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契約
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「カズトくん、お待たせ。 はい、これ。 冒険者カード。 身分証明書にもなってるから、落とさないようにね」
差し出されたマイナンバーカードみたいなカードを受け取って確認してみると、表面には発行日時や俺の偽名。
現在の冒険者ランクなどが記載されていた。
「ありがとう、お姉さん。 これで俺も晴れて冒険者かぁ」
これからどんな依頼が待っているんだろう。
異世界での醍醐味がまた一つ増え、妄想が止まらない。
「そんな初心者冒険者のカズトくんには、この私。 ベテラン受付嬢のレミリアが色々レクチャーして差し上げましょう。 ではまず、こほん……基本中の基本。 ハンターギルドについて。 ハンターギルドとはその名の通り……」
話が長くなるので割愛するが、ようはこういう事らしい。
ハンターギルドは読んで字のごとく、魔物をハントして報酬を得るギルドである。
報酬を受け取るには四パターンあり、一つはポピュラーな魔物討伐クエストの受注。
これは掲示板に貼り出されている依頼書を提出し、そこに記されている魔物を必要数討伐する事で、記載の報酬を得られるというシステム。
ちなみに、討伐の証として魔物の部位を持っていかなきゃならない上、冒険者ランク以下の依頼しか受けられない為、看板システムの割に色々とめんどくさい。
二つ目は依頼書を通さない、素材換金手続き。
これも文字通りの意味で、持ち込んだ素材を鑑定して貰い、お金に変えて貰う手段だ。
なので、討伐依頼のついでにこなす人が多いという。
続いて三つ目。
三つ目のシステムはゲスト支援手続き。
これは少々変わり種で、一時的に他のパーティーへゲストとして参加する事で、自分のランク以上のクエストに参加が可能になるという救済システムだ。
ただしデメリットとして、ゲストメンバーの取り分は正規メンバーより三割減る為、実質は報酬よりも経験を積みたい人用のシステムである。
そして最後となる四つ目のシステムは、ギルド発行クエストと呼ばれる、高難度クエストだ。
これはギルドが直々に依頼するクエストで、実力を認められた人にしか話を持っていかないんだとか。
以上がギルドの基本システムだと、お姉さんが言っていた。
「大体理解したかしら?」
「うん、大丈夫。 ラノベで散々学んでたしね」
「ラノベ……?」
「う……ううん、何でもない。 それよりも、冒険者ランクに聞きたいんだけど良いかな」
尋ねるとお姉さんが快くオッケーしてくれたので、俺も遠慮なく質問をぶつけてみた。
「この冒険者ランクって、どうしたら上がるの? やっぱり魔物の討伐?」
「うん、その通り。 基本的には同ランクのクエストを規定数こなすとランクアップ出来るわ。 他にも、たまたま遭遇した自分よりもランクの高い魔物を討伐した時や、採取困難な魔物素材を持ってきてくれた時でもランクアップの条件になることもあるの」
「ふうん、じゃあ……」
言いながら俺はアイテムボックスを開放。
「え!? なにその魔法! 初めて見たんだけど!」
「あ、あはは……十分驚かされた気でいましたけど、カズトくんにはこれからも驚かされる事になりそうですね」
「流石はカズトくんだ。 感服の極みだよ」
最早慣れ始めてきた称賛をスルーして、ヨルムンガンドを倒した時にドロップした謎の玉を提出した。
「これ、換金出来ないかな? ヨルムンガンドから出てきたんだけど」
「こ……これはまさか、ヨルムンガンドの輝石!? Sランクの魔物素材じゃないですか!」
「な、なんだって!? ヨルムンガンドの輝石だと!? 本物なんて存在したのかよ!」
「俺ぁてっきり、伝説上の代物かと……」
あれ?
もしかして俺またなんかやっちゃいました?
「是非ともこちら、買い取らせて頂けませんか! お代は……これで」
お姉さんはカウンターから取り出した小切手に、突然とんでもない数字を書き始めた。
「い……一億コル!? お姉さん、0間違えてない!? これ、一億になってるけど!」
「一億、だって!?」
「おいおい、マジかよ」
ちょ、寄るなお前ら!
あっち行け!
「間違ってませんよ、一億で合っています。 ヨルムンガンドの輝石はSランクアイテムの中でも希少中の希少。 もっと支払っても良いくらいです」
「マジっすか」
「とはいえ、今すぐお支払い出来る額ではありませんので、少々お待ちいただく事になりますがよろしいですか?」
むしろその方がありがたい。
こんな大金持ち歩くなんて怖すぎる。
「もちろん! ついでに小切手も一緒に保管しといて貰える? そんな大金の小切手、持っているだけで疑心暗鬼に陥りそうで……」
「ふふ、わかりました。 では必要になりましたらいつでもお声がけください。 お待ちしております。 ではその代わりと言ってはなんですが、ランクアップ致しますね。 しばらくお待ちくださいませ」
冒険者カードを渡すと、お姉さんはゲーム機みたいな魔道具にカードを差し込んで、操作を始めた。
それから少しして。
「お待たせ致しました。 こちら、ランクアップした新たな冒険者カードとなります」
「なんか、銀色に光ってる……」
「Bランクですから、そのくらい当然ですよ」
「へー…………はっ!」
またしても周囲から妙な視線が!
「Bランク……だと? バカな……」
「あいつ、たった数分でFランクからBランクまでのしあがりやがった。 俺なんざ八年やってこの間ようやくDに上がったばかりなのに……」
「俺、Eランク……」
これ以上ここに居たら更にめんどくさい事になりそうだ。
ここは、当初の目的を達成する為、お姉さんに相談して、さっさと退散するとしよう。
「ところで、お姉さん。 ここら辺に強力な魔物が居るせいで、他の村に応援を送れないって聞いたんだけど本当なの?」
「よくご存じで。 実はそうなんですよ」
て事は、そいつらを退治すれば……。
「なら俺がその魔物、倒そっか? 良かったら、だけど」
「……! 良いんですか!? カズトさんがよろしければ是非! むしろこちらからお願いしたい所でして!」
「良いよ。 こっちから言った事だしね。 で、どんな魔物なの?」
「こほん、では説明致しましょう。 こちらをご覧ください」
お姉さんは咳払いすると、難易度を意味する星マークが大量に押された依頼書を三枚出した。
それらには、コカトリス、アラクネ、リヴァイアサンと記述されている。
有名なモンスターばかりだな。
「こちらは国内で生存が確認されている厄災級四大魔物の内の三体。 コカトリス、アラクネ、リヴァイアサンです」
「厄災級……四大魔物?」
「有り体に言ってしまえば、存在するだけで国が傾くと言われているモンスターの俗称です。 人々はそれ故に、厄災級と例えているんですよ。 ちなみにヨルムンガンドはその一角でした」
ヨルムンガンドが?
だから皆あんなに驚いてたのか。
納得の理由。
「あの蛇のお仲間くんか。 なら楽勝だな。 今日中に終わらせられそう」
「きょ……今日中? えっとそれは、比喩ではなくその……」
「うん、そのままの意味だけど」
「そ、そうですか……」
何やら気が削がれている顔を浮かべている。
いきなりどうしたのだろう。
過労か?
「じゃあ早速こいつら倒しに行ってくるね。 いってきまーす」
「はい……行ってらっしゃいませ……」
力なく手を振るお姉さんに見守られながら、俺はギルドから出た。
「待ってくれ、カズトくん。 少し相談があるのだが、良いだろうか?」
セニア……?
振り向くとセニアが何故か追ってきていた。
何か相談があるらしい。
「なに、相談って?」
「ああ、実は君の力になりたいと思ってね。 君ほどの実力はないが、他の冒険者よりかは役に立てる筈だ。 どうだい?」
ふむ、確かにセニアの剣は大したもんだ。
国一番の剣士と聞くし、それこそ事情を話してこちら側に引き込んでおくのも悪くはないかもしれない。
アリだな。
「うん、構わないよ。 組もうか、パーティー。 ……でもその前に話しておかなきゃならない事がある。 パーティー組むのはその後で良いかな」
「もちろんだ」
「そっか。 なら人気の無い処に行こうか。 あまり、人に聞かせられない事情があってさ」
そうして連れ込んだ路地裏で、俺は王都に来た理由と経緯を包み隠さず話した。
自分がヴェルエスタの跡取りである事。
自分のせいで領地が大変な目に遭おうとしている事。
ここですべき事を全て。
「だから俺は王都に来た。 王都の問題を片付けて家族や友人、領民を守る為に」
「……なるほど。 そういった理由があったのか。 いやはやこれはお見それした。 実力もさる事ながら、自分の民を想うその心意気。 実に素晴らしい! むしろ私からもお願いしたいくらいだ! カズト殿、この件が片付いたらどうか私を貴殿の領へと移住させてはくれまいか! 私は感銘を受けた貴殿の力になりたいと、心から思っている! 頼む!」
「そりゃ有難い話だけど……良いの? 自分で言うのもなんだけど、かなりド田舎だよウチ。 王都みたいな遊ぶところもないし、娯楽なんかも殆んどない。 自然が他より多いくらいしか取り柄がないんだけど。 おまけに俺のせいで強力な魔物も多いのに、報酬だってまともに出せるかわからない。 それでも大丈夫? 引き返すなら今だよ?」
「ふっ、構わん。 私は元より、剣以外に興味はないのでな。 寝床と生活していくだけの金が手に入れば文句などない。 それに、強い魔物と戦えるならむしろどんと来いだ! 戦いは私の生き甲斐だからな! 今から楽しみと言うものだよ!」
なんて……なんて都合の良い人材なんだ!
金も特に必要とせず、強い敵と戦いたいだけなんて、これ以上の物件はない。
お買い得ってもんだ。
……だが…………。
「そこまで言ってくれるならこちらとしても問題ないよ。 是非来てほしい、ヴェルエスタ嶺に」
「うむ、ではこれで契約完了だな。 ならばさっさと仕事に終わらせるとしようか。 一刻も早く貴殿の村を見てみたいのでな」
「あー、ちょっと待って。 もう一つだけ確認させてくれないかな?」
「うん? なんだ、遠慮なく言ってくれ」
デリケートな問題だから言いにくいんだが、渋っていても仕方ない。
話してから考えれば良いだろう、と。
俺は、もしかしたらこの先浮上する可能性のある、一つの問題をセニアに話した。
その話とは────
差し出されたマイナンバーカードみたいなカードを受け取って確認してみると、表面には発行日時や俺の偽名。
現在の冒険者ランクなどが記載されていた。
「ありがとう、お姉さん。 これで俺も晴れて冒険者かぁ」
これからどんな依頼が待っているんだろう。
異世界での醍醐味がまた一つ増え、妄想が止まらない。
「そんな初心者冒険者のカズトくんには、この私。 ベテラン受付嬢のレミリアが色々レクチャーして差し上げましょう。 ではまず、こほん……基本中の基本。 ハンターギルドについて。 ハンターギルドとはその名の通り……」
話が長くなるので割愛するが、ようはこういう事らしい。
ハンターギルドは読んで字のごとく、魔物をハントして報酬を得るギルドである。
報酬を受け取るには四パターンあり、一つはポピュラーな魔物討伐クエストの受注。
これは掲示板に貼り出されている依頼書を提出し、そこに記されている魔物を必要数討伐する事で、記載の報酬を得られるというシステム。
ちなみに、討伐の証として魔物の部位を持っていかなきゃならない上、冒険者ランク以下の依頼しか受けられない為、看板システムの割に色々とめんどくさい。
二つ目は依頼書を通さない、素材換金手続き。
これも文字通りの意味で、持ち込んだ素材を鑑定して貰い、お金に変えて貰う手段だ。
なので、討伐依頼のついでにこなす人が多いという。
続いて三つ目。
三つ目のシステムはゲスト支援手続き。
これは少々変わり種で、一時的に他のパーティーへゲストとして参加する事で、自分のランク以上のクエストに参加が可能になるという救済システムだ。
ただしデメリットとして、ゲストメンバーの取り分は正規メンバーより三割減る為、実質は報酬よりも経験を積みたい人用のシステムである。
そして最後となる四つ目のシステムは、ギルド発行クエストと呼ばれる、高難度クエストだ。
これはギルドが直々に依頼するクエストで、実力を認められた人にしか話を持っていかないんだとか。
以上がギルドの基本システムだと、お姉さんが言っていた。
「大体理解したかしら?」
「うん、大丈夫。 ラノベで散々学んでたしね」
「ラノベ……?」
「う……ううん、何でもない。 それよりも、冒険者ランクに聞きたいんだけど良いかな」
尋ねるとお姉さんが快くオッケーしてくれたので、俺も遠慮なく質問をぶつけてみた。
「この冒険者ランクって、どうしたら上がるの? やっぱり魔物の討伐?」
「うん、その通り。 基本的には同ランクのクエストを規定数こなすとランクアップ出来るわ。 他にも、たまたま遭遇した自分よりもランクの高い魔物を討伐した時や、採取困難な魔物素材を持ってきてくれた時でもランクアップの条件になることもあるの」
「ふうん、じゃあ……」
言いながら俺はアイテムボックスを開放。
「え!? なにその魔法! 初めて見たんだけど!」
「あ、あはは……十分驚かされた気でいましたけど、カズトくんにはこれからも驚かされる事になりそうですね」
「流石はカズトくんだ。 感服の極みだよ」
最早慣れ始めてきた称賛をスルーして、ヨルムンガンドを倒した時にドロップした謎の玉を提出した。
「これ、換金出来ないかな? ヨルムンガンドから出てきたんだけど」
「こ……これはまさか、ヨルムンガンドの輝石!? Sランクの魔物素材じゃないですか!」
「な、なんだって!? ヨルムンガンドの輝石だと!? 本物なんて存在したのかよ!」
「俺ぁてっきり、伝説上の代物かと……」
あれ?
もしかして俺またなんかやっちゃいました?
「是非ともこちら、買い取らせて頂けませんか! お代は……これで」
お姉さんはカウンターから取り出した小切手に、突然とんでもない数字を書き始めた。
「い……一億コル!? お姉さん、0間違えてない!? これ、一億になってるけど!」
「一億、だって!?」
「おいおい、マジかよ」
ちょ、寄るなお前ら!
あっち行け!
「間違ってませんよ、一億で合っています。 ヨルムンガンドの輝石はSランクアイテムの中でも希少中の希少。 もっと支払っても良いくらいです」
「マジっすか」
「とはいえ、今すぐお支払い出来る額ではありませんので、少々お待ちいただく事になりますがよろしいですか?」
むしろその方がありがたい。
こんな大金持ち歩くなんて怖すぎる。
「もちろん! ついでに小切手も一緒に保管しといて貰える? そんな大金の小切手、持っているだけで疑心暗鬼に陥りそうで……」
「ふふ、わかりました。 では必要になりましたらいつでもお声がけください。 お待ちしております。 ではその代わりと言ってはなんですが、ランクアップ致しますね。 しばらくお待ちくださいませ」
冒険者カードを渡すと、お姉さんはゲーム機みたいな魔道具にカードを差し込んで、操作を始めた。
それから少しして。
「お待たせ致しました。 こちら、ランクアップした新たな冒険者カードとなります」
「なんか、銀色に光ってる……」
「Bランクですから、そのくらい当然ですよ」
「へー…………はっ!」
またしても周囲から妙な視線が!
「Bランク……だと? バカな……」
「あいつ、たった数分でFランクからBランクまでのしあがりやがった。 俺なんざ八年やってこの間ようやくDに上がったばかりなのに……」
「俺、Eランク……」
これ以上ここに居たら更にめんどくさい事になりそうだ。
ここは、当初の目的を達成する為、お姉さんに相談して、さっさと退散するとしよう。
「ところで、お姉さん。 ここら辺に強力な魔物が居るせいで、他の村に応援を送れないって聞いたんだけど本当なの?」
「よくご存じで。 実はそうなんですよ」
て事は、そいつらを退治すれば……。
「なら俺がその魔物、倒そっか? 良かったら、だけど」
「……! 良いんですか!? カズトさんがよろしければ是非! むしろこちらからお願いしたい所でして!」
「良いよ。 こっちから言った事だしね。 で、どんな魔物なの?」
「こほん、では説明致しましょう。 こちらをご覧ください」
お姉さんは咳払いすると、難易度を意味する星マークが大量に押された依頼書を三枚出した。
それらには、コカトリス、アラクネ、リヴァイアサンと記述されている。
有名なモンスターばかりだな。
「こちらは国内で生存が確認されている厄災級四大魔物の内の三体。 コカトリス、アラクネ、リヴァイアサンです」
「厄災級……四大魔物?」
「有り体に言ってしまえば、存在するだけで国が傾くと言われているモンスターの俗称です。 人々はそれ故に、厄災級と例えているんですよ。 ちなみにヨルムンガンドはその一角でした」
ヨルムンガンドが?
だから皆あんなに驚いてたのか。
納得の理由。
「あの蛇のお仲間くんか。 なら楽勝だな。 今日中に終わらせられそう」
「きょ……今日中? えっとそれは、比喩ではなくその……」
「うん、そのままの意味だけど」
「そ、そうですか……」
何やら気が削がれている顔を浮かべている。
いきなりどうしたのだろう。
過労か?
「じゃあ早速こいつら倒しに行ってくるね。 いってきまーす」
「はい……行ってらっしゃいませ……」
力なく手を振るお姉さんに見守られながら、俺はギルドから出た。
「待ってくれ、カズトくん。 少し相談があるのだが、良いだろうか?」
セニア……?
振り向くとセニアが何故か追ってきていた。
何か相談があるらしい。
「なに、相談って?」
「ああ、実は君の力になりたいと思ってね。 君ほどの実力はないが、他の冒険者よりかは役に立てる筈だ。 どうだい?」
ふむ、確かにセニアの剣は大したもんだ。
国一番の剣士と聞くし、それこそ事情を話してこちら側に引き込んでおくのも悪くはないかもしれない。
アリだな。
「うん、構わないよ。 組もうか、パーティー。 ……でもその前に話しておかなきゃならない事がある。 パーティー組むのはその後で良いかな」
「もちろんだ」
「そっか。 なら人気の無い処に行こうか。 あまり、人に聞かせられない事情があってさ」
そうして連れ込んだ路地裏で、俺は王都に来た理由と経緯を包み隠さず話した。
自分がヴェルエスタの跡取りである事。
自分のせいで領地が大変な目に遭おうとしている事。
ここですべき事を全て。
「だから俺は王都に来た。 王都の問題を片付けて家族や友人、領民を守る為に」
「……なるほど。 そういった理由があったのか。 いやはやこれはお見それした。 実力もさる事ながら、自分の民を想うその心意気。 実に素晴らしい! むしろ私からもお願いしたいくらいだ! カズト殿、この件が片付いたらどうか私を貴殿の領へと移住させてはくれまいか! 私は感銘を受けた貴殿の力になりたいと、心から思っている! 頼む!」
「そりゃ有難い話だけど……良いの? 自分で言うのもなんだけど、かなりド田舎だよウチ。 王都みたいな遊ぶところもないし、娯楽なんかも殆んどない。 自然が他より多いくらいしか取り柄がないんだけど。 おまけに俺のせいで強力な魔物も多いのに、報酬だってまともに出せるかわからない。 それでも大丈夫? 引き返すなら今だよ?」
「ふっ、構わん。 私は元より、剣以外に興味はないのでな。 寝床と生活していくだけの金が手に入れば文句などない。 それに、強い魔物と戦えるならむしろどんと来いだ! 戦いは私の生き甲斐だからな! 今から楽しみと言うものだよ!」
なんて……なんて都合の良い人材なんだ!
金も特に必要とせず、強い敵と戦いたいだけなんて、これ以上の物件はない。
お買い得ってもんだ。
……だが…………。
「そこまで言ってくれるならこちらとしても問題ないよ。 是非来てほしい、ヴェルエスタ嶺に」
「うむ、ではこれで契約完了だな。 ならばさっさと仕事に終わらせるとしようか。 一刻も早く貴殿の村を見てみたいのでな」
「あー、ちょっと待って。 もう一つだけ確認させてくれないかな?」
「うん? なんだ、遠慮なく言ってくれ」
デリケートな問題だから言いにくいんだが、渋っていても仕方ない。
話してから考えれば良いだろう、と。
俺は、もしかしたらこの先浮上する可能性のある、一つの問題をセニアに話した。
その話とは────
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