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「何か、変なこと考えてる?」
コップを持ったまま、制止する璃空。
隣に腰を落としながら、優斗は見透かしたように口元を緩めた。璃空は思わず、顔を背ける。
「……別に」
そう、と優斗が小さく笑う。
「璃空が嫌なら、いつでもバイト辞めるよ?」
「……でも、これはおれの我侭だし。それに、時給いいし」
ぼそぼそと璃空がぼやく。
実は、このやりとりは3度目だったりする。
はじめた当初。優斗は他のウエイターと同じ時給だった。けれど、優斗のおかげで客が増えたと知ったオーナーは、優斗の時給をかなり上げてくれたらしい。
時給がよければ、働く時間に余裕ができる。
だからこそ毎日迎えにきてもらえる。
一緒にいられる。
でも、女の人たちに囲まれ、笑う優斗を見るのは嫌なのだ。なんて身勝手で、我侭な想い。
我ながら、自分に呆れる。
「――と、もうこんな時間か。学校に戻らないと」
優斗の声に導かれるように、ベッドの右横にある、ナイトテーブルの上の四角い目覚まし時計を見た。
昼休みが終わる15分前をさしている。
優斗が自分と璃空の鞄を手に持ち、2つの自転車の鍵を上着のポケットに入れる。
「行こう、璃空」
と、座ったまま動こうとしない璃空に手を差し出すが、璃空は優斗に向かって両手を広げた。
それが何を意味するのか。
理解して、優斗は笑いながら「仕方ないな」と璃空を抱きしめた。
璃空が嬉しそうに、優斗の背中に腕を回す。
(……あったかい。気持ちいい)
この心地よさは、変わらない。
はじめて抱きしめてもらった時から、ずっと。
コップを持ったまま、制止する璃空。
隣に腰を落としながら、優斗は見透かしたように口元を緩めた。璃空は思わず、顔を背ける。
「……別に」
そう、と優斗が小さく笑う。
「璃空が嫌なら、いつでもバイト辞めるよ?」
「……でも、これはおれの我侭だし。それに、時給いいし」
ぼそぼそと璃空がぼやく。
実は、このやりとりは3度目だったりする。
はじめた当初。優斗は他のウエイターと同じ時給だった。けれど、優斗のおかげで客が増えたと知ったオーナーは、優斗の時給をかなり上げてくれたらしい。
時給がよければ、働く時間に余裕ができる。
だからこそ毎日迎えにきてもらえる。
一緒にいられる。
でも、女の人たちに囲まれ、笑う優斗を見るのは嫌なのだ。なんて身勝手で、我侭な想い。
我ながら、自分に呆れる。
「――と、もうこんな時間か。学校に戻らないと」
優斗の声に導かれるように、ベッドの右横にある、ナイトテーブルの上の四角い目覚まし時計を見た。
昼休みが終わる15分前をさしている。
優斗が自分と璃空の鞄を手に持ち、2つの自転車の鍵を上着のポケットに入れる。
「行こう、璃空」
と、座ったまま動こうとしない璃空に手を差し出すが、璃空は優斗に向かって両手を広げた。
それが何を意味するのか。
理解して、優斗は笑いながら「仕方ないな」と璃空を抱きしめた。
璃空が嬉しそうに、優斗の背中に腕を回す。
(……あったかい。気持ちいい)
この心地よさは、変わらない。
はじめて抱きしめてもらった時から、ずっと。
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