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30話 対 祖父母 終焉。
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「………」
祖父母を囲うように大地をえぐった矢の跡、その外縁から火柱があがる。
炎の龍となり、高く空へ上がり、そしてその牙を祖父母へ向けて大地へかえってくる。
大きな口をあけ祖父母を飲み込む炎。
炎は大地に溶けていくも、すぐにその大地を炎で染め上げ戻ってくる。
桜の木も消え、拘束していた矢も消えた。
炎の中から祖父母が飛び出して来る。
「ふん、足を犠牲にするとはねえ」
自身の足を切り取って回避と術式返しをしたのだろう。
祖父母の足首がなくなり、そこから黒い呪が漏れ出している。
それが黒い光の粒子になっているのを見て、浄化できることを確信した。
まだ踏み込める。
術式をさらに続ける。
「待て、流夏」
「!」
追跡していた二つの矢が二人に迫る。
大地からは残った炎龍がまだ形を保ってくれていた。
その牙はまだ健在だ。
再び空へ登る為に飛翔する。
同時、炎に続いて大地から射出される沢山の黒い矢。
回り込むように高く飛んで空から祖父母へ降りてくる。
四方からの矢の嵐と登る炎龍が交わり大きな爆発が起きて、そのまま見えなくなった。
「成果をあげたか」
矢を番え様子を伺っていたら、やくが隣へ立っていた。
見たところ無傷だ…前回、片腕の喪失があったから、多少の怪我ぐらいはするものかと思ったけど、そんなのものは有り得ないとばかりの余裕ぶりだ。
さっきまで戦っていたとは思えないぐらい通常運行。
「やく、無事なの?」
「愚問だな」
くいと首を動かし促されるまま見れば、沈静の守護守さまが地に刺さっていた。
胸には剣。
やくはかつての厄災の剣を使ったのか。
守護守さまが消滅していく様は見たことがないけど、やはり粒子になって消えていく…何とも言えない気持ちが押し寄せる。
まったく動かない守護守さま、これが守護守の消滅。
呪に飲まれすぎていた鎮静の守護守さまは浄化が難しい…祖父母は神器を使えば浄化が出来る確信があるけど、存在が人と異なる守護守さまの場合はこれに値しない。
消滅を避けて拘束して、祖父母を浄化した後、浄化できる可能性にかけてみたかったけど、やくはそれを許さなかった。
「…いけない」
祖父母に居直る。
まだこちらは終わってない。気を逸らしすぎている場合ではない。
空中で起きた爆炎の中から落ちて来る二つの影…祖父母だ。
ぎりぎり受け身をとって大地に降りてきた。
最初に放った黒と金の矢が胸に刺さったまま、起き上がれずに蹲っている。
自身で切り取った足首は再生せず、そこから漏れ出す呪は先ほどと変わらず黒い粒子になって消えていく。
巫女術の行使もないところを見ると、やくの力を多く纏い胸を刺している矢が致命傷で、動きを止めて浄化を完全に行うことができている。
矢は徐々に祖父母の中に入り、その中にある呪を浄化するだろう。
「……終わりかねぇ」
「叶わなかったな…」
黒い霧となって消えていく祖父母は笑っていた。
姉兄と違い人としての部分がない、どこもかしこも呪に塗れている。
あの時と同じで人としての死ですら止められないのか…そう思うと苦しくなる。
浄化が人としての生存を確約出来るものではないと知らしめる。
私の中ではまだ浄化は人としての肉体を救うと信じているのに。
近づいて祖父母の元に膝をおる。
二人の守護守さまは止めなかった。
「私の破魔矢か」
「…はい」
「は…分かってたら、破魔の力を強めておくんじゃなかったよ」
「……」
普段の破魔矢に加え、力のコントロールや増幅具合が違っていた。
やはり祖母が使っていた頃から巫女の力…浄化の力を高め貯め込んでいたのだろう。
凄く使いやすく私の力に馴染んでくれた。
そして私の想像以上、私の持ち得る力以上に浄化を行使できた。
単純に言えば、相性がいい神器だった。
それはきっと祖母の物だからだろう…秋葉山の神聖な社の元で力をため続けた破魔の力、祖父母が今日この日、破魔矢が使われることを知っていたのだろうか。
「器…」
「私は結稀です」
「ふん…知れたこと…災厄の守護守を野放しにしてる事を後悔するよ」
「え?」
「災厄をどうにかすれば世は…」
そのための器だったのに、と悔しそうに歯噛みした。
「やく」
「言わせておけ」
無表情に腕を組み見下ろすやくからは何も感じない。
ただ寛大に受け止めてるだけだった。不敬だとは言わずに。
祖父母の目的は器である私だったはずだ。
今の言葉からだと、やくが目的になっている…けど確かに最初は器を頂きにと言っていたはずだ。
「…あの…」
「……器は器らしく言うことを聞いていればよかった」
「なんで…自分たちを犠牲にしてまで器と災厄の守護守にこだわるんですか?」
「……何故そんなことをきく」
知りたいからという返事は妥当でない気がした。
根本は違う。
最初は姉と兄を浄化したい、助けたいという思いから動いた。
私がそうしたかったからだ。
祖父母が出てきて今度は彼彼女を浄化することが目的になった。
けど、浄化して終わりじゃない。
私は自身が器であることを認識し、その上でその事実を無視して今まで通りでいようとは思えなかった。
知ることはあくまで過程…となれば祖父母に応える言葉は決まっている。
「自分で決めるためです」
私の答に薄く笑う。
その後、本当に小さく呟かれた言葉はたぶん私にしか届かなかった。
「起源を辿れ」
「え?」
ばらばらと崩れて祖父母は浄化された。
「?!」
同時に、私の視界が黒くなり揺れる。
祖父母を囲うように大地をえぐった矢の跡、その外縁から火柱があがる。
炎の龍となり、高く空へ上がり、そしてその牙を祖父母へ向けて大地へかえってくる。
大きな口をあけ祖父母を飲み込む炎。
炎は大地に溶けていくも、すぐにその大地を炎で染め上げ戻ってくる。
桜の木も消え、拘束していた矢も消えた。
炎の中から祖父母が飛び出して来る。
「ふん、足を犠牲にするとはねえ」
自身の足を切り取って回避と術式返しをしたのだろう。
祖父母の足首がなくなり、そこから黒い呪が漏れ出している。
それが黒い光の粒子になっているのを見て、浄化できることを確信した。
まだ踏み込める。
術式をさらに続ける。
「待て、流夏」
「!」
追跡していた二つの矢が二人に迫る。
大地からは残った炎龍がまだ形を保ってくれていた。
その牙はまだ健在だ。
再び空へ登る為に飛翔する。
同時、炎に続いて大地から射出される沢山の黒い矢。
回り込むように高く飛んで空から祖父母へ降りてくる。
四方からの矢の嵐と登る炎龍が交わり大きな爆発が起きて、そのまま見えなくなった。
「成果をあげたか」
矢を番え様子を伺っていたら、やくが隣へ立っていた。
見たところ無傷だ…前回、片腕の喪失があったから、多少の怪我ぐらいはするものかと思ったけど、そんなのものは有り得ないとばかりの余裕ぶりだ。
さっきまで戦っていたとは思えないぐらい通常運行。
「やく、無事なの?」
「愚問だな」
くいと首を動かし促されるまま見れば、沈静の守護守さまが地に刺さっていた。
胸には剣。
やくはかつての厄災の剣を使ったのか。
守護守さまが消滅していく様は見たことがないけど、やはり粒子になって消えていく…何とも言えない気持ちが押し寄せる。
まったく動かない守護守さま、これが守護守の消滅。
呪に飲まれすぎていた鎮静の守護守さまは浄化が難しい…祖父母は神器を使えば浄化が出来る確信があるけど、存在が人と異なる守護守さまの場合はこれに値しない。
消滅を避けて拘束して、祖父母を浄化した後、浄化できる可能性にかけてみたかったけど、やくはそれを許さなかった。
「…いけない」
祖父母に居直る。
まだこちらは終わってない。気を逸らしすぎている場合ではない。
空中で起きた爆炎の中から落ちて来る二つの影…祖父母だ。
ぎりぎり受け身をとって大地に降りてきた。
最初に放った黒と金の矢が胸に刺さったまま、起き上がれずに蹲っている。
自身で切り取った足首は再生せず、そこから漏れ出す呪は先ほどと変わらず黒い粒子になって消えていく。
巫女術の行使もないところを見ると、やくの力を多く纏い胸を刺している矢が致命傷で、動きを止めて浄化を完全に行うことができている。
矢は徐々に祖父母の中に入り、その中にある呪を浄化するだろう。
「……終わりかねぇ」
「叶わなかったな…」
黒い霧となって消えていく祖父母は笑っていた。
姉兄と違い人としての部分がない、どこもかしこも呪に塗れている。
あの時と同じで人としての死ですら止められないのか…そう思うと苦しくなる。
浄化が人としての生存を確約出来るものではないと知らしめる。
私の中ではまだ浄化は人としての肉体を救うと信じているのに。
近づいて祖父母の元に膝をおる。
二人の守護守さまは止めなかった。
「私の破魔矢か」
「…はい」
「は…分かってたら、破魔の力を強めておくんじゃなかったよ」
「……」
普段の破魔矢に加え、力のコントロールや増幅具合が違っていた。
やはり祖母が使っていた頃から巫女の力…浄化の力を高め貯め込んでいたのだろう。
凄く使いやすく私の力に馴染んでくれた。
そして私の想像以上、私の持ち得る力以上に浄化を行使できた。
単純に言えば、相性がいい神器だった。
それはきっと祖母の物だからだろう…秋葉山の神聖な社の元で力をため続けた破魔の力、祖父母が今日この日、破魔矢が使われることを知っていたのだろうか。
「器…」
「私は結稀です」
「ふん…知れたこと…災厄の守護守を野放しにしてる事を後悔するよ」
「え?」
「災厄をどうにかすれば世は…」
そのための器だったのに、と悔しそうに歯噛みした。
「やく」
「言わせておけ」
無表情に腕を組み見下ろすやくからは何も感じない。
ただ寛大に受け止めてるだけだった。不敬だとは言わずに。
祖父母の目的は器である私だったはずだ。
今の言葉からだと、やくが目的になっている…けど確かに最初は器を頂きにと言っていたはずだ。
「…あの…」
「……器は器らしく言うことを聞いていればよかった」
「なんで…自分たちを犠牲にしてまで器と災厄の守護守にこだわるんですか?」
「……何故そんなことをきく」
知りたいからという返事は妥当でない気がした。
根本は違う。
最初は姉と兄を浄化したい、助けたいという思いから動いた。
私がそうしたかったからだ。
祖父母が出てきて今度は彼彼女を浄化することが目的になった。
けど、浄化して終わりじゃない。
私は自身が器であることを認識し、その上でその事実を無視して今まで通りでいようとは思えなかった。
知ることはあくまで過程…となれば祖父母に応える言葉は決まっている。
「自分で決めるためです」
私の答に薄く笑う。
その後、本当に小さく呟かれた言葉はたぶん私にしか届かなかった。
「起源を辿れ」
「え?」
ばらばらと崩れて祖父母は浄化された。
「?!」
同時に、私の視界が黒くなり揺れる。
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