婚約破棄された家出令嬢の私、大好きな人に弟子入り! 溺愛は全然必要ありません!

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31話 仲直りのタイミングがあるってこと?

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 翌日。

「忘れ物?」
「ええ。復興作業も今日はお休みさせていただく旨も改めて伝えてきます」
「……分かった。ありがとう」

 私は一人、銀採取の現場へ出ることにした。
 忘れ物も当然あったし、復興作業についても伝えてさっさと帰るつもりだ。
 けど、どうしても気になってバーツ様の御両親の様子を探りに行ってしまう。
 相変わらず視察団の中、夫婦ともにいらっしゃった。

「あの子はやはり会ってくれないでしょうね」
「そうだろうな」

 バーツ様のことを話している。ついつい聞き耳立ててしまった。

「あなたときたら頭ごなしになんですか」
「お前だって似たようなものだったろう」
「銀細工のこと、認めていると伝えてあげればよかったのです」
「公爵領地については親戚筋に任しているから本来は問題ないこともか?」

 なんということ。
 銀細工師であるバーツ様を認めているだなんて。しかも領地問題が解決しているなら、公爵姓を継がなくてもいい。
 なのにどうして銀細工師を認めない・公爵家を継げという言い方をしたのだろう。

「ああ言えば、少しは危機感を感じて話を聞いてくれるかと思ったんだがな」
「だめだったじゃないですか」

 逆効果になる言い方をしたってこと?
 久しぶりに会い動揺してしまったのもあるようで、後悔しているという言葉が並ぶ。

「あれ、もしかして?」

 バーツ様も話し合ってもよさそうだった。
 御両親は明らかに話したそうだ。
 つまり、仲直りのタイミングがあるってこと?

「けど、あなた。この視察が終わったらすぐドゥエツの王城で社交界です」
「長居はできないか……仕方ない。またタイミングを考えよう」
「そうですね」

 私は急いでバーツ様の元へ戻った。

* * *

 戻ったはいいけど、どう言えばうまく会ってくれるだろう?
 直球でご両親会いたがってます会いましょうと言ったところで首を縦に振るとは思えない。
 銀をいじってる癒しで何か閃かないかしら。

「わ、この銀すごく扱いやすいです」
「ああ、全然違う」

 より細かい細工が作りやすい。
 色彩箔にも挑戦して糸にしてみた。この銀であればそれも可能だ。普段バーツ様が素材を入手している東の大陸のさらに東から色彩箔に関する情報と方法を入手して今回試してみれば大方うまくいって細工の幅が広がっている。けど、銀が素材としてよすぎるから純粋な銀細工がやっぱりいい。こんな美しい銀が自分の国にあったなんて感激だ。

「楽しすぎますっ!」
「はは、勢い余って作りすぎたね」

 バーツ様の銀細工も精度が上がっている。こんなより細かな細工ができるなんて誰も想像できない。
 バーツ様のこの新しい銀細工は多くの人に知ってほしいし、手にしてほしい……と、待った!

「そうだわ!」
「エーヴァ?」
「バーツ様、この新しい銀細工を社交界で売りこみましょう!」
「え?」
「こんなに素晴らしいんです! きっと多くの方が認め、欲しがるに違いありません!」
「これを?」
「ディーナ様にも成果として示すには丁度いいかと!」
「確かに」

 ループト公爵令嬢の名を出すとすぐに頷いてくれる。それに少し胸の奥がちくりとしつつも見て見ぬふりして先を続けた。

「リッケリの領主をお願いしているのです。それなりの収穫があったとお伝えしないと!」
「確かにそうだね」
「そういえば、次のドゥエツ王国本土、王城で行う社交界にディーナ様がいらっしゃるはずです」
「ああ。王太子関連だから毎年あるやつだね」
「そこに合わせて私たちも社交界に行きましょう! ディーナ様に成果を見せ、貴族の面々に銀細工の素晴らしさを見せつけてやるのです!」

 バーツ様は丁度いいと了承してくれた。
 社交界はそんなに好きじゃなさそうだけど、チャンスを逃すわけにはいかない。
 ここソッケ王国からドゥエツ王国本土へ渡るのは割と簡単だし丁度いいだろう。

「けど、社交界に参加って招待状が」
「大丈夫です! 私におまかせを!」
「エーヴァに?」
「はいっ!」

 やることが増えたけど気にしない。多少の忙しさは慣れているもの。
 まずはアリスに頼んでドゥエツ王国王城で開催される社交界の招待状を確保する。
 次に衣装。
 バーツ様の分はリッケリから送ってもらって、私のは実家にあるものをイングリッドに頼んでこっそり持ってきてもらえばどうにかなる。新しい銀細工を売り込む目的があるから、銀細工が映える衣装にしないといけない。
 それと、この銀細工を売り込むことで、復興現場における銀の重要性が再度注目される。ディーナ様が動いているようだけど、念の為辺境伯と独自契約をとって銀を融通してもらえるよう今から書面を交わしておいた方がいい。公正取引が確約されるまでの間、銀細工を作れないのでは話にならないからだ。
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