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3話

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次の彼女の当番の日。
俺はいつも通り図書室の扉を開けた。
カウンターにいた彼女は俺を見て一瞬げっと顔をしたけど、すぐにすっと表情を戻した。
本を借りる生徒がきたからだ。
とりあえず俺は雑誌コーナーに言っていつもの雑誌を読もうと手に取る。
と、隣のティーンズ向けの雑誌も目に入った。
なんてったって、この俺が表紙になったやつだ。なかなかいい表情でとれてて気に入ってるやつ。モデルの俺もやっぱり恰好いい。

(…そうだ)
周りを見やる。
さっきの生徒が図書室を出て行って、ちょうど今は誰もいない。
図書室にいるのは、俺と、彼女だけ。
チャンスだ。
2つの雑誌を持ったまま、カウンターを見る。と、このわずかな時間にカウンターから姿を消していた。
図書室内にいるのにせわしないな。
仕様がないから本棚を探しに回る。
すぐに彼女は見つかった。
初めて俺が声をかけた、図書室奥の本棚。彼女はいつもと変わらず本を棚に戻していた。
「なぁ」
「……」
「…無視すんなよ」
「……なんですか?」
目を閉じ、溜息1つして嫌そうにこちらを見てくる。
本当態度悪いな。てか、そこまで嫌う要素あるか?

「これ」
俺が表紙の雑誌を見せる。
眉を顰めて、はぁと適当な相槌が返ってくる。
「その雑誌がどうかしました?」
「…この表紙見てなんかないの?」
「…特になにも」
なんでだよ!実はこの前話した人がイケメンモデルで俳優、学校でも有名な瀬良悠斗だって知りました!みたいな展開じゃないのか!
「これ!俺なんだけど!」
「…あぁ、そうですね」
冷やかな返答。あれ、女の子ってきゃっきゃするんじゃないの?目の前に有名人なのに?
今だって写真撮ってーとかあるのに。そのへん歩いてても黄色い声援飛ぶことあるのに。
「それだけ?」
その言葉に彼女は察したらしい。
「……もっと可愛いらしい反応がほしかったんですか?」
「は?!」
「残念ながら、私、貴方みたいな軽い人にいい印象抱けないので…他を当たってください」
知り合い程度の俺によくここまで言えたな。なかなかキッツい性格してる。

いや、まて。
……だからか。
「鈴木くんみたいな人が好みだから?」
俺の言葉にこれでもかってぐらい目開いて驚いた。
ざまあみろだ、一杯食わせてやった。
「な、なにを」
「鈴木くん、好きなんだろ?」
「な!」
ほんのり上気する頬。
少し潤む瞳。
あぁ、そうだ、これだ。
恋をしてる女の子っていうのは。
さっき、俺に向けられた鋭くてきついものと全然違う。
妙にきらきらしだすんだ。つくづく不思議だなと思う。本人がそこにいたっていなくたって、その人のことが絡むだけで、こんなにも表情を変える。
「へー」
にやにやしながらせせら笑うと、彼女ははっとして次にむっとする。
可愛くないなぁ…鈴木くん幻滅すんじゃね?
「そんな可愛くない態度じゃ鈴木くんモノにできねえよ?」
彼女がぎりと歯噛みした。
俺をにらみつけたままだ。

「…気持ち悪い」
「え?」
「やっぱり性格悪い」
「は?」
「学校で自分を知らない人間はいないと思ってそうだし、女の子が自分をもてはやすのも当たり前?」
痛いところを突かれる。
その通りだけど……その前にずいぶんな言い様じゃないか?
「本当、それなら他を当たって…面倒」
うわぁ、なにこれ。本当可愛いくないわ。
「てか性格悪いのあんたもじゃん。そんなん鈴木くんが知ったらどうなるかね?」
「脅す気?勝手に言えばいいじゃない」
「え?」
「勝手にしてって言ってるの」
今のえ?は彼女に対してじゃなかった。

気づいたんだ。
まったく猫もかぶらずに、言い方も雑に彼女に接していたことに。
今彼女は怒ってて気づいていないけど、これがばれて困るのはこっちの方だ。
なんとか取り繕わないと…。
「…悪かった。吉田さんの言う通りだ。態度も言い方もよくないよね」
「…はぁ…」
「おかげで気づけた、ありがとう」
この手のタイプは素直に相手のいうことを認めて謝ったりお礼をいえば、見直したってなって態度が軟化するはずだ。そこから懐入って懐柔する。懐かない野良猫を手なずけるのと似たようなものだ。
今までの俺の態度も帳消しになるから一石二鳥。
最期にいい対応、いい印象。これで最初のやり取りが記憶に残らないはず。

「そうですか、では私はこれで」
そう言って去ろうとする彼女のいかにも不快ですって顔。驚きの表情もなければ戸惑いの表情もない。俺に対する嫌悪感が消えていない。
「なんで」
「?」
去ろうとするのを塞いで止めた。いやこれ以上彼女の機嫌戻せるか?ちょっと疑問だ。
「いや、その、」
「私、蔵書整理が残っているので」
「いやいやあのさ」
「もう話すことないですよね?」
では、といってすり抜けて去っていく。
なんだよ、本当可愛いくない!
「…くそ、上等だよ」
喧嘩売られたんだ、返してやる。
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