勇者学園とスライム魔王 ~ 勇者になりたい僕と魔王になった君と ~

冒人間

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第9章

第13話 歓声と笑い声

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ヴェルダンテにより『ゲーム』の勝利が宣言された―――

その瞬間――――!

―――ワァアアアアアアアアアア!!!!

大歓声が、この空間に響き渡った―――!!

「わぁっ!?」

「使用人達……!?
 い、いつの間に……!」

スリーチェが突然の大音量に身を縮ませ、ファーティラが困惑の声をあげる。

この屋敷に仕えている数百人の使用人……その全てが、今このパーティ会場にいた。
彼女達はアリーチェが戦い始めた頃からこの部屋に集まりだし……邪魔にならないように隅で固まっていたのだった。

「いやぁーー!!
 凄かったっスーーー!!
 アタシ、柄にもなく熱くなっちまったっスよーーー!!」

と、腕をぶんぶん振り回しながら部屋の最奥にいるフィル達の元へと駆けつけたのは、ガーデン家マジックアイテム開発部門の主任、リペルである。
また、彼女の他に回復魔法が扱える使用人達も駆けより、すぐさま傷を癒すべくフィル達に手を当て魔法をかけ始めた。

「アリーチェお嬢様も頑張ったっスね!!
 アタシの超最高傑作『アティフラ』ちゃん、しっかり使いこなしてたじゃないっスか!!
 いやーアタシも調整頑張った甲斐があるってもんスよ!!
 まあ、『あれ?そういえば桁間違えて出力2.5倍じゃなくて25倍にしちゃってなかったっけ?』なんて不安になったりもしてたんスけどねー!!」
「そうですか。
 アナタ今日は徹夜で調整作業お願い致しますわね」

アリーチェは笑顔で受け答え、フィルはそれを引き気味に見つめていた……

と、そんなことをしていると―――

「おおおおおおおおおおお!!!!
 フィルダンテ様ぁあああああああああ!!!」

「うおわっ!!??
 フェ、フェンスさん!?」

大粒の涙を流し、奇声を発しながらフィルの元へ爆走してくるフェンスの姿が見えた……

「こ、こ、このフェンス!!感動いたしましたああああああ!!!
 あ、アレこそが貴方の本当の実力だったんですねええええええええ!!
 そのお力を疑い、あのような態度を取ったことおおおおおおお!!!
 深く、深くお詫びをおおおおおおお!!!」
「いやあのおおおおおおお!!!
 ちょっと落ち着いてぇえええええ!!!」

顔の穴という穴から体液を垂れ流し、全身全霊の力でしがみついてくるフェンスから必死に逃れようと叫び声をあげるフィルの姿がそこにはあった……

「うーん、どうやら期待値が底まで下がりきった状態からあのスーパープレイを見せつけられたことで情緒がおかしくなっちまったみたいっスねー」
「そんな冷静な分析はいいから助けてぇえええええええええええ!!!」

「ああもうううううううう!!!
 私の全てを貴方に捧げますぅううううう!!!
 どうか私の操をその手でええええええ!!!」
「「どさくさに紛れて何口走ってんだああああ!!」きゅらぁあああああ!!」

「ま、不味い……!!キャラが被りかけている…!!
 このままではッ……!!」
「いや何の心配しているんだお前」

謎の焦燥感に駆られるファーティラにプランティが辛辣にツッコんだ。

そんなカオスな空間の中に―――


「ふ―――――」


1人の女性の声が、響き渡った―――


「ふ………ふ、ふ、ふ………!」


その声により―――それまでの喧騒が一気に静まり返り―――

その女性の元へ―――この場の全ての者の視線が注がれる―――


「ふ、ふふふ、ふふふふふふふ………!」


無表情のまま笑い声をあげる女性―――

グレーテリーチェ=ガーベラ=ガーデンへと―――

「グリーチェ、さん……」
「きゅる……」
「…………………」

フィル、キュルル、そしてアリーチェの3人もまた、ひたすらに笑い声を響かせるその女性を見つめた。

先程まで、自分達と凄まじい戦いを繰り広げていた人物……
彼女は今、一体どのような心境でいるのか……
あの笑いの意味は、一体――――

と、そんな風に思った時だった。


「くっ……!
 はぁーーーはっはっはっはっは!!!!」


「「「!!??」」」

グリーチェが―――豪快に笑い始めたのだった。
その突然の豹変に、フィル達3人は目を丸くして言葉を失う。

そして――――

その高笑いをあげるグリーチェの姿が―――

まるで霞がかっていくようにぼやけ―――

「ええっ!?」
「きゅるっ!?」
「あ、アレは!?」

黒いローブを被る、謎の人物へと変わった――

そして、フィルは……その光景に見覚えがあった。

「この前の事件の時の……!!
 姿を変えることが出来るローブ……!?」

そう、大陸西側における魔物襲撃事件の際―――
プランティと共にスリーチェを追っていたフィルが見た、もう一人のプランティ……

それは―――魔力の反応すらをも偽装することが出来るローブにより姿を変えたスクトだったのだ……


と、いうことは――――

今まで戦っていたグリーチェは―――――


―――バッ………!!!


高笑いをあげていた、その人物が―――

ローブを脱ぎ捨てる―――



そこにいたのは―――



「いやぁーーーーまったく!!!
 あの事件以来、君達には驚かされっぱなしだなぁもう!!!」



そこにいたのは―――!!!



「ゆ―――――
 勇者様ぁああああああああ!!??」



超大陸『ヴァール』に平和をもたらした英雄―――

勇者アルミナであった――――


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