続ける」
「けど国内は難しいだろう」
精霊王とは神殿の力が集まる場所で啓示を受けることが多い。
神殿に避難して、精霊王引きずり出して、聖女の力剥奪の交渉をしたいところだけど、婚約破棄の騒動を考えると自国パノキカトには留まれないだろう。
「国境線狙うのは?」
「なるほど。しかし今のイリニがいくら強い力を持っていても転移の魔法は使えないぞ。破棄を無視するわけではないんだろう?」
頷く。
王太子殿下からの婚約破棄は喜んで受け入れる。
その末の無駄死にはしない。
なので社交場で被害なく退く術を手に入れよう。
「癪だけど精霊王の言う仲間をゲットしようかなと」
「ああ」
「いいですね!」
「一時的な仲間だけど」
思ったことが伝わるからすごい。
正直、破棄を宣言されてすぐに私が祈れば何かしらの力が私を守ってくれるだろう。
けど、できるならそれは避けたい。
最善はぱっと消えて、そのまま国境界に留まり、干渉を受けず待機。のち、精霊王と接触し聖女の力を全て返して、私はそのまま東の辺境へ行って余生を過ごす。
「穏やかな老後をすごして長生きする! これが今世の私の目標よ! テンプレだけど!」
「ああ、協力しよう」
「私もです!」
それは三人に共通する願いでもあった。
長く生きて静かにすごして穏やかな死を迎える。
いずれも叶えられなかった私たちのもう一度のチャレンジが、スタートした。
私はあくまで前任聖女という立場でしか出てこない。
あれ、これどこのテンプレ?
「てかイリニさんもリーサさんも私の記憶見たなら分かるでしょ? ファンディスクの保管を」
「まあ」
「そうなんだけど」
前任聖女についても深堀りされたファンディスクは婚約破棄された私が生前いかに努力をしていたかが描かれていた。
それは、私が歩んだものと変わりがない。
ピラズモス男爵令嬢に夢中になり、公務を疎かにする王太子殿下のかわりに職務をこなし、一方で王太子妃としての勉強を進め、聖女として慰問や神殿からの祈りなど、多伎に渡る活動をこなしていた。
ピラズモス男爵令嬢へのいじめと呼ばれるものも、自分が退いた時の教育や淑女としての苦言だった。
激務をこなし、ろくでもない男(=王太子殿下)のために尽くしたにも関わらず、勘違いした男爵令嬢の訴えを鵜呑みにした精霊王の怒りに触れ死んだ私は、ゲームをプレイしていたファンから一定の評価を得たようだった。私を蔑み罵っていたのもあり、かわりに王太子殿下の評価は下がったが予定調和ですよと聖は笑う。
「というか、イリニさんやばくないですか? 見たついでに分かっちゃいましたけど、あのイケメンとんでもない祝福かましていきましたよ」
「そうね」
さんづけいらないわと聖に伝える。聖がうほっと奇天烈な声を上げていたけど無視した。
ちなみに聖の言うイケメンとは精霊王のこと。
「リーサはどう思う? 精霊王とは面識あるみたいだったけど」
「ああ、あいつが王になったばかりの頃に出会っているからな。あいつが精霊側の統制をとる為に私が色々協力したんだよ」
見えただろ、とリーサ。
リーサが勇者として世界中を飛び回っていた時に出会ったのが精霊王。まだ王になったばかりで精霊たちも好き勝手して人間にも攻撃するようなものもいた。それをリーサと一緒に鎮めて、共存するというラインまでもっていったのが二人のストーリーだ。
「それにしたって、今のイリニは歴代聖女の中でも最強だな。少し思うだけで世界が傾く」
「それかなりきついのにね」
聖女は祈りや願いが具現化する力を持つ。だから、私がこの国を守りたいという祈りが国を覆う結界として現れていた。
けど今はどうか。
以前とは比にならない力を持っていることが分かってしまった。
「各能力の名前は私が決めますっ」
「どうぞ……」
「ヒジリ、そこなのか?」
「大事なとこです!」
鼻息が荒くなる聖。
彼女のよくわからない言葉が今は全部分かるのだから不思議なものだ。
「むしろ、因果のすごさを実感しているところです。エモすぎでしょ!」
「二度も死んだ因果と、前世二人分の因果も束ねればね……」
ただでさえ聖女として力が強いのに、さらに強くなってどうするの。
もう迂闊に落ち込めない。落ち込んだ時に願う内容が実現したら大変だもの。
「精霊王も反応しないしな」
「そこね。こんな強い力必要ないのに……というか、もう聖女卒業したいんですけど」
力を弱めてほしい。いっそなくしてほしいと精霊王にお願いしたのに無視されて逃げられたしね。今だって、この空間で聞こえないわけないんだから、わざと無視してる。
ゲームのテンプレの如く、聖女の力を剥奪してくれてよかったのに。
「まあイリニの命を脅かす敵はいなくなるな」
「むしろ私が世界を脅かす存在になるわよ……望むところだけどさー」
「イリニ?」
二人が私を見て不思議そうに小首を傾げる。御先祖様は凛々しいクール系男前女子だからギャップがいい感じ。聖はすらっと背が高くてモデル体型の割に、見た目童顔で所作が小振りだからまたまたギャップで可愛い。まあそこはさておき。
「耐久戦でいく感じかな。精霊王が出てくるまで留まり続ける」
「けど国内は難しいだろう」
精霊王とは神殿の力が集まる場所で啓示を受けることが多い。
神殿に避難して、精霊王引きずり出して、聖女の力剥奪の交渉をしたいところだけど、婚約破棄の騒動を考えると自国パノキカトには留まれないだろう。
「国境線狙うのは?」
「なるほど。しかし今のイリニがいくら強い力を持っていても転移の魔法は使えないぞ。破棄を無視するわけではないんだろう?」
頷く。
王太子殿下からの婚約破棄は喜んで受け入れる。
その末の無駄死にはしない。
なので社交場で被害なく退く術を手に入れよう。
「癪だけど精霊王の言う仲間をゲットしようかなと」
「ああ」
「いいですね!」
「一時的な仲間だけど」
思ったことが伝わるからすごい。
正直、破棄を宣言されてすぐに私が祈れば何かしらの力が私を守ってくれるだろう。
けど、できるならそれは避けたい。
最善はぱっと消えて、そのまま国境界に留まり、干渉を受けず待機。のち、精霊王と接触し聖女の力を全て返して、私はそのまま東の辺境へ行って余生を過ごす。
「穏やかな老後をすごして長生きする! これが今世の私の目標よ! テンプレだけど!」
「ああ、協力しよう」
「私もです!」
それは三人に共通する願いでもあった。
長く生きて静かにすごして穏やかな死を迎える。
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