パークラ認定されてパーティーから追放されたから田舎でスローライフを送ろうと思う

ユースケ

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大団円とはいかないまでも

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「すぅすぅ……」

「ふう、ようやく眠ってくれたか」 

 あれからかなり大変だった。
 リアはわんわん泣いて手がつけられず。
 ラミィはラミィで感情が爆発したのか、大騒ぎ。
 そうして今しがた、泣きつかれたリアが俺の腕の中で眠った所だ。
 正直、さっきの戦闘の方が楽だったかもしれない。
 まぁ何はともあれ、丸く収まってよかった。
 終わりよければ全てよしってな。

「本当によかった。 リアが無事で……。 もしリアになにかあったら私は……」  

「ああ、そうだな。 俺も同じ気持ちだ。 もし連れ去られていたらどうなっていたことか。 悔やんでも悔やみきれなかったろうな。 ……すまない、ラミィ。 俺は結局お前らを巻き込んでしまった。 謝って済む問題じゃないのはわかってる。 だけど許して欲しい、この通りだ。 ……代わりと言っちゃなんだが、何か俺に出来る事があれば言ってくれ。 お前らの為ならなんでもやるつもりだ」

「なんでも……ね。 なら……そう思うのなら、これまであった事全部話しなさいよ。 洗いざらい全部。 そしたらチャラにしてあげるわ。 もちろん、断らないわよね?」

 見上げると、ラミィが潤んだ瞳で俺を睨み付けていた。
 これはもう隠し立てできないな。
 全てを話すとしよう。
 どうして俺が狙われたのか、何が目的だったのか。
 全てを。

「ああ、話すよ。 これまでの事を全て包み隠さず」

 



 俺は話した。
 イグネアとの因縁。
 背後に存在する黒幕。
 王都での生活。
 リアが起きるのを待って、何もかも。
 
「なるほど……そんな事が……」

「要は僻みと恨みってことでしょ? アホらし……」

「でもなんでそこまでソーマさんを恨んでいるんでしょうか。 王都でのソーマさんは確かにその…………最低だと思いますけど」

「うぐっ!」

 なんてストレートな毒。
 変に責められるより、よっぽどきつい。

「でも恋心ってのはそういうもんじゃないの? 好きになったらとまれない。 たとえ友達と争う事になっても譲れない。 そういうもんでしょ」

「それは……」

 二人は一瞬目を合わせ、すぐ視線をずらした。

「……?」

「そう、ですね。 好きになったら止まれない。 それが、恋をするという事だから」

「惚れた方が負けってね。 だからそんな顔するんじゃないわよ。 確かにあんたにも悪いところはあったかもしれない。 これ見よがしな態度とか、やさ………………とことか」

 ん?

「最後なんて言ったんだ? 聞こえなかったんだが」

「う、うるさい! 何も言ってないわよ、ばか!」

 何故キレるのか。

「それにしても、そんなスキルもあるんですね。 パッシブ系ユニークスキル、誘因共鳴インキュライズかぁ。 だから私達の身体能力やスキルが強化されたんですね。 ソーマさんに恋をする。 それがスキルの発動条件だから」

「別に私はこいつの事なんか好きじゃ……こほん! ……でも本当に変なスキルよね。 恋をする力をお互いの力に変える、だなんて。 こんなスキル、聞いたこともないわよ」

「しかも好きになれば好きに成る程、能力が強化されるんですよね。 段階方式に。 えっと……ソーマさんは身体能力が大幅に。
こちら側は身体能力とスキルの強化……でしたっけ。 とんでもないスキルですよね。 流石はユニークスキル。 規格外です」

 代わりに攻撃向きのスキルやマジックスキルは発現しないがな。

「……質問」

 そう言って手を挙げたのは、ロゼだった。
 どうやら発言の許可を待っているらしい。
 律儀なやつだ。

「なんだ? 言ってみろ」

「うん。 じゃあ訊く。 その力って、ロゼも使えたりする? 使えるなら使いたい」

「え、ああ……まぁ条件さえ満たせばな。 だけどあまりオススメはしないぞ。 俺を好きにならないと効果は……」

「なら好きになるよう努力する。 良い?」

 良いかと訊かれても困るんですけど。

「話訊いてたか? さっきも言ったが、このスキルを有効利用しようとした結果がパーティーの解散だ。 その理由は、利用しようとすればするほど、どうしたって俺を意識しなきゃならなくなるからだ。 もちろん最初はみんな、本気にならない程度の好意を向ければ良いとタカを括っていた。 だが結果的にさっき説明した通り。 本気になってしまい、親友とすら憎み合う関係に変わってしまった。 無理なんだよ、そんな簡単な話じゃない。 人の心ってのは、制御不可能なんだ。 だから簡単な気持ちでこのスキルを利用しようと思わない方が良い。 取り返しのつかない事態になるぞ」

「そっか。 頑張る」

 今の話聞いてた?
 聞いてないよね、君。
 
「頑張るとかじゃなくてだな……」

「よろしく、二人とも」

 おい、無視するな。

「はい、よろしくお願いしますロゼさん。 ちなみになんですが、私が本妻で構いませんよね?」

「うん、構わない。 ロゼとラミィは側室で我慢する」

「勝手に私を入れるんじゃないわよ」

 そもそも勝手に話を進めるなよ。
 誰とも婚約するつもりはないぞ、俺は。

「という訳だから、ご主人。 これから第三婦人として末永くよろしく」

「嫌です」

「……ロゼは傭兵。 金が全ての女。 あれだけの大金を貰ったらもう嫁ぐしかない。 ご主人に断る権利は無い。 諦めて」

 雇用関係の是非を一度話し合ってみようか、ロゼくん。
 
「じゃあ今回かからなかった費用は返してくれ。 そしたらこの話も無かったことに……」

「いや。 絶対返さない。 ご主人からはお金の匂いがする。 絶対に離れない」

 ロゼの瞳から確固たる意思を感じる。
 あれだけの大金を渡すのは流石にやりすぎたか。
 後悔しかない。

「はぁ……なんで毎回こうなるんだ、ちくしょう」

 と、嘆きながら俺は顔を覆った右手の隙間から三人を見る。
 不機嫌そうなラミィ、お金の瞳になってるロゼ、そして……。

「これからも末永くよろしくお願いしますね、旦那様。 ふふっ」

 勘弁してくれ。
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