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13話 朝ちゅん(裸族デビューおめでとうございます)
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あたたかくて心地いいのに、頭だけやたらかたい。寝心地に枕は重要なのに。
けど用意された枕は私の頭に合っていたし、眠りの質も良かったから、かたいなんておかしい。
「……あれ?」
ゆるゆる意識が戻った目の前に見知った顔、この家の主かつ私の夫だ。瞼を閉じて緊張することなく寝る姿は少し幼く見える。
「いやいやいや」
そっと後ろに引いて距離をとった。
自分がいた場所が彼の腕の上だと分かる。
まさかの腕枕。だからかたいと感じてたわけ。
「ええ?」
いつも通りすぎて気づかなかったけど、私は一糸纏わぬ姿だ。寝室で寝る時だって裸だから通常運行なんだけど、今の状況だとよろしくない。
いや、夫婦だからおかしくないのかな?
条件が嘘だと知って初夜を済ませにくるとはさすがに思えない。そういう人間じゃなさそうだもの。
「!」
目の前で寝ている彼が起きようとしている。体をみじろがせて、瞼が細かく震えゆっくり開かれていく。
心臓の音がうるさい。妙な緊張感と恥ずかしさに目を逸らせなかった。
「……メーラ」
「は、はい!」
「具合は?」
「え?」
彼のあいてる片手が私に伸び、途中で止まって引っ込んだ。おでこあたりに届きそうだった、ということは熱でもみようとしたのかな?
「熱はないですよ?」
「他は?」
「えーと……」
吐き気とか眩暈とか寒気もないし、すこぶる健康ですと伝えたら納得したらしく頷くような仕草を見せた。
「あの、これってどういう状況ですか?」
彼が納得したのを見て、遠慮がちにきいてみる。
「これ?」
「腕枕とか……」
「隣で寝ている時に、おいでと言ったら来た」
「んんん」
なんでそんなこと言うの。
その前に寝ている私素直すぎでしょ。なんなの私。言われて近づいて腕枕されに行く自分を想像して恥ずかしさに顔が熱くなった。
そんな私の様子など気にもとめず、腕枕の張本人は平坦なままだ。
「そのまま私も寝た」
「ということは、何もなかった?」
「?」
小首を傾げたかったのか、頭を枕に押し付けるような仕草をする。シーツが擦れる音がした。
どうやら私の言わんとすることは理解してもらってないらしい。初夜ですか、なんて直接的にきけないしな。まあ身体痛くないから、本当になにもなかったんだろうけど。
「医者に許可をとった」
「なんの?」
「裸で寝ても問題ないか」
「ぐふっ」
なにを確認しているの。医者が不審がるでしょうが。
確かに寝室で過ごす時間はもれなく全部裸だけど。寝る時も当然裸なんだけど。それを人にきくなんてどうかしてる。
「寝る時は裸かと思って」
「そうなんですけどね? あー、すみません、ここまでの経緯をきいても?」
やっとこ思い出した私の記憶はフォーに寄りかかったまま寝落ちしたことだった。
そこから彼が見つけてくれて屋敷に戻り、身体をあたためてもらって、医者に診せて一晩すぎた今ここ。
夜はつきっきりで彼が面倒を見てくれた。どうやら私の裸族習慣を尊重しつつ身体が冷えないようにするために添い寝を選択したらしい。配慮の仕方がずれてる。
「だから私も君を習った」
「え?」
「脱いだ」
「ひえ」
よく見たら彼が服を着てないことを今知った。見える胸元はきちんと鍛えられていてしっかりしている。そういえば腕も筋肉ついててかたかった。いや、そうじゃない。
「初めてだったので下は履いているが」
「そうですか……」
裸族デビューおめでとうございます。
違う違うそうじゃないぞ。そもそも下まで脱ぐかどうかって気にするところ? ああもう、なにからつっこめばいいの。
真面目に裸族な私に合わせるってなに?
「嘘だったとはいえ、約束を破った事は謝る」
「いえ、お気になさらず?」
当初の結婚に係る条件には寝室を別にすることを盛り込んでるから、そのことなんだと思うけど、朝同じベッドで裸同士で話すことじゃないよね。嘘でも守ろうとするあたり、この人本当真面目だ。
「大丈夫なのか?」
「あー、条件が偽りだったということで、今は男性がそこまで苦手というわけではないですよ」
この人は以前嘘だと伝えていても、まだ気にしているのか。
「本当に?」
「少なくともレイオンは大丈夫です」
と言えば、本当に一瞬少しだけ、彼が笑ったような気がした。
「良かった」
心配してくれてたのかなと思ってしまう。困った顔でもしてくれればすぐに分かるけど、終始どこにも感情の片鱗は見られず無表情だった。
「ありがとうございます」
「?」
「助けてくれましたよね? ここまで連れて来てくれましたし」
「……もっと早くに気づけていれば良かったと思っている」
なぜか反省会になってしまった。こっちはただ感謝しただけなのに。
「いえ、私が勝手にしたことで、旦那様は悪くないし、むしろご迷惑かけてすみませんといいますか」
「…………名前」
「はい?」
「名前で、呼んでほしい」
ここにきて、その話題? なんで?
けど用意された枕は私の頭に合っていたし、眠りの質も良かったから、かたいなんておかしい。
「……あれ?」
ゆるゆる意識が戻った目の前に見知った顔、この家の主かつ私の夫だ。瞼を閉じて緊張することなく寝る姿は少し幼く見える。
「いやいやいや」
そっと後ろに引いて距離をとった。
自分がいた場所が彼の腕の上だと分かる。
まさかの腕枕。だからかたいと感じてたわけ。
「ええ?」
いつも通りすぎて気づかなかったけど、私は一糸纏わぬ姿だ。寝室で寝る時だって裸だから通常運行なんだけど、今の状況だとよろしくない。
いや、夫婦だからおかしくないのかな?
条件が嘘だと知って初夜を済ませにくるとはさすがに思えない。そういう人間じゃなさそうだもの。
「!」
目の前で寝ている彼が起きようとしている。体をみじろがせて、瞼が細かく震えゆっくり開かれていく。
心臓の音がうるさい。妙な緊張感と恥ずかしさに目を逸らせなかった。
「……メーラ」
「は、はい!」
「具合は?」
「え?」
彼のあいてる片手が私に伸び、途中で止まって引っ込んだ。おでこあたりに届きそうだった、ということは熱でもみようとしたのかな?
「熱はないですよ?」
「他は?」
「えーと……」
吐き気とか眩暈とか寒気もないし、すこぶる健康ですと伝えたら納得したらしく頷くような仕草を見せた。
「あの、これってどういう状況ですか?」
彼が納得したのを見て、遠慮がちにきいてみる。
「これ?」
「腕枕とか……」
「隣で寝ている時に、おいでと言ったら来た」
「んんん」
なんでそんなこと言うの。
その前に寝ている私素直すぎでしょ。なんなの私。言われて近づいて腕枕されに行く自分を想像して恥ずかしさに顔が熱くなった。
そんな私の様子など気にもとめず、腕枕の張本人は平坦なままだ。
「そのまま私も寝た」
「ということは、何もなかった?」
「?」
小首を傾げたかったのか、頭を枕に押し付けるような仕草をする。シーツが擦れる音がした。
どうやら私の言わんとすることは理解してもらってないらしい。初夜ですか、なんて直接的にきけないしな。まあ身体痛くないから、本当になにもなかったんだろうけど。
「医者に許可をとった」
「なんの?」
「裸で寝ても問題ないか」
「ぐふっ」
なにを確認しているの。医者が不審がるでしょうが。
確かに寝室で過ごす時間はもれなく全部裸だけど。寝る時も当然裸なんだけど。それを人にきくなんてどうかしてる。
「寝る時は裸かと思って」
「そうなんですけどね? あー、すみません、ここまでの経緯をきいても?」
やっとこ思い出した私の記憶はフォーに寄りかかったまま寝落ちしたことだった。
そこから彼が見つけてくれて屋敷に戻り、身体をあたためてもらって、医者に診せて一晩すぎた今ここ。
夜はつきっきりで彼が面倒を見てくれた。どうやら私の裸族習慣を尊重しつつ身体が冷えないようにするために添い寝を選択したらしい。配慮の仕方がずれてる。
「だから私も君を習った」
「え?」
「脱いだ」
「ひえ」
よく見たら彼が服を着てないことを今知った。見える胸元はきちんと鍛えられていてしっかりしている。そういえば腕も筋肉ついててかたかった。いや、そうじゃない。
「初めてだったので下は履いているが」
「そうですか……」
裸族デビューおめでとうございます。
違う違うそうじゃないぞ。そもそも下まで脱ぐかどうかって気にするところ? ああもう、なにからつっこめばいいの。
真面目に裸族な私に合わせるってなに?
「嘘だったとはいえ、約束を破った事は謝る」
「いえ、お気になさらず?」
当初の結婚に係る条件には寝室を別にすることを盛り込んでるから、そのことなんだと思うけど、朝同じベッドで裸同士で話すことじゃないよね。嘘でも守ろうとするあたり、この人本当真面目だ。
「大丈夫なのか?」
「あー、条件が偽りだったということで、今は男性がそこまで苦手というわけではないですよ」
この人は以前嘘だと伝えていても、まだ気にしているのか。
「本当に?」
「少なくともレイオンは大丈夫です」
と言えば、本当に一瞬少しだけ、彼が笑ったような気がした。
「良かった」
心配してくれてたのかなと思ってしまう。困った顔でもしてくれればすぐに分かるけど、終始どこにも感情の片鱗は見られず無表情だった。
「ありがとうございます」
「?」
「助けてくれましたよね? ここまで連れて来てくれましたし」
「……もっと早くに気づけていれば良かったと思っている」
なぜか反省会になってしまった。こっちはただ感謝しただけなのに。
「いえ、私が勝手にしたことで、旦那様は悪くないし、むしろご迷惑かけてすみませんといいますか」
「…………名前」
「はい?」
「名前で、呼んでほしい」
ここにきて、その話題? なんで?
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