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24話 恋や愛の相関図で敵わない
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やっぱり東側に出た海賊は陽動で予想通り次は西から現れる。
「ディーナ様、すごい!」
ディーナ様が前線に出た。西側に出た海賊に対して西から二つ目の島トゥに海賊を誘導。
ドゥエツ・ソッケ・キルカス・ソレペナ・ファンティヴェウメシイ・ネカルタスの六ヶ国会談がトゥ島でやると偽情報を流しセモツ国を混乱させ海賊誘導をスムーズにする。
待ち構えていた騎士たちとディーナ様が撃退。護衛の騎士が魔法薬を浴びたけどディーナ様が治した。
全てディーナ様の作戦通りだ。どこまでも規格外な方。
「しかも六ヶ国同盟まで!」
魔法大国ネカルタスの最強の魔法使いと言われるヴェルディス・グラティコスが魔法で同盟決定を広域に宣言、セモツ国が大きく動こうとしている。
ディーナ様はトゥ島での戦いを終え、本土へ戻るらしい。
「よろしくね、バーツ」
「ええ」
ドゥエツ王国に特使として来ている魔法大国ネカルタスの魔法使いがディーナ様を迎えに来た。そのまま急ぎで本土へ向かうディーナ様にバーツ様が声をかける。その様子をたまたま廊下の角で見つけてしまった。思わず角に隠れてしまう。
「ルー……公……嬢」
「なに?」
ほぼ聞き取れない距離だった。雰囲気程度しか分からない。けどうっかり隠れてしまったから、このぐらいの方が助かる。
「……」
「……」
遠慮がちに話すバーツ様に対し、堂々と立つディーナ様。ディーナ様は私と会った時と変わらず明るく、存在が輝いていた。
バーツ様が何かお願いしたのか、ディーナ様がいいよ~みたいな雰囲気を出している。
「……」
「……」
説明するバーツ様に対してディーナ様が頷き、ディーナ様の言葉に驚くバーツ様。ディーナ様は軽く手を上げて任せてと言わんばかりの笑顔を見せる。
「……」
「……」
ディーナ様はいつも通りなのにバーツ様が戸惑うような照れるような表情を出した。ディーナ様が嬉しそうに微笑む。
ディーナ様はどちらかというと楽しさの方が出てて、バーツ様は動揺しているというか……やっぱり照れている。
「まさかバーツ様……」
バーツ様、ディーナ様のことが好きなのでは?!
「バーツ様がディーナ様を好きでも、ディーナ様は……」
同じ好きが向いていない。誰にでも与えられるありきたりな好意がディーナ様から見えた。
今までディーナ様と対面したり遠目から見た限りだと、ディーナ様の特別な好きはディーナ様の護衛騎士に向けられている。護衛騎士は明らかにディーナ様が好きだ。
ディーナ様の気持ちが今まで見えなかったけど、リッケリにいらしてからの二人並んだ様子や護衛騎士を支えて戻ってきた時、その後の雰囲気を考えるとお二人は両想いな気がする。
「となるとバーツ様は失恋してしまうわ……」
バーツ様の一方通行だなんて。
バーツ様はディーナ様に救われた。銀細工師として保護してくれたことに加え、筆頭にまで指名してくれている。領地経営もバーツ様自身は乗り気でないけど、やっているのはディーナ様への特別な好意からだ。
ああ! 考えただけでバーツ様の片想いが切なすぎる!
「あら?」
胸の奥に再び広がる重苦しい気持ち悪さ。はっきりと感じる。私は今、もやっとした。なにに?
「いけない。今は戦争中なんだから気を引き締めないと!」
自分に言い聞かせてぐっと力を入れる。私は足早にその場を去った。
* * *
「終わった」
戦争があっさり終結する。魔法大国ネカルタスの最強の魔法使いヴェルディス・グラティコスが直接出てきたのが大きい。
各国で海賊や新手の敵を鎮圧し勝利宣言まで時間はあまりかからなかった。
終わり際、セモツのスパイであり、シャーリー様の義妹だったルーラがディーナ様を貶めようとしたけど、当然ディーナ様はこれを打破。
完全な終結に至る。
様々な後始末があった。諸島も再編成、復興に力をいれ、体調不良者はキルカス王国で開発された薬で回復傾向にある。
ひとしきり落ち着いた後、ディーナ様が来た。
「ディーナ様! ずっとお礼を言えず仕舞いでした!」
「気にしないで~銀細工作る方が大事だから」
リッケリに行けるよう手配してくれたこと、バーツ様への弟子入りをスムーズにしてくれたこと、全てに感謝だ。
「新作はどう?」
「はい。いくらか仕上がりました」
折角だからとお見せすると「おおー!」と感嘆の声をあげてくれる。
「すごい! もらった銀細工も素敵だけど、ますます精度があがってる!」
「ありがとうございます」
「いやいや、これとかすごくない?」
「あ、それはバーツ様に念入りに教えてもらった技を使った作品ですね」
「エーヴァすごい……バーツもすごいけど、エーヴァの上達がすごすぎだよ」
ディーナ様は本当にいい人だ。一緒にいるだけでやる気になれる。
「今回のこともありがとうございます。頑張って新しい銀を手に入れてきますね!」
ソッケ王国で発見された新しい銀を、やっととりにいけることになった。戦争があったのだから仕方ないけど、待ちに待っただけあって既に泣きそう。その銀で銀細工が作れる。最高すぎ。
「ふふ。私もできる限り手伝うから何かあったら言ってね」
権力使うから、と笑う。
ディーナ様はすごい。一緒にいるだけで前を向ける。側にいるだけで明るくなれる人だ。
「ディーナ様には敵いません」
「ん? なにが?」
「あ……いえ、なんでもありません」
今の言葉の意味を察した自分に驚いてしまった。
人柄が素晴らしいとか、尊敬できる方、という想いはきちんとある。
「けどこれは……」
バーツ様がディーナ様を好きで、バーツ様の好きを私が得るのは難しい。
バーツ様に関する恋や愛の相関図でディーナ様に敵わない、という意味だ。
「ディーナ様、すごい!」
ディーナ様が前線に出た。西側に出た海賊に対して西から二つ目の島トゥに海賊を誘導。
ドゥエツ・ソッケ・キルカス・ソレペナ・ファンティヴェウメシイ・ネカルタスの六ヶ国会談がトゥ島でやると偽情報を流しセモツ国を混乱させ海賊誘導をスムーズにする。
待ち構えていた騎士たちとディーナ様が撃退。護衛の騎士が魔法薬を浴びたけどディーナ様が治した。
全てディーナ様の作戦通りだ。どこまでも規格外な方。
「しかも六ヶ国同盟まで!」
魔法大国ネカルタスの最強の魔法使いと言われるヴェルディス・グラティコスが魔法で同盟決定を広域に宣言、セモツ国が大きく動こうとしている。
ディーナ様はトゥ島での戦いを終え、本土へ戻るらしい。
「よろしくね、バーツ」
「ええ」
ドゥエツ王国に特使として来ている魔法大国ネカルタスの魔法使いがディーナ様を迎えに来た。そのまま急ぎで本土へ向かうディーナ様にバーツ様が声をかける。その様子をたまたま廊下の角で見つけてしまった。思わず角に隠れてしまう。
「ルー……公……嬢」
「なに?」
ほぼ聞き取れない距離だった。雰囲気程度しか分からない。けどうっかり隠れてしまったから、このぐらいの方が助かる。
「……」
「……」
遠慮がちに話すバーツ様に対し、堂々と立つディーナ様。ディーナ様は私と会った時と変わらず明るく、存在が輝いていた。
バーツ様が何かお願いしたのか、ディーナ様がいいよ~みたいな雰囲気を出している。
「……」
「……」
説明するバーツ様に対してディーナ様が頷き、ディーナ様の言葉に驚くバーツ様。ディーナ様は軽く手を上げて任せてと言わんばかりの笑顔を見せる。
「……」
「……」
ディーナ様はいつも通りなのにバーツ様が戸惑うような照れるような表情を出した。ディーナ様が嬉しそうに微笑む。
ディーナ様はどちらかというと楽しさの方が出てて、バーツ様は動揺しているというか……やっぱり照れている。
「まさかバーツ様……」
バーツ様、ディーナ様のことが好きなのでは?!
「バーツ様がディーナ様を好きでも、ディーナ様は……」
同じ好きが向いていない。誰にでも与えられるありきたりな好意がディーナ様から見えた。
今までディーナ様と対面したり遠目から見た限りだと、ディーナ様の特別な好きはディーナ様の護衛騎士に向けられている。護衛騎士は明らかにディーナ様が好きだ。
ディーナ様の気持ちが今まで見えなかったけど、リッケリにいらしてからの二人並んだ様子や護衛騎士を支えて戻ってきた時、その後の雰囲気を考えるとお二人は両想いな気がする。
「となるとバーツ様は失恋してしまうわ……」
バーツ様の一方通行だなんて。
バーツ様はディーナ様に救われた。銀細工師として保護してくれたことに加え、筆頭にまで指名してくれている。領地経営もバーツ様自身は乗り気でないけど、やっているのはディーナ様への特別な好意からだ。
ああ! 考えただけでバーツ様の片想いが切なすぎる!
「あら?」
胸の奥に再び広がる重苦しい気持ち悪さ。はっきりと感じる。私は今、もやっとした。なにに?
「いけない。今は戦争中なんだから気を引き締めないと!」
自分に言い聞かせてぐっと力を入れる。私は足早にその場を去った。
* * *
「終わった」
戦争があっさり終結する。魔法大国ネカルタスの最強の魔法使いヴェルディス・グラティコスが直接出てきたのが大きい。
各国で海賊や新手の敵を鎮圧し勝利宣言まで時間はあまりかからなかった。
終わり際、セモツのスパイであり、シャーリー様の義妹だったルーラがディーナ様を貶めようとしたけど、当然ディーナ様はこれを打破。
完全な終結に至る。
様々な後始末があった。諸島も再編成、復興に力をいれ、体調不良者はキルカス王国で開発された薬で回復傾向にある。
ひとしきり落ち着いた後、ディーナ様が来た。
「ディーナ様! ずっとお礼を言えず仕舞いでした!」
「気にしないで~銀細工作る方が大事だから」
リッケリに行けるよう手配してくれたこと、バーツ様への弟子入りをスムーズにしてくれたこと、全てに感謝だ。
「新作はどう?」
「はい。いくらか仕上がりました」
折角だからとお見せすると「おおー!」と感嘆の声をあげてくれる。
「すごい! もらった銀細工も素敵だけど、ますます精度があがってる!」
「ありがとうございます」
「いやいや、これとかすごくない?」
「あ、それはバーツ様に念入りに教えてもらった技を使った作品ですね」
「エーヴァすごい……バーツもすごいけど、エーヴァの上達がすごすぎだよ」
ディーナ様は本当にいい人だ。一緒にいるだけでやる気になれる。
「今回のこともありがとうございます。頑張って新しい銀を手に入れてきますね!」
ソッケ王国で発見された新しい銀を、やっととりにいけることになった。戦争があったのだから仕方ないけど、待ちに待っただけあって既に泣きそう。その銀で銀細工が作れる。最高すぎ。
「ふふ。私もできる限り手伝うから何かあったら言ってね」
権力使うから、と笑う。
ディーナ様はすごい。一緒にいるだけで前を向ける。側にいるだけで明るくなれる人だ。
「ディーナ様には敵いません」
「ん? なにが?」
「あ……いえ、なんでもありません」
今の言葉の意味を察した自分に驚いてしまった。
人柄が素晴らしいとか、尊敬できる方、という想いはきちんとある。
「けどこれは……」
バーツ様がディーナ様を好きで、バーツ様の好きを私が得るのは難しい。
バーツ様に関する恋や愛の相関図でディーナ様に敵わない、という意味だ。
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