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45話 服を全部脱いで過ごしてみない?

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「お腹いっぱいだけど、少しずつならいけるでしょ」

 と言いつつ、別のものを出す。
 時間をかければ多少お腹は減るから、たまにつまむことができるものを選んだ。

「これは?」

 不思議そうに眺めるあたり、野営ではでないのかな?
 保存食とはまた別物に見えるのかもしれない。

「燻製だよ」
「?」
「私ができることっていまいち浮かばなくて」

 必死に考えて、ウエイトがあるのは二つあった。
 一つ目が娯楽の要素が強いキャンプだ。

「燻製箱から始めて、燻製を作ったの」
「また珍しいものを」

 貴族令嬢がするものじゃないのは重々分かっている。でも私にとって騎士たちのするような野営ではないキャンプはレイオンよりもレベルが上だ。
 娯楽という面から見たキャンプの提供はレイオンだって初めてだろうし、新鮮のはず。
 もう少し時間が経ったら、ちゃんとしたキャンプをやりたい。
 もっと言うならエピシミア辺境伯夫妻が提供しているラレスニサト湖の湖畔キャンプをやりたい。
 それはさておき、レイオンに説明しないとだ。

「ちゃんと自分で狩ってきたよ」
「狩り? 危ないことを?」
「ちゃんと付き添いと護衛つけたし、聖女様に連絡とって教えてもらったし」

 聖女様はなんでも知っている。マタギなるものをやっていたことをがあるらしく、まあつまり狩りが大変得意だった。コツを教えてもらって後はひたすらトライアンドエラーで見事本日のメイン燻製をゲットした流れだ。
 さすがに直近の件があったから一人で行動することはできない。普段はフォーが一緒だからいいけど今回はバトレルやヴォイソスがフォーは連れていけないと言うので諦めた。いつも行かない場所なら警戒した方が良いだろうと踏んで、慎重かつ厳重さを上げて屋敷から人を出してもらい狩りに挑んだ。

「屋敷のシェフみたく豪華な料理やケーキは作れないから、この部屋で二人お酒飲みながら過ごせないかなって」
「酒?」
「ワインと和酒」

 聖女様経由で取り寄せた和酒は前に私が口にした時より弱いものにしてもらった。一杯飲んだだけで脱ぎたくなる強さのお酒だったけど、これなら即脱衣にはならないだろうし、そもそもその脱衣が今回一番重要だ。

「ワインはレイオンの生まれた年のものにしたの」
「そうか」

 お酒につまみありなら、夜過ごすにはなかなかいいと思う。

「これは肉か」
「そうそう」

 聖女様ブランドになかったので燻製チップから作った。聖女様とのやり取りでは、今後燻製チップは販売を視野に入れてくれるそうで、出たらすぐ買おうと思う。
 と、レイオンが一つ口にした。

「香りがいいな」
「本当?」

 嬉しいことを言ってくれる。
 燻製と言えば香りは結構大事なウエイトがあると思っているし、実際食べて口の中で広がるのが非常に良い。
 香りはあるけど、お肉ならフォーは食べられるかな? そういえばフォーのお誕生日も祝ってなかった。レイオンへの誕生日プレゼントお裾分けって言ったら機嫌悪くなりそうだ。フォーもご主人様に似て焼きもち焼きだから。

「どうした?」
「フォーの誕生日いつかなって」

 言って、はっと気づく。
 レイオンと二人きりなのにフォーの話はだめだ。焼きもち焼くって言ってたし、今日はレイオンが主役なのにうっかり口にしてしまった。

「ごめん、フォーの話はしない方がいいね」
「……今日だ」
「え?」
「フォティアの誕生日」
「レイオンと同じ?」
「そうだ」

 なら今日あげればよかった。
 毎日会えるから、すぐに作って持って行ってあげよう。決してお裾分けではなくて、それぞれ同じものを作ったって説明もすれば焼きもち焼かないはず。

「あ、でもフォーの話はやめね。今はレイオンの誕生日を祝ってるから」
「……そうか」

 ちょっと嬉しそう。
 やっぱり焼きもち焼いてるのね。相手は飼い犬なのに相変わらず不思議だ。
 レイオンがテーブルの奥のポットを手に取る為に少し腰を浮かせる。
 よし、気を取り直して最後のプレゼントだ。

「でね、もう一つあるんだけど」
「?」
「ここまで信頼関係を築けたってことで、お互い今まで着てた服を全部脱いで過ごしてみない?」

 自宅裸族を極めようよとやる気満々で誘ってみる。
 笑顔の私に対し、ぴしっと音を立ててレイオンの身体が強張った。中途半端に腰を上げたままポットに後少しで手が届くところで止まってしまう。

「…………は?」
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