パークラ認定されてパーティーから追放されたから田舎でスローライフを送ろうと思う

ユースケ

文字の大きさ
上 下
17 / 50

強者の匂い

しおりを挟む
「うーん……なかなか姿を現さないね。 本当に来るのかい? その不審人物とやらは」

 木の枝に座り双眼鏡で山の麓を眺めるエリオに、俺は晩飯代わりの乾パンを渡しながら。

「さあな、わからん」

「わからんってそんな投げやりな」

「投げやりだろうとなんだろうと、わからんもんはわからん。 無理言うな。 良いからちゃんと見張ってろ。 見逃したりしたら目も当てられないぞ」

「はぁ……やれやれ。 これは貧乏クジを引いたかな。 早めに見つかると良いんだけど」

 それについては俺も同意見だ。
 俺ら男からしても不審人物が嗅ぎ回ってるなんて気味が悪いのに、年頃の娘からしたらもっと気持ち悪いだろう。  
 早めに正体を明かして安心させてあげたい。

「ところで……本当にあれでよかったのかい? あの娘達をあのまま放っておいて。 かなりカンカンだったけれど」

 思い出させるなよ、折角忘れていたのに。

「しょうがないだろ。 相手がどんな奴かもわからないのに、あいつらを矢面に出させる訳にいくか。 もし本当にヤバい奴だったらどうすんだ。 悔やんでも悔やみきれないぞ」

「ははは、わかってるさ。 彼女らの実力じゃ、まだこんな仕事任せられないからね。 ちょっと言ってみただけだよ」

「そういう意味じゃないんだがな……」

 と、噛み合わない会話にヤレヤレと肩をあげていた最中。

「ん? あそこで何か動いた気が…………ッ」

 目標らしき人物が、獣道から姿を現した。

「おい、エリオ。 来たぞ、あそこだ」

「……まさか本当に来るなんて」

 現れたそいつは確かに情報通り、どこからどう見ても不審人物にしか見えなかった。
 すすけたローブに、顔が見えないほど深く被ったフード。 
 身長は多分俺より少し下くらい。
 およそ165センチ前後ってところか。
 肩幅からして男だろう。
 武器は見たところ特になし。
 ローブの下にナイフぐらいは隠し持っているかもしれない。
 怪しい……怪しんでくれと言わんばかりに怪しい。

「あいつが例の奴か」

「だろうね。 情報どおりの見た目だし、間違いないと思うよ。 で、どうかな。 もし戦闘になった場合、君なら倒せそうかい?」

 それ自体は問題ない。
 冒険者ランクで例えるなら、あの身のこなしと体幹からして、恐らくC前後。
 今の俺は身体能力的にDが妥当だが、今まで培ってきた技術と感覚がある。
 あんな奴程度であれば、五人までなら無傷でなんとか出来るだろう。
 だが問題なのは、だ。

「ああ、あいつだけなら問題ない。 すぐに片をつけられる。 ただ、あの後ろのやつ。 あいつは結構厄介そうだ」

「後ろ? そんなのどこに…………あっ、いつの間に……」

 今頃気が付いたのか。  
 ギルドマスターともあろう者が、注意散漫にも程が…………いや、違う。
 あいつ、意識しないと視界に映らないよう、わざと気配を消してやがる。
 なかなか出来る事じゃない。
 強いな、
 
「厄介? 魔王様でも手を焼く魔人を殺せる君でもかい?」
 
「一応、勝てる事は勝てると思う。 それなりに苦戦はするだろうけどな」

「へぇ、君がそこまで言うんだからよっぽどな実力者なんだろうね」

 少なくとも、ラミィやリアじゃ手も足も出ないぐらいには。
 
「ああ、あまり戦いたくない相手では…………いかん! 隠れろ!」

 突き刺す視線、首筋に伝う殺気を感じ、俺とエリオは咄嗟に木の幹に身を隠した。  

「どうかしたのかい?」 

「あいつ、こっちに気付きやがった」

「冗談はやめてくれないか。 あそこからここまで、ゆうに300メートルはある。 そんな距離の視線に気付くわけが……ああ、そうだった。 君もそっち側の人間だったね。 まったく、だから嫌なんだ。 君らみたいな規格外な人間くんは。 命が幾らあっても足りやしない」

 人を化物みたいに言うな。

「くっちゃべってないで、弓でもつがえてろ。 最悪このまま戦闘になるぞ」

「オカリナでも良いかい?」

「勝手にしろ。 あいつとまともに戦えるんなら、特に文句はねえよ。 それで殺されたとしても自己責任だしな」

「……素直に弓にしておくよ」

 俺の脅しにビビったエリオは、弓に矢をセッティングしていつでも戦えるよう備える。

「こっちは準備完了したよ。 いつでもどうぞ」

「ああ。 じゃあまずは……」

 と、わざと物陰から姿を晒し、女に敵意を送ったのも束の間。
 
「よし、偵察はこんな物だろう。 一旦遺跡に引くぞ。 襲撃の準備を整える」

「………………」

「何をしている! さっさと来い!」

「……わかった」

 なんらかの理由で逆らえないのか、女は男に命じられるまま山へ入り、姿を眩ましてしまった。

「……今のどう思う、ソーマくん。 もしや、罠かな?」

「十中八九そうだろうな」

 あの女、去り際にわざと俺に視線を合わせてきやがった。  
 追ってこいと言わんばかりに。

「どうする? 追うかい? 罠の可能性がある以上、一筋縄ではいかなさそうだけど」

「……考えるまでもない、追うぞ」

 そう言って飛び降りた俺を追ってきたエリオが、ため息混じりにボソッと。

「まったく、本当に今日は厄日だね。 こんな事なら帰ってくるんじゃなかったよ。 ついてない」

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

剣しか取り柄がないという事で追放された元冒険者、辺境の村で魔物を討伐すると弟子志願者が続々訪れ剣技道場を開く

burazu
ファンタジー
剣の得意冒険者リッキーはある日剣技だけが取り柄しかないという理由でパーティーから追放される。その後誰も自分を知らない村へと移住し、気ままな生活をするつもりが村を襲う魔物を倒した事で弓の得意エルフ、槍の得意元傭兵、魔法の得意踊り子、投擲の得意演奏者と様々な者たちが押しかけ弟子入りを志願する。 そんな彼らに剣技の修行をつけながらも冒険者時代にはない充実感を得ていくリッキーだったのだ。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

ギルドを追放された俺、傭兵ギルドのエリートに拾われる〜元ギルドは崩壊したらしい〜

ネリムZ
ファンタジー
 唐突にギルドマスターから宣言される言葉。 「今すぐにこのギルドから去れ。俺の前に二度と顔を出さないように国も出て行け」  理解出来ない言葉だったが有無を言わせぬマスターに従った。  様々な気力を失って森の中を彷徨うと、賞金首にカツアゲされてしまった。  そこに助けようとする傭兵ギルドのA級、自称エリートのフィリア。  モヤモヤとした気持ちに駆られ、賞金首を気絶させる。  行く場所が無い事を素直に伝えるとフィリアは自分のギルドに招待してくれた。  俺は仕事が必要だったのでありがたく、その提案を受けた。  そして後に知る、元所属ギルドが⋯⋯。  新たな目標、新たな仲間と環境。  信念を持って行動する、一人の男の物語。

処理中です...