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追放処分
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俺ことソーマ=イグベルトが所属するギルドには、王都で最も将来を期待されている新進気鋭のパーティーが存在する。
そのパーティーの名は、サラーナヴェスベルク団。
騎士団に所属していた元女騎士サラーナをリーダーとした、ほぼ女性で構成されたパーティーだ。
サラーナヴェスベルク団の……俺の目的はただ一つ。
冒険者ランクをSにする事。
これだけだ。
そして現在のランクは全員A。
目標達成まであとひと息という所まで来ている。
いや、来ていた筈だった。
この問題が起きるまでは。
「ソーマ=イグベルト。 本日よりお前をサラーナヴェスベルク団から追放処分とする。 これが最後の取り分だ、取っておけ」
サラーナさんは眉間に皺を寄せながら、銅貨袋を手渡してきた。
こうなってしまった理由はわかっている。
何もかも全て俺のスキルが……俺が悪いんだ。
「……今までお世話になりました、サラーナさん」
「すまないな、ソーマ。 私個人としては最後まで行き着きたかったのだがな、約束した高みへお前と共に。 その気持ちは今でも変わっていない。 だがこのままでは……」
視線に釣られメンバー三人の顔を見渡すと、誰も彼もが苦しそうな表情を浮かべながら目尻に涙を浮かべている。
「わかってる。 夢まであっと一歩の所まで来てるからな、こんな事で何もかも台無しにする訳にはいかない。 ここまで頑張ったんだから。 ……だから、これで良いんだと思う。 俺が居なくなる事で上手く回るなら、それで」
「…………そうか。 わかった、なら私もこれ以上は何も言うまい。 お前達も、それで良いな」
サラーナさんが尋ねると、左右から歯軋りや拳を強く握る音が聞こえてきた。
「もう決定事項なんでしょ。 だったら言うことなんてない。 さっさと何処にでも行きなさいよ。 このパークラ野郎」
追放処分を簡単に受け入れたのが余程気に入らないのか、赤髪の少女はわざと肩をぶつけてギルドから去っていく。
その後に続いて、プリーストの少女も立ち上がり──
「もう二度と私たちの前に姿を現さないでください。 迷惑ですから」
こちらを一瞥もせず、姿を眩ました。
「リューネ……ぐっ!」
そして最後の一人。
「裏切るぐらいなら最初から期待させないでよ。 だいっきらい、ソーマなんて」
シーフの少女、ランリはわざと俺の足を踏み、ギルドに併設された酒場へと向かう。
やけ酒でもするつもりなのだろう。
普段なら止める所だが、今の俺にそんな権利はない。
それに先程から他の冒険者から疎ましい視線が投げ掛けられているからな。
下手にこれ以上関わろうとすれば袋叩きに遇いかねない。
主に男性冒険者から。
「ソーマ、追放した私が言うのもなんだが一つだけ教えてほしい。 何故お前はああも簡単に追放処分を受け入れたのだ。 本来であれば喚いても仕方のない状況だった筈。 なのに何故お前は……」
確かに追放処分を受けたら普通は喚き散らすものだろう。
──なんで俺が追放されないといけないんですか!
こんなにも貢献してきたのにあんまりだ!
だとか、
──俺抜きでやれるのかよ!
俺のスキルを頼っていたくせに!
とでも噛みつくところだろう。
では何故そうしないのか。
理由は極めて単純だ。
「初めてじゃないから、だよ」
俺自身がパーティークラッシャー。
パーティーを分裂させてしまう要因なのを、身を持って何度も経験しているからに他ならない。
だから俺は追放を受け入れてしまう。
それが今取れる最も効率的かつ有効的な手段だと理解しているから。
そのパーティーの名は、サラーナヴェスベルク団。
騎士団に所属していた元女騎士サラーナをリーダーとした、ほぼ女性で構成されたパーティーだ。
サラーナヴェスベルク団の……俺の目的はただ一つ。
冒険者ランクをSにする事。
これだけだ。
そして現在のランクは全員A。
目標達成まであとひと息という所まで来ている。
いや、来ていた筈だった。
この問題が起きるまでは。
「ソーマ=イグベルト。 本日よりお前をサラーナヴェスベルク団から追放処分とする。 これが最後の取り分だ、取っておけ」
サラーナさんは眉間に皺を寄せながら、銅貨袋を手渡してきた。
こうなってしまった理由はわかっている。
何もかも全て俺のスキルが……俺が悪いんだ。
「……今までお世話になりました、サラーナさん」
「すまないな、ソーマ。 私個人としては最後まで行き着きたかったのだがな、約束した高みへお前と共に。 その気持ちは今でも変わっていない。 だがこのままでは……」
視線に釣られメンバー三人の顔を見渡すと、誰も彼もが苦しそうな表情を浮かべながら目尻に涙を浮かべている。
「わかってる。 夢まであっと一歩の所まで来てるからな、こんな事で何もかも台無しにする訳にはいかない。 ここまで頑張ったんだから。 ……だから、これで良いんだと思う。 俺が居なくなる事で上手く回るなら、それで」
「…………そうか。 わかった、なら私もこれ以上は何も言うまい。 お前達も、それで良いな」
サラーナさんが尋ねると、左右から歯軋りや拳を強く握る音が聞こえてきた。
「もう決定事項なんでしょ。 だったら言うことなんてない。 さっさと何処にでも行きなさいよ。 このパークラ野郎」
追放処分を簡単に受け入れたのが余程気に入らないのか、赤髪の少女はわざと肩をぶつけてギルドから去っていく。
その後に続いて、プリーストの少女も立ち上がり──
「もう二度と私たちの前に姿を現さないでください。 迷惑ですから」
こちらを一瞥もせず、姿を眩ました。
「リューネ……ぐっ!」
そして最後の一人。
「裏切るぐらいなら最初から期待させないでよ。 だいっきらい、ソーマなんて」
シーフの少女、ランリはわざと俺の足を踏み、ギルドに併設された酒場へと向かう。
やけ酒でもするつもりなのだろう。
普段なら止める所だが、今の俺にそんな権利はない。
それに先程から他の冒険者から疎ましい視線が投げ掛けられているからな。
下手にこれ以上関わろうとすれば袋叩きに遇いかねない。
主に男性冒険者から。
「ソーマ、追放した私が言うのもなんだが一つだけ教えてほしい。 何故お前はああも簡単に追放処分を受け入れたのだ。 本来であれば喚いても仕方のない状況だった筈。 なのに何故お前は……」
確かに追放処分を受けたら普通は喚き散らすものだろう。
──なんで俺が追放されないといけないんですか!
こんなにも貢献してきたのにあんまりだ!
だとか、
──俺抜きでやれるのかよ!
俺のスキルを頼っていたくせに!
とでも噛みつくところだろう。
では何故そうしないのか。
理由は極めて単純だ。
「初めてじゃないから、だよ」
俺自身がパーティークラッシャー。
パーティーを分裂させてしまう要因なのを、身を持って何度も経験しているからに他ならない。
だから俺は追放を受け入れてしまう。
それが今取れる最も効率的かつ有効的な手段だと理解しているから。
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