パークラ認定されてパーティーから追放されたから田舎でスローライフを送ろうと思う

ユースケ

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工房ギルド

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 数年前、お互い色々あって一夜だけ共にした事。
 とある問題が起きた時、力を貸して貰った間柄だと説明し、なんとか怒りを収めて貰った後。
 俺達はレイシアに別れを告げ、お目当ての鍛冶師を探す為、屋敷を後にした。

「さてと、んじゃあ本来の目的を果たしに行くとするか。 と言ったは良いものの、何処に行けば良いんだ?」

「それでしたら私に考えがあります。 着いてきてください」

 そうして案内されたのが、ここ。
 工房ギルドと呼ばれる冒険者ギルドと酷似した施設だった。
 工房というだけあり、多くのドワーフが出たり入ったりしている。
 壁に掛けられているのは、ハンマーをモチーフにしたモニュメントだろうか。
 なかなかどうして悪くない趣だ。

「ここは?」

「見ての通りここは、工房ギルドと呼ばれるドワーフさんだけで構成されたギルドです。 ここには優秀なドワーフさんが沢山働いているんですよ」

 ほう。

「じゃあここでなら、お目当てのドワーフが見つかる可能性があるって事か」

「というかむしろ、ここで見つからなかったら絶望的ですね。 この国に住むドワーフさんは、皆ここのギルドで登録しないといけませんから。 もしここで見つからないようなら、ドワーフさんの国、憤怒のガガーブアーデンにでも行かないと見つけるのは難しいでしょうね」

 マジかよ。
 おっと、レイシアの口調がうつっちまった。

「なら気合い入れて探さないとな」

「はい! 気合い入れて参りましょう! では、いざ!」

 ガチャ。
 
 リアはのし掛かる責務を胸に、重苦しい扉を軽々と開けた。

「おーい! こっちにも鉄鉱石をくれ! もう無くなりそうだ!」

「こっちには魔石を頼む! 装飾用のやつな!」

「おお……凄い熱気だな」

 カンカンカン、ドンドンドン。
 ギルドに入った瞬間、モワッとした熱気とハンマーを振り下ろすけたたましい音がそこかしこから響いてきた。
 これが工房ギルドか。
 冒険者ギルドとはまったく違い、まさにドワーフの城といった様相。
 金敷を始め、ふいごや炉だけでなく、装飾品作成用の台などが分野ごとに分けられて所狭しと置かれている。
 まるで鍛冶屋だ。

「よう、兄ちゃん達。 うちになんか用か?」

 声のした方を見るとドワーフのおっさんがカウンターから声を掛けてきたていた。

「ああ、ちょっと人を探してて」

「人? どんなやつだ?」

「優秀な建築士を。 魔物からの攻撃も防げる防壁を短時間で建てられるドワーフを探してる」

 言うと、心当たりがあるのかおっさんは「少し待ってな」と一言残し、先端が螺旋状になっている謎の道具を作っているドワーフに話しかけた。

「おい、ガラド。 お前さんに客だ」

「あん? 今は手が離せねえ。 帰って貰え」

「客に帰れだぁ? てめえ何様のつもりだ。 良いからさっさと来いってんだ」

「うるせえ! 今はそれどころじゃねえって、てめえもわかってんだろうが! このままじゃ俺の弟は……!」

 ふむ、なにやら込み入った事情がありそうだな。
 訊いてみるか。

「なあ、何かあったのか? よかったら力になるが」

「なんだ、てめえらは。 客の出る幕じゃねえよ。 さっさとけえんな」

 厚いメガネのような物を外した隻眼のドワーフは、ジロッと値踏みするような目を向けてきた。

「わりいな、兄ちゃん。 こいつ、腕は確かなんだがちいと口が悪くてな。 気ぃ悪くせんでくれ」

「いや、それは別に構わないんだが、そんなに腕が立つのか?」

「ああ、それは保証する。 なんせこいつは、王都の防壁の建造や修復に何度も駆り出されるぐらいだからな。 お客さんの要望に間違いなく応えられるのはこいつしか居ねえ。 その分、値は張るが」

 どのくらいだろう。
 金貨五枚で足りるか?
 
「一応金貨五枚は用意してあるんだが……もし足りないなら村にあと五枚残してある。 それでなんとかならないか?」

「なっ! あんたどこぞの金持ちか!? 金貨五枚なんてそうそうお目にかかれねえぞ!」

「これでも王都でAランク冒険者として働いてた時期があってな。 その時の金だ」

「「Aランク!?」」

 なんでリアまで驚いてんだ。
 前に…………そういえばランクについては話してなかったかもしれん。
 すまん。

「ソーマさんとんでもなく強いとは思ってましたが、まさかそんな経歴をお持ちでしたとは……」

「ソーマ……? あんたもしや、ソーマ=イグベルトか!? あの竜殺しの!? こりゃたまげた。 まさかこんな伝説の人間にお目見えするたぁ……」

 なにその竜殺しって。
 初めて聞いたんですけど。

「竜殺し……ですか?」

「お嬢ちゃん、あんた知らねえのか。 この方はな、今は亡き勇者様一行と共にラグモア火山のドラゴンを倒したドワーフの恩人だ」

「勇者様と!?」

 ラグモア火山……?
 ああ、もしかしてあのトカゲか?

「それって、火山に住んでた火を吹く変な生き物か? あいつドラゴンだったのか。 そんなに強くなかったから、ただのでかいトカゲなのかと」

「いや、あいつ騎士団に何度頼んでも倒せなかった化物なんじゃけど」

 へえ、そうだったのか。
 そういえばレンカ達が騒いでたっけ。
 めっちゃ報償金、国から貰ったって。
 
「ま、まあええわい。 それはそれと、あんたはわしらドワーフの恩人だ。 金は貰えねえ。 あんたに金なんか貰っちまったら、ドワーフの恥だ。 しまってくれ」

「そりゃ助かるが、良いのか? 俺はただ変なトカゲを斬っただけだぞ」

「変なトカゲて……あんたにとっちゃその程度かもしれんが、あの火山はこの国に根を下ろすわしらドワーフにとっちゃ金床みたいなもんだ。 あの火山からした取れない鉱石はかなり上質でな。 あれを目の前にして叩けないなんて、ドワーフにとっちゃ悪夢よ。 じゃから金は貰えねえ。 文字通りあんたはわしらドワーフの恩人なんじゃからな」

 そこまで言うならお言葉に甘えるとするか。

「わかった、ならこれはしまっておく。 で、さっきの話なんだが、何か問題があるなら協力するぞ」  

「あんた話聞いてた? あんたに力を貸して貰うなんて知られたら、俺達のメンツが……」

「ただ力を貸すだけじゃない。 もし無事に解決したら、あの男を借りたい。 それならギブアンドテイクだ。 問題ないだろう?」

「そういう問題じゃあないが……本当に良いのか? 力を貸して貰えるなら実際のところ、大助かりではあってな」

 俺はその言葉に頷き、半ば無理やり事情を聞き出した。
 予想以上に大変そうな問題を。
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