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4話 いかにもな男キャラがテンプレな事を言ってきた
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「どういうこと?!」
「国境に建てようが変わらねえよ。それに三国協定でどこに玄関を置くかで管轄する国が決まるって分かってんだろ」
「そう、だけど……それならそう言ってよ」
「そこは悪かったわ」
「もう」
そこでやっと第三王太子殿下は気づいたようで「アステリ」と驚きの声を上げた。
アステリが「よっ」と軽く手を挙げる。
「お前、まだ彼女の側に」
「まーなー」
私を逃がすにあたり魔法使長が手助けしたことは広まっている。けど、この城にいると思ってなかったなんて意外。
「まあいいわ。で? 保護だっけ? なんでそんなことを提案するわけ?」
「あ……貴殿はパノキカトから命を狙われる身だ。しかし聖女としての祈りの功績は三国に渡る。我が国に来た以上は、貴殿の身の安全を守る義務が我が国にはあると考えての提案をお持ちした」
「ふうん……で、本音は?」
「え?」
「建前はどうでもいいわ。貴方の本音は?」
黙る。
国として私を保護したいのは、聖女の力を利用する目的以外はないだろう。
外交でもいい盾になる。他の国に売りにだしてもいいだろうけど、囲うのが一番利用価値があるかな。パノキカトに戦争を吹っ掛ける理由にもなるだろうし。
「本当は……」
「うん」
言い淀む王太子殿下をしり目に、指をいじりながら返事を待つ。
すると予想と反する言葉が返ってきた。
「……本当は、君に結婚の申し出をと思っている」
「……は?」
見下ろせば真っ直ぐ見上げる視線。
あ、この人真面目に言ってるぽい。
隣のアステリが吹き出したのが聞こえて我に返る。
「結婚?」
「ああ。本当は破棄してすぐにでも申し込もうと思っていた」
「……ああ、結婚して囲い込もうってこと」
「え?」
王家との結婚となれば強力な縛りになる。それを見越してきたの。
あ、この手の流れは相場が決まってたな。ゲームにしろ漫画にしろ。確か……。
「えっと……婚約破棄してすぐに結婚を申し込んで?」
「え、あ、ああ」
「そのまま貴方の国に連れていく気だった?」
「ああ、そのつもりだった」
「連れていったら後宮とか離宮に住んでもらうとか?」
「あ、ああ。君が望めば」
「はっ」
鼻で笑うと王太子殿下は目を丸くして驚いた。
いやもう相場すぎる。
「テンプレおつですわあ」
「え?」
不穏な私の雰囲気を察した王太子殿下が少し戸惑っている。
「お言葉ですが、アギオス侯爵令嬢」
「?」
後ろの副団長が声を上げた。
見た目ちゃらそう。仮称ちゃら男でいくかな。まあ場が場だから真面目にしてるけど。
「あの時あの場にて、王太子殿下が声を上げなかったのは俺が止めたからです」
「カロ、やめろ」
テンプレという窮屈な型におさまるのも嫌だけど、ちゃら男くんの物言いにもイラっとした。
言いたいことが分かってしまったもの。
「もしかして、あの時どうして助けてくれなかったのって私が言うとでも思ったわけ?」
イライラが伝わったらしく頷くだけの副団長。
「違うよ。あれは誰かに助けを求めて無い物ねだりすることじゃない」
「アギオス侯爵令嬢」
こんなもんか。もういいでしょ。お友達割もここまでだ。
「帰ってくれる? あとはアステリと昔話に花でも咲かせていいから」
「ま、待ってくれ、話を」
「はあ?」
この期に及んでまだ話? しつこいな。
「保護の話ならお断り。勝手に城建てたのは申し訳ないから、なんなら城やめて普通の家にする。貴方の国に滞在することはもう少しだけ許して。その類のお金なら払う」
「違うんだ、俺は」
「結婚もお断りでーす。アステリあとよろしく」
「違う、俺は君と話が!」
「しつこいなあ」
しつこい男は嫌われるよ。
「私、人と関わりたくないの。一人にして」
「俺は君のことが」
「お帰り下さーい」
「駄目だ、どうかもう少しだけ」
「もーちょっとイラっとした。あ、なんだかやれそうだな、うんやろう」
「おい、 待てまさか」
どこからともなく剣をだした私を見て隣のアステリが血相を変える。
イライラの割にモードがそっちに変わるなら好都合。どうやら私はテンプレという窮屈な展開から解放されたいらしい。
「スイッチ入った」
「待て、それはやめろ」
「というわけで第三王太子殿下、私自らお見送りしてあげる」
「え?」
「エフィ、剣を構えろ! 防御壁はれ!」
「え?!」
なによ。アステリったら、あっちの味方して。
「くそが! 俺つえええモードは面倒なんだよ!」
「んーごめんねー? みなぎってきたわ」
笑う。
この笑い方と力の強さで魔王呼ばわりされてるんだよねえ。
「城半壊じゃ済まねえの知ってんだろ!」
「必殺技でるーむりー」
「どちくしょうが!」
「どういうことだ?」
瞬間、転移した。
城の上、空中。
アステリったらやり方が荒い。
私も彼も魔法が使えるから空中も自在で、思う存分やれそうだけど。
「え?!」
言われた通り剣をかまえ、防御壁はってる。アステリの言う事ちゃんときいて真面目だな。
ま、これなら大丈夫でしょ。
「いくよ?」
「え?!」
剣を振り上げる。
雷が轟いた。
今日は雷な気分か。
ちなみに日によって剣が呼ぶ属性は変わるんだよ、なんてね。
「さーいしょーかーら」
「ま、待て」
「クライマックスだぜ!」
「え?!」
振り下ろした剣から、おおよそ想像のできない雷風が吹き荒れ轟いた。
「ええ?!」
最後までついていけない第三王太子殿下が私の剣によって爆発した。
「国境に建てようが変わらねえよ。それに三国協定でどこに玄関を置くかで管轄する国が決まるって分かってんだろ」
「そう、だけど……それならそう言ってよ」
「そこは悪かったわ」
「もう」
そこでやっと第三王太子殿下は気づいたようで「アステリ」と驚きの声を上げた。
アステリが「よっ」と軽く手を挙げる。
「お前、まだ彼女の側に」
「まーなー」
私を逃がすにあたり魔法使長が手助けしたことは広まっている。けど、この城にいると思ってなかったなんて意外。
「まあいいわ。で? 保護だっけ? なんでそんなことを提案するわけ?」
「あ……貴殿はパノキカトから命を狙われる身だ。しかし聖女としての祈りの功績は三国に渡る。我が国に来た以上は、貴殿の身の安全を守る義務が我が国にはあると考えての提案をお持ちした」
「ふうん……で、本音は?」
「え?」
「建前はどうでもいいわ。貴方の本音は?」
黙る。
国として私を保護したいのは、聖女の力を利用する目的以外はないだろう。
外交でもいい盾になる。他の国に売りにだしてもいいだろうけど、囲うのが一番利用価値があるかな。パノキカトに戦争を吹っ掛ける理由にもなるだろうし。
「本当は……」
「うん」
言い淀む王太子殿下をしり目に、指をいじりながら返事を待つ。
すると予想と反する言葉が返ってきた。
「……本当は、君に結婚の申し出をと思っている」
「……は?」
見下ろせば真っ直ぐ見上げる視線。
あ、この人真面目に言ってるぽい。
隣のアステリが吹き出したのが聞こえて我に返る。
「結婚?」
「ああ。本当は破棄してすぐにでも申し込もうと思っていた」
「……ああ、結婚して囲い込もうってこと」
「え?」
王家との結婚となれば強力な縛りになる。それを見越してきたの。
あ、この手の流れは相場が決まってたな。ゲームにしろ漫画にしろ。確か……。
「えっと……婚約破棄してすぐに結婚を申し込んで?」
「え、あ、ああ」
「そのまま貴方の国に連れていく気だった?」
「ああ、そのつもりだった」
「連れていったら後宮とか離宮に住んでもらうとか?」
「あ、ああ。君が望めば」
「はっ」
鼻で笑うと王太子殿下は目を丸くして驚いた。
いやもう相場すぎる。
「テンプレおつですわあ」
「え?」
不穏な私の雰囲気を察した王太子殿下が少し戸惑っている。
「お言葉ですが、アギオス侯爵令嬢」
「?」
後ろの副団長が声を上げた。
見た目ちゃらそう。仮称ちゃら男でいくかな。まあ場が場だから真面目にしてるけど。
「あの時あの場にて、王太子殿下が声を上げなかったのは俺が止めたからです」
「カロ、やめろ」
テンプレという窮屈な型におさまるのも嫌だけど、ちゃら男くんの物言いにもイラっとした。
言いたいことが分かってしまったもの。
「もしかして、あの時どうして助けてくれなかったのって私が言うとでも思ったわけ?」
イライラが伝わったらしく頷くだけの副団長。
「違うよ。あれは誰かに助けを求めて無い物ねだりすることじゃない」
「アギオス侯爵令嬢」
こんなもんか。もういいでしょ。お友達割もここまでだ。
「帰ってくれる? あとはアステリと昔話に花でも咲かせていいから」
「ま、待ってくれ、話を」
「はあ?」
この期に及んでまだ話? しつこいな。
「保護の話ならお断り。勝手に城建てたのは申し訳ないから、なんなら城やめて普通の家にする。貴方の国に滞在することはもう少しだけ許して。その類のお金なら払う」
「違うんだ、俺は」
「結婚もお断りでーす。アステリあとよろしく」
「違う、俺は君と話が!」
「しつこいなあ」
しつこい男は嫌われるよ。
「私、人と関わりたくないの。一人にして」
「俺は君のことが」
「お帰り下さーい」
「駄目だ、どうかもう少しだけ」
「もーちょっとイラっとした。あ、なんだかやれそうだな、うんやろう」
「おい、 待てまさか」
どこからともなく剣をだした私を見て隣のアステリが血相を変える。
イライラの割にモードがそっちに変わるなら好都合。どうやら私はテンプレという窮屈な展開から解放されたいらしい。
「スイッチ入った」
「待て、それはやめろ」
「というわけで第三王太子殿下、私自らお見送りしてあげる」
「え?」
「エフィ、剣を構えろ! 防御壁はれ!」
「え?!」
なによ。アステリったら、あっちの味方して。
「くそが! 俺つえええモードは面倒なんだよ!」
「んーごめんねー? みなぎってきたわ」
笑う。
この笑い方と力の強さで魔王呼ばわりされてるんだよねえ。
「城半壊じゃ済まねえの知ってんだろ!」
「必殺技でるーむりー」
「どちくしょうが!」
「どういうことだ?」
瞬間、転移した。
城の上、空中。
アステリったらやり方が荒い。
私も彼も魔法が使えるから空中も自在で、思う存分やれそうだけど。
「え?!」
言われた通り剣をかまえ、防御壁はってる。アステリの言う事ちゃんときいて真面目だな。
ま、これなら大丈夫でしょ。
「いくよ?」
「え?!」
剣を振り上げる。
雷が轟いた。
今日は雷な気分か。
ちなみに日によって剣が呼ぶ属性は変わるんだよ、なんてね。
「さーいしょーかーら」
「ま、待て」
「クライマックスだぜ!」
「え?!」
振り下ろした剣から、おおよそ想像のできない雷風が吹き荒れ轟いた。
「ええ?!」
最後までついていけない第三王太子殿下が私の剣によって爆発した。
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