14 / 83
14話 裸族仲間ができる
しおりを挟む
「名前で、呼んでほしい」
ここにきて、その話題? なんで?
「ええと、レイオン様?」
「様はいらない」
「……レイオン?」
「ああ」
無表情の割に満足そうな雰囲気あるからいいのかな。本当妙な感じね。
「君が良ければなんだが」
「はい」
「たまにでいい。これからこうして同じベッドで寝てもいいだろうか」
「ふえ?」
急なお願いに変な声出た。
いやいや無理でしょ。裸族といえど人に見られるのはちょっと。
それ以前に仲を深めてないのに添い寝? むしろ初夜を希望して言ってる?
「やはり難しいだろうか」
「い、え、そういうわけではないんですけど」
「君は裸で構わない」
「人前ではちょっと……」
というか、初夜希望ではないの? 彼はただ一緒に寝たいと言うだけだった。
この人性欲ないの? 裸の異性いたら、好き嫌い関係なくその気になることもあるんじゃないの?
「条件を破るのはやはり駄目か」
「いえ! その条件は気にしないでというか偽りだったわけですし、その、一人で裸の時間が」
「君と親交を深めたい」
うわあ。
それここで話すことじゃない。
でも今回お騒がせした挙句、当主自ら捜しに来てくれて、しかも助けてもらった。
方向性が少し違うけど私が裸族であることを尊重してくれているし、たぶん添い寝も体冷やして云々があったからしてくれたのだと思うし、なにより目の前から悪意を感じない。
「……分かりました」
真っ直ぐ逸らすことのない視線に負けた。
妥協点は週の半分以下、添い寝までで。裸で構わないと言うけど、さすがに今の親密度からはなにかしら着る方向でいくことにした。
「良かった」
「そうですか」
「ああ……この姿で寝てみて悪くないと思ったから」
「んん? どういうことですか?」
「服を着ないで寝るのも悪くないかなと」
なんということ。
回りくどくて解らなかったけど、彼は完全に裸族に目覚めたということね。そして裸族ライフのため、私を先輩として敬い裸族のなんたるかを学ぶため、添い寝時間をほしいと言ってきたに違いない。これは裸族二十年以上の歴を持つ私が導く案件だ。
あ、そしたらお互い裸である方がいいの? さすがにしょっぱなからは気持ち追いつかないから、徐々に自室裸族他人の前を越えていくのがいいかな? そしたら私も裸族として一つレベルアップできる気がする。
「君が裸でいたいのも少しは分かったかもしれない」
なんということ。完全に同士だ。
一生分かり合える人なんていないと思っていた裸習慣に、初めて理解してくれる人が現れた。
「う、」
「?」
「嬉しいです!」
がばりと上半身起き上がる。
私の枕用に投げ出されていた彼の手を両手で包んで、前のめりに見下ろす。
「裸はいいですよ!」
「……」
「絶対ハマります! いやもう片足突っ込んでるんだと思うですけど!」
「……」
「最高ですから! 私もできること手伝います!」
「……」
「最初からいきなり全裸じゃなくてもいいと思いますけど、寝る以外も裸で過ごすのがおすすめでっ……?」
と、彼の視線が真っ直ぐのままかたまっていた。それを追うと、半分起き上がった上半身が上掛けから出ている。
挙げ句熱心に訴えようとした勢いで私の胸が迫ってくる感じになっていたはず。
「ひえ」
寝ている彼の目の前が自分の胸だったとは、なんてはしたない。恥ずかしい限りだ。
握る手を放して、素早く上掛けの中に避難した。まあ目の前の彼は見える胸元隠そうともしてないんだけど、他人の前裸族のレベルは彼の方が潜在的に上だったってことにしておこう。
「すみません、御見苦しいものを」
「……いや」
彼は反対側へ向いてそのまま起き上がってベッドから出ていく。
当たり前だけど、本当に上半身裸だった。背中しっかりしてるな。触ったらかたそう。
「今後この部屋に入る時は前もって君の侍女を通す」
「分かりました」
別にいいんだけどなー、ノックさえしてくれればと思ったけど言わなかった。
ノック忘れられても困るし。
レイオンはソファに置いていたシャツをとって袖を通した。人の着替えって意外とえろいのね。
「食事はとれそうか?」
「はい」
「ここで食べるか?」
「いいえ、大丈夫です」
そうかと静かに応え、ソファに腰を下ろしたレイオンは、こちらを見ずに会話を続けた。
「ペズギア様はお元気そうだった」
寝起きの衝撃ですっかり忘れていた。
そうだ、元は祖母が倒れたと聞いて、気持ちが落ち着かなくて外へ出たところから始まっている。
話すタイミングを見ていたのかな。さっきまで隣に寝ていた時と纏う空気が違う気がした。
レイオンは母の安否を詳細に教えてくれて、私はやっとそこで祖母について安心する。
「御祖母様、よかった……」
「ああ」
胸を撫で下ろす私を見て彼の肩から力が抜けたのが分かった。
ここにきて、その話題? なんで?
「ええと、レイオン様?」
「様はいらない」
「……レイオン?」
「ああ」
無表情の割に満足そうな雰囲気あるからいいのかな。本当妙な感じね。
「君が良ければなんだが」
「はい」
「たまにでいい。これからこうして同じベッドで寝てもいいだろうか」
「ふえ?」
急なお願いに変な声出た。
いやいや無理でしょ。裸族といえど人に見られるのはちょっと。
それ以前に仲を深めてないのに添い寝? むしろ初夜を希望して言ってる?
「やはり難しいだろうか」
「い、え、そういうわけではないんですけど」
「君は裸で構わない」
「人前ではちょっと……」
というか、初夜希望ではないの? 彼はただ一緒に寝たいと言うだけだった。
この人性欲ないの? 裸の異性いたら、好き嫌い関係なくその気になることもあるんじゃないの?
「条件を破るのはやはり駄目か」
「いえ! その条件は気にしないでというか偽りだったわけですし、その、一人で裸の時間が」
「君と親交を深めたい」
うわあ。
それここで話すことじゃない。
でも今回お騒がせした挙句、当主自ら捜しに来てくれて、しかも助けてもらった。
方向性が少し違うけど私が裸族であることを尊重してくれているし、たぶん添い寝も体冷やして云々があったからしてくれたのだと思うし、なにより目の前から悪意を感じない。
「……分かりました」
真っ直ぐ逸らすことのない視線に負けた。
妥協点は週の半分以下、添い寝までで。裸で構わないと言うけど、さすがに今の親密度からはなにかしら着る方向でいくことにした。
「良かった」
「そうですか」
「ああ……この姿で寝てみて悪くないと思ったから」
「んん? どういうことですか?」
「服を着ないで寝るのも悪くないかなと」
なんということ。
回りくどくて解らなかったけど、彼は完全に裸族に目覚めたということね。そして裸族ライフのため、私を先輩として敬い裸族のなんたるかを学ぶため、添い寝時間をほしいと言ってきたに違いない。これは裸族二十年以上の歴を持つ私が導く案件だ。
あ、そしたらお互い裸である方がいいの? さすがにしょっぱなからは気持ち追いつかないから、徐々に自室裸族他人の前を越えていくのがいいかな? そしたら私も裸族として一つレベルアップできる気がする。
「君が裸でいたいのも少しは分かったかもしれない」
なんということ。完全に同士だ。
一生分かり合える人なんていないと思っていた裸習慣に、初めて理解してくれる人が現れた。
「う、」
「?」
「嬉しいです!」
がばりと上半身起き上がる。
私の枕用に投げ出されていた彼の手を両手で包んで、前のめりに見下ろす。
「裸はいいですよ!」
「……」
「絶対ハマります! いやもう片足突っ込んでるんだと思うですけど!」
「……」
「最高ですから! 私もできること手伝います!」
「……」
「最初からいきなり全裸じゃなくてもいいと思いますけど、寝る以外も裸で過ごすのがおすすめでっ……?」
と、彼の視線が真っ直ぐのままかたまっていた。それを追うと、半分起き上がった上半身が上掛けから出ている。
挙げ句熱心に訴えようとした勢いで私の胸が迫ってくる感じになっていたはず。
「ひえ」
寝ている彼の目の前が自分の胸だったとは、なんてはしたない。恥ずかしい限りだ。
握る手を放して、素早く上掛けの中に避難した。まあ目の前の彼は見える胸元隠そうともしてないんだけど、他人の前裸族のレベルは彼の方が潜在的に上だったってことにしておこう。
「すみません、御見苦しいものを」
「……いや」
彼は反対側へ向いてそのまま起き上がってベッドから出ていく。
当たり前だけど、本当に上半身裸だった。背中しっかりしてるな。触ったらかたそう。
「今後この部屋に入る時は前もって君の侍女を通す」
「分かりました」
別にいいんだけどなー、ノックさえしてくれればと思ったけど言わなかった。
ノック忘れられても困るし。
レイオンはソファに置いていたシャツをとって袖を通した。人の着替えって意外とえろいのね。
「食事はとれそうか?」
「はい」
「ここで食べるか?」
「いいえ、大丈夫です」
そうかと静かに応え、ソファに腰を下ろしたレイオンは、こちらを見ずに会話を続けた。
「ペズギア様はお元気そうだった」
寝起きの衝撃ですっかり忘れていた。
そうだ、元は祖母が倒れたと聞いて、気持ちが落ち着かなくて外へ出たところから始まっている。
話すタイミングを見ていたのかな。さっきまで隣に寝ていた時と纏う空気が違う気がした。
レイオンは母の安否を詳細に教えてくれて、私はやっとそこで祖母について安心する。
「御祖母様、よかった……」
「ああ」
胸を撫で下ろす私を見て彼の肩から力が抜けたのが分かった。
0
お気に入りに追加
87
あなたにおすすめの小説
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
大好きな旦那様はどうやら聖女様のことがお好きなようです
古堂すいう
恋愛
祖父から溺愛され我儘に育った公爵令嬢セレーネは、婚約者である皇子から衆目の中、突如婚約破棄を言い渡される。
皇子の横にはセレーネが嫌う男爵令嬢の姿があった。
他人から冷たい視線を浴びたことなどないセレーネに戸惑うばかり、そんな彼女に所有財産没収の命が下されようとしたその時。
救いの手を差し伸べたのは神官長──エルゲンだった。
セレーネは、エルゲンと婚姻を結んだ当初「穏やかで誰にでも微笑むつまらない人」だという印象をもっていたけれど、共に生活する内に徐々に彼の人柄に惹かれていく。
だけれど彼には想い人が出来てしまったようで──…。
「今度はわたくしが恩を返すべきなんですわ!」
今まで自分のことばかりだったセレーネは、初めて人のために何かしたいと思い立ち、大好きな旦那様のために奮闘するのだが──…。
ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
女騎士の受難?
櫻霞 燐紅
恋愛
騎士として王宮に伺候しているフォルは、非番で飲みに行った帰りに自分の仕えている第三王女と同じ色彩をもつ女性を助けた。
そう、助けたのは女性のはず・・・。
男勝りでモテない(と思い込んでる)フォルティナと男なのに(その時変装してたけど!)女騎士に助けられた公爵様(付き纏い予備軍?)のお話です。(たぶん・・・)
書き溜めしてないので、亀のような更新&迷走による修正や加筆が多々あるかもと思いますが、お付き合いいただければ、と思います。
タイトルはもしかすると途中で変わるかもです・・・。
小説家になろう様でも掲載しています。
クラリスの名前が女性名とご指摘があったので、変更しました。
クラリス→クラウス
クラウスの家名、デルフィニウスが途中、デスフィニウスと間違っていたので訂正しました。
デスフィニウス× デルフィニウス〇
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる