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王の矛先【キングスナイツ】
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「リヒター殿下、リュート様が見えました。 お通ししてもよろしいでしょうか」
「ああ、通してあげたまえ」
「かしこまりました」
メイドの手によりゆっくりと扉が開いていき、やがて室内が視界に映り込んできた。
室内にはリヒター殿下とアルヴィン様だけでなく、他にも大量の人間がひしめいている。
大臣らしき人物が数人と、王冠をかぶった初老の男。
それと、大剣を背負った女性が一人。
その全てが俺に注目をしていて、とても居心地が悪い。
今すぐ回り右したい気分だ。
「し、失礼します」
「あれが剣聖の……」
「フンッ」
大臣達からは、余り歓迎されてないみたい。
まあ大体の理由は察しがついてるけど。
対して、初老の男と剣士らしき女は逆のようで。
「ふむ、どこか勇者を思い起こさせる風貌をしておるな。 そうは思わんか、ファナリオ」
「自分は勇者様の人物像について存じ上げませんので、なんとも……しかし、彼からは尋常ならざる何かを感じるのは確かです。 機嫌を損ねないようにするのが得策かと。 アルヴィン殿下のお話通りの実力だとしたら、我が国の兵力で彼に抵抗するのは不可能かと思いますので。 一晩で国が滅ぼされかねません」
「であろうな」
流石に一晩じゃ無理だぞ。
魔力がもたん。
せめて三日はくれ。
「リヒターよ」
「はい、父上。 さあリュートくん、こちらへ」
やっぱりその人、王様なの?
王冠かぶってるし、風格凄いからなんとなく予想はしてたけどさ。
俄然緊張してきた。
「リュートよ、此度はすまなんだ。 王としてではなく、父親としてここに謝罪する。 どうか息子どもの事を許してやってくれ。 だがそれもこれも、全ては国を想っての行為。 そこは理解して貰いたい」
「い……いえ、別に気にしてませんので…………にしても、どうしてあんな力試しを? 何か理由が……?」
「うむ、実は昨今帝国に動きが見られておってな。 なにやら戦の準備をしておるようなのだ」
そういえば、そんな話を最近ちょくちょく耳にするな。
色んな場所で聞くって事は、それだけ信憑性が高い証か。
少し調べてみる必要があるかもしれない。
「そこで貴殿には、有事の際に力を貸してほしいのだ。 我らが王家直属の遊撃部隊、王の矛先の一員としてな」
「キングスナイツ……?」
なにそれ。
「キングスナイツとは、少数精鋭で構成された王直属の部隊の事だ。 キングスナイツの主な仕事は、ギルドや騎士団が対処不可能な問題を解決する事にある。 王の勅命でね」
要は、特殊部隊や諜報機関みたいなもんか。
「それに是非、貴殿を招待したい。 いや、我々に力を貸してくれ、リュート=ヴェルエスタよ」
別に力を貸す事自体はやぶさかではない。
貴族社会には付き物の腹の探り合いや上流貴族の傲慢な態度にはほとほと呆れてはいるが、それ以上に俺はこの国に住んでる人達を気に入っている。
理由としてはこれで十分だ。
ただ……。
「……お話はわかりました。 折角のお誘いですから、前向きに考えたいと思います。 ただ……僕はこれから学園に三年間通わなくちゃならないので、あんまり時間が……それに、卒業後も自分の領地の管理や婚約があるもので、キングスナイツの活動もとなると流石に……」
「時間が足りぬ、か」
「すみません……」
勿論理由は他にもある。
父さんの許可も得ずに加入は出来ないだとか、おおっぴらに力を使えないだとか、色々な理由が。
「なのでこの話は保留に……」
「ふむ……」
王様も俺の顔色からあらかた察してくれたのか、目蓋を閉じると物腰柔らかな雰囲気でこう言ってきた。
「承知した。 残念だがそういう事情があるのであれば仕方あるまい、一先ず保留としておこう。 気が変わったら言いなさい。 君の為に席は確保しておくよう、伝えておく」
「ありがとう……ございます」
頭を下げると王様は大臣達には見えない角度で、まるで親戚のおじさんのような微笑みを浮かべた。
この優しい微笑み、どこがで……と、過去を振り返っていた最中。
「レスタ王、そろそろ……」
「うむ……では、剣聖の息子よ。 色良い返事を期待しているぞ」
「あ、はい。 お疲れ様っす」
なんだ、お疲れ様って。
バイト先での挨拶かよ。
「チッ」
そりゃあ大臣に舌打ちもされれば睨まれるってもんだ。
唯一の救いは王様が「フッ」と笑ってくれた事か。
不敬と取られなくて本当に良かった。
もし不敬と取られていたら打ち首だったかもしれない。
ここはそういう世界なのだ。
「度胸あんなぁ、お前。 親父にあんな軽口叩いた奴、初めて見たぜ。 下手したら今頃斬首台に立たされていたかもしんねえのに、大したもんだわ。 なあ、兄貴」
「ははっ」
………………。
「ああ、通してあげたまえ」
「かしこまりました」
メイドの手によりゆっくりと扉が開いていき、やがて室内が視界に映り込んできた。
室内にはリヒター殿下とアルヴィン様だけでなく、他にも大量の人間がひしめいている。
大臣らしき人物が数人と、王冠をかぶった初老の男。
それと、大剣を背負った女性が一人。
その全てが俺に注目をしていて、とても居心地が悪い。
今すぐ回り右したい気分だ。
「し、失礼します」
「あれが剣聖の……」
「フンッ」
大臣達からは、余り歓迎されてないみたい。
まあ大体の理由は察しがついてるけど。
対して、初老の男と剣士らしき女は逆のようで。
「ふむ、どこか勇者を思い起こさせる風貌をしておるな。 そうは思わんか、ファナリオ」
「自分は勇者様の人物像について存じ上げませんので、なんとも……しかし、彼からは尋常ならざる何かを感じるのは確かです。 機嫌を損ねないようにするのが得策かと。 アルヴィン殿下のお話通りの実力だとしたら、我が国の兵力で彼に抵抗するのは不可能かと思いますので。 一晩で国が滅ぼされかねません」
「であろうな」
流石に一晩じゃ無理だぞ。
魔力がもたん。
せめて三日はくれ。
「リヒターよ」
「はい、父上。 さあリュートくん、こちらへ」
やっぱりその人、王様なの?
王冠かぶってるし、風格凄いからなんとなく予想はしてたけどさ。
俄然緊張してきた。
「リュートよ、此度はすまなんだ。 王としてではなく、父親としてここに謝罪する。 どうか息子どもの事を許してやってくれ。 だがそれもこれも、全ては国を想っての行為。 そこは理解して貰いたい」
「い……いえ、別に気にしてませんので…………にしても、どうしてあんな力試しを? 何か理由が……?」
「うむ、実は昨今帝国に動きが見られておってな。 なにやら戦の準備をしておるようなのだ」
そういえば、そんな話を最近ちょくちょく耳にするな。
色んな場所で聞くって事は、それだけ信憑性が高い証か。
少し調べてみる必要があるかもしれない。
「そこで貴殿には、有事の際に力を貸してほしいのだ。 我らが王家直属の遊撃部隊、王の矛先の一員としてな」
「キングスナイツ……?」
なにそれ。
「キングスナイツとは、少数精鋭で構成された王直属の部隊の事だ。 キングスナイツの主な仕事は、ギルドや騎士団が対処不可能な問題を解決する事にある。 王の勅命でね」
要は、特殊部隊や諜報機関みたいなもんか。
「それに是非、貴殿を招待したい。 いや、我々に力を貸してくれ、リュート=ヴェルエスタよ」
別に力を貸す事自体はやぶさかではない。
貴族社会には付き物の腹の探り合いや上流貴族の傲慢な態度にはほとほと呆れてはいるが、それ以上に俺はこの国に住んでる人達を気に入っている。
理由としてはこれで十分だ。
ただ……。
「……お話はわかりました。 折角のお誘いですから、前向きに考えたいと思います。 ただ……僕はこれから学園に三年間通わなくちゃならないので、あんまり時間が……それに、卒業後も自分の領地の管理や婚約があるもので、キングスナイツの活動もとなると流石に……」
「時間が足りぬ、か」
「すみません……」
勿論理由は他にもある。
父さんの許可も得ずに加入は出来ないだとか、おおっぴらに力を使えないだとか、色々な理由が。
「なのでこの話は保留に……」
「ふむ……」
王様も俺の顔色からあらかた察してくれたのか、目蓋を閉じると物腰柔らかな雰囲気でこう言ってきた。
「承知した。 残念だがそういう事情があるのであれば仕方あるまい、一先ず保留としておこう。 気が変わったら言いなさい。 君の為に席は確保しておくよう、伝えておく」
「ありがとう……ございます」
頭を下げると王様は大臣達には見えない角度で、まるで親戚のおじさんのような微笑みを浮かべた。
この優しい微笑み、どこがで……と、過去を振り返っていた最中。
「レスタ王、そろそろ……」
「うむ……では、剣聖の息子よ。 色良い返事を期待しているぞ」
「あ、はい。 お疲れ様っす」
なんだ、お疲れ様って。
バイト先での挨拶かよ。
「チッ」
そりゃあ大臣に舌打ちもされれば睨まれるってもんだ。
唯一の救いは王様が「フッ」と笑ってくれた事か。
不敬と取られなくて本当に良かった。
もし不敬と取られていたら打ち首だったかもしれない。
ここはそういう世界なのだ。
「度胸あんなぁ、お前。 親父にあんな軽口叩いた奴、初めて見たぜ。 下手したら今頃斬首台に立たされていたかもしんねえのに、大したもんだわ。 なあ、兄貴」
「ははっ」
………………。
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