器巫女と最強の守護守

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7話 対 姉兄

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災厄の守護守と契約にこじつけ、私はそこで安心してしまった。
その隙を狙って姉兄の結界に飲まれてしまった…なんとか2人の守護守さまの力で脱出できたものの、姉兄はこと巫女術においては優秀すぎる。
守護守ですら認識を歪めることが出来る結界なんてそう作れるものじゃない。

年の離れた姉と兄との記憶は天神にいたときだけだから、巫女としての話は耳に挟む程度だった。
富士へ行ってからはたまに連絡取り合ってただけで会うことすらなくて。
優しい姉兄だという記憶しかない中で、彼彼女はどうして呪を多く取り込み、守護守さまに呪をかけようとしたのだろう。
知りたくても会話すらできる状況でない二人にきくことはできない。
今やるべきはやその力を借りて大きく膨れ上がった呪を浄化することだ。

「さて、どうする」

至極楽しそうにやくは笑う。
ずっと社に籠っているのは性に合わないと私が小さい頃よく言っていたな。
今こうして外に出て動くことができるのは彼にとっては嬉しくてしかたないことなのかもしれない。

「…結界を作る」
「ふむ」
「さくらさん」
「えぇ」

やくの力を借りて、もう1人のさくらさんの所へ。
桜の守護守であるさくらさんは桜のあるとこなら分身に似た状態で複数存在できる。
1人は私の傍へ、もう1人は足止めをしてくれていた。
あの呪の量をたった一人で。
動けずもがいてるだけの呪たちはさくらさんの力…網状に張り巡らされた格子の中におさまっていた。
ここが富士であれば結界の力で、足止め程度におさまることはなかっただろう。
着くと呪を前に立っていたさくらさんと私の隣にいるさくらさんが重なり1つになった。

「さくらさん!」
「…私は大丈夫ですよ」

相手の固有結界の中で戦って、こちらでは私を守護してくれてかつ他の呪たちを足止めしてくれている。
相当、力の配分や調整が難しいはず。

「桜…お前何を手間取っている」

その程度の呪なら消せるだろうとやく。
それに苦く笑いながらさくらさんは首を横にふった。

「この呪…守護守の力に対する抵抗を所持しています」
「抵抗?」
「人間でいうところの免疫でしょうか…。私達の力をいくらか相殺できている…か…取り込んでいるように見えます」

なんだ、それ。
そんな呪はない。守護守さまは人間じゃない、神様や仏様ではないけれど、見えない大きな力であることには変わりない。
それに抵抗できる力は人間の生み出すものにはないはずなのに。

「大方、こいつの姉だか兄だかが原因だろう」
「恐らく」
「え…」

黒い人型を生み出し、呪として膨れ上がった原因であり大元の行使者…姉さんと兄さんが?

「まぁよい。結稀、さっさとしろ」
「あ、うん!」

そうだった。
まずはこちらのステージに持ち込まないと…あちらが私に仕掛けてきたように私の力で作る固有結界の中に呪もろとも姉兄を引きずりこむ。
固有結界の中に引きずりこめれば、行使した側の私達が有利。
さっきまで私達が黒い人型に追い詰められていたように。

「―」

巫女術を行使するにあたり祝詞を献上する。
固有結界の行使は相当の練度をつまないと、祝詞なしには出来ない。
私は学びの期間中だから、固有結界を展開できるやっとの練度。
巫女の中では年数が浅いし未熟者ということ、まだまだ半人前。
祝詞の献上を超えて結界の術式を行使出来るには学びを卒業して数年はかかるだろう。
術式行使の中、半歩後ろにいるやくの力を感じる。
彼は言った通り、私に力を貸してくれている。

「―」

終われば瞬時に場所が変わる。
天神、やくの奉られている社を前にした場所。

「なかなかいい場所を選んだな」

彼は自分の奉られている社を固有結界にされて上機嫌だった。
やくの力を借りてるから、ここのイメージでいったほうがやりやすい。

「さくらさん」
「よろしいのですか?」
「はい」

固有結界内であれば、今の私でも術式は必要なくなる。巫女術も自由自在だ。

「やく」
「わかっている」

押さえ付けてた網が消えた。
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