15 / 45
第一章
15
しおりを挟む
「白沢。あの、土日とも予定がないときってある?」
昼休み。理科室で小雨がぱらつく微かな音を聴きながら、彰太は口を開いた。今までの経験上、白沢は土日のどちらか、あるいはどちらも予定があることが多い。
「何処か行きたいとこでもあるの?」
「い、行きたいとこっていうか……あの」
白沢は首を傾げながら「うん?」と、腕の中でうつ向く彰太の頭を撫でた。
「琉兄とおれでお金出しあって、親に旅行をプレゼントしようと思うんだ。そんで、琉兄も彼女と旅行に行くっていうから……良かったら、うちに泊まりに来ないかなって」
白沢が若干目を見開いた。彰太は慌てて両手を左右にふった。
「あ、もちろん。嫌ならいいんだけど」
白沢が「そんなわけない。すごく嬉しいよ」と、優しく目を細める。無理をしているようには見えなかった。
「ほんと? 泊まりだよ? ほんとにいいの?」
「本当」
白沢は耳元で「学校や外じゃ、出来ないこともあるしね」と、艶っぽく囁いた。彰太は顔を真っ赤にした。
「ち、違うから! そういうことのために誘ったんじゃなくて」
「そうなの?」
「うん。おれは白沢と、イチャイチャしたいんだ」
「例えば?」
「ずーっと一日中、白沢にくっ付いてたい」
にへ。
幸せそうに彰太が笑う。つられて白沢も、仕事では決して見せない笑顔を見せた。
「父さん、母さん。これ」
ソファーでくつろぐ両親の前に立ち、琉太が一つの封筒を差し出した。隣には彰太がいる。
母が受け取り「あら、何かしら」と、封筒の中身を確認する。父もそれを、横から覗き込んでいた。
「予定入れないでって頼んでおいた日があっただろ? その日に予約を入れておいた、旅館と新幹線のチケットだよ。バイト代もある程度貯まってたし、彰太も頑張って、小遣いから少し出してくれたんだ」
母は「……琉太、しょうちゃん」と、じーんとしていたが、母からチケットを奪い取った父は首を傾げた。
「ん? 二人分しかないぞ?」
「そりゃそうだよ。二人にプレゼントなんだから。久しぶりに、新婚旅行気分で楽しんできなよ」
両親は「そんなの駄目よ! 二人も一緒に行きましょう!」「そうだ。二人の旅行代は父さんが出すから!」と勢いよく席を立った。
「それじゃ意味ねーだろ!」
ぎゃあぎゃあ言い合う兄と両親をよそに、彰太はウキウキしていた。白沢と、はじめてのお泊まり。
いっぱいイチャつこう。人の目を気にすることなく、男女の恋人みたいに。来年はもう、一緒にはいられないかもしれないから。
昼休み。理科室で小雨がぱらつく微かな音を聴きながら、彰太は口を開いた。今までの経験上、白沢は土日のどちらか、あるいはどちらも予定があることが多い。
「何処か行きたいとこでもあるの?」
「い、行きたいとこっていうか……あの」
白沢は首を傾げながら「うん?」と、腕の中でうつ向く彰太の頭を撫でた。
「琉兄とおれでお金出しあって、親に旅行をプレゼントしようと思うんだ。そんで、琉兄も彼女と旅行に行くっていうから……良かったら、うちに泊まりに来ないかなって」
白沢が若干目を見開いた。彰太は慌てて両手を左右にふった。
「あ、もちろん。嫌ならいいんだけど」
白沢が「そんなわけない。すごく嬉しいよ」と、優しく目を細める。無理をしているようには見えなかった。
「ほんと? 泊まりだよ? ほんとにいいの?」
「本当」
白沢は耳元で「学校や外じゃ、出来ないこともあるしね」と、艶っぽく囁いた。彰太は顔を真っ赤にした。
「ち、違うから! そういうことのために誘ったんじゃなくて」
「そうなの?」
「うん。おれは白沢と、イチャイチャしたいんだ」
「例えば?」
「ずーっと一日中、白沢にくっ付いてたい」
にへ。
幸せそうに彰太が笑う。つられて白沢も、仕事では決して見せない笑顔を見せた。
「父さん、母さん。これ」
ソファーでくつろぐ両親の前に立ち、琉太が一つの封筒を差し出した。隣には彰太がいる。
母が受け取り「あら、何かしら」と、封筒の中身を確認する。父もそれを、横から覗き込んでいた。
「予定入れないでって頼んでおいた日があっただろ? その日に予約を入れておいた、旅館と新幹線のチケットだよ。バイト代もある程度貯まってたし、彰太も頑張って、小遣いから少し出してくれたんだ」
母は「……琉太、しょうちゃん」と、じーんとしていたが、母からチケットを奪い取った父は首を傾げた。
「ん? 二人分しかないぞ?」
「そりゃそうだよ。二人にプレゼントなんだから。久しぶりに、新婚旅行気分で楽しんできなよ」
両親は「そんなの駄目よ! 二人も一緒に行きましょう!」「そうだ。二人の旅行代は父さんが出すから!」と勢いよく席を立った。
「それじゃ意味ねーだろ!」
ぎゃあぎゃあ言い合う兄と両親をよそに、彰太はウキウキしていた。白沢と、はじめてのお泊まり。
いっぱいイチャつこう。人の目を気にすることなく、男女の恋人みたいに。来年はもう、一緒にはいられないかもしれないから。
14
お気に入りに追加
550
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
代わりでいいから
氷魚彰人
BL
親に裏切られ、一人で生きていこうと決めた青年『護』の隣に引っ越してきたのは強面のおっさん『岩間』だった。
不定期に岩間に晩御飯を誘われるようになり、何時からかそれが護の楽しみとなっていくが……。
ハピエンですがちょっと暗い内容ですので、苦手な方、コメディ系の明るいお話しをお求めの方はお気を付け下さいませ。
他サイトに投稿した「隣のお節介」をタイトルを変え、手直ししたものになります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
始まりの、バレンタイン
茉莉花 香乃
BL
幼馴染の智子に、バレンタインのチョコを渡す時一緒に来てと頼まれた。その相手は俺の好きな人だった。目の前で自分の好きな相手に告白するなんて……
他サイトにも公開しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~
倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」
大陸を2つに分けた戦争は終結した。
終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。
一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。
互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。
純愛のお話です。
主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。
全3話完結。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【旧作】美貌の冒険者は、憧れの騎士の側にいたい
市川パナ
BL
優美な憧れの騎士のようになりたい。けれどいつも魔法が暴走してしまう。
魔法を制御する銀のペンダントを着けてもらったけれど、それでもコントロールできない。
そんな日々の中、勇者と名乗る少年が現れて――。
不器用な美貌の冒険者と、麗しい騎士から始まるお話。
旧タイトル「銀色ペンダントを離さない」です。
第3話から急展開していきます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
クズ彼氏にサヨナラして一途な攻めに告白される話
雨宮里玖
BL
密かに好きだった一条と成り行きで恋人同士になった真下。恋人になったはいいが、一条の態度は冷ややかで、真下は耐えきれずにこのことを塔矢に相談する。真下の事を一途に想っていた塔矢は一条に腹を立て、復讐を開始する——。
塔矢(21)攻。大学生&俳優業。一途に真下が好き。
真下(21)受。大学生。一条と恋人同士になるが早くも後悔。
一条廉(21)大学生。モテる。イケメン。真下のクズ彼氏。
恋した貴方はαなロミオ
須藤慎弥
BL
Ω性の凛太が恋したのは、ロミオに扮したα性の結城先輩でした。
Ω性に引け目を感じている凛太。
凛太を運命の番だと信じているα性の結城。
すれ違う二人を引き寄せたヒート。
ほんわか現代BLオメガバース♡
※二人それぞれの視点が交互に展開します
※R 18要素はほとんどありませんが、表現と受け取り方に個人差があるものと判断しレーティングマークを付けさせていただきますm(*_ _)m
※fujossy様にて行われました「コスプレ」をテーマにした短編コンテスト出品作です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる