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14話 裸族仲間ができる

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「名前で、呼んでほしい」

 ここにきて、その話題? なんで?

「ええと、レイオン様?」
「様はいらない」
「……レイオン?」
「ああ」

 無表情の割に満足そうな雰囲気あるからいいのかな。本当妙な感じね。

「君が良ければなんだが」
「はい」
「たまにでいい。これからこうして同じベッドで寝てもいいだろうか」
「ふえ?」

 急なお願いに変な声出た。
 いやいや無理でしょ。裸族といえど人に見られるのはちょっと。
 それ以前に仲を深めてないのに添い寝? むしろ初夜を希望して言ってる?

「やはり難しいだろうか」
「い、え、そういうわけではないんですけど」
「君は裸で構わない」
「人前ではちょっと……」

 というか、初夜希望ではないの? 彼はただ一緒に寝たいと言うだけだった。
 この人性欲ないの? 裸の異性いたら、好き嫌い関係なくその気になることもあるんじゃないの?

「条件を破るのはやはり駄目か」
「いえ! その条件は気にしないでというか偽りだったわけですし、その、一人で裸の時間が」
「君と親交を深めたい」

 うわあ。
 それここで話すことじゃない。
 でも今回お騒がせした挙句、当主自ら捜しに来てくれて、しかも助けてもらった。
 方向性が少し違うけど私が裸族であることを尊重してくれているし、たぶん添い寝も体冷やして云々があったからしてくれたのだと思うし、なにより目の前から悪意を感じない。
 
「……分かりました」

 真っ直ぐ逸らすことのない視線に負けた。
 妥協点は週の半分以下、添い寝までで。裸で構わないと言うけど、さすがに今の親密度からはなにかしら着る方向でいくことにした。

「良かった」
「そうですか」
「ああ……この姿で寝てみて悪くないと思ったから」
「んん? どういうことですか?」
「服を着ないで寝るのも悪くないかなと」

 なんということ。
 回りくどくて解らなかったけど、彼は完全に裸族に目覚めたということね。そして裸族ライフのため、私を先輩として敬い裸族のなんたるかを学ぶため、添い寝時間をほしいと言ってきたに違いない。これは裸族二十年以上の歴を持つ私が導く案件だ。
 あ、そしたらお互い裸である方がいいの? さすがにしょっぱなからは気持ち追いつかないから、徐々に自室裸族他人の前を越えていくのがいいかな? そしたら私も裸族として一つレベルアップできる気がする。

「君が裸でいたいのも少しは分かったかもしれない」

 なんということ。完全に同士だ。
 一生分かり合える人なんていないと思っていた裸習慣に、初めて理解してくれる人が現れた。

「う、」
「?」
「嬉しいです!」

 がばりと上半身起き上がる。
 私の枕用に投げ出されていた彼の手を両手で包んで、前のめりに見下ろす。

「裸はいいですよ!」
「……」
「絶対ハマります! いやもう片足突っ込んでるんだと思うですけど!」
「……」
「最高ですから! 私もできること手伝います!」
「……」
「最初からいきなり全裸じゃなくてもいいと思いますけど、寝る以外も裸で過ごすのがおすすめでっ……?」

 と、彼の視線が真っ直ぐのままかたまっていた。それを追うと、半分起き上がった上半身が上掛けから出ている。
 挙げ句熱心に訴えようとした勢いで私の胸が迫ってくる感じになっていたはず。
 
「ひえ」

 寝ている彼の目の前が自分の胸だったとは、なんてはしたない。恥ずかしい限りだ。
 握る手を放して、素早く上掛けの中に避難した。まあ目の前の彼は見える胸元隠そうともしてないんだけど、他人の前裸族のレベルは彼の方が潜在的に上だったってことにしておこう。

「すみません、御見苦しいものを」
「……いや」

 彼は反対側へ向いてそのまま起き上がってベッドから出ていく。
 当たり前だけど、本当に上半身裸だった。背中しっかりしてるな。触ったらかたそう。

「今後この部屋に入る時は前もって君の侍女を通す」
「分かりました」

 別にいいんだけどなー、ノックさえしてくれればと思ったけど言わなかった。
 ノック忘れられても困るし。
 レイオンはソファに置いていたシャツをとって袖を通した。人の着替えって意外とえろいのね。

「食事はとれそうか?」
「はい」
「ここで食べるか?」
「いいえ、大丈夫です」

 そうかと静かに応え、ソファに腰を下ろしたレイオンは、こちらを見ずに会話を続けた。

「ペズギア様はお元気そうだった」

 寝起きの衝撃ですっかり忘れていた。
 そうだ、元は祖母が倒れたと聞いて、気持ちが落ち着かなくて外へ出たところから始まっている。
 話すタイミングを見ていたのかな。さっきまで隣に寝ていた時と纏う空気が違う気がした。
 レイオンは母の安否を詳細に教えてくれて、私はやっとそこで祖母について安心する。

「御祖母様、よかった……」
「ああ」

 胸を撫で下ろす私を見て彼の肩から力が抜けたのが分かった。
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