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番外編 2
アリスリーチェ先生と魔法講座 その2:前編
しおりを挟む「それでは第2回アリスリーチェ先生の特別魔法講義の時間ですわ」
「アシスタントのスノウ=ホワイリーチェですわー!」
「なんか増えてるんですけど」
「フィルがアリーチェに魔法のお勉強教えて貰ってるんだってボクがスリーチェに話したらノリノリで参加してきたんだよー」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「では本日は消費魔力量に関することと一般的な魔法の習得方法についてお話いたしましょうかね」
消費魔力量に魔法の習得方法……
なんだかどちらも重要そうな内容だ……
「まず消費魔力量についてですが……
フィルは前回の講義でお話した初等、中等、高等魔法それぞれで使用される魔力量については覚えておりますか?」
「えっと、たしか……」
初等魔法が0~500未満。
中等魔法が500~3000未満。
高等魔法が3000以上で……
そして中等魔法のうち500から1000未満が下位中等魔法。
1000以上から2000未満が中位中等魔法。
2000以上から3000未満が上位中等魔法と呼ばれる……だっけ。
「正解ですわ。
よく覚えておりましたわね、フィル。
偉いですわよ」
「えへへ………」
何だか本当の先生と生徒みたいだ……
「アリスリーチェ様!!
そこですかさず『それで出来の良い生徒には先生からご褒美ですわ』とフィール様の身体にしな垂れかかり、その制服の内側に手を這わせ―――!!」
「プランティ」
―――パチンッ
「はっ!すみませんファーティラ!」
―――ゴッッ!!
「うボォぁッ!!!!」
……スリーチェのフィンガースナップによって呼び出されたプランティさんの一撃(腹パン)によりファーティラさんは沈黙した……
「外野からの横やりで話が脱線しかねない時に備えてプランティを待機しておりましたの!
早速役立てて良かったですわー!」
「うーん……前の章では結構良いシーン貰ってたのになぁファーティラさん……」
閑話休題。
「さて、フィル。
前回提示したこの魔力消費量ですけれど……
実際には必ずしもこれだけの量の魔力が消費されるとは限りませんの」
「え……どういう意味ですか?」
僕の疑問の声にアリーチェさんは薄く笑う。
「フィル、キャリーさんの『魔力値』はいくつだったか覚えておりますか?」
「キャリーさん?」
突然脈絡もなく出てきたその名前に僕は思わず変な声を出してしまった。
「疑問は後で受け付けますわ。
今はとりあえずわたくしの質問にお答えくださいな」
「えっと確か……『28000』でしたっけ?」
「その通りですわ」
改めて凄い数値だ……
平均の2.8倍だもんなぁ……
「では次の質問ですわ。
この前の『ロック・リザード』討伐の時、あの方はどのようにして『ロック・リザード』を相手取っておりましたでしょうか?」
「えーと……」
彼女は確か……炎に耐性のある『ロック・リザード』に対して高威力の『炎魔法』でごり押しちゃったんだっけ……
今更ながら飛んでもない戦い方だったなぁ……
「では最後の質問ですわ。
あの方が『ロック・リザード』に向けて放っていた炎魔法 《ファイアー・ジャベリン》は上位中等魔法ですわ。
彼女はそれを何回使っていたでしょうか?」
「ええ………?」
あの時キャリーさんが使った魔法の回数……?
正確には覚えていないけど……
確か10回以上は放っていたような……
「…………あれ?」
「お気づきましたか?」
《ファイアー・ジャベリン》は上位中等魔法……2000以上から3000未満の魔力が使用される。
仮に一番低い数値である2000だったとしても……
10回も使えばあっという間に20000の魔力が消費されてしまうことになる。
キャリーさんの『魔力値』は『28000』……平均の2倍以上の数値だ。
けれど、2000の魔力を消費する魔法を14回も使えば尽きてしまうという計算になる……
あの時の彼女はどう考えてもそれぐらいの回数は使っていたはずだ。
しかも、それでいて全く消耗している様子も感じられなかった。
「アリーチェさん、これって一体……?」
「その疑問の答えは、魔法の習熟による魔力消費の抑制ですわ」
魔力消費の抑制……?
それって………?
「きゅる?きゅる?
2000の魔力を10回以上で……?
28000から引いて……?
きゅる……????」
―――シュゥゥゥゥ………
「いいですか、キュルルさん。
簡単な計算から始めましょう。
まず、アナタの手元に10個のリンゴが―――」
消費魔力の計算に頭から煙をあげているキュルル。
そんなキュルルに優しく手ほどきをしてあげているスリーチェ。
別の勉強会が向こうで始まっていた……
閑話休題その2。
「魔法というものは使い慣れてくる程に、威力はそのままに消費する魔力の量だけをどんどんと抑えることが出来るようになりますのよ。
また、それとは逆に消費する魔力の量はそのままに威力を向上させていくということも可能ですわ」
「それじゃ、キャリーさんが《ファイアー・ジャベリン》をあれだけ連発出来たのは……
魔力消費量を本来より抑えていたから……?」
アリーチェさんがコクリと頷いた。
「ただし……この抑えられる魔力量も個人によって差がありますわ。
並の『魔法師』でしたら数百回という発動回数をこなして100~200程抑えられるようになれば上出来、といった所ですわね」
「へぇ……それならキャリーさんは……?」
「まぁ、彼女でしたらおそらく《ファイアー・ジャベリン》ぐらいの中等魔法ならば500以下の消費量にまで抑えられておりますでしょうね」
「……………………………」
それはつまり………
上位中級魔法を初等魔法並の魔力消費量で使えるということに…………
やっぱ凄い人なんだなぁ、キャリーさん……
「それと、魔力を抑えられるようになるのは大抵は自身の得意系統に限られますわ。
まぁ得意系統以外の魔法はただでさえ習得が難しいのですから消費量まで抑えるのは相当困難なのは当然ですわね」
「そうなんですか…………」
…………あれ?
そういえば………
「あの………アリーチェさんって『ロック・リザード』討伐の時に《エミッション・アクア》や《エミッション・ウィンド》をかなりの回数使ってましたよね……?
でも………」
あの魔法の魔力消費量は確か『50』だったはず……
『魔力値』が500しかないアリーチェさんは10回も使えば魔力が尽きてしまうんじゃ………
「ああ、それでしたらわたくしはもうあの魔法の消費量は10以下にまで抑えられておりますわよ」
「え」
………貴女ついさっき得意系統以外の魔法の消費量を抑えるのは困難って言ってませんでしたっけ……
「ちなみにどのくらいの時期に……?」
「あの魔法を習得して2日後にはもう抑えることは出来ておりましたわね。
そう難しい魔法でもありませんでしたし」
あっけらかんと言い放つこのお人に僕はしばし閉口してしまうのであった……
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