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54話 バーツとの婚姻を認めてもらう
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女性?!
ざわりと周囲がうるさくなった。
「アピメイラ公爵、貴殿はネカルタス王国から男性だと聞いているが」
「ん?」
少し考えて「ああ!」とパサウリス様が声を上げる。
「商人用の身分証がいったのか。自分は正真正銘女だよ。東の大陸で治安が悪い場所がいくらかあってね。男である方が都合がいいんだよ。見た目もこんなだし、声も変えてるし勘違いするのも仕方ないね!」
大笑いしている。
ネカルタス王国は身分を示す書類を捏造できるの? 魔法でいかようにも性別が変えられるから尚更なのかもしれない。それに私たちは東の大陸を知らなすぎる。男性でいないと厳しい場面が多いのかもしれない。
「あとで正式な身分証送るよう本国に伝えとくよ」
「……ああ、分かった」
ざわつく中、私は近くにいるパサウリス様に話しかけた。
「パサウリス様、今まで東の大陸含めて色々な場所に行かれてたと思うのですが、ソッケ王国に留まり続けてよろしいのですか?」
パサウリス様はあちこち転々とするのを楽しんでるようだった。この手のタイプは定住が苦手だと聞いたから、断ると思っていたのだけど。
「まあ年だしね~! 東の大陸との交易は弟子に任せることにしたのさ。まあちょこちょこ外には出るけど」
豪快に笑う様は変わらない。言葉通り、交易のために東の大陸へ行きそうね。
「七十超えたらさすがに落ち着くかなって」
「そうですか。七十……って、ええ?!」
「あ、そうか」
年齢に驚いてる横でバーツ様が納得だと頷いた。
「バーツ様、知ってたのですか?!」
「いや、祖父の頃から世話になってるからおかしくないなって。見た目が変わらないから失念してたよ」
そういえば、バーツ様の話であった。七十と成人になりたての女性が結婚なんて話もなくはないけど、この見た目で七十でした、そうなんだーとはならない。私も今までの付き合いから察せてればよかった。全然ピンとこなかったわ。
「分かるはずないよ。そういう魔法をかけてる」
「なるほど?」
ネカルタス王国恐ろしい。すごいわ。
「それに自分の好みは若い男じゃなくて自分より年上の強い男だから」
十歳ぐらい上が理想、と話す。
八十超えた屈強な男性? ソッケ王国にはいなさそう。
「まあソッケ王国にはエーヴァさんにバーツさんに楽しませてもらったから軽い恩返しかな」
バーツ様の御祖父様の墓参りみたいなものだと言うパサウリス様に対して、祖父は貴方を気に入ってましたから、とバーツ様が伝える。
再び大きく笑った。
「こんな笑ってるとテュラみたいだな。そういえば今はドゥエツにいるか……あの小僧にも久しぶりに顔を出すとしよう」
他のネカルタス王国の特使ともそれぞれ仲がいいらしい。
「そしたら王様、もう帰っていいかな?」
「構わぬ。すまなかった」
「いいっていいって。少しずつネカルタス王国知っていけばいい」
じゃこれからは手紙書くわーと軽く言ってのける。パサウリス様ったら、本当に王城に入りたくないのね。
「フィーラ公爵」
「はい、陛下」
「エーヴァ嬢にティルボーロン伯爵……今回の件、大変申し訳ない」
頭を下げる王陛下に私たち含め周囲が驚く。
「陛下! 御顔を上げてください!」
「そうです。今回のはただの行き違いです!」
「いや。私は立て直しが進むソッケ王国の利益しか考えていなかった。そのせいで危うくネカルタス王国の怒りを買うところだったのだ。そなたたちがいてくれたおかげでネカルタス王国特使とも荒波たたず終えることができた」
感謝しても足りぬと言われる。
身に余る光栄ですと頭を垂れた。当たり障りなくおさめるには形式的な応えでいい。
「立て直しも息子がやってくれた。私もまだ学ぶことが多いようだな」
「陛下、そうしましたら……」
深く、深く陛下が頷いた。
「うむ。エーヴァ嬢のネカルタス特使との婚姻の件は白紙だ。ティルボーロン伯爵との婚姻を心から祝福しよう」
「ありがとうございます!!」
ざわりと周囲がうるさくなった。
「アピメイラ公爵、貴殿はネカルタス王国から男性だと聞いているが」
「ん?」
少し考えて「ああ!」とパサウリス様が声を上げる。
「商人用の身分証がいったのか。自分は正真正銘女だよ。東の大陸で治安が悪い場所がいくらかあってね。男である方が都合がいいんだよ。見た目もこんなだし、声も変えてるし勘違いするのも仕方ないね!」
大笑いしている。
ネカルタス王国は身分を示す書類を捏造できるの? 魔法でいかようにも性別が変えられるから尚更なのかもしれない。それに私たちは東の大陸を知らなすぎる。男性でいないと厳しい場面が多いのかもしれない。
「あとで正式な身分証送るよう本国に伝えとくよ」
「……ああ、分かった」
ざわつく中、私は近くにいるパサウリス様に話しかけた。
「パサウリス様、今まで東の大陸含めて色々な場所に行かれてたと思うのですが、ソッケ王国に留まり続けてよろしいのですか?」
パサウリス様はあちこち転々とするのを楽しんでるようだった。この手のタイプは定住が苦手だと聞いたから、断ると思っていたのだけど。
「まあ年だしね~! 東の大陸との交易は弟子に任せることにしたのさ。まあちょこちょこ外には出るけど」
豪快に笑う様は変わらない。言葉通り、交易のために東の大陸へ行きそうね。
「七十超えたらさすがに落ち着くかなって」
「そうですか。七十……って、ええ?!」
「あ、そうか」
年齢に驚いてる横でバーツ様が納得だと頷いた。
「バーツ様、知ってたのですか?!」
「いや、祖父の頃から世話になってるからおかしくないなって。見た目が変わらないから失念してたよ」
そういえば、バーツ様の話であった。七十と成人になりたての女性が結婚なんて話もなくはないけど、この見た目で七十でした、そうなんだーとはならない。私も今までの付き合いから察せてればよかった。全然ピンとこなかったわ。
「分かるはずないよ。そういう魔法をかけてる」
「なるほど?」
ネカルタス王国恐ろしい。すごいわ。
「それに自分の好みは若い男じゃなくて自分より年上の強い男だから」
十歳ぐらい上が理想、と話す。
八十超えた屈強な男性? ソッケ王国にはいなさそう。
「まあソッケ王国にはエーヴァさんにバーツさんに楽しませてもらったから軽い恩返しかな」
バーツ様の御祖父様の墓参りみたいなものだと言うパサウリス様に対して、祖父は貴方を気に入ってましたから、とバーツ様が伝える。
再び大きく笑った。
「こんな笑ってるとテュラみたいだな。そういえば今はドゥエツにいるか……あの小僧にも久しぶりに顔を出すとしよう」
他のネカルタス王国の特使ともそれぞれ仲がいいらしい。
「そしたら王様、もう帰っていいかな?」
「構わぬ。すまなかった」
「いいっていいって。少しずつネカルタス王国知っていけばいい」
じゃこれからは手紙書くわーと軽く言ってのける。パサウリス様ったら、本当に王城に入りたくないのね。
「フィーラ公爵」
「はい、陛下」
「エーヴァ嬢にティルボーロン伯爵……今回の件、大変申し訳ない」
頭を下げる王陛下に私たち含め周囲が驚く。
「陛下! 御顔を上げてください!」
「そうです。今回のはただの行き違いです!」
「いや。私は立て直しが進むソッケ王国の利益しか考えていなかった。そのせいで危うくネカルタス王国の怒りを買うところだったのだ。そなたたちがいてくれたおかげでネカルタス王国特使とも荒波たたず終えることができた」
感謝しても足りぬと言われる。
身に余る光栄ですと頭を垂れた。当たり障りなくおさめるには形式的な応えでいい。
「立て直しも息子がやってくれた。私もまだ学ぶことが多いようだな」
「陛下、そうしましたら……」
深く、深く陛下が頷いた。
「うむ。エーヴァ嬢のネカルタス特使との婚姻の件は白紙だ。ティルボーロン伯爵との婚姻を心から祝福しよう」
「ありがとうございます!!」
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