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第3楽章 『calando』
3-23.私を置いていかないで
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どれだけの時間が経っただろうか。
少し落ち着いてくると、私はこれからどうしようかと考え始めた。
自分のこと。
母のこと。
会場に連絡もしなきゃいけないだろう。
頭の中はまだ整理なんて出来ないけれど、それでも何かしなければならない。
涼子さんは医師の話を詳しく聞いていて、杏奈さんは少し落ち着きたいからと屋上へ出ている。佳乃は来ていない。陽向には、夢の中でしか会うことが出来ない。
そんな状況にあって、誰かと何かをすることは出来ない。
もっとも、今は何をする気も起こらないのだけれど。
「いや……私を置いて行かないでよ……お母さん…」
このまま――誰も頼る宛てがない。そう、思っていた時だ。
『何かあったら頼ってくれ。僕自身がこれ以上後悔しないためにも、必ず、君たちの力になると約束する』
私はふと、あの日一さんから言われた言葉を思い出した。
念のためにと登録していおいたそれを使う機会なんて、しばらくは巡って来ないだろうと思っていたのに。
電話帳からそれを選んで、番号を押しかけて、やめて――そんなことを何度か繰り返してようやく、私は一さんへと繋いだ。
休日とは言え、今はまだ昼間。出てくれるとも限らない。
半ば祈るようにして迎えた何度目かのコール音の後で、プツっと音が鳴った。
『もしもし、陽和かい? どうし――』
「今すぐ、来てください……」
自分の声でないと思えるくらい、か細い声が零れる。
少しの沈黙の後、一さんは答えた。
『今、どこにいるんだい?』
少し落ち着いてくると、私はこれからどうしようかと考え始めた。
自分のこと。
母のこと。
会場に連絡もしなきゃいけないだろう。
頭の中はまだ整理なんて出来ないけれど、それでも何かしなければならない。
涼子さんは医師の話を詳しく聞いていて、杏奈さんは少し落ち着きたいからと屋上へ出ている。佳乃は来ていない。陽向には、夢の中でしか会うことが出来ない。
そんな状況にあって、誰かと何かをすることは出来ない。
もっとも、今は何をする気も起こらないのだけれど。
「いや……私を置いて行かないでよ……お母さん…」
このまま――誰も頼る宛てがない。そう、思っていた時だ。
『何かあったら頼ってくれ。僕自身がこれ以上後悔しないためにも、必ず、君たちの力になると約束する』
私はふと、あの日一さんから言われた言葉を思い出した。
念のためにと登録していおいたそれを使う機会なんて、しばらくは巡って来ないだろうと思っていたのに。
電話帳からそれを選んで、番号を押しかけて、やめて――そんなことを何度か繰り返してようやく、私は一さんへと繋いだ。
休日とは言え、今はまだ昼間。出てくれるとも限らない。
半ば祈るようにして迎えた何度目かのコール音の後で、プツっと音が鳴った。
『もしもし、陽和かい? どうし――』
「今すぐ、来てください……」
自分の声でないと思えるくらい、か細い声が零れる。
少しの沈黙の後、一さんは答えた。
『今、どこにいるんだい?』
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