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第一章
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「白沢。あの、土日とも予定がないときってある?」
昼休み。理科室で小雨がぱらつく微かな音を聴きながら、彰太は口を開いた。今までの経験上、白沢は土日のどちらか、あるいはどちらも予定があることが多い。
「何処か行きたいとこでもあるの?」
「い、行きたいとこっていうか……あの」
白沢は首を傾げながら「うん?」と、腕の中でうつ向く彰太の頭を撫でた。
「琉兄とおれでお金出しあって、親に旅行をプレゼントしようと思うんだ。そんで、琉兄も彼女と旅行に行くっていうから……良かったら、うちに泊まりに来ないかなって」
白沢が若干目を見開いた。彰太は慌てて両手を左右にふった。
「あ、もちろん。嫌ならいいんだけど」
白沢が「そんなわけない。すごく嬉しいよ」と、優しく目を細める。無理をしているようには見えなかった。
「ほんと? 泊まりだよ? ほんとにいいの?」
「本当」
白沢は耳元で「学校や外じゃ、出来ないこともあるしね」と、艶っぽく囁いた。彰太は顔を真っ赤にした。
「ち、違うから! そういうことのために誘ったんじゃなくて」
「そうなの?」
「うん。おれは白沢と、イチャイチャしたいんだ」
「例えば?」
「ずーっと一日中、白沢にくっ付いてたい」
にへ。
幸せそうに彰太が笑う。つられて白沢も、仕事では決して見せない笑顔を見せた。
「父さん、母さん。これ」
ソファーでくつろぐ両親の前に立ち、琉太が一つの封筒を差し出した。隣には彰太がいる。
母が受け取り「あら、何かしら」と、封筒の中身を確認する。父もそれを、横から覗き込んでいた。
「予定入れないでって頼んでおいた日があっただろ? その日に予約を入れておいた、旅館と新幹線のチケットだよ。バイト代もある程度貯まってたし、彰太も頑張って、小遣いから少し出してくれたんだ」
母は「……琉太、しょうちゃん」と、じーんとしていたが、母からチケットを奪い取った父は首を傾げた。
「ん? 二人分しかないぞ?」
「そりゃそうだよ。二人にプレゼントなんだから。久しぶりに、新婚旅行気分で楽しんできなよ」
両親は「そんなの駄目よ! 二人も一緒に行きましょう!」「そうだ。二人の旅行代は父さんが出すから!」と勢いよく席を立った。
「それじゃ意味ねーだろ!」
ぎゃあぎゃあ言い合う兄と両親をよそに、彰太はウキウキしていた。白沢と、はじめてのお泊まり。
いっぱいイチャつこう。人の目を気にすることなく、男女の恋人みたいに。来年はもう、一緒にはいられないかもしれないから。
昼休み。理科室で小雨がぱらつく微かな音を聴きながら、彰太は口を開いた。今までの経験上、白沢は土日のどちらか、あるいはどちらも予定があることが多い。
「何処か行きたいとこでもあるの?」
「い、行きたいとこっていうか……あの」
白沢は首を傾げながら「うん?」と、腕の中でうつ向く彰太の頭を撫でた。
「琉兄とおれでお金出しあって、親に旅行をプレゼントしようと思うんだ。そんで、琉兄も彼女と旅行に行くっていうから……良かったら、うちに泊まりに来ないかなって」
白沢が若干目を見開いた。彰太は慌てて両手を左右にふった。
「あ、もちろん。嫌ならいいんだけど」
白沢が「そんなわけない。すごく嬉しいよ」と、優しく目を細める。無理をしているようには見えなかった。
「ほんと? 泊まりだよ? ほんとにいいの?」
「本当」
白沢は耳元で「学校や外じゃ、出来ないこともあるしね」と、艶っぽく囁いた。彰太は顔を真っ赤にした。
「ち、違うから! そういうことのために誘ったんじゃなくて」
「そうなの?」
「うん。おれは白沢と、イチャイチャしたいんだ」
「例えば?」
「ずーっと一日中、白沢にくっ付いてたい」
にへ。
幸せそうに彰太が笑う。つられて白沢も、仕事では決して見せない笑顔を見せた。
「父さん、母さん。これ」
ソファーでくつろぐ両親の前に立ち、琉太が一つの封筒を差し出した。隣には彰太がいる。
母が受け取り「あら、何かしら」と、封筒の中身を確認する。父もそれを、横から覗き込んでいた。
「予定入れないでって頼んでおいた日があっただろ? その日に予約を入れておいた、旅館と新幹線のチケットだよ。バイト代もある程度貯まってたし、彰太も頑張って、小遣いから少し出してくれたんだ」
母は「……琉太、しょうちゃん」と、じーんとしていたが、母からチケットを奪い取った父は首を傾げた。
「ん? 二人分しかないぞ?」
「そりゃそうだよ。二人にプレゼントなんだから。久しぶりに、新婚旅行気分で楽しんできなよ」
両親は「そんなの駄目よ! 二人も一緒に行きましょう!」「そうだ。二人の旅行代は父さんが出すから!」と勢いよく席を立った。
「それじゃ意味ねーだろ!」
ぎゃあぎゃあ言い合う兄と両親をよそに、彰太はウキウキしていた。白沢と、はじめてのお泊まり。
いっぱいイチャつこう。人の目を気にすることなく、男女の恋人みたいに。来年はもう、一緒にはいられないかもしれないから。
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