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20話 対 鏑木美智子 後編
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「―」
巫女術をまじえる。
私と叔母の間の大地が爆ぜ続ける。
土煙をあげて目眩ましをしつつ、叔母の視界から外れるよう、そこから薙刀を持って駆ける。
叔母は動かずその場に立っていた。
薙刀が叔母を襲う。
「!」
土煙の中、叔母が受け止めたのは薙刀だけだ。
薙刀を投擲し、別方向へ移動して次の攻撃に入る。
大地から細い縄状のものが飛びだし土煙の中うねる。
それはそのまま叔母を拘束しようとしなりながら飛び掛かっていくが、見えない速さで全て切られていく。
大地を爆ぜ土煙はあげ続けたまま、なるたけ叔母に動かれないようにして、叔母の頭上から薙刀を持って仕掛けるが、それも薙刀をはじき飛ばされて首を切られる。
土で作った自分の分身だったからよかったものの、なにも躊躇いなく首を切りにかかるって…生身でやらなくてよかった。
そんな中、土の中から手を出して叔母の足を掴もうとするが、それも刀によって切られる。
切られた手は土くれになる間もなく縄状に変化しそのまま叔母の刀を腕ごと拘束した。
ここだ。
叔母の死角になる側から接近する。
叔母は私の接近に気づいてはいたけど、私の術式のが早かった。
叔母と私の間で爆発。
さっき叔母がやってたものと同じ。
ただ精度はよくないから私も爆発に飲まれるけど…当然痛みはあるけど、この際多少の傷は目を瞑る。
叔母はすぐに刀の拘束を解いて私と反対側へ距離をとった。
そこには控えていた網がある。
あらかじめ組んでおいたそこに触れて叔母は初めて気づいたようだった。
土煙の効果があったよう。
網は叔母が触れれば拘束しようと動く。
そこを私はさらに追った。
刀ですぐに拘束を解き、私に向かい直そうも彼女の頭上が土煙の中光る。
「!」
真っすぐ下りてくる薙刀が跳ね返され私の手元に戻ってくる。
薙刀は壊れず、私の手元。うまい具合に持ち直して、そのまま突っ込む。
叔母の足元が爆ぜて土を浴びた所、首元を狙って薙刀を振るえば独特の金属音がした。
叔母が刀でぎりぎりで受け止めている…叔母からすれば余裕だったのかもしれないけど。
叔母は無表情のまま、ゆっくり私の薙刀を首元から遠ざけた。
そして無表情のまま少し伏し目がちに私の薙刀を見る…顔つきが違う。
「止めにしましょう」
「え?」
突然といえば突然。
けど最後の刀で受け止めたところで覇気はなくなっていた。
思うところがあったとしても、そんな急に諦めるだろうか。
「災厄の守護守がいる限り、貴方を易々と死なせる事は出来ないでしょう」
でも、やくは私を守るために動かない。
力は契約通り授けてもそれ以上はないし、あまつさえ自分が戦いたいという思考の持ち主だ。
ただの理由づけにしては弱い。
けど叔母がこれ以上、殺し合いに身を投じないことになれば助かる。
「死んで再び甦れば容易に強さを得る事が出来ますが」
「必要ない」
「やく?」
やくがこうもはっきり言うのも今一つ分からないし、叔母の言うこともいまいちピンとこない。
確かに臨死体験を経て力の質が変わるという話は聞いたことがあるけど…にしたって叔母の殺意は本物だった。
ここにきてないものにできるのだろうか。
叔母の表情からはなにも見えない。
叔母は刀をしまい、こちらに目線をよこすが、先ほどとは違う光を宿していた。
いつも学びの場で見る叔母でもなく、ただ優しさはそのまま在るような。
「結稀さん、貴方は器です」
「は、はい」
「器は守護守の力を取り込むことが出来ます」
「え…?」
「取り込むことができると言うことは、守護守の契約もなく守護守からの制約もなく自由に守護守の力が使えるということ」
「自由に力を?」
頷く叔母の表情は少し硬かった。
やはり器の事は箝口令が敷かれているし、よく考えて口にしてるようだった。
「…力を勝手に使われた守護守さまは…どうなりますか?」
守護守さまは力を勝手に使われてどうなるのか。
当然お怒りになるのは目に見えているけど、それ以前に力の一部が器にいくだけなのか、それともただ借りるだけなのか。
それによっては私は器としてどう振る舞うかを考えないといけない。
「その時放った力を手に入れるだけです。その場限りなら守護守の存在に大きく影響することはありません」
「そうですか…」
叔母は伏し目がちに小さく溜息を1つ吐いた。
器について、一介の巫女である私が知らなくても結界の管理者の立場になれば知り得るのだろうか。
「貴方の祖父母の後ろにまだいます」
「え…?」
「三条へ向かいなさい。姉兄のいた場所です」
私とやくの足元が輝く。
転移の術式…複数人同時に移動できるなんて…これが管理者。
けど私達には制約がある。
「私達ここから出られないんです」
「…責任は私が取ります。これは貴方がやらなければいけないことですから」
「叔母さま?!」
「桜」
「はい」
「結稀について行って力になってくださるかしら?」
「はい」
さくらさんが加わる。
聞きたいことはまだあるのに、私は言葉を発せないまま三条へ飛ばされた。
姉兄が呪にまみれるまでいた場所。
巫女術をまじえる。
私と叔母の間の大地が爆ぜ続ける。
土煙をあげて目眩ましをしつつ、叔母の視界から外れるよう、そこから薙刀を持って駆ける。
叔母は動かずその場に立っていた。
薙刀が叔母を襲う。
「!」
土煙の中、叔母が受け止めたのは薙刀だけだ。
薙刀を投擲し、別方向へ移動して次の攻撃に入る。
大地から細い縄状のものが飛びだし土煙の中うねる。
それはそのまま叔母を拘束しようとしなりながら飛び掛かっていくが、見えない速さで全て切られていく。
大地を爆ぜ土煙はあげ続けたまま、なるたけ叔母に動かれないようにして、叔母の頭上から薙刀を持って仕掛けるが、それも薙刀をはじき飛ばされて首を切られる。
土で作った自分の分身だったからよかったものの、なにも躊躇いなく首を切りにかかるって…生身でやらなくてよかった。
そんな中、土の中から手を出して叔母の足を掴もうとするが、それも刀によって切られる。
切られた手は土くれになる間もなく縄状に変化しそのまま叔母の刀を腕ごと拘束した。
ここだ。
叔母の死角になる側から接近する。
叔母は私の接近に気づいてはいたけど、私の術式のが早かった。
叔母と私の間で爆発。
さっき叔母がやってたものと同じ。
ただ精度はよくないから私も爆発に飲まれるけど…当然痛みはあるけど、この際多少の傷は目を瞑る。
叔母はすぐに刀の拘束を解いて私と反対側へ距離をとった。
そこには控えていた網がある。
あらかじめ組んでおいたそこに触れて叔母は初めて気づいたようだった。
土煙の効果があったよう。
網は叔母が触れれば拘束しようと動く。
そこを私はさらに追った。
刀ですぐに拘束を解き、私に向かい直そうも彼女の頭上が土煙の中光る。
「!」
真っすぐ下りてくる薙刀が跳ね返され私の手元に戻ってくる。
薙刀は壊れず、私の手元。うまい具合に持ち直して、そのまま突っ込む。
叔母の足元が爆ぜて土を浴びた所、首元を狙って薙刀を振るえば独特の金属音がした。
叔母が刀でぎりぎりで受け止めている…叔母からすれば余裕だったのかもしれないけど。
叔母は無表情のまま、ゆっくり私の薙刀を首元から遠ざけた。
そして無表情のまま少し伏し目がちに私の薙刀を見る…顔つきが違う。
「止めにしましょう」
「え?」
突然といえば突然。
けど最後の刀で受け止めたところで覇気はなくなっていた。
思うところがあったとしても、そんな急に諦めるだろうか。
「災厄の守護守がいる限り、貴方を易々と死なせる事は出来ないでしょう」
でも、やくは私を守るために動かない。
力は契約通り授けてもそれ以上はないし、あまつさえ自分が戦いたいという思考の持ち主だ。
ただの理由づけにしては弱い。
けど叔母がこれ以上、殺し合いに身を投じないことになれば助かる。
「死んで再び甦れば容易に強さを得る事が出来ますが」
「必要ない」
「やく?」
やくがこうもはっきり言うのも今一つ分からないし、叔母の言うこともいまいちピンとこない。
確かに臨死体験を経て力の質が変わるという話は聞いたことがあるけど…にしたって叔母の殺意は本物だった。
ここにきてないものにできるのだろうか。
叔母の表情からはなにも見えない。
叔母は刀をしまい、こちらに目線をよこすが、先ほどとは違う光を宿していた。
いつも学びの場で見る叔母でもなく、ただ優しさはそのまま在るような。
「結稀さん、貴方は器です」
「は、はい」
「器は守護守の力を取り込むことが出来ます」
「え…?」
「取り込むことができると言うことは、守護守の契約もなく守護守からの制約もなく自由に守護守の力が使えるということ」
「自由に力を?」
頷く叔母の表情は少し硬かった。
やはり器の事は箝口令が敷かれているし、よく考えて口にしてるようだった。
「…力を勝手に使われた守護守さまは…どうなりますか?」
守護守さまは力を勝手に使われてどうなるのか。
当然お怒りになるのは目に見えているけど、それ以前に力の一部が器にいくだけなのか、それともただ借りるだけなのか。
それによっては私は器としてどう振る舞うかを考えないといけない。
「その時放った力を手に入れるだけです。その場限りなら守護守の存在に大きく影響することはありません」
「そうですか…」
叔母は伏し目がちに小さく溜息を1つ吐いた。
器について、一介の巫女である私が知らなくても結界の管理者の立場になれば知り得るのだろうか。
「貴方の祖父母の後ろにまだいます」
「え…?」
「三条へ向かいなさい。姉兄のいた場所です」
私とやくの足元が輝く。
転移の術式…複数人同時に移動できるなんて…これが管理者。
けど私達には制約がある。
「私達ここから出られないんです」
「…責任は私が取ります。これは貴方がやらなければいけないことですから」
「叔母さま?!」
「桜」
「はい」
「結稀について行って力になってくださるかしら?」
「はい」
さくらさんが加わる。
聞きたいことはまだあるのに、私は言葉を発せないまま三条へ飛ばされた。
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