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閑話 遥の心境
しおりを挟む俺には、ずっと前から好きな人がいる。
その子の名前は立花ゆり。
本人は気が付いていないようだが、昔から周りの人に好かれている。
しかし、その周りの人はなぜか、こっそりとゆりを見守るため
本人には絶対に話しかけたりしない。もちろん、その両親もだ。
本人たちいわく、「ゆり様は高嶺の花なので私達ごときが話してはいけない」らしい。
前会ったときにそう話していた。
そんなに好きなら話しかけてあげればいいのに。
俺としては不思議でならない。
でも、自分でもわかっている。
俺は相当ゆりに執着している。
だからこそ、この状況が少しうれしい。
だって、ゆりを一人占めできるのだから。
俺は六年ほど留学してしていて今日日本に帰ってきたところだが
自分の部下に、ゆりについては報告をさせている。
ゆりは知らないが、実はゆりのクラスに俺の部下を潜ませているのだ。
底から定期的に報告を受けている。
これで問題ないと思っていた、さっきまでは。
偶然、町でゆりが歩いているのが見えた。
どこに行くのか気になって、思わずつけてみた。
すると、高いビルの屋上へ階段で登っていくではないか!
嫌な予感がして足音を立てずにそっと上った。
ゆりに追いつくと、ゆりが自殺をしようとしていた。
とっさに声が出た。
「君の命いらないんだったら、僕にくれないかな?」
自分でも、なんてことをいっているのか驚いた。
でも、ゆりは「いいよ。私の命、あなたにあげる。どうにでもつかえばいいよ」
そう答えた。
いったい何があれば、こんなことをするくらいまでになったのだろうか?
家族仲もよかったはずなのに。
いったいなにが、ここまでゆりを追い詰めたのだろうか?
そんなことを考える。
ゆりは俺の婚約者になることを了承してくれた。
まさか、、、ゆりの感情がなくなってきてしまったとは。
やるせない思いで、手を握り締める。
まさか俺が、ゆりにふさわしくなるためにと思って留学している間にこんなことになるなんて
思いもしなかった。
少しでもそばにいれば何か変わっていたのだろうか?
そんなことを考えても時間はまき戻らない。
これからのことを考えなくては。
これからは絶対にゆりの感情と心を取り戻して見せるって心の中で誓った。
たとえ、ゆりが俺のことを覚えていなくても。
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