7 / 62
7話 対 姉兄
しおりを挟む
災厄の守護守と契約にこじつけ、私はそこで安心してしまった。
その隙を狙って姉兄の結界に飲まれてしまった…なんとか2人の守護守さまの力で脱出できたものの、姉兄はこと巫女術においては優秀すぎる。
守護守ですら認識を歪めることが出来る結界なんてそう作れるものじゃない。
年の離れた姉と兄との記憶は天神にいたときだけだから、巫女としての話は耳に挟む程度だった。
富士へ行ってからはたまに連絡取り合ってただけで会うことすらなくて。
優しい姉兄だという記憶しかない中で、彼彼女はどうして呪を多く取り込み、守護守さまに呪をかけようとしたのだろう。
知りたくても会話すらできる状況でない二人にきくことはできない。
今やるべきはやその力を借りて大きく膨れ上がった呪を浄化することだ。
「さて、どうする」
至極楽しそうにやくは笑う。
ずっと社に籠っているのは性に合わないと私が小さい頃よく言っていたな。
今こうして外に出て動くことができるのは彼にとっては嬉しくてしかたないことなのかもしれない。
「…結界を作る」
「ふむ」
「さくらさん」
「えぇ」
やくの力を借りて、もう1人のさくらさんの所へ。
桜の守護守であるさくらさんは桜のあるとこなら分身に似た状態で複数存在できる。
1人は私の傍へ、もう1人は足止めをしてくれていた。
あの呪の量をたった一人で。
動けずもがいてるだけの呪たちはさくらさんの力…網状に張り巡らされた格子の中におさまっていた。
ここが富士であれば結界の力で、足止め程度におさまることはなかっただろう。
着くと呪を前に立っていたさくらさんと私の隣にいるさくらさんが重なり1つになった。
「さくらさん!」
「…私は大丈夫ですよ」
相手の固有結界の中で戦って、こちらでは私を守護してくれてかつ他の呪たちを足止めしてくれている。
相当、力の配分や調整が難しいはず。
「桜…お前何を手間取っている」
その程度の呪なら消せるだろうとやく。
それに苦く笑いながらさくらさんは首を横にふった。
「この呪…守護守の力に対する抵抗を所持しています」
「抵抗?」
「人間でいうところの免疫でしょうか…。私達の力をいくらか相殺できている…か…取り込んでいるように見えます」
なんだ、それ。
そんな呪はない。守護守さまは人間じゃない、神様や仏様ではないけれど、見えない大きな力であることには変わりない。
それに抵抗できる力は人間の生み出すものにはないはずなのに。
「大方、こいつの姉だか兄だかが原因だろう」
「恐らく」
「え…」
黒い人型を生み出し、呪として膨れ上がった原因であり大元の行使者…姉さんと兄さんが?
「まぁよい。結稀、さっさとしろ」
「あ、うん!」
そうだった。
まずはこちらのステージに持ち込まないと…あちらが私に仕掛けてきたように私の力で作る固有結界の中に呪もろとも姉兄を引きずりこむ。
固有結界の中に引きずりこめれば、行使した側の私達が有利。
さっきまで私達が黒い人型に追い詰められていたように。
「―」
巫女術を行使するにあたり祝詞を献上する。
固有結界の行使は相当の練度をつまないと、祝詞なしには出来ない。
私は学びの期間中だから、固有結界を展開できるやっとの練度。
巫女の中では年数が浅いし未熟者ということ、まだまだ半人前。
祝詞の献上を超えて結界の術式を行使出来るには学びを卒業して数年はかかるだろう。
術式行使の中、半歩後ろにいるやくの力を感じる。
彼は言った通り、私に力を貸してくれている。
「―」
終われば瞬時に場所が変わる。
天神、やくの奉られている社を前にした場所。
「なかなかいい場所を選んだな」
彼は自分の奉られている社を固有結界にされて上機嫌だった。
やくの力を借りてるから、ここのイメージでいったほうがやりやすい。
「さくらさん」
「よろしいのですか?」
「はい」
固有結界内であれば、今の私でも術式は必要なくなる。巫女術も自由自在だ。
「やく」
「わかっている」
押さえ付けてた網が消えた。
その隙を狙って姉兄の結界に飲まれてしまった…なんとか2人の守護守さまの力で脱出できたものの、姉兄はこと巫女術においては優秀すぎる。
守護守ですら認識を歪めることが出来る結界なんてそう作れるものじゃない。
年の離れた姉と兄との記憶は天神にいたときだけだから、巫女としての話は耳に挟む程度だった。
富士へ行ってからはたまに連絡取り合ってただけで会うことすらなくて。
優しい姉兄だという記憶しかない中で、彼彼女はどうして呪を多く取り込み、守護守さまに呪をかけようとしたのだろう。
知りたくても会話すらできる状況でない二人にきくことはできない。
今やるべきはやその力を借りて大きく膨れ上がった呪を浄化することだ。
「さて、どうする」
至極楽しそうにやくは笑う。
ずっと社に籠っているのは性に合わないと私が小さい頃よく言っていたな。
今こうして外に出て動くことができるのは彼にとっては嬉しくてしかたないことなのかもしれない。
「…結界を作る」
「ふむ」
「さくらさん」
「えぇ」
やくの力を借りて、もう1人のさくらさんの所へ。
桜の守護守であるさくらさんは桜のあるとこなら分身に似た状態で複数存在できる。
1人は私の傍へ、もう1人は足止めをしてくれていた。
あの呪の量をたった一人で。
動けずもがいてるだけの呪たちはさくらさんの力…網状に張り巡らされた格子の中におさまっていた。
ここが富士であれば結界の力で、足止め程度におさまることはなかっただろう。
着くと呪を前に立っていたさくらさんと私の隣にいるさくらさんが重なり1つになった。
「さくらさん!」
「…私は大丈夫ですよ」
相手の固有結界の中で戦って、こちらでは私を守護してくれてかつ他の呪たちを足止めしてくれている。
相当、力の配分や調整が難しいはず。
「桜…お前何を手間取っている」
その程度の呪なら消せるだろうとやく。
それに苦く笑いながらさくらさんは首を横にふった。
「この呪…守護守の力に対する抵抗を所持しています」
「抵抗?」
「人間でいうところの免疫でしょうか…。私達の力をいくらか相殺できている…か…取り込んでいるように見えます」
なんだ、それ。
そんな呪はない。守護守さまは人間じゃない、神様や仏様ではないけれど、見えない大きな力であることには変わりない。
それに抵抗できる力は人間の生み出すものにはないはずなのに。
「大方、こいつの姉だか兄だかが原因だろう」
「恐らく」
「え…」
黒い人型を生み出し、呪として膨れ上がった原因であり大元の行使者…姉さんと兄さんが?
「まぁよい。結稀、さっさとしろ」
「あ、うん!」
そうだった。
まずはこちらのステージに持ち込まないと…あちらが私に仕掛けてきたように私の力で作る固有結界の中に呪もろとも姉兄を引きずりこむ。
固有結界の中に引きずりこめれば、行使した側の私達が有利。
さっきまで私達が黒い人型に追い詰められていたように。
「―」
巫女術を行使するにあたり祝詞を献上する。
固有結界の行使は相当の練度をつまないと、祝詞なしには出来ない。
私は学びの期間中だから、固有結界を展開できるやっとの練度。
巫女の中では年数が浅いし未熟者ということ、まだまだ半人前。
祝詞の献上を超えて結界の術式を行使出来るには学びを卒業して数年はかかるだろう。
術式行使の中、半歩後ろにいるやくの力を感じる。
彼は言った通り、私に力を貸してくれている。
「―」
終われば瞬時に場所が変わる。
天神、やくの奉られている社を前にした場所。
「なかなかいい場所を選んだな」
彼は自分の奉られている社を固有結界にされて上機嫌だった。
やくの力を借りてるから、ここのイメージでいったほうがやりやすい。
「さくらさん」
「よろしいのですか?」
「はい」
固有結界内であれば、今の私でも術式は必要なくなる。巫女術も自由自在だ。
「やく」
「わかっている」
押さえ付けてた網が消えた。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
本当の貴方
松石 愛弓
恋愛
伯爵令嬢アリシアは、10年来の婚約者エリオットに突然、婚約破棄を言い渡される。
貴方に愛されていると信じていたのに――。
エリオットの豹変ぶりにアリシアは…。
シリアス寄りです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる