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こぼれ話~小瀬野の視点~

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 タクシーの中から半覚醒状態の璃空を半ば担ぎながら、何とか小瀬野はマンション二階にある自室へとたどり着くことが出来た。

 平均男性よりは軽い。というか彼女より璃空は軽かったが、それでも人一人運ぶのはきつく、小瀬野は思い切り後悔していた。

「何で連れて行くなんて言っちまったんだ、オレは……」

 佐伯優斗の更なる弱点でも聞き出せれば。そんなことを企んではいたが、結局はホモだということ以外は何も聞き出せず仕舞い。それも、目の前の相手が勝手にそう思ってるだけの可能性もあるのだ。

 璃空をソファーに転がし終えた小瀬野は、誰にともなく吐き捨てた。ちらっと視線を向ければ、璃空はすやすやと眠っていた。

 まあ、連れてきてしまったものは仕方ない。あとはこいつが目覚めれば、追い出せばいいだけの話しだ。こいつはホモで、襲われる可能性もあるにはあるが、どう考えても腕力はこちらの方が上だ。というかそんな素振りを見せれば、そく叩き出してやる。

「さて、シャワー浴びてオレもさっさと寝るか」

 立ち上がると、後ろでどすんと音がした。振り返ると、璃空がソファーから落ちていた。何処か打ったのか、うう、と痛そうに唸っている。最初は無視しようと思ったが、床で寝はじめた璃空に「だー、もう!」と、小瀬野は苛立ちながら頭をかきむしった。

「オレはこう見えて綺麗好きなんだ。ベッドで寝たけりゃ、シャワー浴びてこい!」

 シャワー。
 半分覚醒した璃空が呟き、フラフラと立ち上がろうとした。だが、またべしゃっと床に突っ伏してしまった。

「……お前、このやろう。どんだけ迷惑かけりゃ気がすむんだ」

 小瀬野は璃空を起こし、シャツとズボンを脱がせ「おい。下着ぐらい、自分で脱げよ」と、吐き捨てた。

 璃空が「……下着?」と呟く。

「そ。んで、シャワー浴びてこい。あっちにあっから」

 璃空は言われた通りに下着を脱ぎ、小瀬野が指差す方へと足を向けた。が、ふらつく足がもつれ、背後にあったベッドに背中から倒れた。

「……マジかよ」

 小瀬野はもう諦めた。明日、全部洗濯しよう。怒るのにも疲れ、小瀬野はシャワーを浴びるべく、バスタオルを手に取った。

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