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第2話 目的とお茶
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倉嶋凛花。
それが私の名前だ。
よくありそうな名前。
そう思うし、そう言われる。
けど、嫌だとは思わない。
だって、それは皆と同じ位置に立っているようでとても安心するから。
たとえそれが、自分勝手な自己満足だとしても。
皆と同じ__そう思えるから。
朝の登校中、妙な視線に気付く。
間違いない。教室の窓から見下ろすのは、昨日の転校生だった。
まだ、警戒感が感じ取れた。
仕方がないが、少し気持ちが悪い。
人に見られるということすら嫌なのに、エゴイストにジロジロと見られるのはもっと嫌だ。
奴__森崎潤の席は、私の一つ前にある。
授業中なら見られないなどという余裕はない。
奴は、私と同じエゴイスト。
目がどこにでもついてると思って良い。
エゴイストには、それぞれの目的がある。
欲望の中心部。そう言っても良いだろう。
彼らは、目的を原動力として力に変換する。
つまり、だ。
目的に沿った力を完全的に手にしているのだ。
必要なモノは、揃っている。
逆に、必要ないモノは消えていく。
より早く仮想現実の世界を創造できるか。
それが何よりも重要だからだ。
私たちエゴイストは、幼児期である程度力を得る。
それは、偶然ではなく必然的に身に付く。
人間離れした第六感。
物理では、解明できない力。
それより格上の能力を身に付けることさえある。
例を出すなら、私だ。
私は、傷を負った経験がない。
身体損傷を防ぐ力。
SF、ファンタジーでよく耳にする言葉。
『不死能力』だ。
絶対に不死身とはまだ、言いがたい。
そういう生死の場に立ち会わせたことがない。
だが、私がまだ三つの頃。
ひき逃げの車に撥ね飛ばされたことがある。
その時の傷は、どこを探してもなかった。
血は出していたらしいが、傷がない。
親が間近に目にしたものはただ一つ。
湯気のような煙だった。
周りの大人は、皆私を気味悪がった。
でも、今にして思えば助かっただけましだった。
……それからか、それ以前からかは分からない。
私は自分の傷を見たことがない。
決して、一度も。
「りんちゃん?どうかしたの?」
肩をトントンと叩いてきた。
のは、後ろの席の矢島香織。
私たちは、この学年で初めて出会った。
唯一の仲が良い友達なのだ。
「いや、ちょっと思い出して……」
そういうと、私の気を察したのか、それ以上は聞いてはこなかった。
この子のこういう優しさには、毎度惹かれる。
彼女は、にっこりと微笑み私に言った。
「りんちゃん、ほらっ!笑顔笑顔!」
両手で私の頬をむにぃっと挟んできた。
お互い、プッと吹き出す。
「今日、放課後空いてるかな?近くの喫茶店がリニューアルしてて、お茶でも飲んでかない?」
香織は、紅茶を飲むのが好きらしい。
この間も私を誘ってレストランに行った。
でも、いつの間にか私も好きになっていた。
香織が見せる世界がとてつもなく好き。
隣にいると、色んな景色が見られるんだ。
今の__エゴイストの私が造りたい世界。
きっと、この子と穏やかな日々を送れる世界。
ずっと。命有る限り永遠に過ごせる世界。
それが、私の目的になろうとしている。
私たちは、喫茶店まで歩いた。
ゆっくり話しながら。
とても、暖かかった。
それが私の名前だ。
よくありそうな名前。
そう思うし、そう言われる。
けど、嫌だとは思わない。
だって、それは皆と同じ位置に立っているようでとても安心するから。
たとえそれが、自分勝手な自己満足だとしても。
皆と同じ__そう思えるから。
朝の登校中、妙な視線に気付く。
間違いない。教室の窓から見下ろすのは、昨日の転校生だった。
まだ、警戒感が感じ取れた。
仕方がないが、少し気持ちが悪い。
人に見られるということすら嫌なのに、エゴイストにジロジロと見られるのはもっと嫌だ。
奴__森崎潤の席は、私の一つ前にある。
授業中なら見られないなどという余裕はない。
奴は、私と同じエゴイスト。
目がどこにでもついてると思って良い。
エゴイストには、それぞれの目的がある。
欲望の中心部。そう言っても良いだろう。
彼らは、目的を原動力として力に変換する。
つまり、だ。
目的に沿った力を完全的に手にしているのだ。
必要なモノは、揃っている。
逆に、必要ないモノは消えていく。
より早く仮想現実の世界を創造できるか。
それが何よりも重要だからだ。
私たちエゴイストは、幼児期である程度力を得る。
それは、偶然ではなく必然的に身に付く。
人間離れした第六感。
物理では、解明できない力。
それより格上の能力を身に付けることさえある。
例を出すなら、私だ。
私は、傷を負った経験がない。
身体損傷を防ぐ力。
SF、ファンタジーでよく耳にする言葉。
『不死能力』だ。
絶対に不死身とはまだ、言いがたい。
そういう生死の場に立ち会わせたことがない。
だが、私がまだ三つの頃。
ひき逃げの車に撥ね飛ばされたことがある。
その時の傷は、どこを探してもなかった。
血は出していたらしいが、傷がない。
親が間近に目にしたものはただ一つ。
湯気のような煙だった。
周りの大人は、皆私を気味悪がった。
でも、今にして思えば助かっただけましだった。
……それからか、それ以前からかは分からない。
私は自分の傷を見たことがない。
決して、一度も。
「りんちゃん?どうかしたの?」
肩をトントンと叩いてきた。
のは、後ろの席の矢島香織。
私たちは、この学年で初めて出会った。
唯一の仲が良い友達なのだ。
「いや、ちょっと思い出して……」
そういうと、私の気を察したのか、それ以上は聞いてはこなかった。
この子のこういう優しさには、毎度惹かれる。
彼女は、にっこりと微笑み私に言った。
「りんちゃん、ほらっ!笑顔笑顔!」
両手で私の頬をむにぃっと挟んできた。
お互い、プッと吹き出す。
「今日、放課後空いてるかな?近くの喫茶店がリニューアルしてて、お茶でも飲んでかない?」
香織は、紅茶を飲むのが好きらしい。
この間も私を誘ってレストランに行った。
でも、いつの間にか私も好きになっていた。
香織が見せる世界がとてつもなく好き。
隣にいると、色んな景色が見られるんだ。
今の__エゴイストの私が造りたい世界。
きっと、この子と穏やかな日々を送れる世界。
ずっと。命有る限り永遠に過ごせる世界。
それが、私の目的になろうとしている。
私たちは、喫茶店まで歩いた。
ゆっくり話しながら。
とても、暖かかった。
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