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幼馴染み
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────1────
「王都から越してくる冒険者さんが居るとは聞いていましたけど、それがソーマさんだったなんて……。 世間は狭いなぁ。 こんな偶然って本当にあるんですね、驚いちゃいました」
なんでも、俺がシャロ村に向けて出発する前日。
移転の申請をしたその日には伝書鳩で既に移転の通知を送っていたらしく、村長という立場上あらかた事情を把握していたリアが直々に案内を申し出てくれた。
今はギルドへ向かって村を散策している真っ最中だ。
「俺も心底驚いてるよ。 助けれてくれた子がまさか目的の村の村長だなんて思いもよらなかったからな。 世の中何が起きるかわかったもんじゃない。 あそこで起きた事も含めてな。 …………それはそれとして、さっきの話なんだが……」
「さっきの話?」
「ほら、食事する前に言ってたあれだよ。 友達がなんとかかんとかって」
「ああ、ラミィちゃんの事ですね」
名前を聞く限り女の子か。
「ラミィちゃん?」
「私の自慢の幼馴染みで、村自慢の冒険者。 それがラミィちゃんですよー」
「へぇ、冒険者。 となると、俺とその子はこれから同僚になる訳か。 どんな子なんだ?」
「どんな子…………んー、そうですねー。 ちょっと素直じゃなくて当たりが強いけど、根は良い子……でしょうか」
その説明だとあまり良いイメージが湧かないんだが、とでも言いたげな顔を浮かべていると、焦ったリアが取り繕い始めた。
「あっ! やっ、でもホントは優しい子なんですよ!? その……ちょっと怒りやすくて先に手が出ちゃったり、誤解を受けやすいだけで悪い子じゃ……無い、かと……」
つまり気難しいタイプなのは確定、と。
そうなると言動に気を付けた方が良いかもしれない。
サラーナヴェスベルク団のアイネもそうだったが、あいつみたいに気難しい女はふとした事で怒るからな。
何が逆鱗に触れるかわかったもんじゃな────
「リア! そいつから離れなさい!」
「へ?」
いきなり紅い髪をツインテールに結んだ少女が俺とリアの間に立ちはだかり、こちらに向けて盾と剣を構えてきた。
リアの愛称を呼んだのだから彼女の知り合いなのは間違い無いだろうが、いきなり剣を向けるとは失礼にも程がある。
「ラ、ラミィちゃん!? ちょっと何してるの! 早くそれしまって!」
やっぱりこいつがラミィか。
話に聞いていた通り、相当なじゃじゃ馬娘みたいだ。
「嫌よ! だってこいつは男よ男! リアは知らないだろうけど、男ってのは常にエロい妄想ばかりしてる最低な生き物なの! きっと今もリアにどんな酷いことするか考えてるに決まってるわ! 私の可愛いリアにあんな事やこんな事を妄想して…………いやらしい!」
いやらしいのはお前だ。
鼻血出てるぞ。
「するわけないだろ、子供相手に。 そもそもリアは命の恩人なのにそんな……」
「リアに魅力が無いって言ってんの、あんた! ぶっ殺すわよ!」
やべぇ、こいつ話が通じない。
さて、どう宥めたもんか。
と、今まで培ってきた経験を総動員し、対策を練ろうとしたのも束の間。
リアがラミィの肩に手を……。
「待ってて、リア! すぐにこいつの魔の手からリアを救い出して────!」
「ねぇ、ラミィちゃん。 私、さっき言ったよね、やめてって。 なのになんで私の言うこと聞いてくれないのかな。 これ以上ソーマさんに無礼な振る舞いするなら怒っちゃうよ? わかった?」
「…………は、はい。 ごめんなさい……」
意外とリアは怒ると怖いようだ。
俺も今後怒らせないよう気を付けよう。
────2────
リアの自覚の無い圧を受け、俺とラミィは一時休戦。
共にギルドへ向かうことになった。
意外にもついてきたラミィの思惑は、恐らく俺の監視だろう。
目を見なくてもさっきから向けられている視線だけでわかる。
あれは疑いの眼差しだ。
俺がリアに何かしないかという。
心外である。
あんな子供に手を出す筈がないだろうに。
そんなこんなで表面上仲良く取り繕っていた俺とラミィの前に、ようやくギルドが現れた。
……のだが。
「お待たせしました、ソーマさん。 ここがこの村自慢のギルド、トトニア公国ギルドシャロ支部です」
「こ…………これはまたなんというか……」
ボロい。
幾らなんでもボロすぎる。
王都のギルドとはとんでもない落差だ。
壁には穴が空いており、ギルドのシンボルである双剣の紋章は煤だらけ。
ぎりぎりギルドの様相は保ってはいるものの、殆んど廃屋の域だ。
いつ崩れてもおかしくない状態である。
そういえばティオ村のギルドもこんな感じだったな、確か。
田舎はどこも大して差がないのかもしれない。
「なによ。 なんか文句あるなら言ってみないさいよ」
「別に。 ただ歴史の重みを感じる建物だなと思って」
「あんたそれ誉めてないでしょ。 むしろバカにしてるわよね、絶対」
バカにはしてないが、率直な意見ではある。
「ごめんなさい……私の力不足のせいでとんだご不便を……」
「いやまぁ、ああは言ったが随分頑張ってる方だと思うぞ。 俺の故郷の村もそうだったんだが、村人が年寄りばかりだと収益なんざ殆んど無くてさ。 時給自足で食いつなぐのが常だった。 多少古くなってもそのままにするしかない所も似てるかもしれない。 直す為のお金があれば人を雇ったり資材を買ったりとやりようはあるが、男手も金も無いんじゃどうしようもないしな。 だからそんな顔するな、リア。 可愛い顔が台無しだぞ」
「ソーマさん……えへへ、ありがとうございます」
自分の発言で落ち込ませるのは本意じゃないからな。
笑顔になってくれてなによりだ……って、おいラミィ。
足を踏むな、踏み抜こうとするんじゃない。
痛いから結構。
「んじゃ、そろそろ行くぞ。 いい加減到着の報告をしたいからな」
「……はい!」
「チッ、なんで私があんたの子守りなんて…………いった! ……ちょっとあんた、何勝手に閉めてんのよ! 鼻ぶつけたじゃない! てか私も入れなさいよね! くっ……この! ドアノブが回らないんだけど……! あの野郎、ドアノブを掴んで固定してやがるのね! こんの……! んぐぐぐぐ!」
残念、不正解です。
正解は、ドアノブのリングに木の棒を差してつっかえ棒にしている、でした。
「王都から越してくる冒険者さんが居るとは聞いていましたけど、それがソーマさんだったなんて……。 世間は狭いなぁ。 こんな偶然って本当にあるんですね、驚いちゃいました」
なんでも、俺がシャロ村に向けて出発する前日。
移転の申請をしたその日には伝書鳩で既に移転の通知を送っていたらしく、村長という立場上あらかた事情を把握していたリアが直々に案内を申し出てくれた。
今はギルドへ向かって村を散策している真っ最中だ。
「俺も心底驚いてるよ。 助けれてくれた子がまさか目的の村の村長だなんて思いもよらなかったからな。 世の中何が起きるかわかったもんじゃない。 あそこで起きた事も含めてな。 …………それはそれとして、さっきの話なんだが……」
「さっきの話?」
「ほら、食事する前に言ってたあれだよ。 友達がなんとかかんとかって」
「ああ、ラミィちゃんの事ですね」
名前を聞く限り女の子か。
「ラミィちゃん?」
「私の自慢の幼馴染みで、村自慢の冒険者。 それがラミィちゃんですよー」
「へぇ、冒険者。 となると、俺とその子はこれから同僚になる訳か。 どんな子なんだ?」
「どんな子…………んー、そうですねー。 ちょっと素直じゃなくて当たりが強いけど、根は良い子……でしょうか」
その説明だとあまり良いイメージが湧かないんだが、とでも言いたげな顔を浮かべていると、焦ったリアが取り繕い始めた。
「あっ! やっ、でもホントは優しい子なんですよ!? その……ちょっと怒りやすくて先に手が出ちゃったり、誤解を受けやすいだけで悪い子じゃ……無い、かと……」
つまり気難しいタイプなのは確定、と。
そうなると言動に気を付けた方が良いかもしれない。
サラーナヴェスベルク団のアイネもそうだったが、あいつみたいに気難しい女はふとした事で怒るからな。
何が逆鱗に触れるかわかったもんじゃな────
「リア! そいつから離れなさい!」
「へ?」
いきなり紅い髪をツインテールに結んだ少女が俺とリアの間に立ちはだかり、こちらに向けて盾と剣を構えてきた。
リアの愛称を呼んだのだから彼女の知り合いなのは間違い無いだろうが、いきなり剣を向けるとは失礼にも程がある。
「ラ、ラミィちゃん!? ちょっと何してるの! 早くそれしまって!」
やっぱりこいつがラミィか。
話に聞いていた通り、相当なじゃじゃ馬娘みたいだ。
「嫌よ! だってこいつは男よ男! リアは知らないだろうけど、男ってのは常にエロい妄想ばかりしてる最低な生き物なの! きっと今もリアにどんな酷いことするか考えてるに決まってるわ! 私の可愛いリアにあんな事やこんな事を妄想して…………いやらしい!」
いやらしいのはお前だ。
鼻血出てるぞ。
「するわけないだろ、子供相手に。 そもそもリアは命の恩人なのにそんな……」
「リアに魅力が無いって言ってんの、あんた! ぶっ殺すわよ!」
やべぇ、こいつ話が通じない。
さて、どう宥めたもんか。
と、今まで培ってきた経験を総動員し、対策を練ろうとしたのも束の間。
リアがラミィの肩に手を……。
「待ってて、リア! すぐにこいつの魔の手からリアを救い出して────!」
「ねぇ、ラミィちゃん。 私、さっき言ったよね、やめてって。 なのになんで私の言うこと聞いてくれないのかな。 これ以上ソーマさんに無礼な振る舞いするなら怒っちゃうよ? わかった?」
「…………は、はい。 ごめんなさい……」
意外とリアは怒ると怖いようだ。
俺も今後怒らせないよう気を付けよう。
────2────
リアの自覚の無い圧を受け、俺とラミィは一時休戦。
共にギルドへ向かうことになった。
意外にもついてきたラミィの思惑は、恐らく俺の監視だろう。
目を見なくてもさっきから向けられている視線だけでわかる。
あれは疑いの眼差しだ。
俺がリアに何かしないかという。
心外である。
あんな子供に手を出す筈がないだろうに。
そんなこんなで表面上仲良く取り繕っていた俺とラミィの前に、ようやくギルドが現れた。
……のだが。
「お待たせしました、ソーマさん。 ここがこの村自慢のギルド、トトニア公国ギルドシャロ支部です」
「こ…………これはまたなんというか……」
ボロい。
幾らなんでもボロすぎる。
王都のギルドとはとんでもない落差だ。
壁には穴が空いており、ギルドのシンボルである双剣の紋章は煤だらけ。
ぎりぎりギルドの様相は保ってはいるものの、殆んど廃屋の域だ。
いつ崩れてもおかしくない状態である。
そういえばティオ村のギルドもこんな感じだったな、確か。
田舎はどこも大して差がないのかもしれない。
「なによ。 なんか文句あるなら言ってみないさいよ」
「別に。 ただ歴史の重みを感じる建物だなと思って」
「あんたそれ誉めてないでしょ。 むしろバカにしてるわよね、絶対」
バカにはしてないが、率直な意見ではある。
「ごめんなさい……私の力不足のせいでとんだご不便を……」
「いやまぁ、ああは言ったが随分頑張ってる方だと思うぞ。 俺の故郷の村もそうだったんだが、村人が年寄りばかりだと収益なんざ殆んど無くてさ。 時給自足で食いつなぐのが常だった。 多少古くなってもそのままにするしかない所も似てるかもしれない。 直す為のお金があれば人を雇ったり資材を買ったりとやりようはあるが、男手も金も無いんじゃどうしようもないしな。 だからそんな顔するな、リア。 可愛い顔が台無しだぞ」
「ソーマさん……えへへ、ありがとうございます」
自分の発言で落ち込ませるのは本意じゃないからな。
笑顔になってくれてなによりだ……って、おいラミィ。
足を踏むな、踏み抜こうとするんじゃない。
痛いから結構。
「んじゃ、そろそろ行くぞ。 いい加減到着の報告をしたいからな」
「……はい!」
「チッ、なんで私があんたの子守りなんて…………いった! ……ちょっとあんた、何勝手に閉めてんのよ! 鼻ぶつけたじゃない! てか私も入れなさいよね! くっ……この! ドアノブが回らないんだけど……! あの野郎、ドアノブを掴んで固定してやがるのね! こんの……! んぐぐぐぐ!」
残念、不正解です。
正解は、ドアノブのリングに木の棒を差してつっかえ棒にしている、でした。
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