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第2章 『祖父の写真』
第22話 戻りましょうか
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「ヒント三つ目。それは、どのようなカメラを用いてあの写真が撮られたか、ということです」
「カメラ……種類ってことですか?」
「はい。これが分かってしまえば、答えに辿り着くのはとても簡単です。順を追って説明致しましょう」
クリスさんは指を立てていた手を下げ、風景の見える方へと歩いた。
私たちも、ただその背を追ってついて行く。
「二人分の椅子を持って来ていたこと、写真の位置だと目線がとても低いこと。現状、これらはまず間違いなさそうです。いいですね?」
クリスさんの言葉に、私たちは頷いた。
「では、四つ目のヒント、カメラの種類――これについては、当時買い換えたばかりだと言っていた、おじい様の『スマホ』でまず間違いはありません」
「スマホ……そう言えば、そんな話もありましたね。でも、確かデジカメも持って行ってたって言ってましたよね。何でデジカメじゃなかったんでしょう」
「それはきっと、以前から家にあった、馴染みのものだったからでしょう。お気に入りのデジカメ、と言っていたくらいですから、おそらくデジカメは使っていなかった」
「どうしてですか?」
「善利さんはこうも言っていました。『子どもらしい好奇心はあったけど』と。当時の小四女子の目には、スマホはとても珍しく、面白そうなものに映ったはずです」
「そっか、すっかり馴染んだデジカメより、見た事も触ったこともない、スマホに興味を持ったんだ」
「はい。では、そのスマホでどのようにして撮られたか。そこで、二つ目のヒントにも答えますが、善利さんはおそらく、おじい様のすぐ真横に座っていたのではないでしょうか」
「えっ、真横……?」
思わず驚きの声を上げる私の隣で、善利さんも同様に難しい表情を浮かべていた。
少し考えれば、後ろや前にいるよりかは説得力はある。後ろからなら善利さんの写真が特別だとは思いにくいし、前からならそもそも変なものが映り込むこともないはずだ。
それは分かる。分かるけれど、だからと言って、どうして断言が出来るのだろう。
「クリスさんはこの写真に写るものが何か、分かってしまってるんですね」
恐る恐る尋ねる私に、クリスさんは優しく微笑み、頷いた。
「お店にいる時から、何となくその可能性は感じていましたが、道中のお二人の会話から、結論付けても不思議はないような答えは出ています。せっかくですから、実演しつつ答え合わせと参りましょう。ベンチのある広場まで戻りますよ」
そう言って、先導し歩き始めたクリスさんの後を、私たちは言い知れないモヤモヤとともに追いかけた。
「カメラ……種類ってことですか?」
「はい。これが分かってしまえば、答えに辿り着くのはとても簡単です。順を追って説明致しましょう」
クリスさんは指を立てていた手を下げ、風景の見える方へと歩いた。
私たちも、ただその背を追ってついて行く。
「二人分の椅子を持って来ていたこと、写真の位置だと目線がとても低いこと。現状、これらはまず間違いなさそうです。いいですね?」
クリスさんの言葉に、私たちは頷いた。
「では、四つ目のヒント、カメラの種類――これについては、当時買い換えたばかりだと言っていた、おじい様の『スマホ』でまず間違いはありません」
「スマホ……そう言えば、そんな話もありましたね。でも、確かデジカメも持って行ってたって言ってましたよね。何でデジカメじゃなかったんでしょう」
「それはきっと、以前から家にあった、馴染みのものだったからでしょう。お気に入りのデジカメ、と言っていたくらいですから、おそらくデジカメは使っていなかった」
「どうしてですか?」
「善利さんはこうも言っていました。『子どもらしい好奇心はあったけど』と。当時の小四女子の目には、スマホはとても珍しく、面白そうなものに映ったはずです」
「そっか、すっかり馴染んだデジカメより、見た事も触ったこともない、スマホに興味を持ったんだ」
「はい。では、そのスマホでどのようにして撮られたか。そこで、二つ目のヒントにも答えますが、善利さんはおそらく、おじい様のすぐ真横に座っていたのではないでしょうか」
「えっ、真横……?」
思わず驚きの声を上げる私の隣で、善利さんも同様に難しい表情を浮かべていた。
少し考えれば、後ろや前にいるよりかは説得力はある。後ろからなら善利さんの写真が特別だとは思いにくいし、前からならそもそも変なものが映り込むこともないはずだ。
それは分かる。分かるけれど、だからと言って、どうして断言が出来るのだろう。
「クリスさんはこの写真に写るものが何か、分かってしまってるんですね」
恐る恐る尋ねる私に、クリスさんは優しく微笑み、頷いた。
「お店にいる時から、何となくその可能性は感じていましたが、道中のお二人の会話から、結論付けても不思議はないような答えは出ています。せっかくですから、実演しつつ答え合わせと参りましょう。ベンチのある広場まで戻りますよ」
そう言って、先導し歩き始めたクリスさんの後を、私たちは言い知れないモヤモヤとともに追いかけた。
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