パークラ認定されてパーティーから追放されたから田舎でスローライフを送ろうと思う

ユースケ

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水面下で蠢く悪意 前編

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「よ……よう、こんな所で会うなんて奇遇だな。 サラーナはどうした? あいつの姿が見えないけど……うおっ!」

「良いから黙ってついてきなさい。 話がある」

 いきなり胸倉を掴んできたアイネは、俺をそのままギルドの外へと引っ張り出す。
 連れ込まれたのはギルドの裏手。
 路地裏だった。
 まるでチンピラに絡まれているかのような構図である。

「いって! なにすんだよ、いきなり! 相変わらず乱暴なやつだな、お前は!」

「うっさい! 乱暴なのは生まれつきよ! ほっといて! ……って、そんな事はどうでも良い! あんた、あいつに何したのよ! 自分が今どういう状況かわかってるの!? こんなところほっとき歩いて、バカじゃないの!」

 なにがだ、まったくわからん。

「一体なんの話だ。 ちゃんと説明してくれ。 じゃないと話のしようがないぞ」

「……ッ! だから……!」

「……ふぅ。 アイネ、少し落ち着いてください。 そんな興奮しては、まともに話なんか出来ませんよ。 なのでここは一旦私が代わりに話します。 いいですね」

 リューネに止められたアイネは、一瞬渋ったが、自分よりリューネの方が冷静に話せると判断したのか。

「……チッ、わかったわよ」

 俺もどうせ話すならリューネの方がありがたい。
 アイネは激情に駆られがちだからな。
 常に冷静さを保っているリューネの方が話しやすいってもんだ。

「ったく、なんなんだよあいつ。 毎度ながらすぐ手が出すぎだろ」

「ふふ、すいません。 ですがそれも全てはソーマの身を案じての事。 許してあげてください」

 確かにアイネは怒りっぽいが、それはあいつが優しいゆえだ。
 そのくらい俺も理解してる。

「相変わらず素直じゃないやつ。 もう少し可愛げがあっても…………まあいいや。 で、俺になんの用なんだ? もう顔も見たくないって言ってた割に、こうして連れ出すぐらいだ。 よっぽどな話があるんだろ?」

「察しがよくて助かります。 やはり貴方とは話が合う。 また以前のように……いえ、この話はやめておきましょう。 もう意味のない言葉なので。 ……では本題に入りましょうか。 アイネ、あれを」

「はいはい、わかってるわよ」

 指示を受けたアイネがポシェットから取り出したのは、シンプルな便箋。
 それをアイネは「はい、これ。 あんた宛の手紙」と言いながらこちらに差し出してきた。

「誰からだ?」

「サラーナからだよ」

 サラーナから?
 こりゃ珍しい。
 あいつが手紙を書くなんて、天変地異の前触れじゃないだろうな。

「字を書くのが苦手だからって他人任せにしてたあいつがねぇ。 なんだかあまり良い予感は…………ん、なんだこの匂い。 便箋からか?」
 
 便箋を煽ると、微かに妙な香りが漂ってきた。
 この匂い、もしや……。
 そういえば、以前サラーナからこんな話を聞いた事がある。
 なんでも騎士団では機密性の高い手紙を送る際、読み終わった後、火が無くても燃やせるよう火薬を少量手紙に付着させているのだそうだ。
 そしてこの手紙からは火薬の香りがする。
 つまるところは、そういう事なのだろう。
 
「……ご主人、読まないの?」

「うわっ、ビックリした! なによ、こいつ! いつの間にいたわけ!?」

「さっきからずっとソーマの隣に居ましたが。 彼に乱暴を働く貴女を殺さんばかりにずっと睨んでましたよ」

「だからさっきリューネが止めたんじゃん。 このままだと襲いかかってきそうだったから。 ……マジで気が付いてなかったの?」 

「…………」

 隣でずっと気配を消していたロゼに、唯一気が付いてなかったアイネが落ち込む中、俺は手紙を開く。

『ソーマ、久しいな。 元気にしているか? こちらは概ね皆元気にしている。 こう言ってはなんだが、お前をパーティーから追放して正解だったよ。 お陰で無用な争いも起きなくなり、パーティー崩壊の危機を脱する事が出来た。 礼を言う、ソーマ。 ありがとう。 まぁ、お前にとって面白くない話だろうがな』

 確かに良い気はしない。
 しかし、パーティーが崩壊しかけたのは間違いなく俺のせいだ。
 だから怒りはしない。
 寂しくはあるが。

『さて、無駄話はここら辺で終え、そろそろ本題と入ろうか。 本題とは他でもない、カイネルについてだ』

 ………………。

『理由はわからないが、カイネルはお前を指名手配しようとしている。 自分の手の者を殺された、という理由でな。 もちろん私を始め、ギルドの面々やアイネ達はそんな与太話信じていない。 お前は確かに今まで人を幾度となく殺してきた。 しかしお前は理由もなく人を殺すような男ではない。 どうせお前の事だ。 誰かを守る為に殺すしかなかった、そんな所だろう。 だから私はお前を信じ、待つ事にする。 奴が動くその時まで。 ……ではまたな、ソーマ。 それまで生き延びろよ。 追伸。 お前の居場所を知っておきたい。 リューネにのみ伝えておいてくれ』

 指名手配だと……?
 どういうつもりだ、カイネルのやつ。
 自分の首を絞めるような真似をして。

「そこまでして殺したいのか、俺を」

「え?」

「なに、ご主人? よく聞こえなかった」

 証拠もなく、大した犯罪歴も無い男を指名手配する程、騎士団は愚かじゃない。
 何故指名手配にするのか、それをまず調べ上げる筈だ。
 もしそうなったら割りを食うのはカイネルの方。
 いくら俺を殺したくても指名手配はリスクが大きすぎる。
 なのに何故そうまでして俺を……。

「いや、待てよ。 もしリスクが伴わないとしたら……」

 まさかとは思うが、もしそうなら……。
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