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序章 『出会い』
第4話 よろしくおねがいします
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「そうでしたか。そんなことが」
私の話を、マスターさんは静かに聞いていた。
「ごめんなさい、つまらない話を」
言うと、マスターさんは手にしていたカップを置いて、私に向かい合った。
「大変でしたね、なんて優しい言葉はかけてあげられません。私の感じた気持ちは、貴女のものではありませんから。私は、貴女ではありませんからね」
「ええ……」
「ですが――そうですね。貴女は今、それらを少なからず引き摺っている、あるいは気にして、自分を見失いかけているように見えます」
「そ、それは……」
その通りだ。
私でないと言いながら、私の胸中を的確に察している。
「貴女でない私に出来ることは、貴女の今、そしてこれからのことを考えてあげることだけ」
「これから、ですか……?」
マスターさんは、ふわりと微笑む。
優しく微笑みかけて、名刺を一枚、机上に置いた。
「先ほど、心ここにあらずといった様子で立っていながら、働き手募集中の貼り紙を見ていたのではありませんか?」
「ど、どうしてそれを…!」
「半信半疑でしたが、今の話を聞いて確信致しました。大学、お金がかかりますね。こっちで通いたい、と我儘を言ったということでお母様のことも気にして、一人暮らしの選択をしようと思うのなら、金銭面のことは少なからず着いて回るお話です。ただお店に入るか否かと逡巡していたのであれば話も別でしょうが、お金は持ち合わせていなかった。まぁもっとも、今現在は外に『臨時休業中』の貼り紙もあった筈ですけれどね。得たお金の使い道に関しては分かりかねますが、少しでもお母様の負担とでも言いましょうか、そういったものを減らしたいとでもお考えになっていたのではありませんか? ただ気を紛らわせる為だけなんかに、それだけの傷を負った少女が独り、バイトを探すとは、私には思えません」
「それは……はい。でも、やっぱり変な話ですよね。それでお母さんの助けになる訳ないし、寧ろ心配事を増やしてしまうだけだし……」
「それはお母様にしか分からないことです。想像だけで暗くなってしまうのは、貴女の人生があまりにかわいそうです」
マスターさんは、笑顔を崩さない。
「で、でも、履歴書とか、いえ、まだ名乗ってもいませんし、それに……」
「そんなものは後からでも構いません。大手企業の採用面接ではないのですから」
「さっきから私、今話したようなことばかり考えて、ずっと暗い表情してますし、多分しばらく、ずっと……」
「すぐに変われと言われる方が、土台無理な話です。けれど、実はとても簡単な話でもあります。気にしてしまうから辛いのなら、他に気になることを作ってあげればいいんです」
「他に、気になること……」
「ええ。喫茶店のお仕事って、結構大変なんですよ?」
「ど、どうして……」
どうして、ここまで優しくしてくれるのだろう。
どうして、初対面で名前も何も知らない私に、ここまでの言葉をかけてくれるのだろう。
他人なんて信じられないって、もう下手に信用しないって、そうやって蓋をした筈なのに。
それなのに。
がんじがらめだった心を優しく解きほぐすように、マスターさんは笑顔を崩さない。
いや、それも違う。
自分から、蓋を開けようとしている……?
そんなこと、絶対にあり得ないって、思ってたはずなのに。
「い……良いんでしょうか……私なんかが、ここで働いて……」
「私は貴女を選びたいと思います。が、決めるのは貴女自身。ただ、自分だけでなく、他人のことでそこまで思い詰めることが出来る貴女なら、きっと良い働き手になってくれるはずだと、そう思います」
「アルバイト、初めてなんです。学生バイトもやったことないし」
「誰だって、最初は初めてなことしかありません。何でもお教えします」
「あ、足を引っ張ります」
「それ以上の力で、私が貴女を引っ張ってあげましょう」
「ミス、いっぱいするかも知れません……迷惑も、沢山……」
「初めから全部をこなせるような人間、この世には存在しませんよ」
「で、でも、それに、それに…!」
ああ、この人は――この人はきっと、自然とこういうことが言えてしまう人なんだ。
「…………よ……よろしく、お願いします……」
「ええ、こちらこそ」
差し出された手に伸ばした自分の手は、寸前で躊躇って、引っ込めてしまいそうになる。それを掬い上げるように、一層温かな笑みを向けてくれるマスターさんに、胸がキュっと苦しくなる。
けれど、これはきっと、怖いからでも、心配だからでもない。
母以外の人から、本当の意味での優しさを、裏も表もない言葉をもらったことが初めてだったから――そう。嬉しいんだ。
きっと、心の奥底の方で、喜んでいるんだ。
ここまで背負って引き摺って来たものを、優しく降ろしてくれるような、そんな心地。
嬉しくて、涙が溢れてしまっているんだ。
「おい嬢ちゃん、どうした? ほらハンカチ使いよし」
「お水もあるから、ちょっと飲んでゆっくり息しな、ほら」
後ろで喋っていた筈の人たちまでも、そうして私の方へと歩み寄って来た。
本当に心配してくれているらしいことが、何となく、本当に何となくだけれど分かる。
「あ、ありがとうございます……」
みっともなく泣きながら、それらを受け取る。
落ち着け落ち着けと背中をさすってくれるおじいさまには、大丈夫だからと断りながら、椅子に座り直した。
すると、ふとマスターさんがぷっと吹き出した。何かおかしなことでもあったのかな。
「ふふ。まったく、ここに来るような方々は、本当にお優しい人たちばかりです」
「そうですね、本当に。もちろん、マスターさんも」
「いえ、そうではなく。武雄さんの話です」
「たけおさん……先ほどのおじさまがですか?」
思わず聞き返す私に、マスターさんは先まであのおじさまが座っていた席を指す。
そこには、千円札が置かれていた。
「お、お金……? 今日って、試食会じゃ……い、いえ、これが、どうしてあの方が優しいって……」
そう尋ねると、マスターさんは少し困ったように、小さく頭を下げた。
「えっ、ま、マスターさん!?」
「武雄さんが、まさかこんなことをするだなんて思わなくて……本当はこのまま、言わない方が良いのでしょうけれど」
「い、言わないまま……?」
「ええ。今日の試食会のメニュー、本当はフォンダンショコラだったんですよ」
「フォンダン、ショコラ……あれ、ブッシュドノエルは……?」
「ええ。それは、元々ここにあるメニュー。ショコラの方は、試食会用に用意した個数しかなかったから、代わりと言うと変な感じですけれど。お代なんかのことで、貴女に変に気を遣わせるのも嫌でしたけれど、幸い皆さん食べ終わってたから、丁度いいと思ったのに」
「つ、つまり、このお金は――」
私に出された、ノエルの代金だ。
「無言でね、机の上と貴女とを、視線で指してから、店を後にされたんですよ」
「そ、そうだったんですか……」
そんなことをしていた、いや、私なんかが、されていたなんて。
「ちょっと不愛想だけど、優しい……本当ですね」
「言葉だけでも十分だったでしょうに、わざわざこんなことまで。ちょっと格好つけ過ぎですよね。ふふ」
「ですね……でも、とってもかっこいいです」
「ええ、本当に」
ふわりと笑うと、マスターさんはまた、洗い物などの仕事へと取り掛かる。
私の視線は、自然と机上に置いてある千円札へと行ってしまうのだけれど、これで払ってしまうのも、どうにも気が引ける。
そんなことを思う私に、仕事をしながらの店長さんが、一つ言い忘れていたと続ける。
「武雄さん、前にも似たようなことで誰かのお支払いをしたことがあったんですけれど、一度言い出したら聞かない頑固者なんです。それはもう、梃子でも動かないくらいの。だから、今回だけは甘えてしまってもいいと思いますよ」
「で、でも……」
「それでも気が乗らないのなら――そうですね。アルバイト代をお渡ししてからでも、彼のお店でお買い物をしてあげてください。川向かいの、店先に大きな桜の木がある建物がそれです。今は娘さんの花音さんと奥さんと、三人で経営されているお茶屋さんです」
それならわざとらしくなくて良いでしょう? と、マスターさんは括った。
「そう、ですね……はい、そう出来るように、お仕事、頑張らないといけませんね」
「ええ、その意気です。履歴書等はいつでも構いませんから、また都合のいい日を教えてください。連絡先は、その名刺に」
「はい。あっ、ありがとうございます!」
「よいお返事です。改めて、私はここ、純喫茶『淡海』のマスター兼店主の、来栖汐里と申します。これから、宜しくお願い致しますね」
「せ、妹尾雫です…! 極力、ご迷惑はおかけしないように頑張りますで、お願い致します、クリスティさん! あっ…」
口を突いて出てしまった言葉に、マスターさんはまた小さくぷっと吹き出した。
私の話を、マスターさんは静かに聞いていた。
「ごめんなさい、つまらない話を」
言うと、マスターさんは手にしていたカップを置いて、私に向かい合った。
「大変でしたね、なんて優しい言葉はかけてあげられません。私の感じた気持ちは、貴女のものではありませんから。私は、貴女ではありませんからね」
「ええ……」
「ですが――そうですね。貴女は今、それらを少なからず引き摺っている、あるいは気にして、自分を見失いかけているように見えます」
「そ、それは……」
その通りだ。
私でないと言いながら、私の胸中を的確に察している。
「貴女でない私に出来ることは、貴女の今、そしてこれからのことを考えてあげることだけ」
「これから、ですか……?」
マスターさんは、ふわりと微笑む。
優しく微笑みかけて、名刺を一枚、机上に置いた。
「先ほど、心ここにあらずといった様子で立っていながら、働き手募集中の貼り紙を見ていたのではありませんか?」
「ど、どうしてそれを…!」
「半信半疑でしたが、今の話を聞いて確信致しました。大学、お金がかかりますね。こっちで通いたい、と我儘を言ったということでお母様のことも気にして、一人暮らしの選択をしようと思うのなら、金銭面のことは少なからず着いて回るお話です。ただお店に入るか否かと逡巡していたのであれば話も別でしょうが、お金は持ち合わせていなかった。まぁもっとも、今現在は外に『臨時休業中』の貼り紙もあった筈ですけれどね。得たお金の使い道に関しては分かりかねますが、少しでもお母様の負担とでも言いましょうか、そういったものを減らしたいとでもお考えになっていたのではありませんか? ただ気を紛らわせる為だけなんかに、それだけの傷を負った少女が独り、バイトを探すとは、私には思えません」
「それは……はい。でも、やっぱり変な話ですよね。それでお母さんの助けになる訳ないし、寧ろ心配事を増やしてしまうだけだし……」
「それはお母様にしか分からないことです。想像だけで暗くなってしまうのは、貴女の人生があまりにかわいそうです」
マスターさんは、笑顔を崩さない。
「で、でも、履歴書とか、いえ、まだ名乗ってもいませんし、それに……」
「そんなものは後からでも構いません。大手企業の採用面接ではないのですから」
「さっきから私、今話したようなことばかり考えて、ずっと暗い表情してますし、多分しばらく、ずっと……」
「すぐに変われと言われる方が、土台無理な話です。けれど、実はとても簡単な話でもあります。気にしてしまうから辛いのなら、他に気になることを作ってあげればいいんです」
「他に、気になること……」
「ええ。喫茶店のお仕事って、結構大変なんですよ?」
「ど、どうして……」
どうして、ここまで優しくしてくれるのだろう。
どうして、初対面で名前も何も知らない私に、ここまでの言葉をかけてくれるのだろう。
他人なんて信じられないって、もう下手に信用しないって、そうやって蓋をした筈なのに。
それなのに。
がんじがらめだった心を優しく解きほぐすように、マスターさんは笑顔を崩さない。
いや、それも違う。
自分から、蓋を開けようとしている……?
そんなこと、絶対にあり得ないって、思ってたはずなのに。
「い……良いんでしょうか……私なんかが、ここで働いて……」
「私は貴女を選びたいと思います。が、決めるのは貴女自身。ただ、自分だけでなく、他人のことでそこまで思い詰めることが出来る貴女なら、きっと良い働き手になってくれるはずだと、そう思います」
「アルバイト、初めてなんです。学生バイトもやったことないし」
「誰だって、最初は初めてなことしかありません。何でもお教えします」
「あ、足を引っ張ります」
「それ以上の力で、私が貴女を引っ張ってあげましょう」
「ミス、いっぱいするかも知れません……迷惑も、沢山……」
「初めから全部をこなせるような人間、この世には存在しませんよ」
「で、でも、それに、それに…!」
ああ、この人は――この人はきっと、自然とこういうことが言えてしまう人なんだ。
「…………よ……よろしく、お願いします……」
「ええ、こちらこそ」
差し出された手に伸ばした自分の手は、寸前で躊躇って、引っ込めてしまいそうになる。それを掬い上げるように、一層温かな笑みを向けてくれるマスターさんに、胸がキュっと苦しくなる。
けれど、これはきっと、怖いからでも、心配だからでもない。
母以外の人から、本当の意味での優しさを、裏も表もない言葉をもらったことが初めてだったから――そう。嬉しいんだ。
きっと、心の奥底の方で、喜んでいるんだ。
ここまで背負って引き摺って来たものを、優しく降ろしてくれるような、そんな心地。
嬉しくて、涙が溢れてしまっているんだ。
「おい嬢ちゃん、どうした? ほらハンカチ使いよし」
「お水もあるから、ちょっと飲んでゆっくり息しな、ほら」
後ろで喋っていた筈の人たちまでも、そうして私の方へと歩み寄って来た。
本当に心配してくれているらしいことが、何となく、本当に何となくだけれど分かる。
「あ、ありがとうございます……」
みっともなく泣きながら、それらを受け取る。
落ち着け落ち着けと背中をさすってくれるおじいさまには、大丈夫だからと断りながら、椅子に座り直した。
すると、ふとマスターさんがぷっと吹き出した。何かおかしなことでもあったのかな。
「ふふ。まったく、ここに来るような方々は、本当にお優しい人たちばかりです」
「そうですね、本当に。もちろん、マスターさんも」
「いえ、そうではなく。武雄さんの話です」
「たけおさん……先ほどのおじさまがですか?」
思わず聞き返す私に、マスターさんは先まであのおじさまが座っていた席を指す。
そこには、千円札が置かれていた。
「お、お金……? 今日って、試食会じゃ……い、いえ、これが、どうしてあの方が優しいって……」
そう尋ねると、マスターさんは少し困ったように、小さく頭を下げた。
「えっ、ま、マスターさん!?」
「武雄さんが、まさかこんなことをするだなんて思わなくて……本当はこのまま、言わない方が良いのでしょうけれど」
「い、言わないまま……?」
「ええ。今日の試食会のメニュー、本当はフォンダンショコラだったんですよ」
「フォンダン、ショコラ……あれ、ブッシュドノエルは……?」
「ええ。それは、元々ここにあるメニュー。ショコラの方は、試食会用に用意した個数しかなかったから、代わりと言うと変な感じですけれど。お代なんかのことで、貴女に変に気を遣わせるのも嫌でしたけれど、幸い皆さん食べ終わってたから、丁度いいと思ったのに」
「つ、つまり、このお金は――」
私に出された、ノエルの代金だ。
「無言でね、机の上と貴女とを、視線で指してから、店を後にされたんですよ」
「そ、そうだったんですか……」
そんなことをしていた、いや、私なんかが、されていたなんて。
「ちょっと不愛想だけど、優しい……本当ですね」
「言葉だけでも十分だったでしょうに、わざわざこんなことまで。ちょっと格好つけ過ぎですよね。ふふ」
「ですね……でも、とってもかっこいいです」
「ええ、本当に」
ふわりと笑うと、マスターさんはまた、洗い物などの仕事へと取り掛かる。
私の視線は、自然と机上に置いてある千円札へと行ってしまうのだけれど、これで払ってしまうのも、どうにも気が引ける。
そんなことを思う私に、仕事をしながらの店長さんが、一つ言い忘れていたと続ける。
「武雄さん、前にも似たようなことで誰かのお支払いをしたことがあったんですけれど、一度言い出したら聞かない頑固者なんです。それはもう、梃子でも動かないくらいの。だから、今回だけは甘えてしまってもいいと思いますよ」
「で、でも……」
「それでも気が乗らないのなら――そうですね。アルバイト代をお渡ししてからでも、彼のお店でお買い物をしてあげてください。川向かいの、店先に大きな桜の木がある建物がそれです。今は娘さんの花音さんと奥さんと、三人で経営されているお茶屋さんです」
それならわざとらしくなくて良いでしょう? と、マスターさんは括った。
「そう、ですね……はい、そう出来るように、お仕事、頑張らないといけませんね」
「ええ、その意気です。履歴書等はいつでも構いませんから、また都合のいい日を教えてください。連絡先は、その名刺に」
「はい。あっ、ありがとうございます!」
「よいお返事です。改めて、私はここ、純喫茶『淡海』のマスター兼店主の、来栖汐里と申します。これから、宜しくお願い致しますね」
「せ、妹尾雫です…! 極力、ご迷惑はおかけしないように頑張りますで、お願い致します、クリスティさん! あっ…」
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