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35話 この子の事好きなの?
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思えば、私は守護守さまのことを彼だの人だの言っていた。
つまり私は守護守という存在を人として認識していたということになる。
事実を知らないまでも無意識化で知り得ていた…そして器は次の守護守になれる巫女。
「やくも…さくらさんも…」
「私は二人目です」
「え…」
さくらさんが言うには、最初の桜の守護守を引き継ぎ、器から守護守になったと。
さくらさんも人としての時間があった。
「さくらさんは、器が何か知ってたんですか?」
「はい、身をもって」
「最初の桜の守護守さまは…」
「器の巫女が守護守の全てを引き継げば、力をなくした守護守は消滅します」
「死ぬってことですか?」
「端的に言えば結稀さんの言う通りです」
なぜそれを平然と受け入れているのか。
守護守さまの在り方は人ではない。
巫女にしか見えない時点でそこは決定項、かといって霊体でも魂でもない、神でもなく精霊でもない。
人に近いけど人ではない。
「大半の守護守は数百年に一度器巫女が現れるから、今のほとんどが入れ替わってるかしら」
「え…?」
「この子と……ええとあの子は…ああ沈静の守護守は変わらないわね」
「二人だけ…」
「ああでもこの子の引き継ぎをすれば、次の災厄の守護守は貴方になるわ」
「え?」
災厄の守護守の器は私?
器であることは理解しているけど、私がやくのかわりだということが決まっている?
「器はそれぞれ何の守護守になるか決まった上で生まれるのよ。だから貴方は生まれた時から災厄の守護守の器なの」
「……私が守護守になったら、やくは」
「んー、さすがに今回ばかりは消滅するでしょうね。同時に貴方がこの子の神託を引き継ぐのよ」
呪をこの世から消すことを。
やくがいなくなり、私がほぼ永年を受け継ぐ。
となると、守護守との婚姻は彼の力により生きながらえる契約となるのだろう…長く一緒にいられるという中身はそこからくるのか。
やくが消え、独り呪の為に尽力するか。
二人して永年をすごすか。
「やくが消えるのは嫌です…」
「そう?」
「かといって今後永年を二人で過ごすのも嫌だし…」
人としての時間をすごし終わりを迎えたい、そう思う。
「あの…守護守は人に戻れないんですか?」
「人々の認識が守護守を作り上げたの。認識から外れれば、人ですらなくなるのよ…だから消滅する」
やくは人に戻れない。
そのまま守護守として全うするか、次に繋いで消滅するかしかない…それはあまりにもと思うのはおかしいことなのだろうか。
「さくらさん」
「はい」
「さくらさんは自分が器で、器から守護守になって……納得できました?」
「………私もかつては悩みましたし辛い思いをしました。その過去は変えられません。ですが私は守護守になり、多くの巫女を導き多くの呪を浄化する事に力を注げている事は良かったと思っています」
「そう、ですか…」
「守護守の道に後悔はありません。ですが、結稀さんが恐らく考えている事は理解出来ますし、私も同じ思いです」
器巫女と守護守の循環を止められないのか。
そこはやくが呪を消し去らないと成し得ない…でも、呪がなくなれば、器と守護守その二つ存在がなくなる可能性は多いにある。
さくらさんも全国の守護守も…やくも消える。
けど呪の消滅を反故にするのはそれもまたおかしい気がする。
そんな真剣に考えてた時、卑弥呼さまがまたあらあら言い始めた。
さっきまで少しシリアスな感じだったのにもうのほほんとしている。
「私としたことが今気づいたけど…」
「え?」
「貴方…あの子と同じなの」
「え…?」
「んー、そう、やっと生まれたのね?」」
「おい」
「何?」
「余計な事を話すな」
「あらあらあら」
なんら脈絡のない新しい話に不機嫌を呈するやく。
卑弥呼さまから聞けるだけ聞いておきたいところだけど。
「やく、今私結構真剣にやくが消えずにすむ方法考えてるんだけど」
「ない頭で考えても無駄だろう」
「それはひどい」
やくにきいても駄目そうだ。
さくらさんはさっきの言葉からして、これ以上私の考えに力添えしてくれるとは考えにくい。
卑弥呼さまにもう少し深くきいてみるしかないだろうか。
と、卑弥呼さまが嬉しそうにこちらを見ていた。
なんだか、このよくわからない感じがやくに似ている…。
「ねえ貴方」
「はい」
「この子の事好きなの?」
「はい?!」
またしても脈絡なく、なにを聞くのか。
楽しそうなのが尚更分からない。
急に話題変えたり、卑弥呼さまも大概自由だ。
この自由な2人が邪馬台国を統治し、あまつさえ倭国統一の信託を受けていたなんて…神様人選はこちらでよかったのでしょうか…そう思うと史実はなかなか凄いと思う。
「どうなの?好き?嫌い?」
「いや嫌いと言うわけではないですが、好きの部類でしょうけど、そんな特別な感情は…」
「そうなの?この子と一緒にいるし親しそうだから、てっきり」
「確かに幼少期一緒にいましたけど、再会したのは最近ですよ?そんな急に気持ち変わるわけ…」
そこにきてとてつもない違和感を感じた。
幼少期共にし学びの期間は会わず再会したのは最近、共に過ごしたのも最近。
そんな浅い仲なのに、私はやくにとても近しい親しみを感じている。
幼少期だけではおさまらない、それこそ長い時間を共に過ごした気もする。
「やっぱり好き?」
「……引っ張りますね…」
「ふふ、久しぶりだから楽しくて」
なんで邪馬台国まできて惚れた腫れたの話に花咲かせないといけないのか。
目の前の卑弥呼さまはとても楽しそうだから毒気を抜かれる。
私が真剣に考えていたことが考えすぎているんじゃないかと思える程だ。
つまり私は守護守という存在を人として認識していたということになる。
事実を知らないまでも無意識化で知り得ていた…そして器は次の守護守になれる巫女。
「やくも…さくらさんも…」
「私は二人目です」
「え…」
さくらさんが言うには、最初の桜の守護守を引き継ぎ、器から守護守になったと。
さくらさんも人としての時間があった。
「さくらさんは、器が何か知ってたんですか?」
「はい、身をもって」
「最初の桜の守護守さまは…」
「器の巫女が守護守の全てを引き継げば、力をなくした守護守は消滅します」
「死ぬってことですか?」
「端的に言えば結稀さんの言う通りです」
なぜそれを平然と受け入れているのか。
守護守さまの在り方は人ではない。
巫女にしか見えない時点でそこは決定項、かといって霊体でも魂でもない、神でもなく精霊でもない。
人に近いけど人ではない。
「大半の守護守は数百年に一度器巫女が現れるから、今のほとんどが入れ替わってるかしら」
「え…?」
「この子と……ええとあの子は…ああ沈静の守護守は変わらないわね」
「二人だけ…」
「ああでもこの子の引き継ぎをすれば、次の災厄の守護守は貴方になるわ」
「え?」
災厄の守護守の器は私?
器であることは理解しているけど、私がやくのかわりだということが決まっている?
「器はそれぞれ何の守護守になるか決まった上で生まれるのよ。だから貴方は生まれた時から災厄の守護守の器なの」
「……私が守護守になったら、やくは」
「んー、さすがに今回ばかりは消滅するでしょうね。同時に貴方がこの子の神託を引き継ぐのよ」
呪をこの世から消すことを。
やくがいなくなり、私がほぼ永年を受け継ぐ。
となると、守護守との婚姻は彼の力により生きながらえる契約となるのだろう…長く一緒にいられるという中身はそこからくるのか。
やくが消え、独り呪の為に尽力するか。
二人して永年をすごすか。
「やくが消えるのは嫌です…」
「そう?」
「かといって今後永年を二人で過ごすのも嫌だし…」
人としての時間をすごし終わりを迎えたい、そう思う。
「あの…守護守は人に戻れないんですか?」
「人々の認識が守護守を作り上げたの。認識から外れれば、人ですらなくなるのよ…だから消滅する」
やくは人に戻れない。
そのまま守護守として全うするか、次に繋いで消滅するかしかない…それはあまりにもと思うのはおかしいことなのだろうか。
「さくらさん」
「はい」
「さくらさんは自分が器で、器から守護守になって……納得できました?」
「………私もかつては悩みましたし辛い思いをしました。その過去は変えられません。ですが私は守護守になり、多くの巫女を導き多くの呪を浄化する事に力を注げている事は良かったと思っています」
「そう、ですか…」
「守護守の道に後悔はありません。ですが、結稀さんが恐らく考えている事は理解出来ますし、私も同じ思いです」
器巫女と守護守の循環を止められないのか。
そこはやくが呪を消し去らないと成し得ない…でも、呪がなくなれば、器と守護守その二つ存在がなくなる可能性は多いにある。
さくらさんも全国の守護守も…やくも消える。
けど呪の消滅を反故にするのはそれもまたおかしい気がする。
そんな真剣に考えてた時、卑弥呼さまがまたあらあら言い始めた。
さっきまで少しシリアスな感じだったのにもうのほほんとしている。
「私としたことが今気づいたけど…」
「え?」
「貴方…あの子と同じなの」
「え…?」
「んー、そう、やっと生まれたのね?」」
「おい」
「何?」
「余計な事を話すな」
「あらあらあら」
なんら脈絡のない新しい話に不機嫌を呈するやく。
卑弥呼さまから聞けるだけ聞いておきたいところだけど。
「やく、今私結構真剣にやくが消えずにすむ方法考えてるんだけど」
「ない頭で考えても無駄だろう」
「それはひどい」
やくにきいても駄目そうだ。
さくらさんはさっきの言葉からして、これ以上私の考えに力添えしてくれるとは考えにくい。
卑弥呼さまにもう少し深くきいてみるしかないだろうか。
と、卑弥呼さまが嬉しそうにこちらを見ていた。
なんだか、このよくわからない感じがやくに似ている…。
「ねえ貴方」
「はい」
「この子の事好きなの?」
「はい?!」
またしても脈絡なく、なにを聞くのか。
楽しそうなのが尚更分からない。
急に話題変えたり、卑弥呼さまも大概自由だ。
この自由な2人が邪馬台国を統治し、あまつさえ倭国統一の信託を受けていたなんて…神様人選はこちらでよかったのでしょうか…そう思うと史実はなかなか凄いと思う。
「どうなの?好き?嫌い?」
「いや嫌いと言うわけではないですが、好きの部類でしょうけど、そんな特別な感情は…」
「そうなの?この子と一緒にいるし親しそうだから、てっきり」
「確かに幼少期一緒にいましたけど、再会したのは最近ですよ?そんな急に気持ち変わるわけ…」
そこにきてとてつもない違和感を感じた。
幼少期共にし学びの期間は会わず再会したのは最近、共に過ごしたのも最近。
そんな浅い仲なのに、私はやくにとても近しい親しみを感じている。
幼少期だけではおさまらない、それこそ長い時間を共に過ごした気もする。
「やっぱり好き?」
「……引っ張りますね…」
「ふふ、久しぶりだから楽しくて」
なんで邪馬台国まできて惚れた腫れたの話に花咲かせないといけないのか。
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