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第5話 自己嫌悪
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……ここは、どこだろう。
またあの夢の中なのかな。
考えるよりも先に、辺りを見渡した。
そこは、歪んだ美しい空間だった。
「え、水……?」
足元を見ると、確かに水が広がっていた。
その水に映っているからか、その水の中に在るのか分からないが、確かに見えたのは見たことがないほど細かい、無数の星空だった。
「綺麗……」
一人で眺めながら呟く。
……あぁ、独りなんだ。私って。
改めて、自分の存在している場所を確信する。
もう、ずっとここに居てもいい。
ここに居たい。
「そうかい?ボクは、君が羨ましいけどね」
ふと、誰かの声が響いた。
その声は、トンネルのように深く残響として残る。
振り向かずとも目の前にいた。
灰色の髪に、海のように透き通った青い瞳。
背は、私よりも高い。
私よりも大人びいた男の子。
……なんで、ここに?
「弟に頼まれたんだよ。君を境界から連れ戻してこいってさ。全く、つくづく人使いが粗い弟だ」
そう言って、彼は苦笑した。
本当に、私が作り出した幻想でないのなら……
「貴方もエゴイスト、なの?」
一瞬、彼は驚いた顔をしてから微笑んだ。
とても優しい暖かい笑み。
「君と同じエゴイストの人間だったのは、間違えはないよ。それでないと、ボクはここには来れない」
ピチャン、ポチャン、と水音が鳴る。
今、確かに聞き取れた。
「人間、だった……」
ハッと口を塞いだ。
思ってることを無意識に口にして辿ってしまった。
でも、それぐらい驚いた。
でも、彼は怒るどころかクスクスと笑っていた。
「な、何がおもしろいの!?」
彼は、慌てて無理矢理笑いを止めた。
そして、落ち着くと私に話をしてくれた。
と言いたかったが……
「ごめんよ、凛花ちゃん。君が驚くのも無理はないよね。ただ、あんまりにも君の反応が面白くて……」
またクスクス笑われてる。
私、この人にからかわれてる?
気を悪くしたのが受け取れたのか話を戻してきた。
「ボクは今、境界に来れているだろう?それが答えさ。ボクは、3年前。人間を辞めてしまったんだよ」
人を辞める?
果たしてそんなことができるのだろうか?
なら、この人は今どんな存在なのだろう。
私が居る場所は、夢の中でなく境界……?
「ボクは、目的を果たし神になった。けど、そのせいで人間で在り続けることが出来なくなったんだよ。だから、ボクの身体ごと今ここに在るんだ」
悲しいことを言っているのに、清々しい顔をする。
彼は、何を望んでここに居るのだろう……
ふと、そんな疑問が脳裏を横切る。
「貴方は、どんな目的を果たしたの?」
ここに、独り。
そんなことに耐えられるのは、目的が理由だ。
それだけの大きな目的が……望みが果たされたんだ。
それじゃなきゃ、そんな顔出来っこない。
「ボクの果たした目的、か……」
けど、その一瞬で少し悲しい笑みを見せた。
まるで誰かに、訴えるような目で、
『仕方なかったんだ』
と、言いたそうな表情で……
「あの、言いたくないとか、言えない理由があるなら仕方ないと思うから__」
「__自分の存在価値を誰かに刻むことさ」
気のせい、だと思いたい。
けど、確かにハッキリと見えた。
彼の誰か。と、転校生のアイツが。
シンクロするように、宇宙に浮かんだ。
「……あぁ、もう時間だ。君は呼ばれている」
そう言って、私の肩に彼の手が触れた。
繊細で優しい。包み込まれそうな大きな手だった。
最後の何分かで質問した。
「貴方の名前は?何て言うの?」
彼がまた微笑み口を開いた。
「弟によろしく頼むよ、凛花ちゃん」
それと、最後に聞こえた名前。
目が覚める直前に、聞いた。
その名前は。
『森崎晶さ……』
またあの夢の中なのかな。
考えるよりも先に、辺りを見渡した。
そこは、歪んだ美しい空間だった。
「え、水……?」
足元を見ると、確かに水が広がっていた。
その水に映っているからか、その水の中に在るのか分からないが、確かに見えたのは見たことがないほど細かい、無数の星空だった。
「綺麗……」
一人で眺めながら呟く。
……あぁ、独りなんだ。私って。
改めて、自分の存在している場所を確信する。
もう、ずっとここに居てもいい。
ここに居たい。
「そうかい?ボクは、君が羨ましいけどね」
ふと、誰かの声が響いた。
その声は、トンネルのように深く残響として残る。
振り向かずとも目の前にいた。
灰色の髪に、海のように透き通った青い瞳。
背は、私よりも高い。
私よりも大人びいた男の子。
……なんで、ここに?
「弟に頼まれたんだよ。君を境界から連れ戻してこいってさ。全く、つくづく人使いが粗い弟だ」
そう言って、彼は苦笑した。
本当に、私が作り出した幻想でないのなら……
「貴方もエゴイスト、なの?」
一瞬、彼は驚いた顔をしてから微笑んだ。
とても優しい暖かい笑み。
「君と同じエゴイストの人間だったのは、間違えはないよ。それでないと、ボクはここには来れない」
ピチャン、ポチャン、と水音が鳴る。
今、確かに聞き取れた。
「人間、だった……」
ハッと口を塞いだ。
思ってることを無意識に口にして辿ってしまった。
でも、それぐらい驚いた。
でも、彼は怒るどころかクスクスと笑っていた。
「な、何がおもしろいの!?」
彼は、慌てて無理矢理笑いを止めた。
そして、落ち着くと私に話をしてくれた。
と言いたかったが……
「ごめんよ、凛花ちゃん。君が驚くのも無理はないよね。ただ、あんまりにも君の反応が面白くて……」
またクスクス笑われてる。
私、この人にからかわれてる?
気を悪くしたのが受け取れたのか話を戻してきた。
「ボクは今、境界に来れているだろう?それが答えさ。ボクは、3年前。人間を辞めてしまったんだよ」
人を辞める?
果たしてそんなことができるのだろうか?
なら、この人は今どんな存在なのだろう。
私が居る場所は、夢の中でなく境界……?
「ボクは、目的を果たし神になった。けど、そのせいで人間で在り続けることが出来なくなったんだよ。だから、ボクの身体ごと今ここに在るんだ」
悲しいことを言っているのに、清々しい顔をする。
彼は、何を望んでここに居るのだろう……
ふと、そんな疑問が脳裏を横切る。
「貴方は、どんな目的を果たしたの?」
ここに、独り。
そんなことに耐えられるのは、目的が理由だ。
それだけの大きな目的が……望みが果たされたんだ。
それじゃなきゃ、そんな顔出来っこない。
「ボクの果たした目的、か……」
けど、その一瞬で少し悲しい笑みを見せた。
まるで誰かに、訴えるような目で、
『仕方なかったんだ』
と、言いたそうな表情で……
「あの、言いたくないとか、言えない理由があるなら仕方ないと思うから__」
「__自分の存在価値を誰かに刻むことさ」
気のせい、だと思いたい。
けど、確かにハッキリと見えた。
彼の誰か。と、転校生のアイツが。
シンクロするように、宇宙に浮かんだ。
「……あぁ、もう時間だ。君は呼ばれている」
そう言って、私の肩に彼の手が触れた。
繊細で優しい。包み込まれそうな大きな手だった。
最後の何分かで質問した。
「貴方の名前は?何て言うの?」
彼がまた微笑み口を開いた。
「弟によろしく頼むよ、凛花ちゃん」
それと、最後に聞こえた名前。
目が覚める直前に、聞いた。
その名前は。
『森崎晶さ……』
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