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転入生(?)②

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「あぁ、そうだな。

   もう少し………あぁ

   まだ無理だと思う………行かせるさ。

   じゃあ……分かってるさ、行く。」


父さんが何かを持ちながら誰かと電話している時に目が覚めた。

「とうさ…ゲホッ!」

喉がカラカラで咳をしてしまった。

それに気づいた小柳さんが水を持ってきてくれた。

「大丈夫ですか?光様。何処まで覚えていますか?」

「うん、ありがと。確か、誰か転入生が来るって言ってたかな…」

「ええ。その方の名前は?」

「えっ?聞いてない。

 父さん、その方って誰です?

なんか寝ちゃってたみたいだし、生徒会の仕事もあるので…」

そう言うと、小柳さんも父さんも一瞬びっくりした顔をして、また尋ねてきた。

「光、今年に入って不思議な事はなかった     か?
例えば、今回の様な事があったとかだ。」

「ショウ兄にも言いましたけど、新入生歓迎会の時ぐらいまで何か変な夢を見ました。あとは、貧血で医務室に行った時も気づいたら寝てて随分時間が経っていましたね。」

「夢の内容は。」

「赤い水たまりと誰かが誰かの名前を呼んでいる声の夢です。
この事をショウ兄に話したら夏休みにセイ兄の病院に行こうと言われました。」

そう話すと、父さんは「そうか。」の一言で済ませてから小柳さんが淹れた紅茶を3口ほど口に含んだ。

「私も行こう。
翔と誠には私から伝える。

私が1日空けられる日になる様スケジュールを調整しておけ。

光、寝不足で体調を崩さんようにな。」

僕は「分かりました。ありがとうこざいます」と無難な受け答えをしてからこの部屋を出た。




ーーその後ーー

〈修司 視点〉

「良いのですか?光様は貴方に父親として接して欲しいと願っております。

貴方もいい加減向き合いなさい。」

光が出て行くと私の秘書でもあり、幼い頃から一緒に育った宗明むねあきが言った。


そうだな。あの事件に未だに一番後悔し、引き摺っているのは私かもしれない。

あの人を紫柳の後継者として外し、次男だった私がなったのは良かった。

でもあの時、もっと厳しく罰していたら…

あおいが狙われていたと知っていたら…


後悔は尽きない。

そして、ヒカルを見る度に蒼の面影を見て蒼で無いことに気付いた時、がっかりしてしまう自分が嫌になる。


「アキ、私はあの時の判断を間違ったのだろうか。

あの人に蒼を渡したくなかった。

そして、あの人を蹴落とし後継者となった

でも何も解決していなかった。

私は間違いをどこからしていたのだろう…

親として情けないな。椿を見る度に蒼を見ている気がしてならない。

あの凛とした面差しも真っ直ぐを見つめる藍色の瞳も。」


宗明とプライベートで呼んでいる呼び方を使ってポツリと弱音を吐く。

「そうだなぁ、シュウ。

あの時で一番良い方法を取ったんだ、

俺もお前も。

未来にどうなるか何て誰にも判らない。

だから今、最善の事をすれば良い。

蒼さんも、光もそれを望む筈だ。

椿の心を守る為にな。


先ずは湊の事、その次に椿の病院だな。」

「あぁ。先程、連絡をした。
   理事長の所へ向かう。
   車を回してくれ、小柳。」

「畏まりました、修司様。」


もう、椿の心が壊れないようにする為にも……



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