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28話 恋してるみたいな感じ
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「……騒がしいな」
「視察に王都の方々がいらしてるそうです」
「なら今日は切り上げて銀糸を作ろうか」
「はい!」
ありがたい!
元々いた復興従事者は昨日の今日で慣れてしまったし、視察の対応で私に絡んでくることはなかった。けど視察団は知っている面子がいる。アリスの情報だから間違いない。
「ああ、来たみたいだ」
「!」
「銀を積んだら一度戻ろう」
「はい。あの少し、席を外しても?」
「いいよ。気をつけて」
バーツ様はいつだって深く詮索せずに即許してくれる。急いで木の影から覗くと、視察の面々の中に知ってる人間がいた。
「……?」
「!」
「え、エー」
「!」
一人が私に気づいた。
慌てて身振り手振りで黙るよう伝える。先頭にいた視察団の一部が説明を受けている間にうまく周囲に声をかけてこちらに来た。
「エーヴァ様! なぜこちらに?!」
「しっ! 声が大きいわよ」
「すみません……ですが今までどちらに? 一部ではエーヴァ様が行方不明になったと噂が出ています」
家出が謎の失踪になっていた。
それも両親が否定しているらしい。家から出ていないとすれば本当にいるかいないかなんて誤魔化せる。まったく、自分たちの名誉しか頭にないのね。
「……まあいいわ。私、今銀をとってるのよ」
「え? こちらで?」
「そうよ。貴方たちは変わった鉱石目当てに来たんでしょ?」
「仰る通りです」
銀を必要としてなくて助かった。
銀が視察の対象でなければバーツ様と一緒に銀がとれる。
「そもそも銀についてはドゥエツ王国のループト公爵令嬢が管轄してまして、重要文化財でも使用するため各国への平等な配分を予定しています」
「なるほどね」
さすがディーナ様。
リッケリにいても本土や他国のことまで完全把握している。
「実は今回、変わった鉱石がとれまして、それが魔石であるという噂があり今回の視察になりました」
「魔石……」
魔法大国ネカルタスが乱用を防ぐ目的ですべての魔石を管理している。ソッケ王国含めた三国では出たためしがなかった。
「まさかネカルタスに黙って利用する気じゃ」
「その心配には及びません。今ソッケ王国は第一王子が内政改革を行い、第二王子派は政務に従事してませんし、第二王子も裁判で大陸に移送されました。今回もドゥエツ・キルカス両国の担当の方々も視察に来てるぐらいですし、やはりここでもドゥエツのループト公爵令嬢が間に入りネカルタス王国管轄になる予定です」
海外に学びに出ていた第一王子が戻ってきたとは聞いていたけど、本格的に動き始めたようだ。王太子になるのも時間の問題らしい。
今回三国合わせての視察にしているのも自身が王太子に相応しい判断と動きをしていることを見せている。自身の継承権に外交混ぜるなんて中々できる王子だ。
「なら大丈夫ね」
「相変わらず仕事の鬼ですね」
「私はシャーリー様が築き上げた成果を破綻させたくないだけよ」
ここまでソッケが国として保てているのはシャーリー様のおかげだ。様々な改革を成し遂げた。ここからは維持するだけにしても充分なぐらいだ。そこに第一王子が王太子となり、さらに改革を進めるならソッケは案外大丈夫かもしれない。第一王子は留学へ行く前からそこそこできる人間だったから。
「ならエーヴァ様が安心して銀をとれるよう自分からうまく計らってみます」
「ありがとう助かるわ」
「いいえ! エーヴァ様にはお世話になりましたし! できれば政務に戻ってきてほしいのですが」
「それはないわ」
「ですよね~」
シャーリー様いませんしと笑われた。笑う要素はどこにもないけど。
「他の人間が気づいたら私の存在は漏らさないよう伝えて」
「はい!」
箝口令がどこまで有効なのかは分からないけど、念には念をだ。
全てはバーツ様との銀細工のためだもの。
「あれ、エーヴァ様……」
「どうかした?」
「いえ、その……どなたかと一緒にここへ?」
「ああ、そうね。師匠と来てるわ」
「師匠?」
銀細工について説明するのが手間だったから話をせず「もう行って」と伝える。去り際、「だから雰囲気が」ともごもご言うので「雰囲気?」と返した。
「なんだかエーヴァ様ふわふわしてるというか……そうだ、恋してるみたいな感じです」
「恋?!」
「はは、そんな気がしただけです。じゃ行きますね。また話す時間ください」
「え、ええ……」
そんな顔違うの?!
銀細工が楽しくて仕方ないから顔が緩んでるのかもしれない。
「……もう」
恥ずかしさに気まずくて少ししてからバーツ様の元に戻った。
もっと早くにバーツ様の元に戻っていたら、あんなことにはならなかったのに。
「視察に王都の方々がいらしてるそうです」
「なら今日は切り上げて銀糸を作ろうか」
「はい!」
ありがたい!
元々いた復興従事者は昨日の今日で慣れてしまったし、視察の対応で私に絡んでくることはなかった。けど視察団は知っている面子がいる。アリスの情報だから間違いない。
「ああ、来たみたいだ」
「!」
「銀を積んだら一度戻ろう」
「はい。あの少し、席を外しても?」
「いいよ。気をつけて」
バーツ様はいつだって深く詮索せずに即許してくれる。急いで木の影から覗くと、視察の面々の中に知ってる人間がいた。
「……?」
「!」
「え、エー」
「!」
一人が私に気づいた。
慌てて身振り手振りで黙るよう伝える。先頭にいた視察団の一部が説明を受けている間にうまく周囲に声をかけてこちらに来た。
「エーヴァ様! なぜこちらに?!」
「しっ! 声が大きいわよ」
「すみません……ですが今までどちらに? 一部ではエーヴァ様が行方不明になったと噂が出ています」
家出が謎の失踪になっていた。
それも両親が否定しているらしい。家から出ていないとすれば本当にいるかいないかなんて誤魔化せる。まったく、自分たちの名誉しか頭にないのね。
「……まあいいわ。私、今銀をとってるのよ」
「え? こちらで?」
「そうよ。貴方たちは変わった鉱石目当てに来たんでしょ?」
「仰る通りです」
銀を必要としてなくて助かった。
銀が視察の対象でなければバーツ様と一緒に銀がとれる。
「そもそも銀についてはドゥエツ王国のループト公爵令嬢が管轄してまして、重要文化財でも使用するため各国への平等な配分を予定しています」
「なるほどね」
さすがディーナ様。
リッケリにいても本土や他国のことまで完全把握している。
「実は今回、変わった鉱石がとれまして、それが魔石であるという噂があり今回の視察になりました」
「魔石……」
魔法大国ネカルタスが乱用を防ぐ目的ですべての魔石を管理している。ソッケ王国含めた三国では出たためしがなかった。
「まさかネカルタスに黙って利用する気じゃ」
「その心配には及びません。今ソッケ王国は第一王子が内政改革を行い、第二王子派は政務に従事してませんし、第二王子も裁判で大陸に移送されました。今回もドゥエツ・キルカス両国の担当の方々も視察に来てるぐらいですし、やはりここでもドゥエツのループト公爵令嬢が間に入りネカルタス王国管轄になる予定です」
海外に学びに出ていた第一王子が戻ってきたとは聞いていたけど、本格的に動き始めたようだ。王太子になるのも時間の問題らしい。
今回三国合わせての視察にしているのも自身が王太子に相応しい判断と動きをしていることを見せている。自身の継承権に外交混ぜるなんて中々できる王子だ。
「なら大丈夫ね」
「相変わらず仕事の鬼ですね」
「私はシャーリー様が築き上げた成果を破綻させたくないだけよ」
ここまでソッケが国として保てているのはシャーリー様のおかげだ。様々な改革を成し遂げた。ここからは維持するだけにしても充分なぐらいだ。そこに第一王子が王太子となり、さらに改革を進めるならソッケは案外大丈夫かもしれない。第一王子は留学へ行く前からそこそこできる人間だったから。
「ならエーヴァ様が安心して銀をとれるよう自分からうまく計らってみます」
「ありがとう助かるわ」
「いいえ! エーヴァ様にはお世話になりましたし! できれば政務に戻ってきてほしいのですが」
「それはないわ」
「ですよね~」
シャーリー様いませんしと笑われた。笑う要素はどこにもないけど。
「他の人間が気づいたら私の存在は漏らさないよう伝えて」
「はい!」
箝口令がどこまで有効なのかは分からないけど、念には念をだ。
全てはバーツ様との銀細工のためだもの。
「あれ、エーヴァ様……」
「どうかした?」
「いえ、その……どなたかと一緒にここへ?」
「ああ、そうね。師匠と来てるわ」
「師匠?」
銀細工について説明するのが手間だったから話をせず「もう行って」と伝える。去り際、「だから雰囲気が」ともごもご言うので「雰囲気?」と返した。
「なんだかエーヴァ様ふわふわしてるというか……そうだ、恋してるみたいな感じです」
「恋?!」
「はは、そんな気がしただけです。じゃ行きますね。また話す時間ください」
「え、ええ……」
そんな顔違うの?!
銀細工が楽しくて仕方ないから顔が緩んでるのかもしれない。
「……もう」
恥ずかしさに気まずくて少ししてからバーツ様の元に戻った。
もっと早くにバーツ様の元に戻っていたら、あんなことにはならなかったのに。
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