最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ

文字の大きさ
上 下
47 / 69

模擬試合

しおりを挟む
「対戦形式は時間制限アリの一本勝負。 魔道具で付与した防御魔法を破壊、または降参した場合にのみ試合終了とする。 危険だと判断した場合も先生が止めるからそのつもりで。 じゃあまずは、カンナ=ブロッケン、シュテルク=アルクトゥルス、前へ」

 呼ばれた二人はクラスメイト達の前に立ち、武器を抜く。
 シュテルクは直剣、カンナはレイピアか。
 取り回しがよく攻撃力が高いものの速度はあまり出ない直剣に対し、防御するには不向きだが速度と正確面では軍配が上がるレイピア。
 どちらも長所と短所が如実に出る武器だ。
 となれば、後は二人の力量次第。
 より練度が高い方に間違いなく勝率が傾く。
 個人的にシュテルクに勝って欲しいが、今回は少々難しいかもしれない。
 多分シュテルクは、カンナに────

「両者、準備は良いな! では……始め!」

「……来ないのですか? ならば先手はこちらが戴きますわ! フッ!」

「ッ!」

 速い!
 一瞬でシュテルクの間合いに入った!

「くっ!」

 良い判断だ。
 あの距離ではレイピアの突きを防ぐのは悪手。
 避けた方がまだ次に繋げられる。
 まあそれも反撃が出来たら、の話だが。

「遅いですわよ、シュテルク=アルクトゥルス! はあああっ!」

「しまっ!」

「そこまで! 勝者、カンナ=ブロッケン!」

 やはり駄目だったか。
 避けた所まではよかったが、反撃しようとしたせいで行動に隙が生まれ突かれてしまった。
 結果、シュテルクを守っていた防御魔術は破壊。
 試合は完膚なきまでにカンナの勝ちとなった。

「次、リュート=ヴェルエスタ、前へ!」

「リュート、後は任せたよ」

「おう」

 言って、俺はシュテルクから防御魔法を付与する魔道具を受け取り、カンナの前に躍り出る。

「リュート=ヴェルエスタ。 首席を勝ち取ったその実力、はからせていただきますわ」

「お手柔らかに」

 さっきの戦いで、カンナの手はあらかた把握済した。
 どう来ようとも対処可能だろう。
 とはいえ、向こうも同じ事を考えているだろうから、同じ戦法では──

「両者、防御魔法は付与したな? よし、では……始め!」

「はあっ!」

 同じ戦法なのかよ!
 これは予想外!

「おっと。 まさかさっきと同じ技で来るとはな、ちょっと驚いた」

「その割には余裕に見えますが」

「へっ、まあその程度じゃな」

「そうですか、でしたら……!」

 切り替えが早い。
 突きではなく切り払いにして、距離を稼いだか。
 後ろに跳んで避けなかったら防御魔法が砕かれていたところだ。  
 案外やるな。
 更にカンナは俺が着地した瞬間を狙って、連続突きを放ってきた。

「これも全部避けますか! では、これはどうですか!? ふん!」

「ぶわっ! おまっ、卑怯だぞ! 砂かけは反則だろ!」

 と、喚くも、レフェリーからのイエローカードはない。
 これも戦いの手段の一つとして黙認されたようだ。
 そうこうしていると、視界が開けてきた。
 
「消えた……?」

 しかし、目の前にカンナの姿はない。
 
「一体どこに……」

 ……って言うのは嘘で、ホントは既に把握してるんだけどな。
 いわゆる、ブラフってやつだ。

「もら────っ!」

 ガキンッ。

「「「「────!?」」」」

 死角を突いて背後から攻撃を当てるつもりだったんだろうが、甘い甘い。
 砂糖菓子のように甘いと言わざるを得ないぞ、カンナくん!
 
「分銅!? あ、あり得ませんわ! たかが分銅で、こんな掌サイズの分銅で見もせずレイピアを防ぐだなんて、人間技じゃ……!」

「アホか、武器として置かれてた鎖分銅なんだぞ、こいつは。 なら防げない道理はないだろ」

「「「「そういう問題じゃなくね?」」」」
 
 え、そういう問題だろ?

「っ!」

 何か考えがあるのか、カンナは後ろに下がるとレイピアを構える。
 そして……。

「このような模擬試合で使うのは些か卑怯ではありますが、兄様の手前無様を晒すわけには参りません! 申し訳ございませんが、これで終わりとさせていただきます! 戦技オーバルアーツ……」

「待て、ブロッケン! それは……!」

「一刺瞬花!」

 カンナは神速と呼べる速度で放つ突き技を、俺の首に放ってきた。
 これを食らえば防御魔法が破壊されるどころか、喉元がチクッと痛むかもしれない。
 シュテルクに頼まれた以上負けたくないのもあるが、何よりもあんな技を食らってちょっと痛いで済むのは流石に常軌を逸している。
 わざとらしくなく、出来る限り偶然に見えるよう、避けなくては。

「────なっ!」

「う、嘘だろ……リュートの野郎、あんな技を紙一重で……!」

「避けやがった!?」

 あれ、今のも駄目?
 だいぶギリギリで避けた感出したんだけど。

「へぇ……なかなかやるじゃねえか、あのガキ。 戦うのが楽しみだ。 くっくっく」

 やだ、ルベールお兄様がめっちゃ邪悪な笑みを浮かべていらっしゃる。
 悪魔かな。
 ……とりあえず、時間制限まで一分切ったから、そろそろ終わらすとするか。

「カンナ! お前が先に戦技を使ったんだ! 文句言うなよ!? 戦技オーバルアーツ、蛇頭轍尾!」

「こ、この技は……! くっ!」

 カンナは咄嗟に逃げるがとっくに遅い。
 この技を出した以上、カンナは絶対に逃げられない。  
 必中必滅の必殺技、蛇頭轍尾の前にはな。

 ────バキッ。
 
 俺の手から離れた自動追尾の鎖をなんとか追い払おうとレイピアで振り払うが、元より狙いはそのレイピア。
 飛んで火に入る夏の虫の如く、鎖はレイピアに巻き付き、一瞬で破壊した。

「そんな! レイピアが……!」 

「余所見してて良いのか?」

「え……?」 

 勝負の最中に余所見は御法度。
 可哀想だけど今後の為を思い、ここは心を鬼にして一撃をお見舞いしてやるとしよう。

「女の子を蹴るのは忍びないけど、模擬試合だから仕方ないよねキーック!」

「カハッ! な、なんですの、その技名は……そんなふざけた蹴りに負けるだなんて、ブロッケン家の恥にも程が…………ぐふっ」

 もろに蹴りを食らったカンナは、白目を剥いてその場でうつ伏せとなった。
 ピクピク痙攣してる。
 浜に打ち上げられた魚かな。
 合掌。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *無断転載、無断翻訳を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

1枚の金貨から変わる俺の異世界生活。26個の神の奇跡は俺をチート野郎にしてくれるはず‼

ベルピー
ファンタジー
この世界は5歳で全ての住民が神より神の祝福を得られる。そんな中、カインが授かった祝福は『アルファベット』という見た事も聞いた事もない祝福だった。 祝福を授かった時に現れる光は前代未聞の虹色⁉周りから多いに期待されるが、期待とは裏腹に、どんな祝福かもわからないまま、5年間を何事もなく過ごした。 10歳で冒険者になった時には、『無能の祝福』と呼ばれるようになった。 『無能の祝福』、『最低な能力値』、『最低な成長率』・・・ そんな中、カインは腐る事なく日々冒険者としてできる事を毎日こなしていた。 『おつかいクエスト』、『街の清掃』、『薬草採取』、『荷物持ち』、カインのできる内容は日銭を稼ぐだけで精一杯だったが、そんな時に1枚の金貨を手に入れたカインはそこから人生が変わった。 教会で1枚の金貨を寄付した事が始まりだった。前世の記憶を取り戻したカインは、神の奇跡を手に入れる為にお金を稼ぐ。お金を稼ぐ。お金を稼ぐ。 『戦闘民族君』、『未来の猫ロボット君』、『美少女戦士君』、『天空の城ラ君』、『風の谷君』などなど、様々な神の奇跡を手に入れる為、カインの冒険が始まった。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜

ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。 社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。 せめて「男」になって死にたかった…… そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった! もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

4/4ー俺の親が自重しなかった結果チートな身体を得た。

ギン
ファンタジー
病気がちで子供時代の殆どを病院で過ごした黒鉄 倭人《クロガネ ワヒト》は人生の最後をそのまま病院にて終わらせる。 何故か先に異世界転生していた、自重しない親のおかげ?でチートな身体を得た主人公。 今度は多分、丈夫な身体でこの世界を楽しむ予定だ、異世界を異世界らしく生きて行きたい所だが、何せ親が先に来ているから。大体のことはもうお膳立てされている。そんな異世界を、自分のやりたい様に行動して行く。親父もハーレム作ったから。自分も作ろうかなとか思ってるとか、思ってないとか。 学園編、冒険者編、各種族編までは構想があるのでサクサク進める事を目標にしています。 そんなお話です。 2章のエピローグまでは1日1話程度の更新で進もうと思っています。 1日分で3000文字↑の量になります。 小説家になろうでも同じ小説で執筆中です。見やすい方でどうぞ。

処理中です...