21 / 45
第二章
4
しおりを挟む
それから、四年の月日が流れた。
彰太は今、奈良で一人暮らしをしている。わざわざ関西の会社に入社したときは、両親に「何で?!」と泣かれたものだ。
会社から帰宅した彰太がテーブルにコンビニ袋を置いたタイミングで、着信音が部屋に響いた。その意外な人物に首をひねりつつ、彰太は通話ボタンを押した。
「もしもし」
『よう、多比良。久しぶり。オレのこと覚えてるか?』
人懐っこい声音に、彰太は苦笑した。
「葉山だろ? お前みたいな派手なやつ、忘れたくても忘れられないよ」
『なーんかトゲがあるなあ』
「気のせいだよ。それより、何かあったの?」
『いや。お前も、白沢の結婚式に招待されてるか確認しときたくてさ』
どくん。
一瞬。身体が跳ねるぐらい、心臓が跳ねた。
「へえ。白沢、結婚するんだ」
声色に動揺がのっていないだろうか。心配をよそに、葉山は変わらぬ調子で続けた。
『あ、その様子だと招待されてねえな。何だよ。高校の時、お前ら仲良かったじゃん』
「そうかな。どっちにしろ、もう何年も連絡とってないよ。今、おれ奈良で働いてるし」
『おお、マジか。でも、そっか。あーやだな。あいつキャリアの道突っ走ってるから、周りエリートばっかだろうな。知り合いいないの、辛いわ』
「キャリア組か。白沢らしいね」
『つうか。コネだよ、コネ。まあ、ある意味自分の力だけど』
「どういう意味?」
『なんかさ、大手企業の社長の娘とうまいこと付き合って、そんで結構な役職をもらったらしい』
言葉に詰まりかけたが、彰太は何とか持ち直し、口を開いた。
「その、さ。社長の娘と、いつから付き合ってたのかな」
踏み込み過ぎた質問だったろうか。けれど葉山は、あっけらかんと答える。細かいことを気にしない性格が、今はとてもありがたい。
『えー? いつだろ。大学からの付き合いだとは聞いたことあるけど。正確には知らねーな』
「……そう。にしても、よく知ってるな。葉山は、白沢とまだ付き合いがあったんだな」
『まあ、白沢とは大学まで同じだったし。それから一年と経ってないからなあ』
「大学が同じなのは知ってたけど、その後も付き合いが続いてたのは驚いた」
『別に連絡を取り合ってるとかじゃねーけどな。にしても、オレの知り合いであいつの結婚式に招待されてる奴、いんのかな。あいつ友達少なそうだしなあ』
「葉山に言われちゃおしまいだよね」
『うるせー。しかもさ、何処で結婚式やると思う? すっげー有名なところでさ』
結婚式場。日時。葉山から期せずしてもたらされた情報が、耳に焼き付いて離れなかった。
彰太は今、奈良で一人暮らしをしている。わざわざ関西の会社に入社したときは、両親に「何で?!」と泣かれたものだ。
会社から帰宅した彰太がテーブルにコンビニ袋を置いたタイミングで、着信音が部屋に響いた。その意外な人物に首をひねりつつ、彰太は通話ボタンを押した。
「もしもし」
『よう、多比良。久しぶり。オレのこと覚えてるか?』
人懐っこい声音に、彰太は苦笑した。
「葉山だろ? お前みたいな派手なやつ、忘れたくても忘れられないよ」
『なーんかトゲがあるなあ』
「気のせいだよ。それより、何かあったの?」
『いや。お前も、白沢の結婚式に招待されてるか確認しときたくてさ』
どくん。
一瞬。身体が跳ねるぐらい、心臓が跳ねた。
「へえ。白沢、結婚するんだ」
声色に動揺がのっていないだろうか。心配をよそに、葉山は変わらぬ調子で続けた。
『あ、その様子だと招待されてねえな。何だよ。高校の時、お前ら仲良かったじゃん』
「そうかな。どっちにしろ、もう何年も連絡とってないよ。今、おれ奈良で働いてるし」
『おお、マジか。でも、そっか。あーやだな。あいつキャリアの道突っ走ってるから、周りエリートばっかだろうな。知り合いいないの、辛いわ』
「キャリア組か。白沢らしいね」
『つうか。コネだよ、コネ。まあ、ある意味自分の力だけど』
「どういう意味?」
『なんかさ、大手企業の社長の娘とうまいこと付き合って、そんで結構な役職をもらったらしい』
言葉に詰まりかけたが、彰太は何とか持ち直し、口を開いた。
「その、さ。社長の娘と、いつから付き合ってたのかな」
踏み込み過ぎた質問だったろうか。けれど葉山は、あっけらかんと答える。細かいことを気にしない性格が、今はとてもありがたい。
『えー? いつだろ。大学からの付き合いだとは聞いたことあるけど。正確には知らねーな』
「……そう。にしても、よく知ってるな。葉山は、白沢とまだ付き合いがあったんだな」
『まあ、白沢とは大学まで同じだったし。それから一年と経ってないからなあ』
「大学が同じなのは知ってたけど、その後も付き合いが続いてたのは驚いた」
『別に連絡を取り合ってるとかじゃねーけどな。にしても、オレの知り合いであいつの結婚式に招待されてる奴、いんのかな。あいつ友達少なそうだしなあ』
「葉山に言われちゃおしまいだよね」
『うるせー。しかもさ、何処で結婚式やると思う? すっげー有名なところでさ』
結婚式場。日時。葉山から期せずしてもたらされた情報が、耳に焼き付いて離れなかった。
1
お気に入りに追加
504
あなたにおすすめの小説
僕の追憶と運命の人-【消えない思い】スピンオフ
樹木緑
BL
【消えない思い】スピンオフ ーオメガバース
ーあの日の記憶がいつまでも僕を追いかけるー
消えない思いをまだ読んでおられない方は 、
続きではありませんが、消えない思いから読むことをお勧めします。
消えない思いで何時も番の居るΩに恋をしていた矢野浩二が
高校の後輩に初めての本気の恋をしてその恋に破れ、
それでもあきらめきれない中で、 自分の運命の番を探し求めるお話。
消えない思いに比べると、
更新はゆっくりになると思いますが、
またまた宜しくお願い致します。
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
君がいないと
夏目流羽
BL
【BL】年下イケメン×年上美人
大学生『三上蓮』は同棲中の恋人『瀬野晶』がいても女の子との浮気を繰り返していた。
浮気を黙認する晶にいつしか隠す気もなくなり、その日も晶の目の前でセフレとホテルへ……
それでも笑顔でおかえりと迎える晶に謝ることもなく眠った蓮
翌朝彼のもとに残っていたのは、一通の手紙とーーー
* * * * *
こちらは【恋をしたから終わりにしよう】の姉妹作です。
似通ったキャラ設定で2つの話を思い付いたので……笑
なんとなく(?)似てるけど別のお話として読んで頂ければと思います^ ^
2020.05.29
完結しました!
読んでくださった皆さま、反応くださった皆さま
本当にありがとうございます^ ^
2020.06.27
『SS・ふたりの世界』追加
Twitter↓
@rurunovel
春風の香
梅川 ノン
BL
名門西園寺家の庶子として生まれた蒼は、病弱なオメガ。
母を早くに亡くし、父に顧みられない蒼は孤独だった。
そんな蒼に手を差し伸べたのが、北畠総合病院の医師北畠雪哉だった。
雪哉もオメガであり自力で医師になり、今は院長子息の夫になっていた。
自身の昔の姿を重ねて蒼を可愛がる雪哉は、自宅にも蒼を誘う。
雪哉の息子彰久は、蒼に一心に懐いた。蒼もそんな彰久を心から可愛がった。
3歳と15歳で出会う、受が12歳年上の歳の差オメガバースです。
オメガバースですが、独自の設定があります。ご了承ください。
番外編は二人の結婚直後と、4年後の甘い生活の二話です。それぞれ短いお話ですがお楽しみいただけると嬉しいです!
運命の番と別れる方法
ivy
BL
運命の番と一緒に暮らす大学生の三葉。
けれどその相手はだらしなくどうしょうもないクズ男。
浮気され、開き直る相手に三葉は別れを決意するが番ってしまった相手とどうすれば別れられるのか悩む。
そんな時にとんでもない事件が起こり・・。
誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
ハッピーエンド保証!
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)
11月9日~毎日21時更新。ストックが溜まったら毎日2話更新していきたいと思います。
※…このマークは少しでもエッチなシーンがあるときにつけます。
自衛お願いします。
貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~
倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」
大陸を2つに分けた戦争は終結した。
終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。
一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。
互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。
純愛のお話です。
主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。
全3話完結。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる