パークラ認定されてパーティーから追放されたから田舎でスローライフを送ろうと思う

ユースケ

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初心にかえって

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 袋の捜索を始めてからおよそ二時間後。

「…………」

 結局見つける事が出来なかった俺はショックのあまり、ギルド内の端に設置された休憩所の机に顔を埋めていた。

「ありゃりゃ、死んでる。 まあそりゃあショックだよねー。 持ち物全部失くしたんだから」

「失くしたっていうより、魔物に盗られたっぽいですけどね。 お仲間の死体も無くなってましたし」

「あそこら辺はウルフがたまに出るから、多分あいつらが巣に持ち帰ったんでしょ」

 ウルフか。
 もし本当に持ち帰ってるならそいつらの巣に突撃…………ダメだ、武器も失ったんだった。
 一応ギルド支給のブロードソードは出掛ける前に貰ったが、あんななまくらじゃミニボアやホーンラビットを狩るぐらいが関の山。
 とてもじゃないがウルフ族を相手になんか出来やしない。
 詰んだ。

「そういえばあいつが気を失ってた三日間にさぁ」

 三日間……?
 ………………三日!?
 そんな長い間寝てたのか。
 せいぜい半日かそこらかと……。
 リアには悪い事をした。
 こんな男と三日も二人きりなんて辛かったろうに。

「行商人から薬を二つも買ったじゃない? それ、取り立てないで良いの? 私ならなんとしてでも支払わせるわよ」

 オーガか、お前は。
 今の状況を考えてくれ。
 一文無しだぞ、一文無し。
 払えるものなら利子つけて払うが今は勘弁して欲しい。

「うーん、そのうちかなぁ。 流石にこの状態の人にお金払ってとは言えないよ」

「リア……あんたってホント天使よね。 後光が射してるわ」

「あはは、そんな事ないよ~」

 ラミィに同意するのはシャクに触るが、リアが天使なのは同意しかない。

「でも優しいのにも限度があるからね? どこの誰だかわかんないこんな男を看病するだなんて、正気の沙汰じゃないわよ。 もし襲われてたらどうするつもりだったの? リアは可愛いんだからもっと危機感持たないと」

「ううーん、私可愛いかなぁ。 普通だと思うよ?」

「なに言ってんの! リアは世界一可愛いに決まってるじゃない! この世にリアより可愛い子なんて存在しないんだから!」

「言いすぎな気がするなぁ」

 いつの間にか凄いフワフワした空間になっており、頭を上げづらい。
 しかしいつまでもこうしている訳にもいかない。
 移転処理がどうなるのか聞かねば、と。

「あ、生き返った。 そのまま死ねばよかったのに」

「ちょっとラミィちゃん!」

 飽きもせず、むしろ望んでリアに怒られているラミィの横を通りすぎてカウンターへと向かった俺は、真剣な面持ちで。

「リオ、相談がある」

「なにかな、ソーマちゃん」

「…………移転処理無しで手続きを……」

「はい、だめでーす」

「く……っ!」

 やはり駄目か。
 だが諦める訳にはいかない。
 気の遠くなる努力をしてようやくAランクまで登り詰めたのだ。
 このくらいでへこたれる訳には……!

「そこをなんとか頼む」

「だから駄目なんだってば。 何度頼まれたってこれだけは無理。 諦めてくださーい」

 …………。

「なんでだ? 理由は? ギルドの規律か?」

「うん、そう。 移転書類にはソーマちゃんのプロフィールや成績以外に、ギルドの認め印が押されてるんだけど、それが確認できないとこっちも受理できないんだよね。 ほら、自己申告じゃ嘘ついてるかもしれないでしょ? だから無理なの、ソーマちゃんが信用に足るかどうかじゃなくて」

 これだから国の機関は。
 融通がきかないにもほどがある。

「じゃあどうしたら良いんだ。 どうしたら引き継いで貰える」

「うーん、そうだなぁ。 もう一度取りに行って貰うとか?」

「わかった。 じゃあすぐにでも……」

 くそっ。
 駄目だ、今帰る訳にはいかない。
 王都には俺を殺そうとした黒幕が間違いなく居るだろう。  
 だとしたら帰るのは自殺行為に等しい。
 いつかは生きている事がバレるだろうが、帰らなければ多少の時間は稼げるハズ。
 心底悔しいが、今回ばかりは諦めるしかないか。

「……いや、やっぱり移転手続きはもう良い。 新規で登録を頼む」

「良いの?」

「ああ、諦めた。 またFランクから頑張るよ」

「そっか。 んじゃこのまま手続きするから、この書類に名前と住所を書いてね」

 住所……。

「なぁ、質問なんだが……住む場所がまだ決まってない場合はどうしたら良い?」

「あ、そっか。 来たばっかりなんだっけ。 んー、無記名は困るなぁ。 いざという時、住んでる場所わからないと不便だし。 うーんそうだなぁ。 じゃあ……取り敢えずうちのギルドマスターが住んでる家に仮住まいする? そこならすぐに住めるけど」

「すぐにって……。 そりゃあまあこっちとしては願ったり叶ったりだけど、帰ったら知らない男が住んでたとか恐怖でしかないだろ。 先に確認とった方が良いんじゃ……」

「ああー、良いって良いって。 あの人仕事も相まって基本的に山暮らしだから、殆んど帰ってこないんだよね。 だから事後報告で問題なし!」

 何故山暮らし。
 ギルマスの仕事ってマスタールームにあるもんじゃないのか。

「で、どうする? 住む? やめる?」

「……折角の申し出だからな、使わせて貰えるなら助かる。 ギルドマスターには申し訳ないが」

「ほいほーい。 んじゃこれ鍵ね。 持ってって」

 俺は差し出された鍵を受け取り、書類にギルドマスターの家と記載。
 リオに「助かった、ありがとう」と礼を告げてその場を後にした。
 
「あ、待ってくださいソーマさん! ギルドマスターさんのお家まで案内しますから!」

「えー、もうそんなやつ放っときなよリアー。 ……ああもう、仕方ないわね」

 来るのか……。
 
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