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8話 野外裸族を阻止される
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「水は嫌い? 泳ごうかと思って」
ついでに真っ裸にもなれて一石二鳥だ。室内専門の自宅裸族な私も野外で裸になるのもありだ。勿論そう外では脱がないけど。
「フォー?」
私の言葉になぜか慌てたフォーがその場でおろおろと左右に動く。その間にするする服を脱いでく私を見て、我慢できないとばかりに一声吠えた。
「どうしたの?」
もう一度吠える。
滅多に吠えそうにないのに。
「なに? 泳ぐなって?」
すると縦にぶんぶん首を振る。人間みたいな反応ね。でも折角だから水浴びしたいな。
「えー、ここ危ないとか?」
再びぶんぶん首を縦に振る。
「見た目こんなに綺麗なのに?」
フォーが心配なのはよく分かる。
国境付近のイデイッソスコ山は魔物の巣窟だ。今でこそ南の隣国の聖女が橋渡しになったのもあって人を襲うことはなくなりつつあり、且つ領地内で安全とはいえ水性の魔物が潜んでいる可能性はあるか。
「でも冬くる前の今がチャンスなんだよなあ」
惜しむ私を見て益々慌てたフォーが私の腕を噛んだ。全く痛くない。ただ咥えているだけ。
「そんなだめ?」
視線を力強くぶんと尻尾を一振り。はじめましての私にこんな真剣に止めてくれるなんて優しい子。
しょうがない。この地の先輩にあたるフォーが言うなら避けておくにこしたことはないか。
「……分かった、やめるよ」
その言葉にぱっと顔を離し側でお座りを決める。顔つきが心無しか嬉しそうに見えた。
「本当、人みたい」
これでお話しでもできればいいのに。でもここまで頭がいいのに話せないってことは魔物じゃないんだろうな。魔物なら話せておかしくないし。
裸になるのは諦めてフォーと一緒に散歩がてら、泉周りを散策することにした。
「あ、フォー見て」
近場を探っていると、大きめの木の下、背丈の高い草と細い低木のおかげで影になっている部分を見つける。
屈んで低木の下に入り込んで座ると、低木と背の高い草が屋根みたいになって、軽い日よけのタープみたくなっていた。
木々の間、低めの視界から反射して輝く湖面が見えて別世界に来たみたい。
「いい感じ」
直接地面に座ると隣にフォーも座った。
少し身体を傾けてもふもふに身を埋めても嫌がらない。優しい子だな。
「今日からここは私とフォーの秘密基地だね」
ぱふりと尻尾が振られる。
思わず笑みが溢れた。こんな子供じみたことして、祖母がいたら怒られそうだけど、フォーならそういうこともない。まあ真っ裸で泳ぐのは止められたけど。
「よし」
暫くそのまま無言の時間をすごした後、ゾーイと待ち合わせの場所まで戻ることにした。
フォーは私の隣で黙ってついてくる。
「フォーは紳士だね」
ちらりと目線を送られ、すぐに目の前に視線を戻す。目的地が同じなのかもしれないけど、頭のいいこの子ならエスコートもできるのかも。
「奥様?」
フォーを連れた私を見てゾーイは最初こそ驚いていたけど、友達ができたとフォーを紹介すれば、よかったですねと返された。付き合いの長さからかすぐに受け入れる。さすが。
馬には乗らず二人と一頭一匹で屋敷に戻ると、なぜか屋敷の執事長バトレルが屋敷の扉前で待機していた。
「奥様?」
「バトレルさん、えと、馬を一頭お借りしてました」
「ええ、構いません。奥様は自由にお好きなようにと旦那様から仰せつかっております」
なにからなにまで至れり尽くせりだな。旦那様はそれでいいの?
いくら頼まれたからってそこまですることもないし、形だけ結婚するだけだと好待遇について断ってもよかったはず。
断っても兄や祖母との関係が悪化するわけでもない。そういう人たちだと私が一番よく分かってる。
「バトレルさんはどうしてここに?」
「旦那様をお待ちしてました」
そろそろ帰ってくるのかな? 時間通り帰ってくるのもすごいけど、それを迎える為に外に出る執事長も大したものだと思う。
「帰ってきてなさそうですね」
「いえ、旦那様はそちらにい」
何かしら言おうとしたバトレルを遮り、突然フォーが一吠えした。
あ、ほったらかしすぎたかな?
「その、この子なんですが」
「この子?」
手でフォーを示す。
「フォーはこの屋敷の飼い犬なんですか?」
「フォー? 飼い犬?」
「あ、この子の愛称を勝手ながらつけさせてもらいました」
バトレルは驚いていた。落ち着いた人物だと思っていたけど、旦那様より感情豊かね。
どうですかと再度問うとバトレルは言葉に悩んでいた。
「私からは申し上げられませんので、旦那様に直接伺って頂ければと」
「はい、分かりました」
飼い犬のことでもはっきり言えないのかな?
あまり家にいない旦那様だけど、時間を見てきいてみるか。
「奥様、遠乗りで御疲れの事かと存じます。よろしければ少しお休みになってはいかがでしょうか」
「そうですね。ではお言葉に甘えて」
馬を馬丁に預けて屋敷の中に入ろうとすると、フォーが動かず一緒に来ないことに気づいた。
「フォー入んないの?」
無言無反応。
室外犬なのかな。
「んー……じゃあまた今度ね?」
尻尾を一振り。
納得して私は自室へ戻った。
ついでに真っ裸にもなれて一石二鳥だ。室内専門の自宅裸族な私も野外で裸になるのもありだ。勿論そう外では脱がないけど。
「フォー?」
私の言葉になぜか慌てたフォーがその場でおろおろと左右に動く。その間にするする服を脱いでく私を見て、我慢できないとばかりに一声吠えた。
「どうしたの?」
もう一度吠える。
滅多に吠えそうにないのに。
「なに? 泳ぐなって?」
すると縦にぶんぶん首を振る。人間みたいな反応ね。でも折角だから水浴びしたいな。
「えー、ここ危ないとか?」
再びぶんぶん首を縦に振る。
「見た目こんなに綺麗なのに?」
フォーが心配なのはよく分かる。
国境付近のイデイッソスコ山は魔物の巣窟だ。今でこそ南の隣国の聖女が橋渡しになったのもあって人を襲うことはなくなりつつあり、且つ領地内で安全とはいえ水性の魔物が潜んでいる可能性はあるか。
「でも冬くる前の今がチャンスなんだよなあ」
惜しむ私を見て益々慌てたフォーが私の腕を噛んだ。全く痛くない。ただ咥えているだけ。
「そんなだめ?」
視線を力強くぶんと尻尾を一振り。はじめましての私にこんな真剣に止めてくれるなんて優しい子。
しょうがない。この地の先輩にあたるフォーが言うなら避けておくにこしたことはないか。
「……分かった、やめるよ」
その言葉にぱっと顔を離し側でお座りを決める。顔つきが心無しか嬉しそうに見えた。
「本当、人みたい」
これでお話しでもできればいいのに。でもここまで頭がいいのに話せないってことは魔物じゃないんだろうな。魔物なら話せておかしくないし。
裸になるのは諦めてフォーと一緒に散歩がてら、泉周りを散策することにした。
「あ、フォー見て」
近場を探っていると、大きめの木の下、背丈の高い草と細い低木のおかげで影になっている部分を見つける。
屈んで低木の下に入り込んで座ると、低木と背の高い草が屋根みたいになって、軽い日よけのタープみたくなっていた。
木々の間、低めの視界から反射して輝く湖面が見えて別世界に来たみたい。
「いい感じ」
直接地面に座ると隣にフォーも座った。
少し身体を傾けてもふもふに身を埋めても嫌がらない。優しい子だな。
「今日からここは私とフォーの秘密基地だね」
ぱふりと尻尾が振られる。
思わず笑みが溢れた。こんな子供じみたことして、祖母がいたら怒られそうだけど、フォーならそういうこともない。まあ真っ裸で泳ぐのは止められたけど。
「よし」
暫くそのまま無言の時間をすごした後、ゾーイと待ち合わせの場所まで戻ることにした。
フォーは私の隣で黙ってついてくる。
「フォーは紳士だね」
ちらりと目線を送られ、すぐに目の前に視線を戻す。目的地が同じなのかもしれないけど、頭のいいこの子ならエスコートもできるのかも。
「奥様?」
フォーを連れた私を見てゾーイは最初こそ驚いていたけど、友達ができたとフォーを紹介すれば、よかったですねと返された。付き合いの長さからかすぐに受け入れる。さすが。
馬には乗らず二人と一頭一匹で屋敷に戻ると、なぜか屋敷の執事長バトレルが屋敷の扉前で待機していた。
「奥様?」
「バトレルさん、えと、馬を一頭お借りしてました」
「ええ、構いません。奥様は自由にお好きなようにと旦那様から仰せつかっております」
なにからなにまで至れり尽くせりだな。旦那様はそれでいいの?
いくら頼まれたからってそこまですることもないし、形だけ結婚するだけだと好待遇について断ってもよかったはず。
断っても兄や祖母との関係が悪化するわけでもない。そういう人たちだと私が一番よく分かってる。
「バトレルさんはどうしてここに?」
「旦那様をお待ちしてました」
そろそろ帰ってくるのかな? 時間通り帰ってくるのもすごいけど、それを迎える為に外に出る執事長も大したものだと思う。
「帰ってきてなさそうですね」
「いえ、旦那様はそちらにい」
何かしら言おうとしたバトレルを遮り、突然フォーが一吠えした。
あ、ほったらかしすぎたかな?
「その、この子なんですが」
「この子?」
手でフォーを示す。
「フォーはこの屋敷の飼い犬なんですか?」
「フォー? 飼い犬?」
「あ、この子の愛称を勝手ながらつけさせてもらいました」
バトレルは驚いていた。落ち着いた人物だと思っていたけど、旦那様より感情豊かね。
どうですかと再度問うとバトレルは言葉に悩んでいた。
「私からは申し上げられませんので、旦那様に直接伺って頂ければと」
「はい、分かりました」
飼い犬のことでもはっきり言えないのかな?
あまり家にいない旦那様だけど、時間を見てきいてみるか。
「奥様、遠乗りで御疲れの事かと存じます。よろしければ少しお休みになってはいかがでしょうか」
「そうですね。ではお言葉に甘えて」
馬を馬丁に預けて屋敷の中に入ろうとすると、フォーが動かず一緒に来ないことに気づいた。
「フォー入んないの?」
無言無反応。
室外犬なのかな。
「んー……じゃあまた今度ね?」
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納得して私は自室へ戻った。
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